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認知症の在宅介護にかかるストレスを軽減する方法を教えてください

同居している義母が最近忘れっぽくなり、認知症かもしれません。認知症の介護はストレスが大きいと聞いたことがあります。今後、義母の介護が必要になると思いますが、未経験なことなのでストレスを少しでも軽くできる方法が知りたいです。
義母自身も私たちに「迷惑をかけてしまうのでは……」と不安やストレスを若干感じているようで、これが認知症の悪化につながらないか心配です。

A認知症の方の介護をする時は、5つの心得と7つの原則を知ることでストレスを軽減できます!

認知症の方は認知機能の低下により、物忘れや新しく覚えることが難しくなります。また、不安から性格が大きく変わってしまうこともあるでしょう。そのため、介護では苦労される方も多くみられます。
しかし、介護をする上での心得や原則を知っていれば、介護への不安がなくなりスムーズにおこなえるようになるので、結果ストレスの軽減にもつながりますよ。また、介護をされる方もストレスを感じている可能性があるので、それを理解し、しっかりケアしてあげることも大切です。

岡田慎一郎
岡田慎一郎
理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員

家族が認知症になり、症状が進行すると介護が必要となります。始めは問題なくおこなえていた介護も、長くなると大きなストレスが溜まった状態となる可能性が高いです。ストレスのせいで自分自身の健康や精神に悪影響が出る場合もあるでしょう。

また、認知症はなった本人にとっても大きな不安を抱えやすい障害です。介護される高齢者も認知症のストレスで、ますます状態が悪くなる危険性があることも理解しておく必要があります。お互いにストレスを感じない介護を実現するためにも、介護ストレスの理解を深め、ストレスへの対処法をこの記事で知っていきましょう。

認知症の介護はストレスがかかる

認知症に治療薬はなく、現段階では進行を抑える程度となっています。そのため、認知症になった方とは長い時間付き合っていくことになるでしょう。一般的に認知症の介護は難しいと言われる理由には、次のものが挙げられます。

意思疎通が上手くいかない

認知症の方は同じことを何度も話すことや、一度聞いたことをすぐに忘れてしまう傾向があります。これは理解力や記憶力の低下による障害なので仕方がないことと分かっていても、意思疎通の難しさにイライラする介護者は多くみられます。

常に気を抜けない

症状によっては、家の中のみならず、外も歩き回る徘徊が起こります。時には転倒や交通事故などの危険性も高まる行動です。

また、排便後のおむつの不快感から自分で処理をしようとしたり、便への認識が不十分になったりします。その場合、自分の体や寝具、壁などに便を擦りつける弄便をおこなうこともあります

徘徊は昼夜問わず起こるため、少し目を離したすきにいなくなってしまうことも少なくありません。弄便を繰り返しおこなわれる場合は、後始末に追われることになります。介護者は常に気を抜けない状況が続きます。

症状が変化していく

治療を受けていても、認知症の症状は少しずつ進行していきます。その進行ペースも一定ではなく、1日のうちに変化する場合もあります。いつ状態が悪化するのかという不安を抱えながらの介護は大きなストレスとなるでしょう。

暴力や暴言を受けることがある

認知症になった人は今までできたことができなくなり、家族から怒られることが増えたなどの理由でイライラしやすくなる人もいます。大きな不安から暴力な性格に変わったり、暴言をはくようになったりするケースは珍しくありません。

介護者は暴力や暴言に耐えながら介護を続けていかなければなりません。認知症のせいで暴力的になっていることが分かっていない方の場合、「自分が悪かったのでは?」と自分自身を追い込んでしまう場合もあるでしょう。

ストレスを最小限に抑えるための「5つの心得と7つの原則」

認知症の介護を続けていくためには、介護者のストレスを軽減していくことが重要となってきます。ストレスを最小限に抑えるためにも、次の5つの心得と7つの原則を覚えて介護に臨むといいでしょう。

まずは介護における5つの心得からご紹介します。この心得は、認知症に関係なく介護をする上で心がけたい内容となっているので、ぜひチェックしてみてください。

頑張りすぎない

認知症の方の介護は通常の介護とあわせて認知症の知識も必要となってきます。最善の方法を身に付けた上で、高齢者のために熱心に介護される方が多いでしょう。しかし、日に日に症状が悪化したり、頑張ったことが報われなかったりすることもありますね。

熱心に介護されることはとても大事なことですが、必要以上に頑張ってしまうと常に気が張った状態が続き疲れてしまいます。全て完璧にこなそうとは考えず、家族の協力や介護サービスを利用する手もあるということを頭に入れておきましょう。

一人ですべてを抱え込まない

介護を一人きりでおこなっている家庭は少なくないでしょう。しかし、すべて一人で抱え込んでしまう行為は過度なストレスを生みます。介護はとても労力がかかる行為なので、家族で分担しながらおこなうことが望ましいです。

ただ、仕事や学校などの事情で上手く分散できないという家庭がほとんどでしょう。家族同士で分散が難しい場合は、「デイサービス・ショートステイや訪問介護など介護サービスを用いての介護を任せてしまうのもストレス軽減に有効です。介護に疲れてしまう前に家族と相談して、すべて自分でおこなおうと考えないように心がけましょうね。

定期的に弱音をこぼす

介護は大変なので、時に弱音や愚痴をこぼしたくなります。しかし、「自分の家族のことを悪く言ってはいけない」という考えから、人に言えず、気丈に振る舞う方がほとんどでしょう。

自分の弱音を隠してしまう行為は、ストレスを増やす原因となってしまいます。一度にたくさん愚痴ってしまうと、聞いた相手も困ってしまい、嫌な気持ちにもなるでしょう。しかし、少しずつこぼしていくだけなら、相手も聞く耳を持ち理解もしてくれるはずです。

特に自分一人でどうにもできない時は、家族の弱音をこぼすことで解決案が出される可能背もあるでしょう。家族には言えないという時は、信頼できる友人に聞いてもらうのも一つの手です。

また、話し相手が介護職に就く方や介護経験者であれば、同じ苦労をしてくれるので理解を示してくれるでしょう。経験を元に、アドバイスをくれる可能性もありますよ。

他の人と比べない

認知症の発症や進行のペースは人それぞれです。自分の家族が人よりも早く発症して苦労することもあれば、進行が早く介護の苦労が多いという人もいるでしょう。だからといって、そんな時、周りと比べて自分を追い込みがちになってしまうこともあります。

ストレスを抱えた状態だと余裕がなく、「なんで自分ばかり……」という気持ちが大きくなりがちです。しかし、「誰もが同じ思いを1度はする」と考え、自分は自分らしい介護をしようという気持ちを持って介護にあたることが大事になってきますよ。

おわりがくることを理解する

認知症の症状は進行していっても、いつか終わりがきます。例えば、徘徊が多い人も、歩行が困難になって寝たきり状態になれば、徘徊の症状がなくなることになるでしょう。他の行動や心理症状も、いずれ時がくれば終わりがきます。

それまでは辛いことも多いでしょう。しかし、いずれ終わりがあると考えることができれば、「終わりがあるからこそ、後悔しないために頑張ろう」と前向きな気分になれるはずですよ。

7つの原則

認知症の方を介護する時は、適切な接し方を覚えておくと介護ストレスを軽減しながらおこなえます。認知症の方と接する時は、次の7つのポイントを意識してみましょう。

一定の距離で見守る

余計な仕事を増やしたくないために、介護される方の意思を尊重せずにすべて自分でやってしまったり、なにかしようをしたりすると止めに入ったりする人もいるでしょう。危険な行動をとりそうになった時は止めるべきですが、基本的に見守る姿勢でいた方が介護者も気が楽になりますよ。

認知症の方の行動の中には、意味があっておこっていることもあります。基本的に自分でやってもらい、できないことは介護者がサポートするという形にした方が、お互いにストレスなく生活できるでしょう。

余裕を持って接する

自分の焦りや困惑は認知症の方にも伝わってしまうものです。余裕がないと、つい感情的に接してしまう可能性もあるでしょう。

認知症になったからといって、自分の考えや感情がなくなったわけではありません。むしろ、「なんで自分が怒られなければならないんだ」という気持ちが強くなり、ますますいうことを聞いてくれなくなる恐れがあります。素直に応じてもらえるように、余裕を持って接することを心がけましょう。

目線を合わせ、優しい口調で話す

話しかける時は目線を合わせると、相手に安心感を与えられます。また、口調にも敏感な方は多いので、常に優しい口調を意識するようにしましょう。

ゆっくりかつはっきりと話す

以前よりも意思疎通が難しくなるので、繰り返し同じ話をすることも多くなります。理解に時間がかかるので、こちらから話す時はゆっくりかつはっきりとした口調で話しましょう。はっきりとした口調といっても、大声や甲高い声でまくしたてる話し方はNGです!

また、その土地の方言で話すのも良いでしょう。よく方言を使う方であれば、方言の方が話を理解できる場合もあります。

相手の言葉にしっかり耳を傾ける

何度も同じ話をされたり、要点が見えてこない会話を聞かされたりするとイライラするのも分かります。しかし、認知症の方は自分なりに気持ちを伝えようと必死になって話をしていることを分かってあげましょう。

しっかり耳を傾けてあげることで、本人が本当に望むものが見えてくる可能性があります。介護を受けている方も、自分の話を聞いてくれる安心感が持てると不安も軽減され、ストレスを感じにくくなりますよ。

相手の認識や心の世界を理解する

認知症が悪化すると妄想から突拍子もない言動をとってしまう方もいます。あまりに不可解な言動が多いと頭ごなしに否定や怒ってしまいがちですが、まずは一度受け止めてあげましょう。

妄想を現実として認識してしまうのは、なにか理由があります。例えば、うたた寝中にテレビから流れてきた音声が夢に現れたり、なにか特定のものを見たことで過去の記憶がよみがえったりして、不可解な言動をとっている可能性が考えられるでしょう。

妄想の原因が何か探り、その原因に合わせて相手を落ち着かせられる言葉をかけてあげると、相手も安心や信頼を感じてくれますよ。

外とのつながりを大事にする

円滑なコミュニケーションが難しくなってしまうと行動範囲が狭くなり、社会とのつながりもなくなっていきます。自宅に引きこもりがちで家族としか会話をしない環境は、介護を受ける方のためにもよくありません。

適度に外に連れ出し、他の人と交流を楽しんでもらえると気分転換になるでしょう。しかし、大勢の人との交流を苦手とする人もいるので、無理させず本人の意思を尊重してあげることも大事です。短い時間でもいいので一緒に散歩へ行ったり、お買い物に出かけたりする時間を定期的につくり、外とのつながりを持たせていきましょう。

認知症の方自身にストレスがかかることも

認知症介護のストレスは介護者に限らず、介護を受けている方も感じている可能性があります。今までとは違う自分の変化に戸惑い、また家族に迷惑をかけているという自覚から大きなストレスを抱え込みがちです。では、認知症の方がストレスを持つとどのような影響が出るのか解説しましょう。

ストレスで認知症は悪化するのか

人は大きなストレスを受けると、アミロイドβたんぱくと呼ばれる物質が生産されます。このたんぱく質は脳内で凝縮され、神経細胞を死滅させてしまうと言われています。その結果、認知症の症状が悪化する可能性があるでしょう。

また、ストレスは認知症だけではなく、うつ病や不安症、高血圧などさまざまな病気の原因になる可能性があります。

ストレス性の認知症はある

ストレス自体が認知症の原因になっている場合もあります。ある研究では、若い頃にうつ病になった人は、アルツハイマー病と血管性の認知症を患う確率が高いという結果が明らかになっています。

さらに、スウェーデンのヨーテボリ大学で行われた研究では、中年期に不安や嫉妬の感情を多く持っていた人は、老年期を迎えるとアルツハイマー病を発病する確率が2倍にも跳ね上がるという結果が報告されています。

ストレスは認知症を悪化させるだけではなく、発症の原因にもなっている可能性があります。認知症の方自身にもストレスがあることを理解し、ケアしていくことも大事ですね。

お互いにストレスを感じない介護をするためには

認知症の方の介護は肉体的・精神的にキツいことが多く、ストレスを抱え込みがちです。そのため、無理のない程度で介護に取り組むという考え方を持つ必要があるでしょう。介護は一人でやるものではなく、家族全員で支え合いながら行うことが理想です。

しかし、家庭の事情で分担が難しいという方も多いでしょう。そんな時は悩む前に介護サービスの利用をおすすめします。

上手に介護サービスを活用することで、仕事や家事との両立をはかることが可能になります。また、家族に面倒を見てもらうことに不安やストレスを感じている方もおり、介護サービスの利用で不安がなくなり安心感を得られる場合もあります。お互いにストレスを感じさせない介護を実現させるためにも、介護サービスの活用も考えておくと良いでしょう。

岡田慎一郎

この記事の監修

岡田慎一郎

理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員

身体障害者、高齢者施設に勤務。古武術の身体運用を参考にした「古武術介護」が反響を呼ぶ。近年は介護、医療、リハビリ、消防・救命・育児支援・教育・スポーツなど、幅広い分野で身体を通した発想と実践を展開させ、多岐にわたる活動を国内外で行う。『あらゆる状況に対応できる シンプル身体介助術』(医学書院)など著書、DVD、通信講座など多数。

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