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認知症に対応できる介護施設の選び方を教えてください

認知症の母の介護のために施設入居を考えています。認知症対応可の施設の探し方がわかりません。また実際に受け入れてくれるのか、という不安もあります。探し方を教えてください!

Aまずは施設の種類を知ったうえで早めに探しはじめましょう。本人と一緒に見学をすることも大切です。

「介護施設」と一言で言っても種類はさまざまです。まずは施設の種類と特性を把握しましょう。なお、見学は本人と一緒にすることをおすすめします。

平栗 潤一
平栗 潤一
一般社団法人 日本介護協会 理事長

厚生労働省が発表している「高齢社会白書」によると、介護保険制度における要介護もしくは要支援の認定を受けている方は、2016年度末で618万7,000人となっています。そのなかで、介護が必要になった原因のトップに認知症があります。

認知症は誰しも発症する可能性があり、症状が進行していくに連れて自宅で介護することが困難になるケースも見られます。そんなとき選択肢に挙がるのは介護施設への入所です。

認知症に対応している施設は数多くありますが、選び始めたばかりの時期は選び方の基準がよく分からないこともあるでしょう。選び方のポイントやタイミング、施設ごとの特徴、準備しておきたいことなど、介護施設の選び方について詳しく解説します。

認知症の方の介護施設探しは早めがおすすめ

認知症は、ある日いきなり進行するものではなく、徐々に症状が進んでいくことが特徴です。状況によっては、半年から1年ほどで進行してしまうケースもあり、この短期間では情報収集が間に合わなくなる恐れも出てしまいます。このため、認知症の症状が出始めたら、早いうちから施設探しだけでも始めておきましょう。早めに施設を探し始めると、次のようなメリットがあります。

ご本人の意向も取り入れることができる

認知症と診断されても、軽度であれば意思疎通が可能であり、要介護者ご本人がどのような生活を送りたいのかを聞けます。できるだけ長く自宅で過ごしたいのか、施設での生活を視野に入れても問題ないのかなど、早いうちならば意向を取り入れることが可能です。

その結果、ご本人が望む生活をできる限り叶えられる可能性も大きくなります。

ご本人の負担を軽減することができる

症状が進行すると、新しい生活に慣れるのに時間がかかるため、ご本人にかかる負担が大きくなります。症状が軽いうちに施設へ入所することで、適応力も高いために施設での生活に早めに馴染めるのです。

認知症の検査の1つに、側頭葉機能を確かめるMMSE(Mini-Mental State Examination ミニメンタルステート検査)があります。1975年にアメリカで開発され、2006年に日本版が作成されました。この検査では、次のような質問事項があります。

  • 日付や季節
  • 病院名や、病院の所在地、今いる階数
  • 桜・猫・電車の3つを言う
  • 100から7を引く計算を5回繰り返す
  • 再度、桜・猫・電車を言う
  • 時計や鉛筆を見せ、何かと質問する
  • 「みんなで、力を合わせて綱を引きます」と繰り返し言う
  • 3段階命令をする「右手にこの紙をもってください」「それを半分に折りたたんでください」「それを私に渡してください」
  • 「右手を挙げなさい」と書かれている文章を読み、その通りに動作を行う
  • 文章を書く
  • 図形を書く

これらの設問事項にそれぞれ得点がついており、30点満点中10点台までであれば、施設での生活に慣れることができるとされています。しかし、10点未満の方は、生活に慣れるまでに時間がかかるほか、対応に困ることも増えてくるのです。このことからも、軽度の段階で施設へ入所する重要性が見えてきます。

家族の負担も軽減することができる

ご本人の判断能力が下がってくると、ご家族が施設入所を判断することになります。このとき、本当にご本人の意向と合っていたのか悩んでしまったり、この判断は間違っていたかも知れないと後悔したりするかも知れません。

介護を長期にわたって続けると疲労が溜まるうえに、さらに施設を探すとなると負担は大変なものです。早めに検討を始めることで、精神的に余裕を持って探せます。

施設側もご本人に早く慣れることができる

同じ声かけをしても、受け止める側の心境によって捉え方は変わってくるものです。早い段階で施設へ入所すると、施設側も早くからご本人の性格や行動の傾向などを把握でき、個々にマッチした対応をしてもらえます。

要介護認定を受けるまでには時間がかかる

介護施設への入所を含めた介護保険サービスを受けるためには、要介護認定を受ける必要があります。施設によっては、入所基準を設けているところもあり、基準を満たしていないと入所できない恐れがあるのです。

このため、入所を検討するときは早めに要介護認定の申請をすることが大切です。認定を受けるまでの流れを簡単にご説明します。

要介護認定の申請をする

まずはお住まいの自治体の窓口で、要介護認定の申請をします。必要なものは、申請書や保険証などです。事情でご本人が申請できない場合は、家族や自治体の職員が代行することもできます。

認定調査を受ける

申請のあと、認定調査がなされます。調査は、自治体の職員や自治体から委託を受けたケアマネジャーなどが訪問し、ご本人の様子やご家族の状況などについて質問するものです。

概況調査、基本調査、特記事項に分かれ、基本調査は身体機能・起居機能、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会性への機能、過去14日間で受けた特別な治療などを確認します。

このほかに、主治医の意見書(主治医がいない場合は、自治体から医師を紹介する)を作成してもらい、判定の材料になるのはコンピュータによる一次判定、介護認定審査会による二次判定の2つです。

結果が通知される

申請後、30日以内に要介護度が認定され、「要介護1~5」「要支援1、2」「非該当(自立)」のいずれかの結果が通知されます。この期間内に認定ができない場合は、自治体はご本人に対して延期通知を発送し、認定にかかる期間及び理由を伝えることもあります。

要介護に認定されると、介護保険サービスを利用することが可能です。また、介護予防サービス・非該当の場合は地域支援事業を利用できます。もし結果に納得がいかない場合は、役所へ相談しましょう。判定結果が変わる可能性もあります。

認定結果には有効期間があり、期間を過ぎるとサービスを受けることができません。更新の申請は、有効期間の満了日から数えて60日前から手続きできますので、介護サービスを継続して受けたい場合は忘れずに手続きしましょう。

認定前に介護サービスを利用すると、自己負担額が増える場合も

急激に症状が進んだり、やむを得ない事情があったりする場合などは、要介護認定の結果が出る前にサービスの利用が必要になる場合があります。この場合、介護認定を申請するときに地域包括支援センターへ相談しましょう。地域包括支援センターが状況を踏まえたうえで、適したプランを作成してくれます。

ただし要介護度が分からないので、介護保険で受けられる限度額が分からず、後に認定された介護度によっては限度額を超えてしまうケースが考えられます。

要介護認定が下りれば、効力は申請された日までさかのぼれますので、限度額以内に収まっている分については保険給付の対象となります。限度額を超えた分は全額自己負担となるため、十分な打ち合わせが必要です。

想定していたよりも、要介護度の認定が低かった場合には、自己負担額が高くなる可能性もあることを覚えておきたいものです。

要介護度によって認知症の方が入居できる施設を把握する

認知症の方が入居する施設は、要介護度によって選択肢が変わります。施設を検討する際には、要介護度に合った施設を選ばなくてはいけません。認知症に対応できる主な施設についてご紹介します。

特別養護老人ホーム

「特養」と呼称されることも多い施設で、介護保険施設の1つです。公的な施設であるため、民間よりも低い料金で利用できます。

特養を利用できるのは、在宅での生活が難しい、要介護3以上の高齢者です。特例として、要介護1・2の方が利用することもありますが、認知症で日常生活に支障をきたしていることが条件とされます。

特養で提供されるサービスは、食事・入浴・排せつ・医師や看護職員による健康管理・リハビリ・掃除や洗濯などの生活支援・レクリエーションおよびイベント・看取りなどがあります。

最近は、少人数でのケアが基本である「ユニット型」の施設が増えており、大きな集団生活が苦手な傾向にある認知症の方でも過ごしやすい環境が整っているところが多くなっています。

特養は、部屋の空きはあっても、介護スタッフが不足しているために受け入れを制限せざるを得ない施設も多く、介護業界全体の課題となっています。

グループホーム

「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれる介護形態です。65歳以上で要支援2もしくは要介護1以上の認定を受け、なおかつ医師の診断書が交付された、認知症を患っている高齢者の方が利用できる施設です。

グループホームには、障がいを持つ方のための施設もあり、認知症の方向けの施設と利用対象が異なります。このため、利用を検討したいグループホームが認知症の方向けのホームかどうか、事前に確認しておきましょう。

グループホームでは、ユニットと呼ばれるグループごとで共同生活をします。1ユニットは5人から9人で構成され、1施設で最大2ユニットと規定があります。これは、認知症の特性上、大人数の施設では落ち着いた生活ができなくなる恐れがあり、症状を悪化させてしまう可能性もあるためです。

日々の生活では、料理・掃除・洗濯など、ユニット内で役割分担をして、基本的には(自立した生活が送れるように)自分の力を生かしながら、ときには職員の方の手助けも受けつつ共同生活をする場所です。

地域密着型の施設であるため、施設がある自治体の住民を入所対象としています。医師や看護師の配置義務はありませんが、近年では「医療行為に対応できるよう看護師を配置する」「介護スタッフが痰の吸引や胃ろうの注入などの研修を受ける」などの工夫を凝らしている施設も増えています。

有料老人ホーム

高齢者向け住宅に分類される施設です。有料老人ホームは、介護付き・住宅型・健康型に分けられ、認知症の方は介護付き有料老人ホームを利用するのが一般的です。

介護専用型の有料老人ホームでは、要介護1~5の方が入所可能ですが、それ以外の型では施設によって要介護度についての入所条件が異なります。

介護付き有料老人ホームは、介護保険制度上で「特定施設入居者生活介護」の指定を受けており、職員の数や設備基準、運営基準などが細かく定められています。

施設によっては、職員の人員配置基準を上回り、手厚い対応しているところもありますが、人件費が追加で請求されることもあるため、施設ごとの体制を詳しく調べる必要があります。

サービス付き高齢者住宅

「サ高住」と呼ばれる住宅で、民間企業が運営しているバリアフリー対応の賃貸住宅を指します。主な入居者は、自立しているか、もしくは介護度が軽度な高齢者です。「一般型」と「介護型」の2種類があり、介護型では認知症の方向けのサ高住もみられるようになってきました。

日中は、医療・介護系の有資格者や生活相談員などが常駐しており、入居されている方の安否確認や生活支援サービスを受けられます。

サ高住は、生活の自由度が高く、住宅の供給量も多いことがメリットですが、認知症の方が利用できる介護型かどうか、また要介護度に対応しているかを確認するのが重要なポイントです。

認知症の方の介護施設を選ぶポイント

認知症の方が利用できる介護施設をご紹介してきました。では実際に施設を選ぶ基準やポイントはどのような点を重視すべきなのでしょうか。

利用目的をはっきりさせておく

介護施設は、目的によって適している施設が異なります。まずは「どのような目的で利用するのか」「選ぶ基準は何なのか」を明らかにしておかなくてはいけません。

要介護度が上がり、リハビリや介護を受けたいのならば、特養への入所を検討される方が多いでしょう。軽度であるが、家族の負担を軽減する目的であれば、グループホームや有料老人ホームが選択肢に上がってくるかと思います。自宅の近くなどに、介護に対応したサ高住があれば、そちらを検討する可能性もあるでしょう。

要介護度に合っているかを把握する

同じ形態でも、施設によって入所可能としている要介護度も異なるため、個々の施設の概要を把握しておく必要があります。医療ケアにどの程度対応できるか、職員同士の連携体制が整っているかなども、事前に確かめておきたい点です。

できるだけご本人と一緒に施設見学へ行く

施設で実際に生活されるのは、要介護者ご本人ですので、できるだけ一緒に施設の見学をしたいものです。

「今までのご本人の生活スタイルがどのくらい継続できるのか」「職員はどのような対応をするのか」「既に入居されている方の様子はどうなのか」などを自分の目で見つつ、不安な点があれば積極的に職員の方に質問しましょう。

ご本人の希望に沿って適した施設を選ぶ

介護施設を選ぶうえで最も重視すべき点は「ご本人の希望」です。少しでも長く自宅で過ごしたい気持ちを誰もが持っています。

前向きな気持ちを持ち続けるのは、簡単ではありません。しかし、ご本人が少しでも快適に過ごせるように工夫されているのが、認知症対応の介護施設です。

また体験入所などを実施している介護施設もありますので、ご本人の希望に加えてご本人の体調やご家族の意向、要介護度に応じた対応の有無などを加味しながら、施設を訪れてみてはいかがでしょうか。

平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

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