インタビュー

「もう介護しちゃえば?」って言いたい。株式会社クレア社長 瀧裕一郎さんインタビュー

徳島県で現在3つの老人ホームを運営する株式会社クレア。その社長でありクレア城ノ内の施設長も務める瀧裕一郎さんに介護の職場づくりや働き方への信念を聞きました。

株式会社クレア社長 瀧裕一郎さんインタビュー

徳島県で現在3つの老人ホームを運営する株式会社クレア。その社長でありクレア城ノ内の施設長も務める瀧裕一郎さんに介護の職場づくりや働き方への信念を聞きました。

瀧 裕一郎さん

瀧 裕一郎さん
1981年生まれ(33歳)
クレア城ノ内の施設長を経て、現在、株式会社クレアの代表取締役社長を務める。

介護に若い人材を 父親から会社を継ぐ

【岡】瀧さんは何歳ですか?

【瀧】33歳です。岡さんとは1981年生まれ同士ですね。

【岡】株式会社クレアの社長はいつからやっているんですか?

【瀧】2年前、2013年の夏からです。

【岡】結構最近なんですね。なぜ社長を始めたんですか?

【瀧】会社に若い人材がほしくなったからです。

【岡】若い人がほしかったから、瀧さんが社長に?もともとはお父さんの会社でしたよね。

【瀧】そうです。だから、「代わって」って言ったんですよ。スタッフの平均年齢がかなり高くて、それが悪いわけではないですが、これからを一緒に支えてくれるような若い人材がほしい。だから、若い僕が社長になって表に出て若い人材を探そうと思い立ちました。

【岡】前々から思っていたんですか?

【瀧】いや、徳島に帰ってきてからです。

【岡】え、帰ってきてから?

【瀧】一度この仕事を辞めているんです。

【岡】なるほど。まずは、これまでの経歴を聞きましょうか。

瀧さんにインタビュー

「介護の方がおもろいんちゃう?」介護を離れてわかったこと

【岡】もともと介護現場でやっていたんですか?

【瀧】はい、6年くらいは現場にいましたね。有料老人ホーム(クレア藍住)が始まったその1年後、もともと建築設計の仕事に興味があったので、大阪に出て、専門学校に通うことにしました。

【岡】建築設計の専門学校?

【瀧】そうです。2年間、昼は働いて、夜は学校で勉強していました。卒業後は建築設計事務所で働いていたのですが……父親の会社がまた事業を拡大することになり、施設長をやってほしいと言われたんです。いろいろ葛藤があったんですが、もともと建築設計事務所で朝から晩まで机に向かって図面を描いている自分に対して「介護の方がおもしろかったんちゃうか?」という疑問があったんですよ。

【岡】当時、地元から声がかかる前からそういう思いを抱いていたんですね。

【瀧】はい。というか、「介護ってすばらしかったんじゃないの?」とまで思っていました。そんなこんなで帰郷を考え始めていたときに地元からのオファーがあったので、早いけど帰ろうという決断をしました。それで、クレア城ノ内の施設長になりました。

【岡】へぇ。じゃぁ、城ノ内のスタートアップからやってるんですね。

【瀧】そうですね。もう5年目になります。

チームづくりの裏側を語る瀧さん

どんどん辞めていった開設当初 大切なのは馴染めるかどうか

【岡】介護に関わっている歴は長いんですね。実は介護ってすばらしかったんだと思った理由はなんですか?

【瀧】自分がやっていることへの評価がダイレクトに伝わってくるからですね。「お前さん、ようやってくれたなぁ」という利用者さんの声とかです。

【岡】ほかの仕事だとあまりそういうことはない、と。

【瀧】介護の仕事はそこが顕著ですよね。毎日毎日感謝される仕事ってあまりないですよ。あとはチーム感ですね。例えば設計の仕事って、その物件担当のスタッフ以外は一人で黙々と図面を描いていることが多いのですが、介護職の場合は、スタッフ一人ひとりが当事者になって、この人は何をしたら喜ぶんだろうとか、この人のこういうところがまだ悪いからよくしていこうとか、いろんな業種の人とも連携してチームになってやっていきますよね。そこも楽しかったんですよね。

【岡】チームで人の生活を支える。でも、チームというものができている施設とできてない施設もあると思うんですよ。きょう、このクレア城ノ内さんに伺わせてもらって雰囲気をみていて、ほかの施設とはちょっと違う明るさがあるなぁ、と思いました。スタッフが常に笑顔で話していますし。そういうチーム力はどうやって築き上げていったんですか?最初からいい感じだったんですか?

【瀧】いや、最初のころは何人も辞めていきました。今まで20〜30人くらい辞めています。

【岡】え、そうなんですか!?

【瀧】やっぱり働いてもらっているうちに、この人は僕らと考え方が違うなぁとか見えてくるじゃないですか。そういう方は居心地が悪いみたいで、自ら辞めていきました。そんなこんなで同じ価値観を持ったスタッフが一定数に達するまで、3年くらいはどんどん入れ替わっていました。

【岡】なるほど。残った人たちがそういうチーム力、結束力をつくっているんですね。

【瀧】残った人が、人を呼んで、その人がまた人を呼んで。そうしていい人がどんどん集まってきてくれて、いまのいい感じの状態になりました。何か研修をしてチーム力を上げるようなことは一切していません。

【岡】やってないんですか!

【瀧】結局のところ、結束力やチームワークが保てるかどうかは、持っている価値観が合うかどうかだと思います。そこが合えば自然といい感じに動いていくもんだと学びました。価値観というものは研修をして変えられるものでもないですからね。

社長が自ら背中を見せてくれるフラットな職場

【岡】ほかに、社長業でこれは難しいぞっていうことはありますか?

【瀧】細かいところですね。スタッフの現場での細かい言葉遣いがよくなかったら、すぐに飛んで行って指摘できるかどうか、みたいな。それは社長がやることじゃないかもしれませんが、やはり現場にはできるだけいるようにしています。利用者さんにどういう対応をしたらいいのかということを、言葉じゃなくて行動でスタッフに見てもらおうというのを意識しているんです。

【岡】背中を見せるんですね。

【瀧】それが一番簡単だし、一番わかりやすいですよね。

【岡】なるほど、瀧さんは経営者でもあり、教育者でもあるんですね。

【瀧】逆にスタッフから怒られることもありますよ。「社長のその対応はおかしい」とか。でも、そうやって社長だろうが何だろうが、おかしいと思ったら物申せるフラットな職場づくりを意識しています。

【岡】そんなクレアの理念はなんでしょうか?

【瀧】利用者さんが最後まで幸せだったと思えるようにサポートしていく優秀なパートナーになる、ということが企業の理念です。

瀧さんへのインタビューも終盤

毎週シフトを組める!? 私生活も大事にしたいひと必見

【瀧】あとは、スタッフの仕事と生活のバランスを応援するという理念もあります。

【岡】いわゆるワークライフバランスというやつですね。どういう仕組みですか?

【瀧】一番特徴的なのは休みの出し方ですね。一般的には1ヶ月単位でシフトを組みますよね。でも、うちは1週間単位で決めます。

【岡】1週間シフトですか!?

【瀧】木曜日か金曜日に、来週の休みを決めるんです。この日は早出がいい、夜勤がいい、とか。次の週に急に何か予定が入ったときでも、柔軟に対応できます。家庭の用事でも遊びの予定でも。

【岡】それ、すごくいいじゃないですか。シフトを1週間単位でやって、うまくいくんですか?

【瀧】うまくいかないときは、ほとんどありません。

【岡】1ヶ月決めておかないと不安になったりもしないんですか?

【瀧】特に問題があったことはないので不安はないですよ。だから、僕がシフトを組むのって、スタッフの希望を入れていくだけなんです。それだけでできあがるんですよ。次の1週間の自分の働き方を自由にカスタマイズできるこのシフト制度をうまくスタッフに利用してもらっています。

【岡】へぇ、すごいなぁ。介護業界ではかなり珍しいことですよ。休みが取れないというイメージが普通なのに。

【瀧】スタッフから聞いた話では、ほかの施設さんでは7連勤なんていうこともあるみたいですね。結構体を使うので、無理な働き方をさせられたら腰もやっちゃうし。

【岡】働かせ過ぎない、と。

【瀧】そうです。自分のタイミングで休みを取っているから、腰がちょっとやばいなと思ったら、休みを多くすればいいんです。

【岡】有給休暇はどんな感じですか?

【瀧】できるだけ取れるようにしています。スタッフ数がそろえば、5日間のリフレッシュ休暇に2日間の有休を加えて、1週間休んでもらいます。まだ現状として取得は難しいんですが、今後取得者を増やしていきたいですね。旅行にでも行ってほしいなぁ、という思いです。

スタッフが明るく利用者に接するクレアの様子

介護業界は3Kじゃない! 自らの働き方で世間に示そう

【岡】スタッフの働き方が充実しているのは、介護業界では珍しいですね。なぜそのような働き方を重視しているのですか?ちゃんと休めないとちゃんと働けないから?

【瀧】介護の仕事は、世間からは「3K」(きつい・きたない・きけん)って言われていますよね。でも、「そうじゃないよ!」ということを体をもって示していきたいんです。

【岡】業界の内外、そして世間に向けて。

【瀧】スタッフが笑顔で楽しく働く姿を見て、「あれ、介護ってこんなにいい環境なんだ」と思ってもらいたいですね。定時に帰れて私生活も確保できて楽しく過ごせるし、ストレスフリーだし、「介護って最高の仕事じゃん」ってね。それを、まずはうちで感じてもらいたい。少なくともうちのスタッフはそうであってほしい。だからこそ、まずは私たちクレアが実践していかなければならないんです。

【岡】なるほどなぁ。クレアが求める人材はどういう人ですか?

【瀧】自分のあたまで考えて動ける人であり、怒られることを覚悟して挑戦する人です。あとは、例えばほかの業界から来たら、そこでの経験を臆せず介護に取り入れて活かしてくれることにも期待しています。トライ・アンド・エラーができる人ということですね。

【岡】エラーをしてもいいんですか?

【瀧】むしろエラーをどんどん出していける人を募集しています。募集要項にも書きたいくらいです(笑)。

今の仕事で悩んでいるなら、介護しちゃえば?

【岡】最後に、介護業界の外の人に向けてメッセージをお願いします。

【瀧】きついとか汚いとか、そういう勝手なイメージがあるけど、介護の仕事は本当にずっと笑っていられます。もし、あなたがノルマとかいやな取引先や嫌いな上司とかで今の仕事にストレスを抱えているくらいなら、「もう介護しちゃえば?」って言いたい。介護で笑いながら楽しく過ごしちゃったらいいんじゃないの?

【岡】今の辛い仕事を辞めて、こっちに来よう、と。

【瀧】そうそう、なんでみんなストレス抱えてるんですか、っていう。

【岡】確かに、クレアの人ってみんなものすごい笑顔。それこそ、彼らも自然と実践しているんでしょうね。

【瀧】そうであればうれしいですね。みなさんもぜひ介護業界に来て楽しく笑ってほしいです。

【岡】ありがとうございました!

編集者からの一言
いかがでしたでしょうか?
「二代目社長」と聞いてなめておりましたが、とんでもない。
将来を見据えて腰を据えてしっかり着実に働く姿、そして人間味にあふれている姿がかっこよかったです。クレアさんの施設に入ると一瞬にしてわかります。「あれ?利用者さんとスタッフが……めっちゃ仲良い。家族みたいや」本当にこれを感じます。
これからもでっかい家族をつくり続けてほしいと思います!!

岡勇樹(NPO法人Ubdobe代表理事)

この記事の寄稿者

岡勇樹(NPO法人Ubdobe代表理事)

介護のほんねニュース初代編集長。1981年 東京生まれ。3歳〜11歳までアメリカ・カリフォルニア州で生活。27歳で高齢者介護と障がい者支援の仕事を始め、29歳で医療福祉・音楽・アートを融合させた「NPO法人Ubdobe」を設立。近年は厚生労働省 介護人材確保地域戦略会議の有識者やNHK出演など多岐に渡る活動を展開中。(http://ubdobe.jp)

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