インタビュー

「90歳近い人に、生き様を教えてもらっている」。地域住民の交流の場「野ヶ谷の郷」を支える、四家綾子さんインタビュー

四家さん自身が74歳。東京都調布市深大寺にある野ヶ谷の郷の「80歳からでもできるボランティア」の精神とは?

四家綾子さん
東京の中心部から1時間ほど離れた調布市深大寺の近くにある、地域住民の交流の場「野ヶ谷の郷」。ボランティアの代表として運営に関わる四家綾子さんにお話を伺いました!

商店街の空き店舗、活性化したい行政、ボランティア、のタイミングが合って始まった

【四家】四家綾子といいます。昭和15年8月28日生まれの現在74歳です。

【工藤】74歳。お若いです(笑)

【四家】いえいえ。
「野ヶ谷の郷」というのは、(商店街の)空き店舗を貸して何かに使ってほしい方がいらしたのと、社協(社会福祉協議会)の中には人が集まる場所にしたらいいんじゃないかという考えがあったんですね。それで私たちはボランティアセンター運営委員会の中の15人中の3人で、何かやってもらえないかと言われて、お引き受けしたんです。

【工藤】なるほど。

【四家】店舗を貸して下さる方が、「だんだん高齢化してきて近所とのお付き合いがなくなってきているので、誰でも立ち寄れる場所を作ってほしい」といって。ここ、お寿司屋さんだったの。ずうっとカウンターがあって。それを調布市の活性化運動の助成金を社協に申請してもらって、改装してもらったの。(このあたりの商店街は)にぎやかに40年ぐらい前まではね、だんだんお店もなくなってしまって・・・

【工藤】シャッター通りのようになってきて、行政としても活性化をしたいということで?

【四家】私たちボランティアと、店舗のオーナー、金銭的に社協事務局がバックアップしてくれて、その三者の出会いと想い。それがいいタイミングで。

10年間、休んだのは震災後の1週間だけ。震災の翌日も「心の避難所」となった

【工藤】今、(オープンしてから)約10年ですよね?

【四家】10年です。11月で。火・木・土、朝9時から5時まで、今まで開けなかった日はないんです。
3.11(2011年の東日本大震災)のあと、1週間だけ閉めましたけど、祭日であろうと雨が降ろうと雪が降ろうとずっと開けた。

【工藤】震災の直後も1週間だけですか。

【四家】最初ね、震災の次の日もその次の日もやったんですよ。そのうち電気が来なくなって(※調布市はこのころ計画停電の対象区域となった)、1週間お休みしました。それだけです。
ビックリしたのは、3.11の地震が金曜日だったでしょ?(翌日の)土曜日が満員だったんですよ。みんな怖いから、一緒にいたいって。

【工藤】なるほど、家にいても暗いニュースしかないし、また揺れるかもわからないし。

【四家】いつまた揺れるかわからないし、怖いから一緒にいたいって。“心の避難所”ね。
今日開けたって誰も来ないと思うでしょ、普通。だけど開けたら満員、もういっぱいだった。

「80歳からでもできるボランティア」の精神が、年間3000人の利用者を支える

インタビューする後ろのホワイトボードにもサークルの予定がギッシリだ。

【工藤】火・木・土は「野ヶ谷の郷」の開設日で、それ以外は?

【四家】お貸ししてるんです。絵を描く会とかふれあいランチとか、パソコン教室とかパッチワーク教室とか。

【工藤】そうすると、ほぼほぼ、年中無休ってことですよね。

【四家】もちろん。お正月の年末年始5日間ずつお休みするので、365日中355日開いてるんです。

【工藤】だいたい何人くらいが利用されるんですか?年間で。

【四家】(絵を描く会などの)サークルの人たちにノートに書いていただいてるんですよ、何人ご利用されたか。これをね、集計したところ、1300人くらいいたの。だから(サークル活動以外も含めると)倍ぐらい。3000人弱ぐらいが出たり入ったり。

【工藤】利用者さんの年齢層というのは?

【四家】今、そうねえ、60代。スタッフが50代から60代の人が多いんです。私、ここを始める時にボランティアを募り、その時に誰でも自分の力と何かをしたいという気持ちがあればできる場にしたかったので、「80歳でもできるボランティアですよ」、という呼びかけをしたんです。それなので84歳ぐらいの人は3~4人います。一番若い人が30歳くらいですけど。
こういう場所で困ることって、まずゴミ問題だと思うんですよ。ここのスタッフは黙ってても全部持ち帰るの。だれかしら、それは私が感謝してる、みなさんに。ありがたいことですね。

シャキョウは写経?社協? 地域が抱えていた、福祉に対する温度差

「野ヶ谷の郷」は、市街地からバスで15分ほど離れた商店街の中にある。

【工藤】四家さんが思う、地域に「野ヶ谷の郷」があるメリットでなんだと思います?

【四家】私がここを始めた時に直面したのが、(調布市の)中心部との温度差。福祉に対する温度差。たとえばここに住んでる人で、「社協」って知らない人いっぱいいたの。深大寺が近いから、「シャキョウ」といったら、「写経」っていう・・・。社会福祉協議会があることを知っていただいたこと、市民活動支援センターを知っていただいたこと、それから、社協関連のパンフレットを置くとたまたま来た方が持って行かれる。

【工藤】そうすると最新の福祉の情報がここで得られる。

【四家】それから、出前講座もある。今年の12月にまた予定しているんですけども。今一番知りたいこと、身近なことをテーマにして、後期高齢者医療制度についてとか、介護保険制度についてとか、成年後見支援とか。出前講座などを利用して、勉強していただくチャンスを作ったこと。それが私にとってのメリットですね。

「90歳近い人に、生き様を教えてもらっている」

【工藤】利用者の方でご高齢の方が多いということですが、独居の方もいらっしゃいますか?

【四家】多いですね。去年・一昨年にいらして93歳で亡くなられた方がいたんですけど。1人で暮らしていて、ここができる前は本当に行くところがなくて、「そのへんでよく座ってました」とおっしゃって。ここに来るようになってからものすごく元気になって、デイサービスなども使わずに亡くなるまでおひとりで元気に過ごされたんです。亡くなる前の、前の、前の日ぐらいにここに来て笑ってらしたんです。

【工藤】そうですか、じゃあほんとギリギリまでお元気で。

【四家】「野ヶ谷の郷」のスタッフの人たちだけは、お葬式に立ち会って来てもらいたいと言われて、ちょっと感動で。

【工藤】ご家族の方から?

【四家】そうです。私の電話番号がノートに書いてあったんですって。息子さんから言われました。そういう時、やりがいを感じました。

【工藤】そうですよね、独居の高齢者の方の孤独を防いだりとか。

【四家】もう1人92歳の方がいらして、「ふれあいランチ」に歩いていらっしゃるんですよ、30分かけて。

【工藤】「ふれあいランチ」っていうのは、何か持ち寄るんですか?

【四家】いえいえ、私たちスタッフ3人が作るの。家庭料理ですよ?大したものじゃないんですけど。食べてもらうよりもおしゃべりが目的ですから。私が「ふれあいランチ」をやってる意味はね、90歳近い人たちが何人も「ふれあいランチ」にいるの、その方たちから生き様を教えてもらっているの。あと何人かお手本にしたい方いらっしゃるんですよね。

【工藤】スタッフさんにとってのメリットですね。

【四家】最大のメリット。たまにね、息子さんとか娘さんのご主人とか、車でお迎えにいらっしゃる時があるの。そこで「母がいつもお世話になってます」とおっしゃるけど、「とんでもありません。私たちがいろいろお勉強させてもらっている。こちらこそお世話になっているんですよ」と言うと、息子さんたちはね、安心したような顔になる。「母が役に立っているんだ」と。

地域を歩いて、知って、参加して、居場所を探してみてほしい

【工藤】最後に読者の方へメッセージはありますか?

【四家】たぶんね、どんな地域にも、知られていないこういう場所はあると思うの。ちょっと地域を歩いて見つけてみたらどうですか?もしそこが気に入ったらそこに参加して。参加してみることがいいと思うんです。そういう場所(自分の地域の居場所)、あると思いますよ。

野ヶ谷の郷は、空き店舗を地域交流の場として活用した「イノベーション型の小地域福祉活動の場」と言えるもの。地域に住む独居高齢者やその家族にとっての心のよりどころであり、利用する方々の生きがいを生み出す場である。また、そこに関わるスタッフにとって、人生の先輩から学ぶことは多くあり、人と人との交流を通じて、人生を価値あるものに変えていくような場でもあるのかなと思った。若い人にこそ、自分の住む地域で野ヶ谷の郷のような温かい交流の場を知ってもらいたい。そのような場がなければ進んで生み出してほしい。と私は思います。(工藤)
工藤裕也

この記事の寄稿者

工藤裕也

介護のほんねニュースの街角インタビュアー。主に小地域福祉活動を中心とした「草の根の活動」をされている方々にスポットをあて、ほっこりと温かみのある情報を発信します。

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