理学療法士。佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了。専門は生活期リハビリテーション。病院・デイサービス勤務後2014年合同会社松本リハビリ研究所設立。全国の老人ホーム、デイサービス、介護施設でリハビリ介護のアドバイザー、生活リハビリセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など活動中『転倒予防のすべてがわかる本 』(講談社)など著書多数。
YouTubeチャンネル「がんばらないリハビリ介護」/オンラインサロン「松リハLAB」
ケアマネジャーとは「介護をするうえで大事なパートナー」
ケアマネジャーは介護サービスを受ける際の大事なパートナーです。利用者に適した介護保険サービスが受けられるようにケアプラン(介護サービス計画書)の策定をはじめ、大事な役割を担います。ケアマネジャー次第で利用者の生活が左右されるともいえます。ケアマネジャーの選び方を紹介する前に、まずは仕事内容やケアプランについて解説しましょう。
ケアマネジャーの仕事とは
ケアマネジャーは、利用者の代わりに介護サービスのマネジメントをおこないます。もちろん資格が必要で、ケアマネジャー試験に合格する必要があります。試験を受けられるのは、医療、介護、福祉などの資格を持った実務経験5年以上の人です。こうした厳しい条件をクリアした人だけがケアマネジャーになれます。
ケアマネジャーの仕事内容は以下の通りです。一般の人では対応が難しい内容をサポートします。
- ケアプランの作成
- 介護サービスの適切な提案
- 介護保険申請代行
- 介護サービスを受けるための各種手続きや連絡・調整
また、ケアマネジャーは、介護の不安・悩みの相談に乗ってくれます。十分なサポートを受けるためにも、利用者と家族、ケアマネジャー間で信頼関係を築ける相手を選ぶことが大切です。
ケアプランとは
ケアプランとは、介護サービスを利用する際に必須であり、どのような介護サービスを受けるかを記した「介護サービス計画書」のことです。
利用者自身や家族がケアプランを作ることも可能ですが、ケアマネジャーに任せることで、介護給付の上限を考慮しながら適切な介護サービスを組み合わせたプランが作成できます。なお、介護保険が適用されるため、無料でケアマネジャーに依頼できます。ほとんどの方がケアマネジャーにケアプランの作成をお願いしています。
ケアマネジャー(ケアプラン)の質は「コミュニケーション」によって決まる
納得できるケアプランをつくるうえで大切なのは、ケアマネジャーとのコミュニケーションです。
日常的に悩みを聞いてくれるケアマネジャーであれば、依頼者が納得できるケアプランをつくってくれます。反対にコミュニケーション不足のままだと、意図していないケアプランになる可能性があるので注意が必要です。
安心できるケアマネジャーに任せたときの例
良いケアマネジャーに任せた時の事例を紹介します。
利用者のAさんは他人に言いにくいお金の悩みを抱えていました。担当のケアマネジャー・Bさんに相談したところすぐに相談に乗ってくれました。ケアマネジャー本人が対応できない問題だったので、最終的にはAさんが対応しましたが、Bさんは機転をきかせて関係各所に連絡をとって調整してくれたので、安心して日常生活を過ごせるようになりました。
Bさんは、ケアプラン作成完了後も親身になって相談にのってくれています。継続して丁寧に対応してくれるおかげで、悩みが出てきても抱えこまずに生活できるようになりました。
不安になるケアマネジャーに任せたときの例
介護サービスに対して不安になるような悪いケアマネジャーの事例を紹介します。
ケアマネジャーのCさんはケアプランを作成する際に、利用者Dさんやその家族とほとんど相談せず、自分でなんでも決めていました。これではDさんは安心して介護サービスを受けられません。
また抱えている件数が上限に近いのか、対応が雑で「早くさばいてしまいたい」と考えているのが伝わってきます。手際よい対応ならいいのですが、雑な対応に悲しくなってしまいます。結果、納得できないケアプランを提案されました。
他にも、ケアプラン作成後に連絡が途絶える、相談しても返事や回答が放置される、介護サービス事業者に丸投げして何の対応もしてもらえないといったケースがあります。
不安を感じさせるようなケアマネジャーにあたってしまった場合は、ケアマネジャーの変更を依頼しましょう。ケアマネジャーを変更する方法は、記事の後半にて解説します。
安心できるケアマネジャーの選び方
ここまでケアマネジャーの重要性について紹介してきました。ではどうやってケアマネジャーを選べばよいのでしょうか。ポイントを解説します。
相談しやすい
話をきちんと聞いてくれて、相談しやすい人柄であることが重要です。ケアマネジャーには守秘義務があるため、利用者本人は抱えている悩み、疑問、不安を正直に相談できます。相談に対して親身にアドバイスしてくれるケアマネジャーを選びましょう。
知識や経験が豊富
ケアマネジャーの経験や知識は、利用者にとって安心できる材料の1つです。もともとケアマネジャーは、医療・介護・福祉の国家資格を持っていたり、生活相談員をしている人しかなれません。そこにケアマネジャーとしての知識や経験が積み重なれば、利用者にとって最適なアドバイスやサービスを提供できる確率が高まります。
迅速かつ柔軟な対応力がある
ケアプラン作成後に利用者の状況が変わり、プランの変更を余儀なくされる場合もあるため、ケアマネジャーには素早い対応が求められます。さらに、ケアプラン後の利用者の相談などにもすぐにアドバイスできるような対応スピードの速さが、安心できるケアマネジャーの条件です。
利用者と家族に敬意を払える
ケアマネジャーは、利用者と家族に対して公平な態度で臨まなければなりません。話す相手によって態度を変えるのはもってのほかです。利用者や家族に敬意を払ってくれるようなケアマネジャーならば、安心して任せられます。
担当件数が少なく余裕がある
ケアマネジャーが担当している現状の件数を判断基準にするのも選択肢の1つです。ケアマネジャーは最大40件まで担当可能ですが、担当件数が多ければ多いほど、一人ひとりの対応に時間をかけられません。担当件数が少なければ、それだけ利用者の相談や対応に充てられる時間も増えます。ケアマネジャーに相談する時間に余裕が欲しい方は、担当件数も考慮に入れて検討しましょう。
実績がある居宅介護支援事業所に属している
実績があるしっかりとした居宅介護支援事業所の所属であるかどうかを確認してみるのも一案となります。それだけで信頼できるケアマネジャーの基準にはなりませんが、1つの指針にはなります。
同じ市区町村に在住している
体調の不安が大きい利用者であれば、早急な対応が求められる場面も出てきます。そういった場合は、ケアマネジャーも同じ市区町村に在住していると安心です。また、介護サービスにはローカルルールがあり、それに沿った対応が求められる場面もあります。同じ市区町村の所属かどうかも選択肢として頭に入れておくとよいでしょう。
ケアマネジャーは変更できる
ケアマネジャーの対応に納得できなければ、担当を変更できます。信頼できないケアマネジャーに我慢を続ける必要はありません。変更したい場合は、以下に相談してみましょう。
- ケアマネジャー本人
- ケアマネジャーが所属している居宅介護支援事業所
- 地域包括支援センター
- 市区町村の介護保険課
- 他の居住介護支援事業所
ケアマネジャー本人や所属事務所に伝えにくいときは、地域包括センターや市区町村の介護保険課でも可能です。また、ケアマネジャーを変更しても現在受けている介護サービスは継続できます。
より良い介護生活を実現するためにケアマネジャーは慎重に選ぶ
今回は、ケアマネジャーの重要性と後悔しないケアマネジャーの選び方について紹介しました。人気や知識・経験だけではなく、利用者本人にとって話しやすく信頼でき安心して任せられるケアマネジャーを選びましょう。
またケアマネジャーと上手に付き合うためには、家族や利用者の希望を具体的にケアマネジャーに伝えることも大切です。いまの状況に不満がある人は、一旦どんな希望や不安があるか書き出して、ケアマネジャーに伝えてみるのもいいでしょう。
この記事の寄稿者
介護のほんね編集部
年間1万件以上の老人ホーム探しをサポートしている介護のほんね編集部です。介護に関する情報を、認知症サポーターの資格を持つスタッフが正しく・分かりやすくお届けします。