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若年性認知症は20代でも発症しますか? チェックすべきことは?

最近、彼氏の物忘れが激しくなってきたように感じます。仕事に対しても何となく意欲が低下しているように感じているのですが、うつ病でしょうか? 若年性認知症も同じような症状が現れると聞いたことがありますが、まだ20代なのでそれはないのではと思っています。20代でも若年性認知症を発症する可能性はありますか?

A20代でも若年性認知症を発症する可能性があるので、専門医への受診をおすすめします。

認知症は、高齢者がかかる病気だと思っている人が多いです。しかしなかには、若年性認知症といって若くして発症する認知症になる人もいます。20代での発症例はかなり少ないですが、事例はあります。
20代だから認知症ではないと言い切ることができないので、早めに専門医の受診を検討したほうがいいでしょう。

平栗 潤一
平栗 潤一
一般社団法人 日本介護協会 理事長

認知症は、高齢者が患う病気だという印象を持つ人が多いでしょう。確かに認知症になる人の多くは高齢者ですが、中には若くして認知症になってしまうケースもあります。そのような認知症は、若年性認知症と呼ばれます。

若年性認知症は65歳未満で発症する認知症を指すのですが、20代でも発症する可能性はあるのでしょうか? 今回は、若年性認知症は20代でも発症するのか疑わしい時に確認したいチェック項目診断された時にやるべきことについて解説していきます。

若年性認知症の特徴とは

まずは、若年性認知症にはどのような特徴があるのかみていきましょう。

男性に多く見られる

高齢者が患う認知症は、男女別に見てみると女性のほうが多くなっています。しかし若年性認知症の場合は、どちらかというと男性に多く見られるという特徴があります。

配偶者が感じる負担が大きくなる

若年性認知症は65歳以下で発症する認知症です。そのため、子どもが自立していなかったり、親の介護をしなければいけなかったりするタイミングと重なってしまう可能性もないとは言い切れません。もしもそのようなタイミングで発症してしまうと、配偶者が大きな負担を感じるようになってしまいます。

さらに、子どものライフプランまで変わってしまう可能性も考えられます。

受診までに時間がかかる

若年性認知症が発症する年齢は、仕事や家事などを現役でこなしている人が多い年齢になります。そのため、関わっている人はちょっとした変化に気が付くケースが多いです。しかし、若いと認知症だと疑わないことが多いため、更年期障害やうつなどと勘違いしてしまうことも珍しくありません。

更年期障害やうつなどでいらいらしがちになったり、判断力が低下してしまったりすることももちろんあります。それによって専門医への受診が遅れてしまうと、症状はどんどん悪化してしまいます。

働き盛りの年代に発症しやすい

若年性認知症の平均的な発症年齢は51歳です。50歳未満で発症するというケースも3割ほどと少ないですがあります。50代はまだ現役で働いている人も多いため、若年性認知症が発症したことで仕事を失ってしまい、経済的に困窮してしまうケースも珍しくありません。

しかし、若年性認知症になってしまったとしても仕事ができないわけではないのです。それぞれの症状に合わせて無理のない範囲であれば継続できます。まだ若くて体力はあるので、仕事を継続できれば自信を持てるようになるでしょう。

若年性認知症は20代でも発症するのか

若年性認知症は、20代や30代という若さで発症するケースもあります。発症例はかなり少ないですが、絶対に発症しないとは言い切れません。40歳までに発症した人の数は、2009年厚生労働省実態調査によると全国で2,210人という結果が出ています。

年齢 人口10万人当たりの有病率(人) 推定患者数(万人)
総数
18-19 1.6 0.0 0.8 0.002
20-24 7.8 2.2 5.1 0.037
25-29 8.3 3.1 5.8 0.045
30-34 9.2 2.5 5.9 0.055
35-39 11.3 6.5 8.9 0.084
40-44 18.5 11.2 14.8 0.122
45-49 33.6 20.6 27.1 0.209
50-54 68.1 34.9 51.7 0.416
55-59 144.5 85.2 115.1 1.201
60-64 222.1 155.2 189.3 1.604
18-64 57.8 36.7 47.6 3.775

引用:厚生労働省「若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について

若年性認知症の症状

若年性認知症を発症した場合、どのような症状が出るのでしょうか。続いては、若年性認知症にはどのような症状が現れるのかご紹介します。

認知機能障害(若年性認知症の中核症状)

認知機能障害は、若年性認知症の中核症状と呼ばれている症状です。脳の病変や損傷によって起こるため、認知症になるとどれかの症状は必ず現れると考えられています。具体的には以下のような症状があります。

記憶障害

記憶障害は、物事を覚える能力が低下してしまう症状です。最近起こった出来事を忘れてしまうというのが認知症ならではの特徴となっています。過去のことになると比較的よく覚えているという認知症患者が多いです。

見当識障害

見当識障害は、時間や場所などの見当識が低下してしまう症状です。今日が何日か、今の季節は何か、自分は今どこにいるのかといったことが分からなくなってしまいます。そのため、行き慣れた場所に向かおうとしても迷子になってしまうケースもあるのです。

理解・判断能力障害

理解・判断能力障害は、理解力や判断力が低下してしまう症状です。暑さや寒さも理解ができなくなってしまうため、夏に厚着をしたり、仕事中に臨機応変な対応ができなくなったりします。

実行機能障害

実行機能障害は、物事を計画的に進めるための実行機能が低下してしまう症状です。ルーティーンになっている仕事の手順が分からなくなってしまうと大きな支障が出てしまいます。

計算能力障害

計算能力障害は、その名のとおり計算能力が低下してしまう症状です。簡単な計算ですらできなくなってしまうため、買い物などが難しくなってしまいます。

若年性認知症のBPSD

BPSDは、行動・心理症状とも呼ばれています。中核症状が発生することによって二次的に出現するものです。そのため、認知症になったからといって必ずBPSDが発生するとはいえません。

BPSDは、環境やストレスによる影響が大きいと発症する可能性が高いと考えられています。具体的な症状は以下のとおりです。

不安や焦り

今までできていたことができなくなってしまい、失敗することが増えます。失敗してしまうと周りにも迷惑をかけてしまうため、若年性認知症の当事者は不安や焦りを感じることが多いです。

うつ

自分自身の変化を受け入れることができないと、うつ状態になってしまう可能性もあります。引きこもりがちになったり、人との関りを怖いと感じるようになったりします。

睡眠障害

昼夜逆転したり、中途覚醒してしまったりといった睡眠障害も、BPSDの1つだと考えられています。

興奮

できないことや変化していく自分を受け入れることができず、イライラしてしまう人もいるのです。興奮状態になると、暴言を吐いたり、家族などに暴力を振るってしまったりします。

幻聴や幻視

幻聴や幻視もBPSDの1つに含まれています。実際には聞こえていない声や音が聞こえたり、あるはずがない物や人物が見えたりするという症状です。

若年性認知症の原因

若年性認知症は、高齢者の認知症とは原因が異なります。続いては、若年性認知症に多く見られる原因について解説していきます。

高齢者の認知症と違う点

若年性認知症の原因として最も多いのは、脳血管障害です。若年性認知症の原因のなかでおよそ4割を脳血管障害が占めています。また、高齢者と比べてアルコール性認知症や前頭葉型認知症を発症する割合が高いという点も、若年性認知症ならではの特徴とされています。

なかには、頭部の外傷や変性疾患などが原因になることもあるため、高齢者の認知症と比較すると原因が多岐にわたることが分かるでしょう。

原因となる病気とは?

ここでは、若年性認知症でも多く見られる脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の原因となる病気についてみていきましょう。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳内に梗塞ができてしまい血流が低下してしまったり、血管が破れて出血したりといった血管障害が原因で起こります。脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの発作で意識障害や体の麻痺、言語障害などの急性期障害が現れます。

急性期を乗り越えて回復期になったとしても、麻痺や言語障害などが残る可能性も高いです。その他にも、記憶障害や注意力・意欲の低下、性格の変化といった症状が出てくるケースもあります。このような状況を高次機能障害と呼び、体に現れる障害と高次機能障害が混ざり合い、認知症の症状が現れるようになります。

脳血管性認知症を防ぐためには、リハビリだけではなく、、食事に配慮するなど脳の血管が詰まらないように予防することが重要です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、原因がはっきりと解明されていません。脳内に余分なたんぱく質が溜まってしまい、神経細胞が破壊されることが原因だと考えられています。脳の神経細胞が破壊されることによって、脳が萎縮してしまうからです。

またとても稀な例ですが、若年性アルツハイマーは遺伝が原因だと考えられるケースもあります。これは家族性アルツハイマー病と呼ばれます。家族や親せきにアルツハイマー型認知症の人がいる場合は、可能性が高いと言えるでしょう。

若年性認知症のチェック項目

若年性認知症かどうかを見極めるためには、チェックリストに当てはまるか確認してみるのが有効です。では、仕事をしている人向け、仕事をしていない人向けのチェックリストをご紹介します。気になる人はどのくらい当てはまるかチェックしてみてください。

仕事をしている人のチェック項目

チェック項目 よくある たまにある ない
仕事でミスをすることがある
業務の同時進行が難しい
会議に集中できないことがある
残業が増えたように感じる
仕事がはかどらない、段取りが悪くなったと感じる
書類を探すことが増えた
予定を忘れてしまう
約束を同時に入れてしまうことがある
取引先に持っていく書類を忘れることがある
仕事でミスを指摘されるようになった
同僚の態度が変わったと感じる
周りからおかしいと言われる、受診をすすめられる
会社まで1人で行けないことがある
取引先まで1人で行けないことがある
季節に合ったスーツを選べないことがある
お金の使いほうが以前よりも荒くなった気がする
怒りっぽくなったり、やる気がなくなったりしたように見える
コミュニケーションが難しいと感じる

「●」に含まれている項目で「よくある」と「たまにある」が1つでも該当している場合、全て「たまにある」にチェックが付いた場合は受診をおすすめします。また「●」に含まれる項目で「よくある」と「たまにある」には該当しないもののその他で半分以上「よくある」に該当する場合も受診をすべきだと考えられています。

仕事をしていない人のチェック項目

チェック項目 よくある たまにある ない
1人で近所まで買い物へ行けないことがある
1人で交通機関を使って買い物へ行くことがなくなった
同じものをいくつも買ってしまう
掃除をしていないことや片付けができていないことがある
洗濯物が溜まってしまう
洗濯物を1枚でもしてしまったり、何度も繰り返ししたりすることがある
子どもの世話や生活に対する関心がなくなることがある
食事の味付けがうまくできなくなった
食事の用意自体できないことがある
同じメニューばかり作ってしまうことがある
服装などの身だしなみに気を使うことがなくなった
季節に合った服装ができていない
性格が変わったと言われたり、配偶者を疑ったりするようになってきた
コミュニケーションが難しいと感じる

このなかで「よくある」や「たまにある」に該当する項目が1つでもあった場合は、早めに専門医を受診するようにしてください。

20代で若年性認知症と診断されたらやるべきこと

20代という若さで若年性認知症と診断されたら焦ってしまうものです。そんな時に、やるべきことについて最後に説明していきます。

勤務先に相談する

若年性認知症は、まだまだ認知度や理解度が低い病気です。そのため、勤務先に相談しても理解を得られない可能性が高く、相談できないというケースが多くなってしまいます。認知症であることを黙って働き続けることは困難なので、勤務先への相談は必要不可欠です。

勤務先によっては障がい者枠での再雇用などをしてくれるところもあります。またハローワークでは就労支援を受けることもできるため、できる範囲で働ける場所を見つけることも視野に入れたほうがいいケースもあります。

公的なサービスを利用する

若年性認知症と診断されたら、公的サービスの利用も視野に入れましょう。介護保険サービスで利用できる施設のなかには、若年性認知症などで若くして要介護や要支援状態になった人のサポートをしている場所も増えてきました。

また、40歳未満で介護保険サービスの対象になっていない20代の認知症患者の場合は、障がい者福祉サービスを利用できます。居宅介護や就労継続支援といったサービスを保険で利用できるため、利用を検討してみる価値は大いにあります。

この他にも、成年後見制度や日常生活自立支援事業、社会保障制度を活用など、若年性認知症と診断され、これまでの生活が難しくなった人に利用していただきたいサービスや制度はいくつもあります。

若年性認知症と診断されたら、1人で抱え込んでしまう人もいます。しかし若年性認知症コールセンターや地域包括支援センター、認知症疾患医療センターなどへ相談し、アドバイスをもらうと安心感を得られるでしょう。

若年性認知症が気になったら20代でもかかりつけ医に相談

認知症は高齢者だけに発症する病気ではありません。割合はとても低いですが、20代で発症する場合もあります。20代で発症した場合、更年期障害やうつと勘違いされてしまうこともあり、症状が進行してから認知症だと気が付くケースも珍しくありません。

それでは家族や周囲の負担も大きくなってしまいますし、本人も原因が分からずに大きな苛立ちを感じるようになってしまいます。そうなることを防ぐためにも、かかりつけ医に相談し、専門医を紹介してもらうようことが重要なポイントになります。

平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

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