有料老人ホームの設置基準緩和へ
厚生労働省は、2015年7月から有料老人ホームの設置基準を緩和することを決めました。この決定には、「無届け老人ホーム」の存在が関わっていると言います。「無届け老人ホーム」とは、文字通り、届出をせずに老人ホームを運営しているところのこと。通常、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどの老人ホームを設置する際には、都道府県などに届出をする必要があります。ですが、色々な理由をつけて届出を出さずに経営を行っている老人ホームも多く存在しています。こうした施設では、なにか事故などが起きた際に、行政が把握していないために深刻な事態になることもあります。実際に、2009年に群馬県の「静養ホームたまゆら」という施設の火災事故が大きく取り上げられました。実態としては有料老人ホームだったのに、届出がされておらず、群馬県も有料老人ホームとして指導できていなかったのです。こうしたことをきっかけに、全国の無届け老人ホームの存在が問題になり、今回の設置基準緩和に至ったのです。
ところで、老人ホームを設置するためにどんな基準が必要なのかは、実際に入居している方でもあまり気にしたことがないかもしれませんね。もちろんこれから入居する老人ホームを選んでいる方も知っておいた方が良いことですので、まずは現在の基準についてご紹介します。
有料老人ホームでの人員基準とは
届出が必要な介護施設の種類はさまざま。その種類ごとに、人員や設備などの面で設置基準が定められています。一例として介護付き有料老人ホームについて、特に必要な人員基準という面から見てみましょう。介護付き有料老人ホームの人員基準(※)
これだけの人が必要だということは、まずはそうした役職が務まる有資格者を雇用しなければなりません。しかし、現在介護関連の職種は人手不足が深刻。また、これだけの人を雇えば、人件費が掛かります。そうなると、ただでさえ介護報酬改正で介護施設の収入が減っている中、利用者の入居費用を上げなければならなくなります。しかし、高い費用ではなかなか入居者が集まらないと考える事業者が多くいます。
設置基準は人員以外にもバリアフリー設備などたくさんあります。そのいずれも基準を守るためには多少なりともコストがかかり、そうすると利用者の費用負担が上がる、といった背景が、無届け老人ホームを生んでいるのです。
届出基準を緩和することが、無届け老人ホームを減らすことにどうつながるのか
届出済みの老人ホームは、行政の監査なども定期的に行われているので安定したサービスを受けることができます。ですが、無届け老人ホームの場合、何か問題が起こるまで行政の目が届かないことが問題です。そのため、まずは基準を緩和して届出をしやすくすることで、行政が監督しやすくすることが今回の基準緩和の狙いです。 とはいえ、もともとの基準は、介護が必要な高齢者が安全に安心して暮らせるように決められたもの。人の命を預かる場である以上、そうした安心が脅かされることがないよう、利用する側も注意して老人ホームを選ぶ必要がありそうです。
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この記事の寄稿者
coba
介護のほんねニュースのライター。話題の介護関連キーワードの中から気になるトピックについて解説します。