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在宅介護はいつまで続きますか? ストレスがたまり限界です

現在、在宅介護により母を介護しておりますが、疲れが溜まってしまい限界が近い状態にあります。身の回りのほとんどを介助しなければいけない状態で、自分の時間を作る余裕はなく、すぐさま介護の日々から逃げ出したいと思えるほどなのですが、この生活をいつまで続けなければならないのでしょうか?

A在宅介護は長くて10年以上続きますが、限界の場合は施設やサービスの利用を考えましょう。

1人あたり必要となる介護の平均期間は10年前後です。この期間は介護を受ける人物が男性か女性かによって変わり、比較的寿命が長い女性の方がその期間も長くなっています。加えて在宅介護となると5年近い人が多く、なかには10年続けられる方もいますが、ほとんどの家族が5年経過したころに施設への入居を検討するようになっています。

松本健史
松本健史
合同会社松本リハビリ研究所 所長

介護真っ最中で疲弊してきている方は「あとどのくらい介護を続けなければいけないのか?」と悩んでいることでしょう。介護は高齢者によってそれぞれ健康状態が異なるので、必要な介護によって期間も違ってきます。

ここでは介護の期間に注目し、自宅・施設入居を通してどのくらいの介護期間が必要となるのか、そのうち在宅介護期間はどのくらいなのか、さらには介護うつを避ける方法など、在宅介護の期間におけるさまざまな悩みについて紹介します。

介護の平均期間は?

まずは介護の平均期間をご紹介してきましょう。介護の平均期間は男女によって異なります。男性は8.84年、女性は12.35年となっており、平均寿命が高い女性の方がやや期間が長くなる傾向にあります。

ただこの期間はあくまでも平均にしかすぎません。もっと短い期間で介護が終わってしまう場合もあれば、もっと長く期間を必要とする場合もあるのです。

この介護の平均期間というのは厚生労働省が発表した健康寿命データ日本人の平均寿命を用いることで、ある程度期間を把握することができるようになっています。

健康寿命と平均寿命から計算する要介護の期間

健康寿命というのは、健康上の問題を抱えることなく日常生活を送れる期間を指しています。男性は72.14歳、女性は74.79歳になっており、平均寿命から健康寿命を引くことで、介護のおおよその平均期間が分かるということです。

  • 男性の場合:平均寿命80.98歳 - 健康寿命72.14歳=介護平均期間8.84年
  • 女性の場合:平均寿命87.14歳 - 健康寿命74.79=介護平均期間12.35年

在宅介護にかかる費用は

続いては在宅介護の費用を詳しく見ていきましょう。在宅介護では月に平均3.4万円かかるとされています。この金額は家計経済研究所が発表した「在宅介護のお金と負担」のうちの「介護サービス以外の費用」から分かる結果で、在宅介護にてデイケア・デイサービス、ホームヘルパーといった介護サービスを利用していない方の平均費用になっています。

参考:家計経済研究所「在宅介護のお金とくらしについての調査」

ただし、この在宅介護の必要費用は要介護度が高くなると費用も高くなる傾向にあるのです。要介護1であれば全体で2.6万円程度だったものが、要介護2では3万円に。要介護3では3.5万円、要介護4では4.2万円といったように増えていきます。この月額の平均費用に先ほど計算で求めた介護の平均期間で、一人あたりの一生涯における介護費用が求められます。

ただ、歳を取るにつれて要介護度も上がるため、年々費用は掛かってくることを忘れてはなりません。それを踏まえた上で計算していくと、600万円以上はかかってしまうとされています。

しかし在宅介護の限界は早い

在宅介護における600万円という費用は老人ホームに入所して介護を受けるよりも圧倒的に安く収まるものではあります。しかしながら在宅介護は単に安いからという理由で続けられるものではないというのが現状です。

腰を痛めてしまう立ち上がりの介助、人によっては何時間もかかってしまう食事の介助、夜間もおむつ交換で何度も起きるなど、肉体的な負担だけではなく精神的な負担も生じてしまうのが在宅介護です。

在宅介護は常に介助に向き合うことでなかなか体が休まらない状態であることに加えて、深夜のおむつ交換などで多くの睡眠時間を確保できない状態が続くということになります。在宅介護をしてしる人のなかで不眠状態であるという人は全体の約60%以上です。そのうちの70%の方においては一晩に1~3回起きなければならない悩みに陥っているのです。

参考:毎日新聞「在宅介護 「限界」7割 毎日新聞調査、家族の負担浮き彫り

睡眠不足が体に及ぼす危険は大きく、睡眠が足りていない人の身体は精神的にも追い込まれてしまいやすくなってしまう傾向にあるので注意しなければなりません。

在宅介護の期間は?

在宅介護の平均期間は『平成30年度生命保険に関する全国実態調査』(生命保険文化センター) が発表している情報から見ると4年7カ月となっています。先ほど取り上げた全体的な介護の平均期間と比べると全期間の半分程度にあたります。ただしこちらもあくまでも平均値なので、続かないという方は6カ月未満で終わってしまうこともあるようです。

参考:生命保険文化センター『平成30年度生命保険に関する全国実態調査

4~10年未満で在宅介護の終わりを決めた人が多く、長く在宅介護を続けたいと思っていても、多くの人が最後まで自宅で介護ができなかったという現状となっています。毎日のように介護の負担がのしかかる生活が何年も続いてしまえばいつか限界が来るのは当たり前のことです。

在宅介護は介護を受ける本人と家族によりどの家庭でも一緒であるとはいえませんが多くが、長年における在宅介護の負担によって追いつめられて悲しい事態をもたらしてしまってはならないでしょう。家族は、在宅介護で追いつめられる前に親を施設に入居させることを考えるべきだと言えます。

在宅介護から施設入居に切り替える目安は要介護3以上

肉体的にも精神的にも限界を迎えてしまいそうだと分かったら、介護施設への入居を検討しましょう。もちろん人それぞれで限界のタイミングは違いますが、目安として在宅介護中に要介護度が3以上となれば負担も大きくなるので、施設入居するべきだといえます。

そして要介護3以上というのは比較的な安い価格で入居できる特別養護老人ホーム(※以後:特養)の入居条件になります。お金はない…からと諦めていた施設入居も特養であれば叶うかもしれません。なぜ特養の費用が安いのかというと、それは公的機関にあたるからです。

介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅というのは、民間施設になります。公的機関である特養は国から出る補助金により建てられているため、入居費用や月額利用料が安く抑えられるという仕組みなのです。

入居時に一時的に必要になる入居一時金は、介護付き有料老人ホームであれば0~数億円、サービス付き高齢者向け住宅0~数十万円ですが、特養になると0円となり全くかかりません。加えて月額料金は介護付き有料老人ホームでは15~35万円、サービス付き高齢者向け住宅では10~30万円でありますが、特養は6~15万円で利用できるようになっています。

入居一時金、月額料金どちらの費用を見ても安く抑えられるのは嬉しいポイントだと言えるでしょう。

要介護2と3の違いについて

特養入居条件の要介護3ですが、要介護2の状態とどのような違いがあるのか分からない方が多いことでしょう。ここからは要介護2と3の違いについて徹底解説していきます。

要介護2

要介護2というのは立ち上がりや歩行は自分でできないことが多く、日常的な生活において部分的に介助が必要である状態が当てはまります。例として挙げるならば、排泄や入浴は介助が必要だが、着替えは見守りをすれば可能だという状態です。

要介護3

これが要介護3に上がると立ち上がりや歩行が自力では困難となり、日常生活全般において全て介助が必要である状態になります。排泄、入浴、着替えの全てに介助が必要であれば介護度3に当てはまります。また介護度3は、認知症を持ち日常生活に影響が出て対応が必要な場合も要介護3となります。

このような違いがあるので、要介護3の状態に近いと思ったら遠慮なく施設に相談してみるといいでしょう。ちなみにどの介護施設を利用する場合でもこれら各高齢者の要介護の状態を表す要介護認定が必要です。

要介護認定は最寄りの役所や地域包括支援センターで申請が可能です。認定の判別には調査訪問が行われたり、主治医の意見書が必要であったり、さらにはコンピューターで判別されるなど、あらゆる調査が進められます。最終的に介護認定審査会の方が出した答えによって介護度は決まり、申請からおおよそ30日ほどで結果通知が届くようになっています。

そのため、在宅介護に限界を迎えたからといってすぐに施設へ入所させることはできません。上記に加えて入居先の施設の見学や契約の手続きも必要になってくるので、要介護3に当てはまる様子が見られるようになったら早めに準備を進めておくのが賢明です。人気がある特養は入居待ちの状態となっているため早めに行動をしておくのが吉です。

要介護2、3については下記の記事にて詳しく解説しています。

ただし限界点はひとそれぞれで違う

ただし要介護3はあくまで目安であり、実際のところ限界点は人によって違うため、自宅介護を続けられるのであれば続けても問題ないでしょう。

介護を受ける高齢者本人もできれば家族から介護を受けたいと考えます。身近な存在が介護してくれるのと、見ず知らずの人から介護サービスを受けるのでは満足度も変わってくることでしょう。

もちろん施設の方も利用者が満足できるように健康的で美味しい食事を提供したりさまざまなイベントを行ったりと工夫はしています。ですが住み慣れた自宅で行う自宅介護は高齢者本人にとって自由度の高い生活になるため、どうしても自宅で介護されていることの方が嬉しい傾向にあります。

ただ、施設への入所によってイキイキした様子が見られるようになったという場合もよくあります。介護をする家族や自身の限界点を知ることと同時に、高齢者本人の意思を尊重してあげることも大事だと言えるでしょう。

自身の限界点においてはイライラして高齢者にきつく当たってしまう前に施設の入所を検討しましょう。要介護3に満たない場合は訪問介護サービスを利用するのも一つの手です。なるべく介護の負担を抱えることなく、自身がイキイキとした生活ができるようにすべきことが必要となります。

介護うつを避ける方法について

介護によるうつ病は高齢化社会となっている今増加している傾向にあります。介護うつというのは周りの人のみならず本人さえも気づきにくいものです。一度発症してしまうと完治させるまでに多くの時間を要するので親の介護に専念できる状態とは言えないでしょう。

そんな深刻な介護うつは、きつい在宅介護によって起こるのがほとんどです。限界が間近であると、介護者がうつになってしまう可能性は非常に高いので、うつになる前にこれからご紹介していく予防法を身に付けておきましょう。

介護施設入居を検討

まず1つ目は介護施設の入居を検討することです。介護施設にはここでご紹介してきたように民間機関と公的機関の2種類がありますが、費用について心配しているのであれば公的機関の施設を選択しましょう。特に特別養護老人ホームは費用が安く収まりやすくおすすめです。

その他の公的機関であるケアハウスでも入居一時金を安く抑えられるので結果的に民間施設の利用よりも安くなります。ただ民間施設は基本的に料金が高いですが、どなたでも入りやすい傾向になっています。要介護3に満たない場合で入居できる施設はあり、入居待ちの時間を介することなくすぐさま入居できるところも多くなっています。

どちらがいいかは予算や高齢者の介護度といった各家庭の都合に合わせて決めると良いでしょう。

周りに相談する

高齢化が進む日本において介護における悩みを持つ方は多くいます。そんな方を支える場所として、多くの地域では「家族の会」「介護講習会」といった形で相談できる場所を設けています。その場には自宅介護での限界を感じる人も多く参加しているので、ぜひ定期的に参加してみて同じ悩みを持つ者同士で交流を図っていきましょう。

イライラを分かってもらえることで気分はスッキリしますし、具体的な解決策も見つかることでしょう。開催情報を知りたい方は各市区町村の福祉課や地域包括支援センターに問い合わせすることで開催情報が分かります。

ショートステイなどを活用する

長期的な入所を希望していないのであれば、ショートステイやデイサービス、ホームヘルパーといったサービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか?これらはどれも短時間や短期間における介助サービスとなっており、自身が自宅で家族の面倒を見ながらも、辛くなった時にだけ利用するといった形で在宅介護を進められます。

施設に入居し続けるよりも費用を抑えることができるので、施設入居を諦めた方にも利用できる便利な存在です。ぜひ気持ちも辛くなる在宅介護に悩んでいたら、利用してみてください。

在宅介護における悩みはあらゆる方法で解決しよう

介護の必要性が高まる今、在宅介護を強いられる家庭が増えています。終わりの見えない介護に頭を悩ませる家族は多く、日々溜まっていくストレスに先行き不安に感じる人も少なくないことでしょう。

ご紹介してきたように介護期間は全体を通して10年ほどかかるものです。その費用は多く、できるだけ費用を安く収めようと自宅介護に励む人も多いでしょう。しかし自宅介護で生じる危険は多く、最悪の場合につながる可能性もあります。

家族が不幸な結末を辿らないためにも、在宅介護のストレスから逃れることを重視することも大事です。介護施設への入居、短期間介助サービスの利用に相談してみるなど、様々な策を取って自身も満足できる生活にしていきましょう。

松本健史

この記事の監修

松本健史

合同会社松本リハビリ研究所 所長

理学療法士。佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了。専門は生活期リハビリテーション。病院・デイサービス勤務後2014年合同会社松本リハビリ研究所設立。全国の老人ホーム、デイサービス、介護施設でリハビリ介護のアドバイザー、生活リハビリセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など活動中『転倒予防のすべてがわかる本 』(講談社)など著書多数。
YouTubeチャンネル「がんばらないリハビリ介護」/オンラインサロン「松リハLAB

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