目黒区にある介護付き有料老人ホーム「マミーズホーム本館」にインタビュー。「24時間看護師常駐」「入居者様と介護・看護スタッフの割合が2:1」、そして全国的に珍しい「クリニック併設」という介護と医療の安心体制を整えています。マミーズホームの強みはそれだけではありません。今回は、取締役の宮﨑つぐみさんと事務長の渡邉渉(わたなべわたる)さんにお話を伺いました。
81歳のオーナーが現役でご活躍
――玄関の生花や、エントランスのステンドグラスが素敵ですね。アート作品もたくさん飾られていて、こだわりを感じられます。
ありがとうございます。うちのオーナーの宮崎ひろみが、介護施設や病院に見えないようにとインテリアにこだわっているんですよ。造園の方に週に1回来てもらったり、アート作品も定期的に入れ替えたりしています。
各フロアには季節ごとの飾りをしたり、利用者様の作品を飾ったりしています。3月はフロアごとにひな壇を設置していました。どのフロアにいても、刺激や四季を感じていただけるように工夫しています。
――いいですね。館内は淡いピンクに統一されていてかわいい印象です。オーナーはどんな方ですか?
オーナーは今年81歳の女性です。毎朝朝礼に出ていて、入居者様全員の表情や様子をチェックしているんですよ。元々がベテラン介護士なので、入居者様のちょっとした体調の変化にも敏感ですね。
――すごい! 現役でご活躍されているんですね! 入居者様と変わらないご年齢なのでは?
そうですね、入居者様の平均年齢はだいたい86歳です。今ではオーナーより年下の入居者様もいらっしゃいますね。
先日は居室のカーテンが曲がっていて、「ちゃんとまっすぐ整えなさい」と叱られました(笑)。入居者様やスタッフのみならず、居室の中まで自分の目でしっかり見ています。スタッフの指導にも厳しい方ですが、細かい気遣いも昔から変わらないです。
――ほかにもオーナーのこだわりはありますか?
入居者様やご家族のみなさまにはオーナーではなく“園長”と呼んでもらっています。「オーナー」や「社長」と呼ばれることを、少し偉そうな感じがするってオーナー本人が嫌がるんですよ(笑)。
そういう人柄もあり、入居者様やご家族からも「ここは他と違って、園長(オーナー)の顔が見える施設で安心」と言われてます。マミーズホームのカリスマ的存在です。
「医療・看護が必要!」と思ってクリニックを作ってしまった
――マミーズホーム本館さんの強みはなんですか?
24時間看護師常駐で、クリニックを併設していることです。施設長の酒井美穂子は看護師でもありますし、クリニック併設の介護施設は目黒区周辺では珍しいと思います。
これもホームができて4〜5年経ってから、オーナーが「介護と医療は密接だから、クリニックを作ってしまおう」と後からできた所です。
常に医療依存度が高い方も受け入れられる体制を整えています。入居者様には複数の疾患を抱えている方もいらっしゃいますので、「受け入れ先がない」とお悩みの方はぜひ相談しにいらしてください。
――入居者様の平均介護度は、いくつですか?
ざっくりとですが要介護3.6くらいです。入居は自立の方から要介護5の方まで受け入れております。
オーダーメイドなサポートを
――自立から介護度の重い方まで暮らしているホームだと思いますが、何か工夫していることはありますか?
そうですね、自立の方は5〜6階、介護が必要な方は2〜4階とフロア分けをしています。2〜4階はコの字型のフロアで、中央にナースステーションを設置しています。端ではなく中央にあることで、入居者様の様子を把握しやすいというメリットがあります。病院と似たようなフロア設計かもしれません。
――その他にはありますか?
あとは、身体状況や趣味嗜好、生活リズムは人それぞれなので、その方に合わせたサポートをすることです。スケジュールはおおまかにはあるけど、しっかりとは固定していません。
なるべく一人ひとりに合わせたオーダーメイドなサービスを提供したいんです。
例えば、朝食。ご飯とパンを選べたり、焼き加減やお米の硬さを選べたりします。卵料理でも、卵焼きか目玉焼きかなど、調理師に無理のない範囲でご要望に沿ってご提案しています。
――一人ひとりに合わせていると、大変ではないですか?
厨房の現場は大変だと思います。お米の柔らかさを変えるために、炊飯器も複数あります。ただそれ以上に、うちの料理長は「食べる楽しみ」を提供することが好きなんです。
料理長は入居者様に直接、改善点や希望のメニューを聞きにいくこともあります。職種に関係なく入居者様と直接コミュニケーションができる環境だから、オーダーメイドな対応が実現できるのかもしれません。
――「食べる楽しみ」を提供するために、他にはどんなことを実践してますか?
料理長はもともとホテルでシェフをしていたので、マグロを丸ごと一匹さばけるんです。そこで外部の業者を呼ぶこともなく、料理長直々にマグロの解体ショーを開催しました。大きなマグロを目の前にすれば、食欲が刺激され、いつも少食な方でもペロリと完食してしまうから不思議ですね。
――楽しみは食欲にもつながるんですね。
そう思います。他にも屋上テラスで焼き鳥パーティーをしたり、お誕生日会をしたり。コロナ禍ということもあり、施設内で、できる範囲の中で楽しめる時間を大切にしています。
日々の生活に刺激を与えるための工夫
ーーお話を聞くなかで「刺激」という言葉がたびたびありますが、入居者様と接するなかで刺激を大切にされていらっしゃるんでしょうか?
はい、毎日の生活で刺激を感じてもらえるように意識しています。コロナ禍もありホームで過ごす時間が長いので、意識しないと変化が少ない日常を送ってしまいがちになりますからね。
ーー刺激がある生活には、どんなメリットがありますか?
そうですね、「脳の活性化」「昼夜逆転の改善」「身体機能の改善」「睡眠の質の向上」などたくさんのメリットがあります。また笑顔になることで「ストレスの解消」にもつながります。
マミーズホームでは、レクリエーションやイベントだけではなく、毎日の生活で刺激を感じてもらえることを大切にしています。
ーー具体的に、どのような方法で刺激を提供しているか教えてください。
日々の刺激を促すためには、花やアートなど目で見る刺激はもちろん、スタッフの声掛けによる音の刺激も重要ですね。
寝たきりの方は、部屋に閉じこもると刺激が少なくなってしまいます。体調の良い日は移乗介助をして、車いすでホールやテラスに出てもらっています。あと日中は普段着、夜はパジャマに着替えてもらったり、髪を整えたりと私たちが普段していることと同じことをしています。「大切にされている」という感覚も大きな刺激になると思っています。
先日、入居者様のご家族に「いつも髪型や洋服、爪の先まできれいにしてくれてありがとうございます」と言われてすごく嬉しかったです。
ーー入居者様はどんな方が多いですか?
みなさま、おしゃれの感度が高いです。レースの付いた服を着ていたら「このレース可愛いね」などと反応してくれます。かわいいものやきれいなものが、入居者様の日々の刺激になるんだと思い、オシャレなネイルをしていくこともあります。ちなみにオーナーも入居者様好みのネイルや服装を意識して選んでいるみたいです。
ーーオーナーにお会いしたかったです。入居者様はどこのエリアで暮らしていた方が多いですか?
目黒区、世田谷区、港区、渋谷区の方が多いです。ホームの目の前に、東急バスの「清水」停留所があるので、隣の区でもバス1本でお越しいただけることが多いですね。
マミーズホーム本館は2006年にオープンしたので、新しい設備を求める方には違うかもしれません。また居室の広さは15~20㎡なので、それより広い部屋を求める方にとっては手狭かもしれません。
「医療依存度の高い方」や「常に介護が必要な方」はもちろん、「いつかの医療に備えておきたい方」にはおすすめですよ。
また、施設の雰囲気やスタッフの人柄は、パンフレットやホームページだけでは伝わりにくいこともあります。気になる方は、ぜひ体験入居(ショートステイ)にいらしてください。
この記事の寄稿者
井上
介護のほんねニュース編集部。
認知症サポーターです。介護に関する今話題のトピックや疑問を、分かりやすくお届けします。