寄稿

介護は良くなるのか?介護報酬改定から日本の未来を本気で考えてみる

介護報酬改定は、私たちのお金の使い方を決める大事な話です。難しい単語が多すぎて理解するのをあきらめてしまっていませんか?そうこうしているうちに大事なことはどんどん決まりますよ。

介護報酬改定

介護報酬改定内容の全容が明らかに

ついに2月6日、平成27年度(2015年4月から)の介護報酬改定がどうなるのか具体的な発表がありました。介護報酬とは介護サービスの値段のことで、「この介護サービスの料金はいくらですよ」ということが厚生労働大臣によって定められています。介護事業所はサービスを提供するとそれに基づいた介護報酬を得る仕組みになっているので、事業者にとっての収入の見直しが決まったということです。

今知らないと老後に気付いてからでは遅い

介護と縁遠い人はすでにここで難しい単語のオンパレードでそっと閉じたくなったかもしれません。
でも、介護報酬は介護サービスの価値を表すものであり、そのもとになっているのは、介護を利用する人が払う利用料や、税金、40歳以上の国民が納める介護保険料。ということは、私たちが支払っているお金を介護でどう使うか、という大事な話が決まったわけです。
もしここで、単に「介護サービスの料金がこのように改定されました」という情報をお知らせしただけだと、漫然と「ああ、そうか」程度で終わってしまうと思います。大事なことは、今どんな課題があって、その課題を解決するためにどんなお金の使い方がなされるのかを知ること。そしてそのお金の使い方は最適なのか議論できるようになること。1人でも多くの人が介護の現状を知り議論できるようにならなければ、未来は良くなっていかないと思っています。
そこで介護報酬の改定から少し掘り下げてどんな未来につながるのか考えてみたいと思います。

そもそも今、介護はどんな問題があるのか?

というわけでまずは日本がどんな課題を抱えているのか今一度ざっと整理してみましょう。

問題1「介護が必要な高齢者が、とてつもなく増える」
  • 現時点で、国民の4人に1人が65歳以上という超高齢社会
  • 75歳以上の3人に1人は支援または介護が必要
  • 10年後の2025年には国民の4人に1人が75歳以上の後期高齢者
  • 同じく2025年には65歳以上の5人に1人が認知症

  • 問題2「介護の仕事に就く人が、圧倒的に足りない」
  • 2025年までには約250万人の介護職従事者が必要
  • 今の段階で予定している施策をすべて実行したとしても30万人不足する予測

  • 問題3「介護に使えるお金が、圧倒的に足りない」
  • 高齢化に伴って、年金、医療、介護といった社会保障費が増大
  • すでに社会保険料だけでは足りていないので国や自治体からの税金を投入している状態(

  • さて、大きく分けるとこの3つの問題を抱えている今、介護報酬の改定がどうなったのか見てみましょう。

    介護報酬改定の中身とは?問題の解決につながるのか?

    今回の改定内容の一部を抜粋して紹介します。

    全体的には引き下げ
    さまざまなサービスがある介護ですが、全体的に見ると介護報酬は2.27%引き下げ。これまでと同じサービスを提供している事業者は収入ダウン。問題3にあるように、使えるお金が足りない中での策でもあります。

    通所介護は、認知症ケアや介護度が高い人のケアで加算
    認知症が進行した人や介護度が高い人のケアを行うデイサービスには、通常よりも加算されるようになります(認知症加算と中重度者ケア体制加算)。
    特別養護老人ホームなどの入居型の施設が同じように認知症が進行した人や介護度が高い人を受け入れたとしても、加算されません。施設入居より公費負担の少ない在宅介護を加速させたい狙いです。

    ほかにも細かくさまざまな部分で改定がされましたが、全体的には引き下げということは介護事業者の収入が減るということ。それによって働き手の賃金が削られるのではないかという懸念があります。そうすると問題2の介護職が足りない問題がますます深刻化しそうですよね。そこで、

    処遇改善加算
    介護職員の賃金を平均で月1万2000円アップできる財源を確保しました。

    ここまでの話をまとめると、

    介護に使えるお金が少ない

    介護報酬を全体的に引き下げる一方、必要なところは加算

    それでは働き手が減りそう

    処遇改善加算で賃金UP

    ということで、一見、めでたしめでたし、のように思えますが・・・、これで老後は安泰なのでしょうか?

    介護について、もっと社会が議論すべきこと

    たとえば、こういった議論が残されているのでは、と感じています。

    議論1「賃金を月1万2000円UPすることが離職を食い止めるのか」
    確かに介護職員の離職の背景には給与水準の低さが挙げられます。しかし、「今よりお給料が1万2000円上がるなら介護の仕事を始める・続けるわ」という人がどれくらいいるのか?どこも議論していないように思えます。
    事業者からすれば介護報酬引き下げで収入は減っているわけですから、月額の給与をアップする代わりにボーナスをカットすることなど賃金がアップするとも言い切れません。

    議論2「一人暮らしの高齢者が増える中、在宅介護は主流になるのか」
    核家族化が進み、日本では多くの高齢者が一人暮らしをしています。家族がいない高齢者もいますし、家族がいたとしても離れて暮らしているケースが多くなっています。
    在宅介護のほうが“家族”や“自宅”という資源を活用できるわけですから公費が掛からなくなるのは理解できますが、男性で1割、女性で2割の高齢者が一人暮らしという状況)で、在宅介護は主流になるのでしょうか。ほかの問題の引き金にならないでしょうか。

    議論3「介護の問題を、介護だけで解決するのか」
    高齢者が増えるほど要介護者が増えて人員もお金も足りなくなる、という今の構造のまま個々の問題を解決していくのでしょうか。
    そもそも介護の問題を介護の世界だけで解決しようとしていることに無理があるように思います。人もお金も最小限でできるケア方法や機械を研究すること、社会保障費を確保するために経済を活性化させること、など、一見介護とは遠いことが、問題の解決に直結するのではないかと思います。

    みなさまからの意見を大募集!

    ここまで介護報酬改定をキーに今の日本が抱えている問題や今後の日本について考えてみましたが、もっとたくさんの人が議論するようになっていくと良いなと思っています。そこで、みなさまにもぜひ考えていただき、その考えを寄せていただきたいです。

  • 介護報酬改定で賃金はUPすると思いますか?
  • 月1万2000円の給与増なら介護の仕事を始めたい・続けたいと思いますか?
  • どうすれば日本が抱える3つの問題(要介護者の増加、介護職員の不足、社会保障費の不足)が解決すると思いますか?
  • などなど・・・

    コメント欄や 介護のほんねFacebookページTwitter でもご意見をお寄せください!
    一人でも多くの人がこの問題に目を向けること。それが私たちの老後に繋がります。
    横尾千歌

    この記事の寄稿者

    横尾千歌

    介護のほんね」ディレクター。介護の用語や介護関連の仕事のこと、高齢者向けの住宅事情など、今まで縁遠かった人でも読みやすいよう図や絵とともに情報を発信します。

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