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病院での認知症の検査内容について、検査費用やかかるべき医療機関を教えてください

2019年末ごろから父の物忘れの回数が多くなり、一度専門機関で診察してもらおうと考えています。病院では実際にどんな検査がなされるのでしょうか。また検査費用はいくらほどかかるのでしょうか。目安を教えてください!

A病院では身体検査や心理学検査などがあります。費用は1回数千円~2万円程度を予想しておきましょう。

認知症の検査には身体と心理の両方が関わっています。費用は一度の診療で数千円から数万円程度ですが、認知症の検査を扱っている診療科にもよりますので、まずはかかりつけ医に相談してみてください。

平栗 潤一
平栗 潤一
一般社団法人 日本介護協会 理事長

認知症を疑う症状が出たら「何科を受診すればいいのか」「どのような検査を受けるのか」事前に知っておくことで不安を解消することができます。認知症の検査について詳しくご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

認知症はどの病院の何科に行くべき?

現在、「認知症科」という診療科はないため、認知症の検査を受けるには、神経内科・心療内科・精神科・脳神経外科(脳神経内科)・内科・老年科・もの忘れ外来・認知症専門クリニックなどを受診するのが一般的です。

認知症のほかに内科や外科の疾患を持っている方では、老人医療センターなどの専門機関を受診することもあります。もしくは、自治体の保健所・役所の高齢者相談窓口、地域包括支援センターなどで相談してみるのも1つの方法です。

自宅の近くに該当診療科を扱っている病院がないか、もしくはかかりつけ医がいる場合には、まずかかりつけ医に相談のうえで紹介してもらうのもいいでしょう。

最初から大きな病院を受診するのは避けましょう

総合病院や大学病院など、病床数が400床以上ある大きな病院(特定機能病院)では、地域のかかりつけ医などからの紹介状がないと特別料金がかかります。

医療機関は、それぞれ役割を持っており、地域にある中小の病院や診療所は地域医療の窓口の機能があります。地域住民の身近な病気やケガに対応するとともに、専門性の高い治療や高度な医療が必要な場合に大きな病院へ紹介し、医療の橋渡しをします。

反対に、大きな病院での治療が終わり、回復期に入ったときには、大きな病院から地域の病院へ逆紹介をし、引き続き経過観察を行います。

軽度な症状で最初から大きな病院を受診することで、緊急性の高い治療を受けなくてはいけない人の処置が遅れてしまうのを避けないといけません。効率的に医療を提供してもらうために、必要があれば先に地域の病院で紹介状を書いてもらい、そのうえで大きな病院を受診しましょう。

医療機関での認知症の検査方法

認知症の検査方法

受診する医療機関が決まり、認知症の検査を受けることになったとき、どのような流れで進められるのでしょうか。それぞれの項目について詳しくご説明します。

面談

ご本人およびご家族と医師が面談し、現在治療中の病気や今までにかかった病気などを伝えます。認知症の診察で、診断を出す際に面談は重要な要素です。ご本人と医師が直接言葉を交わし、会話の様子や話の理解度、ご本人の記憶力などを見極めていきます。

認知症の症状がみられる場合は、ご本人の話だけでは現状を把握することが困難なため、ご家族からの情報を伝えることも大切です。ご家族からは、次のような項目を伝えましょう。

  • もの忘れの程度(普段の生活に支障をきたしているか)
  • 最初の異変はどのようなタイミングで見られるようになったか(気づいたら出ていたのか、ある日突然だったのかなど)
  • 直近半年間での、症状の進み具合
  • 服薬中の薬があれば、その内容(お薬手帳を持参すると確実です)
  • そのほか、医師に質問したいことや不安なことなど

医師を前にして話すことは、多少なりとも緊張してしまうものです。また、ご本人の気持ちが医師へ向いていないとき、無口になる・自分は認知症ではないと言うなどの言動が起こりがちです。感情が爆発してしまうと、面談どころではなくなってしまう恐れもあり、トラブルが発生してしまってはその後の検査や治療にも支障が出てしまいます。

できれば、医師に伝えたいことを前もってメモに書き留め、当日持参するとスムーズに伝えられます。

一般的身体検査

他の疾患にかかっている可能性がないかどうか、また認知症を引き起こす原因となる病気を発症しているかどうなどを調べるため、一般的に病院で行われる検査も受ける必要があります。尿検査、血液検査、内分泌検査、感染症検査、心電図検査、胸部X線撮影などを受け、今後の治療方針を定める参考材料とされます。

血液検査には、認知症の前段階となる「軽度認知障害(MCI)」を判定する「MCIスクリーニング検査」という検査もあります。この検査は、認知症の予防につなげるために、認知症検査の場でだけでなく、健康診断のオプションとしても導入されているのです。

認知症検査

認知症検査は、問診による神経心理学検査と、脳画像検査に分けられます。

神経心理学検査

簡単な質問や作業をすることで行う検査です。この検査は、一定以下の点数を記録すると、認知症の疑いがあると判定されます。検査はいくつかの種類がありますが、次の2つが代表的なものです。

長谷川式認知症スケール

この検査は、日本で一番良く使われており、1974年に精神科医の長谷川和夫先生が開発されたものです。医師が効率を上げながら公平に認知機能の低下を診断することが目的であり、1991年の一部改訂を経て「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」として活用されています。

検査内容は、次の通りです。

  • 自分の年齢
  • 検査の日時(何年何月何日の何曜日なのか)
  • 今いる場所
  • 「桜・猫・電車」または「梅・犬・自動車」のいずれかを言う
  • 100から7を引く(一度正解した場合のみ、もう一度質問する)
  • 「6-8-2」「3-5-2-9」を逆から言う(最初の問題に正解した場合のみ、もう一つの問題を出す)
  • 先ほど覚えた言葉(桜・猫・電車もしくは梅・犬・自動車)をもう一度言う
  • 5つの品物(無関係に集めたもの)を順に見せ、名前を覚えてもらう
  • 野菜の名前をできる限り多く言ってもらう

これらの各検査に点数がついており、30点満点中20点以下だった場合は認知症の疑いがあります。ただし、確定診断ではありませんので、さらに詳しい検査を受ける必要があります。

MMSE(認知症スクリーニング検査)

MMSEは「Mini Mental State Examination」(ミニメンタルステート検査)の略であり、先述した長谷川式と並んで、日本で広く活用されている認知症検査です。

1975年に、アメリカのフォルスタイン夫妻が作成し、2006年に杉下守弘先生が日本語版を作成されました。認知症のなかでも、特にアルツハイマー型認知症の疑いが見られるときに活用されます。

ただし、罹患している可能性があるかどうかを調べるスクリーニング検査であるため、実際に認知症と判断できる検査ではありません。確定診断をするためには、脳検査、問診などをする必要があります。

MMSEの検査内容は、長谷川式とよく似ており、次の通りです。

  • 検査をしている日にち、季節
  • 病院の名前、所在地
  • 猫・電車と繰り返させる
  • 100から順に7を引く(5回まで)
  • もう一度桜・猫・電車と復唱してもらう
  • 時計と鉛筆を見せながら、物品名を言ってもらう
  • 「みんなで、力を合わせて綱を引きます」と繰り返し言ってもらう
  • 「右手にこの紙を持ってください」「それを半分に折りたたんでください」
  • 「それを私に渡してください」と、3つ行なってもらう
  • 「右手を上げなさい」と書かれた文章を読み、その指示に従ってもらう
  • 文章を書いてもらう
  • 図形を書いてもらう

この検査も、設問ごとに点数が決まっており、30点満点中21点以下の場合は認知症の疑いが強くなります。

MMSEについては下記の記事にて詳しく解説しています。

脳画像検査

CTMRIなどの画像検査をして、脳の状態を調べることもあります。脳の状態をより詳しく把握するために、SPECT(脳血流シンチグラフィ)PET(ポジトロン断層撮影)などの画像撮影によって調べます。これらの画像検査では、脳の萎縮状態を確認することができ、認知症なのかそれ以外の病気なのかが診断することができます。特にSPECTは、脳の血流が画像化されることで、病状をより確実に目視することが可能です。

認知症ではないが認知症のような症状が出る病気として、硬膜外血腫(転倒などで頭を強打してしまうと、脳の一部に血が溜まることがある)や水頭症(脳の髄液が循環障害を起こす)などがあります。画像検査を受けることで、これらの症状を発見し、適切な処置を受けられるのです。

認知症の検査問題とは

認知症の検査をするうえで気を付けたいのは、検査結果が即認知症を診断することにはならない点です。高齢者は、心身ともに不安定になることがあり、体調や気分によって結果が変わってきます。いくつかの検査を組み合わせて、総合的に診断する必要があります。

また、ご本人が認知症の自覚がないため、検査機関での検査に行きたがらないケースも多く見られます。無理に連れていこうとすると、余計に緊張してしまい、悪循環に陥る恐れもあります。

そんなときは、持病の診察の延長でそのまま検査する、かかりつけの先生に話をしてもらう、健康診断だと伝えて検査する、家族の検査に付き添ってもらい、一緒に受けようと話すなどの対処法をとってみてはいかがでしょうか。

一度目の診断に納得がいかない場合は、セカンドオピニオンを受けることで別の医師の診断を仰ぐこともできます。セカンドオピニオンは、診察を受けるご本人とご家族が持つ権利ですので、診断内容次第で検討してみることが可能です。

認知症検査の費用とは

認知症検査を受ける際には、健康保険が適用されます。病院によって費用は異なります。健康保険の負担割合によっても自己負担額が変わってきますが、長谷川式スケールやMMSEは比較的安い費用で受けられます。その他のCT、MRI、血液検査などは、比較的費用が高くなる傾向がみられます。

これらを全て組み合わせたとき、かかる費用は数千円から2万円以内とみておくと良いでしょう。追加の検査が必要になったら、この費用にプラスされます。

認知症検査を受ける際の家族の心構え

検査を受けることは、ご本人・ご家族双方にとって大きなストレスになります。いざ認知症と診断されてからの生活、社会からの視線、認知症に対するマイナスイメージなど、不安な要素もたくさんあることでしょう。

大切なのは、正しい知識や情報を得て前向きに考えることです。できれば、同じ病を患った家族を持つ「認知症家族の会」のような集まりに繋がりが持てると、悩みを共有できたり相談し合ったりすることをお勧めします。

また、検査の当日だけでなく、後日検査結果を聞きに行くときは、なるべく複数の家族と行くようにしたいものです。結果を聞いたときに頭が真っ白になり、その後受けた医師からの説明を全く覚えていないケースが少なくないためです。覚悟はしていても、現実を目の当たりにするとやはりショックを隠し切れなくなってしまうのです。

普段の様子を把握しておく

先述したように、ご本人の様子を確実に医師に伝えるには、ご家族からの情報が欠かせません。このため、検査を受けるまでにご本人の様子を紙などに書き留めておくことを心がけましょう。

ご家族ならではの情報として、会話のやり取りの内容を伝えることも、医師にとって大変有用なものです。認知症の傾向として、理解力・判断力の低下や、周囲と話が噛み合わない、言語の理解や表現が困難になる「失語」、暴言などが現れることも多く、これらの症状は、普段の様子を把握している家族だからこそ気づきやすいと言えます。

離れて暮らしている家族では、細かい会話まではなかなか気づきにくいかも知れませんが、少しでも気になる発言があれば覚えておくと良いでしょう。

認知症は早期発見が大切

認知症は完治することはなく、少しずつ進行していくものです。初期の段階であれば、ご本人は身の回りのことをご自身で行い、意思も確認できますし、ご家族の負担もあまり大きくなっていません。

しかし、進行していくにつれて、常に誰かのお世話が必要になってくると、ご家族の負担は相当なものです。早期発見をし、適切な治療を行っていくことで、認知症の進行を遅らせることができるのです。

少しでも気になる行動や言動が見られたら、早い段階で医師の診察や検査を受けましょう。そうすることで、ご本人もご家族も前向きな気持ちで生活することができるでしょう。

平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

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