洞爺温泉病院の口コミ・評判　うらたひび（女性/80代）

脳出血の後遺症で夫の介護施設を選ぶことになった時、急性期の病院から薦められた。プロが薦めるんだから迷うことはない、という息子の意見で入所したが、国立公園を見下ろす景色や入浴が温泉である、という物理的な好感はもちろんだが 何よりも気分が安らぐのがその施設で働くすべての従業員の態度である。緩和ケアを併設している環境のせいか専門の職員達はもちろんのこと、お掃除をする方から売店の方事務の方、すべてが優しいのである。入って８ヶ月になるが 介護をする立場の家族として寂しいと感じたことがない。家庭に置いていたらやってあげたいことば全部言ってちょうだい、出来る限りのことはサポートするから、となにひとつ隠し立てすることなく やって欲しい介護をみんなで助けてくれる。家族の中心だった夫に頼れない生活の今、裏表なく患者のことも家族のことも支えてくれる今の施設に巡り会ったことを感謝している。遠いことがネックであるが その事を理解している病院では家族のために送迎バスを出しているので居眠りしながらでも通っていられる。

クリスマス会、や秋の採り入れ祭のようなイベントは次々と行われるが、夫が青春時代を過ごした頃の歌謡曲の白黒写真の演芸会をやってくれた時には その心が通じたのか意識の薄い夫が涙を流していた。景色のとても良い場所にあるために 外で食べたり飲んだりするイベントもやってくれるが胃ろうをしている夫には関係のないこと、と言いたいところだが スポンジに付けた食物で匂いを感じさせたり その匂いで嬉しそうな顔をする夫を見て喜んでくれたり家族だったらやってあげたい、ということが先に先に行われている。プロの先生が薦めた意味も、奥さんをここで見送った先輩が「お薦めだよ、普通の病院じゃないよ。」と言った意味もよく分かります。信頼して置いておける、ということが家族にとってどれほどストレスなく安らぎになっているか 時間が経つほどに分かってきます。時間に制限がなく いつまでも置いて貰えるもの有り難いです。

個室に３０日入っていて１４万円代です。年金生活では心配で始めは４人部屋と思ったのですが 急性期病院に入っていた時の金額に比べてかなりお安かったので 音楽を聴かせたり話しかけたりする刺激が気を遣わずにできるよう、個室にしました。長時間いても大勢で訪ねていても 個室の置かれているテレビを付けっぱなしにしていても自由だったり どんな人生を送った人なのかを知ると介護をする人間達も親しみを感じるから、と言われ部屋の周りにはたくさんの夫の若き日の写真が貼ってあります。まるで終の棲家なんだな、と実感するこの頃です。支払はカードでよいので お金を持っていなくても日にちがくれば忘れずに払うことができるのも便利です。仕事の都合で息子達は日曜日にしか訪ねられないのですが 家族で食事をするつもりになっていつもピクニックのようなお弁当を持ち込み 胃ろうの夫を中心に食事会です。自由があって助かっています。

飲み込む力がどうなっているか、をＶＦでちゃんと調べて貰ったので 知らずに家で介護をしていたら流動食でも与えて肺炎を起こしそうなところでした。胃癌で胃がないので 急性期の病院では経鼻栄養しか方法がない、と言われていたのですが 今の病院で食道に開ける手術をし胃ろうのような栄養の与え方をして貰っているので これも本人にとっては負担が軽くなっているそうです。この手術はまだ保険適用になって日が浅く やってくれるところも少ないそうなのでよいご縁があった、と思っています。本当は嚥下訓練をして貰えるかな、という期待があって入所したのですがそれどころではなく常に唾液が肺に流れているそうなので、口腔ケアをして貰いながら食道からの栄養で 一日でも長く生きて貰うだけのようです。でもその願いに向かって努力をしてくれていると思い、感謝しながら通っているのが現実です。

前にも書きましたがとにかくスタッフ全員が優しくて イヤな思いをしたことがありません。看護師長さんが笑っていたけれど自分のところは個室のため入って来やすいらしく 看護師さん、介護士さん、療法士さん、介護助手さんが仕事に来たときにそのまま話込んだり笑ったりして行く人も多く、そんな会話の雰囲気も寝ている夫には刺激になっているのでは、と思っています。自分が夫に話しかけるだけだったら限度があるけれど 他人と私が会話をしているのを聞いている時にはまるで分かっているような表情になるのです。最後まで耳は聞こえるからね、と言われているので歌を歌ったり話かけたり大忙しです。周りから優しい態度で接して貰えるので 自分も夫に優しくできるのだろう、と想像しています。家でもし孤立したり、介護疲れが起きたりしていたら とても今のような気分で話しかけたりできないだろう、と思っています。面会にくる夫の同級生なども「自分はここに入る。」と宣言していますが残念ながら介護４と５のレベルじゃないと入れません。

昼よりは少ない体制になるけれど 看護師も常にいるので安心して任せています。２４時間面会ＯＫなので本当はいつ行っていてもよいそうですが それではこちらの体が保たないので日中の５時間くらいを一緒に過ごしています。昼間みているだけでは分からない 夜の様子なども「何時まで起きていた。」とか「痰が多くてよく寝ていないから昼に寝るかも知れない。」とか伝えて貰えるので 昼に寝ていても安心していられます。また、担当者会議という院長、看護師、療法士、栄養士、薬剤師、など夫に関わっている人間みんなのチームに家族も入れてくれ 数ヶ月に一度会議があるのでその時に全体の様子をよく知ることができたりあるいはこちらから要望を出すことが出来たりします。看護師さんは大病院を定年になった感じ、という人が多いのですが 何事にものんびりとおおらかでいてくれた方がピリピリと若い看護師さんよりも安心です。年配の人なら苛つくということもないようなので。

自分で歩き回れるような状態ではないので元気だったら物足りない環境かも知れません。国立公園を真下にみてきれいな空気や景色の中では買い物などの楽しみはありません。また最寄りの駅からのアクセスもタクシーしかないのですが 看病や面会に通う家族にとっては送迎バスに乗って面会に通えるので言うことはありません。一時間半の送迎バスで寝てしまうことが多く、運転せずに通えると分かっていれば前の晩に無理をして遅くまで起きていても大丈夫なのです。寒い冬の時期を除き、なんと言っても空気のよい場所なので車いすで散歩をさせると本人も家族もゆったりできます。散歩をしながら見せる景色はわざわざ遠くから旅行で観光客が見に来る景色そのものなので いつか夫がいなくなった時にもこの景色を見れば懐かしく思えるのだろう、と自分に言い聞かせています。国立公園のためずっと変わらずにいれくれるだろう景色は この先きっと私を支えてくれるだろう、と期待しています。

夫を入所させて８ヶ月の自分に取っては何の問題もない、不足もない施設なのですが５年、６年、あるいは１０年と面会に通っている方々に言わせるとレベルが下がったのだそうです。前の院長さんはそれはそれは一生懸命やって下さる方でまさに「まるで病院じゃないよ。」という感じだったらしいのですが、娘婿さんに代替わりしてから ある程度経営のことも見直すようになった、ということでしょうか？たしかに１２人もいる、という送迎バスの運転手さんを初め働いている人達の数は半端ありません。その人達がみんなニコニコを優しく接してくれる、ということはどれほど経費がかかっているのだろうか、と素人ながらに心配してしまうほどです。私が心配しても始まらないのですが 昔を知らない自分に取っては今の場所で一日でも長く 夫が命を長らえてくれることを祈るのみです。