障がい児やその家族の支援から釣りグッズの制作・販売まで、マルチに手掛けるサンフェイス代表の久田さんに現在の取り組みや福祉への想いを語っていただきました!
支援のクオリティを上げるために会社を作った
【岡】サンフェイスは今、NPOと株式会社とがあるじゃないですか。あれってどういう棲み分けなんですか?【久田】もともとうちはNPOだけでヘルパーステーションとかやってたけど、あるときに、(ヘルパーステーションなどを利用する障がい児の)お父さんお母さんのほうが我慢し始めて。たとえばあるスタッフがちょっとミスったけど、ボランティアで来てくれとったしまあオマケしとこうかなというか。で、それまでずっと我慢し続けてやっと口開いたら、もうやめる、っていうレベルまで達しているっていう状況があって。
なんかそれって結局、障がいを持ってる子どもらにしわ寄せが行ってて、それって俺らの中でちょっと甘えがあるんちゃうかなと。あえて株式にすることで、支援のクオリティが上がるかなと。始め散々文句いわれたけど、結局お前らNPOとかいって金儲けやんけみたいなのあったけど、でも、ちゃんとクレームとして上がってくる。もううちとしては願ったり叶ったりで、文句いってくれたほうが良かったので、そこでクオリティを上げていこうと分けたのが一番初めです。
【岡】今そうすると、株式会社のほうでは、デイと?
【久田】デイサービス3つと、ヘルパーステーションと、あと、ケアホーム。ほかは、サンリット(SUNLIT)っていう発達障がいの子をメインにした塾。カフェや音楽スタジオ、たこ焼き屋なんかもやってるよ。
NPOのほうではボランティア活動をメインで。障害のある子は、成功体験も失敗体験も両方ないっていう子らが圧倒的に多い。その子たちのために月に1回はアウトドアイベントをやってる。あとは、お父さんお母さんは習わせたいことがあるんだけど、行った先で「スタッフがあと1人必要だから料金は倍」と言われたり、障害手帳があるだけで断られたりっていうことが昔はよくあったんで、ドラム、ギター、アート教室とか。
小学生が「将来サンフェイスで働きたいねん」と言ってくれる
【久田】あとは、発達障がいの理解の為の訪問授業でほぼ毎週小・中学校を回ってて。そこで伝えてるのは、障がいの有無に関係なく「目の前にいる人がどこに困っているか?」というのを考えて関わることってすごい重要だよっていうこと。それから、環境というのが整えば、障がいっていうのはなくなるかもしれないよ、と。訪問授業って子ども達への障がいへの理解だけじゃなく、教員の先生への啓発も含め、色んな効果があって、最近で言えば、福祉に憧れる小学生が出てきたのよ。実際、「将来サンフェイスで働きたいねん」っていう小学校5・6年生がいたり。
【岡】マジで?すごい
【久田】なにかだれかの助けになりたいんだって言える小学生が1人でもおるっていうことは、俺の中ですごい、プラスに思えていて、そういう子をもっともっと増やしたい。
福祉作業所の持つ商品・技術を、本当に欲しい人のところへという「流れ」を
【岡】今、CURRENT(以下カレント。※釣りグッズの制作・販売プロジェクト)はNPO?【久田】NPO。福祉作業所って実は凄い技術とかを持ってて、いろんな作業所を訪問するうちに「これいいよね」みたいなものが結構あんねんけど、ターゲットの絞り込みがイマイチで。ふつう企業さんって、年齢はどれくらいで、子どもが何人いて、それが結婚してるか離婚してるか、とかまで絞り込みをしてるものがたくさんあるけど、作業所はそれがほとんどない。ホンマに欲しいって思う人のところに、ちゃんとフィットした商品を落とし込んでいくっていうことが作業所には必要やと思って。じゃあ自分が釣り好きやし、釣りしてるときにこんなん欲しいなと思えるものを落とし込めたら面白いかもなと始めたのが、カレント。
【岡】カレントって、あの、サーフィンで沖に連れていかれるやつですよね。
【久田】そうそう、そういう「流れ」っていう意味があって、フィッシング業界にも福祉業界にも新しい「流れ」を作れたらいいなと。
入ってみると、やっぱりいろんなところがフィットしていた。今バスフィッシングっていうのは外来魚問題なんかで色々と物議を醸し出してるでしょ?でもここにきて今まで趣味の世界で突っ走って来たのでなかなか社会的な活動もしてこなかった現状がある。そこにうちが福祉作業所の技術を使ったアパレル雑貨ブランドとして手を挙げたので、社会的な意味も込めてバスプロや企業がすごく注目してくれたり。あと、作業所のロット数と、釣り業界のスペックがすごくフィットしてて、釣りは消耗品もたくさんあって(ニーズが)切れない。ずーっとエンドレスで回っていくから、すごくいい。
作業工賃も比較的高いものが多いしね。
CURRENTのinstagramより。ハイクオリティな商品画像が並ぶ。
まずは作業所のみんなのモチベーションを上げたい
【岡】カレントって業界の中でどういうふうになっていくイメージですか?【久田】まず、作業所のみんなのモチベーションを上げたい。自分らが世の中で必要とされていて、いろんな人が手にとって喜んでくれているんだということを知ることで、働くモチベーションになっていく。そのあとにお金がついてくる。そうなるためにも、釣りのみならず、アウトドア全般でやっていけたらなと。
【岡】カレントみたいなブランドを増やすイメージですか?
【久田】そうっすね。この仕事をやってる中で作業所の技術っていうのはいろんなところが求めていて、作業所が知らんだけで、だからそこをマッチできれば全然回っていく。作業所の人は、ニーズがあるのにそれを知らない。だから売れないものを作ってしまう。でもニーズがあるところとうまくフィットすれば、お互い良くなっていくんちゃうかっていうイメージがあって。
「俺なんて」じゃなく、「あなただからこそできる」のが福祉
【久田】今の福祉に一番足りない部分は、最近よくいうねんけど、スペシャリストはもういいよって。スペシャリストより、どっちかっていうとゼネラリストというか、いろんな分野の知識とか、いろんな分野の思いを持ってる人が今の福祉には一番必要になって来てて。実際その障がい持ってる人ら、もちろん高齢者もそうかもしれないけど、いろんなタイプの人がいてて、いろんな趣味の人がいてて、そこにちゃんとフィットするのが俺らの仕事なわけで。(※注)福祉って「こんな俺にでもできるかな」みたいなんで入ってくる人結構たくさんいるんだけど、無理で(笑)。逆だよっていう。「なにもできないこんな俺でもできるかな」じゃなくて、「あなただからこそできるんだよ」っていう。だからお前がなにもできないんじゃなくて、探してごらんって言いたい。
【岡】「俺なんて」みたいな子、いっぱい来ます?
【久岡】「俺なんて」みたいな子もいてるし、「こんな俺でもできるかな」みたいな人も。あとは色んな考え方を持ってる人でないと、福祉に向かないんじゃないかなというか、続かないんじゃないかな。こうしたら良くなるんじゃないかなとか、なんかちょっとしたことをこれに繋げれるんちゃうかなとか、そういう面白い発想や考え方を持ってる人でないと続かないし、楽しめない。
福祉が変わる仕組み、その「流れ」がつくれれば一番ベスト
【岡】CURRENTがどんどんブランドとコラボして、いい感じの事業になってきた時、じゃあ今度これをまた株式会社のほうでやろうみたいにはならないんですか?【久田】今のとこはないかな。今のとこは。どっちかというと、お金を回したいというより、システムをつくりたい。業界と業界をつなぐシステムができれば福祉が変わっていくイメージがあって。今ってそういう時代。福祉+デザインって、グラフィックとかじゃなく、その仕組みそのものをデザインしたいなというか。 そういう流れが作れたら、「カレント」やね、その「流れ」が「ウネリ」になってどんどんみんなを巻き込んで行ければ一番ベストなのかな。
サンフェイスでは利用者の大半が18歳以下の子ども達です。最重度の障がいを持つ子からほとんど解らないくらいの軽度の障がいを持つ子まで様々です。
ですがどんな障がいを持っていても、同じだけの、もの凄い「可能性」を皆秘めています。
その「可能性」をいかに引き出して行くか?が重要になってくるのですが、「介護福祉士を持っている」「保育士の資格を持っている」というだけでは、可能性は引き出せません。
その子の持っている「可能性」を見つけ出し、それを伸ばして行ってあげる際に、ゼネラルにモノをとらえる事が大切だと思っています。
近日このインタビューの第二弾を公開予定!お楽しみに!
久田さんは10月19日(日)に開催が迫る【Human Welfare Conference Japan スピンオフセミナー】in 六本木ヒルズ にも登場予定!!ご来場お待ちしております!
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この記事の寄稿者
岡勇樹(NPO法人Ubdobe代表理事)
介護のほんねニュース初代編集長。1981年 東京生まれ。3歳〜11歳までアメリカ・カリフォルニア州で生活。27歳で高齢者介護と障がい者支援の仕事を始め、29歳で医療福祉・音楽・アートを融合させた「NPO法人Ubdobe」を設立。近年は厚生労働省 介護人材確保地域戦略会議の有識者やNHK出演など多岐に渡る活動を展開中。(http://ubdobe.jp)