脳梗塞の前兆にはどんな症状がありますか?頭痛や手足のしびれなどの特徴は?
脳梗塞にはある日突然起こります。その場合、すぐに病院を受診し治療を始めることが何よりも大切です。そして、脳梗塞の前兆について把握しておくと万が一の時でも落ち着いた行動ができるようになります。起こりうる基本的な前兆を紹介しましたので参考にしてください。
A脳梗塞の前兆は突然起こるケースが多いです。症状がある場合にはすぐに救急車を呼びましょう。
脳梗塞の前兆としては、右側の手足のしびれや突然の言語障害、激しい頭痛など風邪症状とは違う前兆があります。どの症状も「突然」現れることが多く、時間が経つにつれて悪化する場合が多いので、すぐに対応することが重要となります。
介護が必要になる可能性もあるので、見過ごさず早めに大げさと感じても救急車を呼び、専門医に診てもらってください。
脳梗塞は、脳の血管に血栓ができることで血液が正常に流れず脳の組織が壊死していく病気です。脳梗塞は片側の手足が動かなくなる、ろれつがまわらなくなる、認知症など、幅広い症状があり、介護が必要となることもあります。したがって早期発見・早期治療が最も重要となります。
そして、前兆について理解し、適切な対応をすることで、早い段階での治療が進められます
脳梗塞の前兆にはどんな症状がある?
片側の手足のしびれ・顔のゆがみ
片側のみ手足のしびれが突然現れた場合、脳梗塞を疑った方がいいでしょう。体を動かすための脳の血管が詰まったことが原因で発生するのです。
また、顔の感覚を支配している三叉神経が詰まることで顔のしびれが起こる場合もあります。顔の左右で歪みが生じている、顔が麻痺して動きにくいといった症状があれば危険です。
突然の言語障害
言語障害が突然起こる症状も脳梗塞の前兆です。話している相手の言葉が理解できない、テレビで話している内容が理解できないといった症状も言語障害のひとつです。また、自分が話したい言葉が思いつかない運動性失語も言語障害なので、言葉がうまく発せられない際には脳梗塞を疑いましょう。
また、ろれつが回らない症状も脳梗塞の前兆です。これは、舌や口の周りにある筋肉が麻痺してろれつが回らなくなるのです。言語障害とは違い、言葉の理解力には問題はないのですが、喋りにくさを感じることにあります。
片目、両目が見えなくなる
突然目が見えなくなる症状も脳梗塞の前兆のひとつです。突然のことで驚くかもしれませんが、片目や両目かはその人によって違いがあります。片目だけ見えなくなる状態は黒内障、視野の半分程度が見えなくなる状態を視野障害と言います。
また、目の障害としてものが二重にみえてしまう前兆もあります。片目で見ると見えるにも関わらず、両目で見るとものが二重に見える場合は脳に原因があり、症状が発生している可能性があります。
めまいや歩行障害
めまいがあると、鉄分が足りなくなり「ただの貧血だろう」と片付けてしまう人もいますが、実は脳梗塞が隠れているかもしれません。立っていられないほどのひどいめまいがある場合には、脳梗塞の可能性があります。
また、歩行障害も脳梗塞の前兆として考えられます。急に真っ直ぐに歩けなくなる、真っ直ぐ歩いているつもりでも、周りから見ると歩けていないなど、気になる症状があれば専門の医師に相談してください。
激しい頭痛
軽い頭痛であれば風邪の初期症状であると感じるでしょうが、激しい頭痛は脳梗塞の危険があります。激しい頭痛といっても、どういった痛みなのか分からない人も中にはいるでしょう。しかし、普段経験したことがないような強い痛みや、立っていられないほどの激しい痛みとなります。
頭痛に加えて吐き気がある、嘔吐を伴うケースもあるので頭痛以外の症状がないかのチェックも大切です。
上記のような脳梗塞の初期症状が現れたら早急に病院に行く必要があります。その際には、大げさと思わず救急車を呼び対処してもらってください。脳梗塞を発症した場合、発症してから数時間以内に治療をスタートさせれば症状を回復させられます。後遺症も最小限に食い止められるので、素早い行動が肝心なのです。
しかし、中には上記のような症状が数分で回復してしまうケースもあります。その場合、「大丈夫だろう」と勝手に自己判断してしまうでしょうが、それは危険です。「一過性脳虚血発作」の可能性があり、脳梗塞の発作が現れる前兆かもしれません。上記のような症状にひとつでも当てはまるのであれば、すぐに救急車を呼び受診をしましょう。
また、救急車が到着した際には、症状の種類や症状が現れた時間、どの程度前の出来事なのかを救急隊員に伝えましょう。
脳梗塞は早期発見・早期治療が大切
脳梗塞の治療は早い段階でスタートさせる必要性があります。脳梗塞と聞くと、突然意識を失い倒れるイメージを持っている人もいるでしょうが、症状の一部であり倒れる前には前兆が起こっている可能性があります。
ACT FASTが重要な理由
上記でご紹介したように脳梗塞にはさまざまな症状がありますが、いざという時に的確に確認出来る「ACT FAST」というものがあります。ACT FASTは米国脳卒中協会で推奨された脳卒中を疑う人に対して行う3つのテストです。(脳卒中とは、血管が詰まる、または血管が破れて出血する病気の総称です。脳梗塞は詰まるタイプになります。ちなみに「卒」とは前触れなく突然という意味です。)
そして、テストのみならず、ACT FAST(早く行動を!)という脳卒中対応の標語にもなっています。ここでは、具体的なテストを紹介します。誰でも行える簡単なテストなので、ぜひ覚えておきましょう。
F(Face)顔の麻痺の有無
顔を意味するFaceでは、顔の麻痺があるかテストをします。見た目として顔の片側が下がっている、左右で歪みがある場合には脳梗塞の危険があると判断できます。「笑ってください」と言った時にうまく笑えなければ麻痺の可能性が高いでしょう。
A(Arms)腕の麻痺の有無
腕を意味するArmsでは、腕の麻痺を調べられます。「両手を上げてください」と質問をした際に、両方の腕が上がった状態をキープできれば問題ありませんが、片方だけ力が入らずに下がってしまう、うまく上げられない時には脳梗塞の前兆と言って良いでしょう。
S(Speech)言葉の異常の有無
言葉を意味するSpeechでは言葉の障害を調べられます。「簡単な言葉を言ってください」と質問をした時に、しっかりと答えられれば問題はありません。しかし、ろれつがまわっていない、言葉が出ずに話ができない、何を言っているのか分からない、といった症状があれば危険な状態でしょう。短い文章でも喋れない時には脳梗塞を疑ってください。
T(Time)発症時間 救急車を呼び病院受診
時間を意味するTimeでは、症状ではなく発症時間となります。発見時間と発症時間は違うので、上記のような脳梗塞の前兆が現れた際の正確な時間を覚えておきましょう。脳梗塞は発症してから4.5時間以内、8時間以内の人ができる治療が存在します。
治療をスタートするためには、検査を実施しなければいかず、その検査には1時間程度時間が必要です。そのため、発症してから時間が経過し過ぎていると検査に時間がかかり適切な治療ができなくなってしまうのです。
症状が現れてから2時間以内には病院に到着することが望まれるので、速やかに病院に行きましょう。また、救急車を呼ぶ際には脳梗塞が疑われる人を無理に起こさないようにしましょう。
そして、衣類を緩め、麻痺側を上にして横を向けるようにします。横に向けることで、嘔吐物が詰まるのを防ぐと同時に、舌が下がって喉をふさぐことも防ぎます。以上、3つの症状の有無と、発症時間を確認して、一刻も早く救急受診することが何よりも重要となります。
脳梗塞から認知症になることも
脳梗塞によって認知症を発症するリスクもあります。酸素や血液、栄養が十分に行きわたらないと脳細胞が死滅し、「脳血管性認知症」を発症してしまうのです。脳血管性認知症はアルツハイマー型の認知症と比較すると男性の割合が多い傾向にあります。
脳血管性認知症は他の認知症と症状に大きな違いはありませんが、障害を受けた脳の場所によって症状の出方が異なります。
脳血管認知症の症状
脳梗塞の進行によって脳血管認知症になってしまうと、さまざまな症状が起きます。主に運動機能や言語機能、認知機能に影響が出てくるのが特徴です。
機能障害 | 内容 | 実例 |
---|---|---|
失行 | 運動機能に異常がないにも関わらず、日常的な簡単な動作ができなくなること |
|
失認 | 目や耳に異常がないにも関わらず、対象物を認知できない状態 |
|
失語 | 聴覚や発生に異常がないにも関わらず、言葉を話すことや読むことができなくなる状態 |
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上記のような症状は、発症前であれば、すべて当たり前にできるものばかりです。しかし、できないことが多くなり、本人も辛い状態となるでしょう。「ただ調子が悪いだけかもしれない」とポジティブに考える場合もあるでしょうが、何の対処もしないと症状が進んでしまう危険性があります。違和感をもったならば早い段階で専門の医師に診てもらいましょう。
脳血管認知症のリハビリテーションと専門職種
次に中期以降の状態です。脳血管性認知症は、脳血管障害の再発や転倒といった事故を防止できれば急速な悪化をある程度防ぐことができます。そのため、リハビリテーションは重要なポイントです。
言語聴覚士 ST(Speech-Language-Hearing Therapist)
言語聴覚士は、主として言語障害・音声障害・嚥下(飲み込み)障害に対してのリハビリを実施します。脳血管認知症の場合、失語症で会話や読み書きがなど、言語全体に障害が出てきますが、その原因を検査、評価し、明確な意思が伝わるようにリハビリをしていきます。
また、摂食嚥下障害のためのリハビリも実施されます。健常者であれば何気なくしている「食べる」行為でも、食べ物を認知すること、口腔内に入れる、咀嚼、飲み込むといった一連の流れがあります。しかし、いずれかの過程で障害が発生すると、摂食嚥下障害となるのです。
摂食嚥下障害になると肺炎や窒息、脱水や低栄養などを引き起こす危険があるので、それぞれに対応するリハビリを実施しなければいけません。舌・口唇・頬といった食べるために必要となる筋力を強化する、食べ物を吐き出すための訓練といったリハビリをしていきます。
理学療法士 PT(Physical Therapist)
理学療法士は日常生活で必要となる基本的な動作を行うためのリハビリを実施します。主に挙げられるものとしては、立ち上がる、歩く、寝返りをする、起き上がる動作などです。歩行練習やストレッチ、物理療法(温熱、電気などの物理的手段 を治療に利用すること)などを実行していきながら機能回復や維持をはかっていきます。また、身体動作・運動の専門性を生かし、体幹・下肢装具、車椅子、福祉機器などの相談や手すりやスロープ設置などの住宅改修相談も行います。
作業療法士OT(Occupational Therapist)
作業療法は日常の生活活動である、排泄をする・着替える・料理をする、趣味やレクリエーションなどの作業を通じてリハビリを指導、精神面も含んでサポートします。理学療法士と同様に立つ・歩くなどの基本的運動機能に対してもプログラムも行いますが、それに加えて実際に料理をする、買い物へ行くなどより実際の生活に沿った形でリハビリテーションを実施します。
脳梗塞の治療方法
治療方法は死滅してしまった脳細胞を元の状態には戻せないので、脳血管障害が再発しないよう高血圧のための薬の服用や脳血流を改善するための薬を服用します。初期には抗うつ状態になりやすいので、抗うつ剤なども処方されます。
家庭生活における住環境整備
また、脳血管性認知症になると運動機能や知覚麻痺によって転倒する危険性もあります。大きなケガにつながる可能性もあるので、転倒防止のために環境を整備し過ごしやすい工夫をしましょう。福祉用具の購入やレンタルの他、住環境に手すりを付けるなどすると、日常動作の負担を軽くする役割もあります。
家族の病状理解とストレスケア
脳血管性認知症について家族が理解しサポートするためにも地域の社会福祉協議会や福祉センターなどで行われる講習会などに参加することもよいでしょう。また、介護が本格化してきた際には、介護保険を活用し、様々な介護サービスを積極的に利用することも、家族が介護疲れに陥らないポイントになります。
そして、地域の家族介護者の会などに参加し、お互いの介護を話し合い、介護ストレスを軽減させることも、長期化する介護生活を乗り越えるうえでは重要になります。
脳梗塞はまず予防、疑いがあれば迷わず通院、適切な治療とリハビリが重要
脳梗塞は高血圧や糖尿病、脂質性異常や不整脈、喫煙といった5大危険因子に注意し、生活習慣の改善や食事の改善に気を配り、予防することが必要です。そして、脳梗塞が疑われる症状が出ましたら、一刻も早く病院に行くことが重要です。脳梗塞になったとしても、適切な治療とリハビリによって回復、維持することも可能になります。
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身体障害者、高齢者施設に勤務。古武術の身体運用を参考にした「古武術介護」が反響を呼ぶ。近年は介護、医療、リハビリ、消防・救命・育児支援・教育・スポーツなど、幅広い分野で身体を通した発想と実践を展開させ、多岐にわたる活動を国内外で行う。『あらゆる状況に対応できる シンプル身体介助術』(医学書院)など著書、DVD、通信講座など多数。
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