Q

在宅介護はいつまで続きますか? ストレスがたまり限界です

現在、在宅介護により母を介護しておりますが、疲れが溜まってしまい限界が近い状態にあります。身の回りのほとんどを介助しなければいけない状態で、自分の時間を作る余裕はなく、すぐさま介護の日々から逃げ出したいと思えるほどなのですが、この生活をいつまで続けなければならないのでしょうか?

A在宅介護は長くて10年以上続きますが、限界の場合は施設やサービスの利用を考えましょう。

介護が必要となる平均期間は、1人あたり10年前後です。介護を受ける方が男性か女性かによっても異なり、比較的寿命が長い女性のほうがその期間も長くなっています。在宅介護の場合は5年ほどの方が多く、なかには10年続けられる方もいらっしゃいます。ただ、多くのご家族は5年経過したころに施設への入居を検討されるようです。

松本健史
松本健史
合同会社松本リハビリ研究所 所長

介護真っ最中で疲弊してきている方は「あとどのくらい介護を続けなければいけないのか?」と悩んでいらっしゃることでしょう。介護を受ける方によって状況や健康状態は異なるので、介護が必要な期間もそれぞれ違ってきます。

ここでは介護の期間に注目し、自宅・施設入居を通してどのくらいの介護期間が必要となるのか、そのうち在宅介護期間はどのくらいなのか、さらには介護うつを避ける方法など、在宅介護におけるさまざまな悩みについて紹介します。

介護の平均期間は?

まずは介護の平均期間をご紹介していきましょう。介護の平均期間は男女によって異なります。男性は8.73年、女性は12.06年となっており、平均寿命が高い女性の方がやや期間が長くなる傾向にあります。

ただこの期間はあくまでも平均にしかすぎません。もっと短い期間で介護が終わってしまう場合もあれば、もっと長い期間を必要とする場合もあるのです。

この介護の平均期間は厚生労働省が発表した健康寿命データ日本人の平均寿命を用いることで、ある程度把握することができるようになっています。

参考:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について

健康寿命と平均寿命から計算する要介護の期間

健康寿命は、健康上の問題を抱えることなく日常生活を送れる期間を指しています。男性は72.68歳、女性は75.38歳になっており、平均寿命から健康寿命を引くことで、介護のおおよその平均期間が分かるということです。

  • 男性の場合:平均寿命81.41歳 - 健康寿命72.68歳=介護平均期間8.73年
  • 女性の場合:平均寿命87.45歳 - 健康寿命75.38歳=介護平均期間12.06年
参考:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について

在宅介護の期間は?

在宅介護の平均期間は『2021年度 生命保険に関する全国実態調査』(生命保険文化センター) によると5年1カ月となっています。先ほど取り上げた介護の平均期間(男性8.73年、女性12.06年)と比べると全期間の半分程度にあたります。ただしこちらもあくまでも平均値なので、なかには6カ月未満で終わってしまうこともあるようです。

全国実態調査によると4~10年未満で在宅介護の終わりを決めた人が多く、長く在宅介護を続けたいと思っていても、多くの人が最後まで自宅で介護ができなかったという現状となっています。毎日のように介護の負担がのしかかる生活が何年も続いてしまえば、いつか限界が来るのは当たり前のことです。

在宅介護を取り巻く状況はその家庭ごとに違いますが、長い間在宅介護の負担がかかることで追いつめられ、悲しい事態をもたらすことは避けなければなりません。家族は、在宅介護で追いつめられる前に施設への入居を検討するなど、負担を軽くする方法を考えるべきだと言えます。

参考:生命保険文化センター『2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査

在宅介護にかかる費用は

続いては在宅介護の費用を詳しく見ていきましょう。在宅介護は月に平均4.8万円かかるとされています。一方で施設は1カ月に12.2万円かかり、およそ1.5倍の費用が必要です。

また在宅か施設かにかかわらず、介護費用の月額は要介護度が高くなるにつれ増加する傾向にあります。要介護1であれば全体で5.3万円程度だったものが、要介護2では6.6万円に。要介護3では9.2万円要介護4では9.7万円といったように増えていきます。要介護5では10.6万円で、要介護1の2倍です。この月額の平均費用に先ほど計算で求めた介護の平均期間をかけると、一人あたりの一生涯における介護費用が求められます。

ただ、歳を重ねるにつれて要介護度も上がるため、年々費用が上がることを忘れてはなりません。それを踏まえた上で計算していくと、600万円以上はかかるとされています。

参考:生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」

在宅介護から施設入居に切り替える目安は要介護3以上

肉体的にも精神的にも限界を迎えてしまいそうだと分かったら、介護施設への入居を検討しましょう。もちろん人それぞれで限界は違いますが、目安として在宅介護中に要介護度が3以上となれば負担も大きくなるので、施設入居を検討するタイミングといえます。

要介護3以上は、比較的安い価格で入居できる特別養護老人ホーム(※以後:特養)の入居対象になります。費用がないから諦めていた施設入居も、特養であれば叶うかもしれません。特養の費用が安いのは、公的機関だからです。

介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、民間施設になります。一方、公的機関である特養は国から補助金が出されているため、入居費用や月額利用料が安く抑えられるという仕組みです。

入居する際に一時的に必要となる入居一時金は、介護付き有料老人ホームであれば0~数億円、サービス付き高齢者向け住宅0~数十万円ですが、特養は0円で全くかかりません。加えて月額料金は介護付き有料老人ホームでは15~35万円、サービス付き高齢者向け住宅では10~30万円ですが、特養は6~15万円で利用できます。

入居一時金、月額料金どちらの費用を見ても安く抑えられるのは、嬉しいポイントだと言えるでしょう。

要介護2と3の違いについて

特養の入居条件になる要介護3ですが、要介護2の状態とどのような違いがあるのでしょうか。ここからは要介護2と3の違いについて解説していきます。

要介護2

要介護2は立ち上がりや歩行を自分でできないことが多く、日常的な生活において部分的に介助が必要である状態が当てはまります。例として挙げるならば、排泄や入浴は介助が必要だが、着替えは見守りをすれば可能だという状態です。

要介護3

これが要介護3になると立ち上がりや歩行が自力では困難となり、日常生活全般において全て介助が必要な状態になります。つまり排泄、入浴、着替えの全てに介助が必要であれば要介護3に当てはまります。また認知症を持ち日常生活に影響が出て対応が必要な場合も要介護3となることが多いです。

このような違いがあるので、要介護3の状態に近いと思ったら遠慮なく施設に相談してみるといいでしょう。ちなみにどの介護施設を利用する場合でも、介護の必要度を示す要介護認定がいります。

要介護2、3については下記の記事にて詳しく解説しています。

ただし限界点はひとそれぞれで違う

ただし施設入居に切り替えるタイミングが要介護3というのはあくまで目安です。実際のところ限界点は人によって違うため、可能な方は在宅介護を続けても問題ないでしょう。

介護を受けるご本人も、できれば家族から介護されたいと考えることが多いです。身近な存在が介護してくれるのと、見ず知らずの人から介護サービスを受けるのでは満足度も変わってくることでしょう。住み慣れた自宅での暮らしは高齢者本人にとって自由度の高い生活になるため、在宅介護の方が嬉しい傾向にあります。

一方で、施設へ入所したことで、本人がイキイキと過ごせるようになったというケースもよくあります。施設では健康的でおいしい食事を提供したり、さまざまなイベントを催したりと、利用者が満足できるような環境を整えているからです。また家庭内で気を遣うよりも、他人といるほうがかえって気が楽な性格の人もいます。

介護をする家族や自身の限界点を知ることと同時に、高齢者本人の意思を尊重することも大事だといえるでしょう。

介護する側の限界点においてはイライラして高齢者にきつく当たってしまう前に施設の入所を検討しましょう。要介護3に満たない場合は訪問介護サービスを利用するのも一つの手です。なるべく介護の負担を抱えることなく、自身が穏やかに生活できるようにすることが大切です。

在宅介護でストレスを感じる原因

では、在宅介護を続けているとなぜストレスを感じやすくなってしまうのでしょうか。原因を把握して改善につなげられるよう、こちらでは在宅介護でストレスを感じる原因を見ていきましょう。

睡眠不足

在宅介護をしていると、深夜のおむつ交換などで睡眠時間を確保できない状態が続くことになります。また認知症の人を介護している人の場合、夜中に起こされてしまう場合があります。

睡眠不足が続くと注意力の低下や抑うつなどを引き起こし、ストレスを助長させる恐れがあるので注意が必要です。

参考:e-ヘルスネット「健やかな眠りの意義

体を痛める

起床介助に始まり、立ち上がりの介助、食事の介助、被介護者を抱えて体を洗う入浴介助など、在宅介護には身体的な負担が生じるものが多いです。介護者は1日のなかで、被介助者の体を何度も持ち上げなければなりません。

そのため介護者の腰や膝には大きな負担がかかってしまいます。そこに前述した睡眠不足が重なるとさらに疲れが蓄積していってしまい、ストレスとなります。

精神的に追い込まれてしまう

介護に協力してくれる人がいなかったり、周りに相談できる人がいなかったりすると、介護者が全て一人で抱え込んでしまうことがあります。また介護者は実際の介助作業だけではなく、公的な手続きやケアマネジャーとのやりとり、家族たちへの連絡といったあらゆる仕事をこなさなければなりません。

そのような日々が続くといずれ人間関係に疲弊してしまうこともあります。また周りに協力してくれる人がいないと「なぜ自分だけが介護をしなくてはならないのか」という孤立感から、ストレスを抱きやすくなります。

自分の自由時間がなくなる

生活のリズムを被介護者にあわせなければいけなくなるため、介護する側のペースで暮らしづらくなります。また在宅介護をしている人のなかには、24時間介護者を見守らなければならない人もいるでしょう。そのような場合、ゆっくり休息をとったり、自分のために外出したりすることが難しくなるため、ストレスが溜まっていきます。

経済的な不安

在宅介護ではおむつや清拭剤といった消耗品のほか、介護用のベッドや車いすなど多くの介護用品が必要になることもあります。医療処置が必要な人を介護する場合は、さらに医療機器の費用や診療費を支払わなければなりません。

また介護をするために介護休暇を取得したり、場合によっては仕事自体を辞めたりしなければならない場合もあります。介護費用の増加、収入の減少が精神的なストレスにつながってしまいます。

認知症介護による疲れ

認知症の人の介護は、一般的な介護よりもストレスが生じやすくなります。

認知症の人の症状のなかには徘徊や失禁、被害妄想による介護者への暴言などさまざまなものがあり、介護者一人での対応が難しいことがあります。また認知症の人は急に外に出たり、夜中に起きて動き回ったりと、介護者の予想がつかない行動に出ることが少なくありません。

そうすると介護者は振り回されてしまい、精神的、身体的にかなりの負担がかかってしまいます。

介護うつを避ける方法について

超高齢社会となっている今、介護によるうつ病が増加傾向にあります。介護うつというのは周りの人のみならず本人さえも気づきにくいものです。一度発症してしまうと完治させるまでに多くの時間を要するので、親の介護に専念できる状態とはいえないでしょう。

介護うつは在宅介護による無理がたたって発症することがほとんどです。介護者が精神的、身体的に限界を感じていると、うつになってしまう可能性が非常に高まります。これからご紹介する予防法を身に付け、介護うつを未然に防ぎましょう。予防法に共通するポイントは周りに頼ることです。

介護施設入居を検討

1つ目の予防法は、介護施設の入居を検討することです。介護施設にはここでご紹介してきたように民間機関と公的機関の2種類がありますが、費用面の心配があれば公的機関の施設を選択しましょう。特に特別養護老人ホームは費用が安く収まりやすくおすすめです。その他の公的機関であるケアハウスも入居一時金を安く抑えられるので、結果的に民間施設の利用よりも安くなります。

一方の民間施設は基本的に料金が高いですが、入居対象が幅広い傾向になっています。要介護3に満たない場合でも入居できる施設があり、入居待ちの時間を介さずにすぐ入居できるところも多くなっています。

どちらがいいかは予算や高齢者の介護度といった各家庭の都合に合わせて決めると良いでしょう。

周りに相談する

高齢化が進む日本において介護における悩みを持つ方は多くいます。そんな方を支える場所として、多くの地域では「家族の会」「介護講習会」といった形で相談できる場所を設けています。その場には在宅介護での限界を感じる人も多く参加しているので、ぜひ定期的に参加してみて同じ悩みを持つ者同士で交流を図っていきましょう。

イライラを分かってもらえることで気分はスッキリしますし、具体的な解決策が見つかるかもしれません。開催情報を知りたい方は各市区町村の福祉課や地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。

ショートステイなどを活用する

長期的な入所を希望していないのであれば、ショートステイデイサービスホームヘルパーといったサービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか? これらはどれも時間や短期間における介助サービスとなっており、自身が自宅で家族の面倒を見ながらも、つらくなったときにだけ利用するといった形で在宅介護を進められます。

施設に入居し続けるよりも費用を抑えることができるので、施設入居をあきらめた方にも利用できる便利な存在です。在宅介護で気持ちがつらくなり悩んでいたら、ぜひ利用してみてください。

在宅介護における悩みはあらゆる方法で解決しよう

介護の必要性が高まる今、在宅介護を強いられる家庭が増えています。終わりの見えない介護に頭を悩ませる家族は多く、日々溜まっていくストレスに先行き不安に感じる人も少なくないことでしょう。

ご紹介してきたように介護期間は全体を通して10年ほどかかるものです。金銭的な負担もかかることから、できるだけ費用を安く収めようと在宅介護に励む人も多いでしょう。しかし無理がたたって介護する側の体調が崩れては、介護される側の人にとってもよくありません。何より、介護される側も家族の健康を願っているはずです。

介護する側、される側の双方が幸せになるために、在宅介護のストレスとうまく付き合っていくことが大切です。介護施設への入居、短期間介助サービスの利用に相談してみるなど、様々な策を取って自身も満足できる生活にしていきましょう。

松本健史

この記事の監修

松本健史

合同会社松本リハビリ研究所 所長

理学療法士。佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了。専門は生活期リハビリテーション。病院・デイサービス勤務後2014年合同会社松本リハビリ研究所設立。全国の老人ホーム、デイサービス、介護施設でリハビリ介護のアドバイザー、生活リハビリセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など活動中『転倒予防のすべてがわかる本 』(講談社)など著書多数。
YouTubeチャンネル「がんばらないリハビリ介護」/オンラインサロン「松リハLAB

豊富な施設からご予算などご要望に沿った施設をプロの入居相談員がご紹介します

老人ホーム探しは
介護のほんねにおまかせください!
おすすめの施設をピックアップしました。
無料入居相談室

お困りの方はいつでも
お気軽にご相談ください

お困りの方はいつでもお気軽にご相談ください

施設の探し方や介護に関するご質問など、プロの相談員が施設探しをサポート致します!

みなさんの介護の悩みや気になることを教えてください

集まった質問は今後の参考にさせていただきます!

質問を投稿する
介護スタートガイド

これから介護をはじめる方向け

初心者のための
介護スタートガイド

資料を無料ダウンロード

介護まるわかりガイド

公式SNSアカウントも更新中!

介護に役立つ選りすぐりの
最新ニュースをお届けします!

介護のほんね 老人ホーム探しなら
介護のほんね

入居相談員が無料でフルサポート!

0120-002718

営業時間:9:00〜18:00