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要介護認定の判断基準について教えてください!

要介護認定の申請をしようと思っていますが、認定が受けられるかわからず不安です。準備しておきたいので要介護認定の判断基準を教えてください。

A要介護認定はその人の介護に要する手間で判断されます。

お近くの地域包括支援センターに相談するか、自治体の窓口に直接申請すると、認定調査員が自宅や病院を訪問し、調査項目に従って本人や家族に聞き取りをおこない、様子を観察します。この結果をコンピューターに入力し、一次判定の「要介護認定等基準時間」を算出します。その内容と「主治医意見書」により、介護認定審査会でニ次判定が行われます。準備のために事前に調査項目を把握しておく必要はあるものの、認定調査の当日は正直に回答してください。

吉川友
吉川友
作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員・介護認定審査員

家族に介護の必要性を感じるようになったら要介護認定の申請が必要です。ただし申請すれば必ず「要介護」の認定が下りるとは限りません。認定されても思ったより介護度が軽く、家族の負担が軽減されないケースもあります。

本人の状態を正しく判定してもらうために、事前に判定基準を把握しておくことがおすすめです。ここでは、要介護認定の判断基準についてご紹介します。

要介護認定とは

要介護度とは「日常生活でどの程度の介護が必要か」という度合いを表したものです。要介護度には「自立」から「要介護5」までの8段階があり、段階に応じて生活支援や身体上の介護といった介護サービスが利用可能です。

この要介護度を判定する仕組みが要介護認定です。要介護認定に申し込み、認定調査を受けることで要介護度が決まります。

要介護度の8段階
区分 心身の状態(※)
自立 日常生活において支援・見守りが必要ない。薬の内服、電話の利用などの手段的日常生活動作ができる。
要支援1 日常生活上の基本的動作はほぼ自力でできる。しかし手段的日常動作について要介護状態の予防が必要なほど何らかの支援を要する状態
要支援2
要介護1 要支援から手段的日常生活動作の能力がさらに低下し、部分的な介護が必要
要介護2 要介護1の状態に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要
要介護3 要介護2の状態と比較して、日常生活動作及び手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要
要介護4 要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活を営むことが困難
要介護5 要介護4の状態よりさらに動作能力が低下しており、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能
※2002年度の老人保健健康増進等事業において、1999年度からの要介護認定に関する研究や要介護認定結果の傾向を踏まえて報告された成果
参考:厚生労働省「(参考(3) 介護保険制度における要介護認定の仕組み)

要介護認定の流れ

初めに要介護認定を受けるまでの流れをみていきましょう。

STEP1:自治体へ申請

お近くの地域包括支援センターに相談するか、もしくは居住する自治体の介護保険担当窓口へ直接申請をします。申請書類に記入漏れや押印忘れがないか、必要書類が揃っているかを確認しましょう。

STEP2:訪問調査

申請を受けた自治体からケアマネジャーなどの資格を持った認定調査員が自宅を訪問し直接聞き取り調査をおこないます。調査項目に基づき、どの程度の介護が必要なのかをチェックするとともに特記すべき事項がないかなども確認します。

調査では本人への聞き取りに加え、家族構成や介護をする人の状況についても確認されます。そのため、訪問調査は本人と介護者の在宅時に実施されます。

STEP3:主治医による意見書の作成

要介護認定には、主治医による意見書が必要です。意見書には、病気やけがの状況が記されています。主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診断を受けましょう。

STEP4:一次判定

要介護認定の一次判定には、状態の維持や改善の可能性などについて客観的に判定するため、コンピュータ判定が用いられています。訪問調査結果と、主治医の意見書の一部の項目を入力し、判定が出ます。

STEP5:二次判定

二次判定では介護認定審査会が一次判定の結果を審議します。調査員による特記事項の確認や主治医の意見書を踏まえたうえで要介護認定区分の判断をするため、必要に応じて一次判定の結果も変更可能です

STEP6:認定結果の確定

二次判定の結果、要介護認定区分が確定したら本人へ郵送で通知します。一般的に申請から通知が届くまで30日以内となっており、それ以上の時間がかかる場合はその旨の通知が届く仕組みです。

要介護認定には3~48カ月の有効期間があり、審査結果によって異なります。

原則 自治体が必要と認める場合
新規認定 6カ月 3〜12カ月
更新認定(区分の変更あり) 12カ月 3〜36カ月
更新認定(区分の変更なし) 12カ月 3〜48カ月
参考:厚生労働省「要介護認定に係る法令

要介護認定は自動更新されないため、有効期間が満了する前に更新しなくてはなりません。更新の申請は期間満了となる日の60日前から受付が始まります。担当のケアマネジャーがいる場合は更新のサポートを受けられますが、そうでない場合は市町村から送られてくる更新案内通知に従って自身で忘れずに申請しましょう。

要介護認定の判断基準とは

では一体、どのように要介護度を判断しているのでしょうか?

一次判定の判断基準

要介護認定の一次判定はコンピュータ判定です。判定ソフトでは、本人の状態を把握するため、「能力」「介助の方法」「障害や現象(行動)の有無」の3つの観点から調査項目の評価軸が設けられています。訪問調査でこれらを調査した結果と、これらを総合した5つの指標を中間評価項目得点とし、すべてを合わせて「状態像」と呼びます。

ただし、要介護認定は介護の手間の総量から判断されるため、状態像だけでは判断できません。そのため、一次判定ソフトでは本人の「能力」「介助の方法」「障害や現象(行動)の有無」といった状態に関わる情報を入力することでそれぞれの介護にかかる時間を算出しています。

一次判定ソフトでは、すべてのそれぞれの介護にかかる時間を合計することで、介護の手間の総量である要介護認定等基準時間を推計してくれます。この推計時間を利用し、要介護度は決定されているのです。

一次判定には「1分間タイムスタディ・データ」が使われる

要介護認定の基礎には、介護施設に入所または入院している約3,500名の高齢者に対しておこなった「1分間タイムスタディ・データ」という調査データをもとに推測します。介護保険制度開始前に収集されたもので、この調査結果をもとに、介護の手間を数値化したものが要介護認定等基準時間になります。

推計には直接生活介助、間接生活介助、BPSD関連行為、機能訓練関連行為、医療関連行為の5分野について要介護認定等基準時間を算出し、その時間と認知症加算の合計を基に次の表から要介護度を判定します。

要介護度 要介護認定等基準時間と認知症加算の合計
要支援1 25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態
要支援2
要介護1
32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護2 50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護3 70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護4 90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護5 110分以上又はこれに相当すると認められる状態
引用:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか

要介護認定の一次判定は1分間タイムスタディを用いて要介護認定等基準時間を算出していますが、実際に家庭で介護にかかる時間とは異なることに注意が必要です。また、要介護認定等基準時間はあくまでも要介護認定のための「ものさし」でしかなく、実際に受けられる介護サービスの時間とは関係ありません。

二次判定の判断基準とは

二次判定では、コンピュータによる一次判定の結果を踏まえて介護認定審査会が総合的な判定をします。介護認定審査会とは5名ほどの保健、医療、福祉の学識経験者で構成される合議体です。

この審査会では、認定調査員や主治医から得た情報を基に要介護度を判断します。本人と会って聞き取りをおこなうのは認定調査員と主治医だけですので、認定調査員と主治医は本人の状態を正確に審査会へ報告しなくてはなりません。

調査項目のほかにも、必要と判断したものや判断に迷ったものは特筆事項として記録し、審査会の判断を仰ぎます。審査会ではこれらの情報と一次判定の結果を総合的に判断します。場合によっては一次判定とは異なる判断を下すこともあります

要介護認定を受ける前に準備すべきこと

結果によって利用できる介護保険サービスが変わってくるため、要介護認定は本人だけでなくその家族にとっても重要です。現状とかけ離れた結果になってしまわないよう、事前にしっかり準備しておきましょう。

認定調査の質問項目は事前に予習しておく

認定調査での質問項目は全部で74項目あります。限られた時間ですべてを聞き取らなければならないため、質問のペースが速い場合があります。焦ってうまく答えられなかったり、とっさに思い出せなかったりすることのないよう事前に予習しておきましょう。

また下記の記事では、74項目の質問事項をまとめています。どんな質問をされるのかあらかじめ目を通しておき、本人の現状を正しく伝えるにはどう答えるのが適切なのか、自分なりの答えを用意しておきましょう。

介護の内容や体調の変化などは細かく記録しておく

本人の普段の様子や介護の内容(いつ、どこで、誰の、どんな介護が、何回ぐらい必要か)を日ごろから記録しておくと認定調査時もスムーズです。認知症の症状が見られる場合、調査の場だけでは伝わりにくいこともあります。どんな介護がどのくらいの頻度で必要になるのか、調査項目にないことでも構いませんのでメモしておくことをおすすめします。

また、病気やケガ、体調の変化なども細かく記録しておきましょう。主治医の診断書も要介護認定の判断材料になりますが、医者にかかるほどではないちょっとした体調の変化などは家族でないと分かりません。介護をするうえで気になる点があれば遠慮なく伝えましょう。

本人の前で言いにくいことはメモで伝えるなどの配慮も必要

家族にしてみれば本人の状態や困っていること、不自由していることをなるべく正確にしっかりと伝えたいと思うものです。しかし、本人もそうだとは限りません。他人に自分の状況を知られることを嫌がる人もいます。できないこともつい「できる」と言ってしまったり、心当たりがあっても「ない」と言ってしまったりするため、家族や調査員が混乱するケースも少なくありません。

本人の状態を正しく伝えられないと調査にも影響が出ます。状態に合わない判定が出てしまう恐れもあるため、適切な結果となるよう工夫が必要です。本人の前で調査員に伝えることがはばかられるようなことは、事前にメモにまとめておき調査員に渡すといった方法もあります。

また、ご本人の調査後に電話をかけたり場所を変えたりして、調査員に直接伝えることもできますので、事前に「本人のいないところで伝えたいことがある」と伝えておくことも有効でしょう。ご家族からの意見は正確な介護認定のために必要な判断材料の一つですので、調査員の特記事項として認定審査会に提出する資料にも記載されます。

要介護認定の基準を理解してしっかり準備しよう

介護サービスを受けるには要介護認定を受ける必要があります。初めに実施される聞き取り調査では74項目の質問に答えなくてはならず、事前準備が大切です。この聞き取り結果をコンピュータ分析することで一次判定が出ます。二次判定で結果が変更となる場合もあるものの、判断基準は本人や家族からの聞き取り調査の結果が基になるため、おろそかにはできません。

本人の状態を正しく伝えるためにも、日ごろの様子や介護の内容などを記録しておく習慣をつけましょう。内容の正確さはもちろん、焦って伝え忘れが起こる心配もありません。要介護認定の判断基準は複雑なので、どんな要素が基準のポイントとなるかがわからないからこそ、しっかりと調査を受けることが大切です。

吉川友

この記事の監修

吉川友

作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員・介護認定審査員

作業療法士取得後、介護老人保健施設、一般企業、訪問看護、通所介護に務める。作業療法士養成学校にて非常勤講師を務めつつ、現在、通所介護での機能訓練指導員や介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護認定審査員として地域と関わり、主として高齢者の生活期リハビリテーションを通じて、生きがいづくりの支援をしている。

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