養護老人ホームと有料老人ホームの違いを図表で解説|それぞれの役割・費用・おすすめできる方など

介護施設の一つ・養護老人ホームは自立した生活が難しく、経済的に困窮した方向けの施設です。「社会復帰の促進」「自立のために必要な指導」「訓練その他の援助」をします。同じ老人ホームでも、有料老人ホームとはサービス、費用、役割などの面で異なります。

今回は両施設を比較しながら違いを紹介します。

養護老人ホームと有料老人ホームの違いを図表で解説|それぞれの役割・費用・おすすめできる方など
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

介護施設の種類を知ることが「納得できる施設選び」の第一歩

介護施設には、有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、さまざまな種類があります。種類ごとに特徴、提供しているサービス、費用相場などが違います。

そのため、これから介護施設に入居しようと考えている方は、まず介護施設の種類を知ることが自分に合う施設を探すうえでの第一歩です。施設の種類にについて把握できたら、比較しながら、自分に合う施設種別を探していきます。

ここでは、有料老人ホームと養護老人ホームとの違いについてご紹介します。また各施設種別の違いについては以下の記事で紹介していますので、参考にしてみてください。

養護老人ホームとは

養護老人ホームは、経済的に生活が困窮しており、さらに自立した生活が難しい高齢者が利用できる施設です。介護をしつつ、社会復帰をサポートしていますので、自立可能と判断を受けると退去となります。

年齢での入居条件としては65歳以上です。加えて「所得が低く生活ができない」「生活保護を受けている」などの経済的な理由も入居条件に加味されます。

ただし細かい部分に関しては全国的にルールが統一されているわけではありません。入居できるかどうかは、施設がある自治体でが定める基準が異なりますごとに違います。例えば、東京都高齢者福祉施設協議会は以下の条件に当てはまる方を入居対象としています。

環境上の理由
  • 入院加療が必要のない良好な健康状況
  • 同居家族がいない、住居の状況などが理由で、現在の環境下で自宅での生活が難しい認められた場合
経済的な理由
  • 本人のいる世帯が生活保護受給者
  • 本人または家計を維持する方が非課税もしくは均等割りのみの課税世帯
  • 災害などの事情で生活状況の困窮が認められる
引用:東京都高齢者福祉施設協議会「大都市 東京の養護老人ホーム(P4.養護老人ホームの入所について)

特別養護老人ホームとの違いは

養護老人ホームと名称が似ている特別養護老人ホーム(特養)は、地方自治体や社会福祉法人が運営する公的施設です。入居条件は65歳以上で要介護度3~5の方となります。

養護老人ホームと違って特別養護老人ホームは介護の必要性が高い方に向けた施設です。養護老人ホームと違い、基本的に長期利用や終身利用が可能となっています。

有料老人ホームとは

有料老人ホームは主に民間が運営している介護施設です。住居が提供されるだけではなく、介護や健康管理、食事、家事代行などサポートが受けられます。入居対象は施設ごとに異なります。

「介護付き」「住宅型」「健康型」の3種類に分かれますが、健康型はほとんど施設数がありません。そのため「介護付き」と「住宅型」の2種類と認識しておくといいです。

介護付き有料老人ホームとは

生活支援身体介助機能訓練(リハビリ)といった介護サービスを施設内で利用できます。都道府県より「特定施設入居者生活介護」の指定を受ける施設だけが、「介護付き」と標榜できます。

原則として自立から要介護までの方が入居できますが、特に要介護状態の方が必要な方が多いです。

住宅型有料老人ホームとは

自立~軽度の要介護の方が利用できる施設です。施設の職員は食事、掃除、清掃など生活支援が中心で、介護は外部サービスと個別で契約しないと利用できません。そのためですので、「介護付き」に比べると要介護度が低い方が多いです。

自立した生活を送れる方も多いので、イベントやレクリエーション、サークル活動が充実しています。

養護老人ホームと有料老人ホームの違いを紹介

役割、運営母体、費用、サービス面で養護老人ホームと有料老人ホームを比較します。

養護老人ホーム 有料老人ホーム
役割 ・収入が少ない高齢者を社会復帰に導くこと ・介護や生活支援、レクリエーションなどを通じて、豊かなシニアライフを送ること
運営母体 ・社会福祉法人や市区町村など ・民間企業が中心
費用相場 ・年収によって変わる ・初期費用0~数千万円以上と幅広い

・月額料金10~35万円

サービス体制 ・食事や健康チェック

・社会参加を目的とした訓練が必要に応じて実施

・社会復帰を目指すためのレクリエーションや地域との交流

・常勤換算で要介護入居者3:介護職員1の配置

・(介護付きの場合)看護師1人以上配置

※介護付きの場合

施設としての役割

養護老人ホームと有料老人ホームはどのような位置づけをされているかを紹介します。

養護老人ホームの役割は、収入が少ない高齢者や身寄りがなく生活に不安がある高齢者を社会復帰させることです。自立や社会復帰に向けて、趣味や生きがいを与えるための取り組みに励む施設も多いです。

有料老人ホームの役割は、介護や生活支援、レクリエーションなどを通じて心身の健康を保ちながら、豊かなシニアライフを送ってもらうことです。経済状況は加味しません。また社会復帰を目指すというよりは、終の棲家にしてもらうという考えがあります。

運営母体の違い

両施設の運営母体について紹介します。

養護老人ホームの運営母体

養護老人ホームの施設数は、2020年10月1日時点で894施設です。公営と私営がありますが、私営(780施設)が多くあります。私営施設のほとんどは社会福祉法人によって運営されています。一方、公営の施設は市区町村や一部事務組合・広域連合が運営しています。

参考:e-Stat「【基本票】社会福祉施設等数,国-都道府県、施設の種類・経営主体の公営-私営別

有料老人ホームの運営母体

有料老人ホームのほとんどは民間企業が運営しています。2020年10月時点で有料老人ホームの数は1万4,982施設あります。そのうちほとんどを営利法人が占めており、その他は医療法人、社会福祉法人、公益法人などによって少数が運営されています。

参考:国土交通省「データから見た高齢者住宅・施設の需給バランス」/参考:e-Stat「【基本票】社会福祉施設等数,国-都道府県、施設の種類・経営主体の公営-私営別

費用面での違い

養護老人ホームと有料老人ホームでは、初期費用、月額費用にも違いがあります。

養護老人ホームは初期費用はありません。まとまったお金がなくても入居できます。

また、月額料金は入居者の前年度の年収をもとに決まるので、人によって異なります。前年の収入とは、税金や社会保険料、医療費など必要経費を差し引いた金額です。具体的な費用は以下の表の通りです。

養護老人ホーム費用の計算表
対象収入による階層区分(円) 月額料金(円)
1 0~27万円 0円
2 27万1円~28万円 1,000円
3 28万1円~30万円 1,800円
4 30万1円~32万円 3,400円
5 32万1円~34万円 4,700円
6 34万1円~36万円 5,800円
7 36万1円~38万円 7,500円
8 38万1円~40万円 9,100円
9 40万1円~42万円 1万800円
10 42万1円~44万円 1万2,500円
11 44万1円~46万円 1万4,100円
12 46万1円~48万円 1万5,800円
13 48万1円~50万円 1万7,500円
14 50万1円~52万円 1万9,100円
15 52万1円~54万円 2万800円
16 54万1円~56万円 2万2,500円
17 56万1円~58万円 2万4,100円
18 58万1円~60万円 2万5,800円
19 60万1円~64万円 2万7,500円
20 64万1円~68万円 3万800円
21 68万1円~72万円 3万4,100円
22 72万1円~76万円 3万7,500円
23 76万1円~80万円 3万9,800円
24 80万1円~84万円 4万1,800円
25 84万1円~88万円 4万3,800円
26 88万1円~92万円 4万5,800円
27 92万1円~96万円 4万7,800円
28 96万1円~100万円 4万9,800円
29 100万1円~104万円 5万1,800円
30 104万1円~108万円 5万4,400円
31 108万1円~112万円 5万7,100円
32 112万1円~116万円 5万9,800円
33 116万1円~120万円 6万2,400円
34 120万1円~126万円 6万5,100円
35 126万1~132万 6万9,100円
36 132万1円~138万円 7万3,100円
37 138万1円~144万円 7万7,100円
38 144万1円~150万円 8万1,100円
39 150万1円以上 (150万円超過額×0.9÷12月)+8万1,100円
(100円未満切り捨て)
引用:「老人福祉法に基づく措置費用の徴収に関する規則

有料老人ホームの多くは入居時に初期費用が発生します。初期費用がかからない施設から数千万円を超える施設までさまざまです。

月額料金も施設ごとによって異なります。介護付き有料老人ホームの費用相場は15万円~35万円、住宅型有料老人ホームは10万円~30万円ほどです。さらに住宅型有料老人ホームは施設外で介護サービスを契約することになるので、その分の支払いも考慮する必要がありますしておくべきです。

サービス面の違い

養護老人ホームと有料老人ホームの提供サービスの違いについて紹介します。

養護老人ホームは、自立状態を目指す施設なので、食事や健康チェックのほか、社会参加のための訓練や指導が必要に応じて実施されます。また高齢者に生きがいを与えるために、レクリエーションやクラブ活動、地域住民との交流などが盛んなところも多いです。

養護老人ホームは療養生活を送ることを目的としていないので、介護の体制や設備は十分に整っていません不十分です。しかし、2005年の介護保険法改正によって「外部サービス利用型特定入居者生活介護」の指定を受けられるようになり、外部の介護サービスを提供できるようになりました。

有料老人ホームは介護付きと住宅型でサービス内容が少し異なります。

介護付きの場合は、施設の介護職員により、入浴や着替え、排泄、食事などの介護サービスが提供されます。それ以外では、家事の支援、買い物代行、行政手続き代行などの生活支援も豊富です。

住宅型は自立に近い方が比較的多いので、介護サービスよりレクリエーションやイベントなどの提供が盛んです。介護サービスは任意で外部事業者と契約するので必要なサービスだけを選んで利用できます。

養護老人ホームと有料老人ホームはどちらがいいか

「養護老人ホームと有料老人ホームの違い」を踏まえて、それぞれどのような方におすすめなのかを紹介します。

養護老人ホームはこんな方におすすめ

  • 経済的に不安を抱えている方
    • 収入が少ない方
    • 頼れる家族がいない方
  • 将来的には自立したいと考えている方

養護老人ホームの最も大きな特徴は年収額に合わせて入居できる点です。経済的な問題で生活が難しい方におすすめです。また社会復帰を前提としているので、将来的に自立したいと考えていることも前提です。

有料老人ホームはこんな方におすすめ

介護付き有料老人ホームはこんな方におすすめ

  • 介護の必要性が高い方
  • 充実した介護サービスを受けたい方

住宅型有料老人ホームはこんな方におすすめ

  • 比較的自立度が高い方
  • レクリエーションなど楽しみたい方
  • まだ介護サービスが必要ではない方

「介護付き」と住宅型でそれぞれ提供されるサービスが異なります。介護付きであれば24時間体制で介護を受けられ、手厚い介護サービスを受けられます。住宅型は自立に近い方のほうが利用しやすいです。

養護老人ホームよりも費用が高いので、相応の余裕がある方にもおすすめできます。また特に介護付きの場合は「終の棲家」を探している方の希望にも合います。

この記事のまとめ

  • 養護老人ホームは収入が低い高齢者を入居対象にした施設で、社会復帰を目指すのが目的
  • 住居や食事の提供、社会復帰の支援がメインで、介護・生活支援などのサービスはない
  • 有料老人ホームは自立でも要介護状態でも入居でき、終身での利用も可能

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