この記事の監修
吉川友
作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員・介護認定審査員
作業療法士取得後、介護老人保健施設、一般企業、訪問看護、通所介護に務める。作業療法士養成学校にて非常勤講師を務めつつ、現在、通所介護での機能訓練指導員や介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護認定審査員として地域と関わり、主として高齢者の生活期リハビリテーションを通じて、生きがいづくりの支援をしている。
要介護認定とは
要介護認定とは、高齢者が日常生活を送るうえで介護の必要な度合いで、自立、要支援1〜2、要介護1〜5の8段階に分かれています。
要支援 | 要介護 | |
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状態 | 一人で生活できるレベルだが、部分的に介助が必要 | 運動能力の低下や思考力や理解力も低下している |
要介護認定の分類 | 要支援1〜2 | 要介護1〜5 |
利用可能なサービス | 介護予防サービス | 介護サービス |
認定を受けて要支援1以上と判断された場合、原則1割(収入によって2~3割)の自己負担で介護保険サービスを利用できます。ただし要介護度によって利用できるサービスが異なります。
要介護認定を受けるまでの流れ
要介護認定を受けには、まず地域包括支援センターに相談・依頼するか、市区町村の窓口で直接申請します。地域包括支援センターとは、介護・医療・保健・福祉などの高齢者の生活に関する相談を受け付けている総合窓口です。各自治体が主体となり、中学校の校区に1カ所を目安に設置されています。
次に認定調査(調査員による聞き取り調査)が行われます。その後、かかりつけ医が作成する主治医意見書と認定調査のデータに基づき、コンピュータによる一次判定が行われます。一次判定の結果と主治医意見書をもとに、介護認定審査会による二次判定を経て要介護度が決まります。
要介護認定を受けるまでの流れ
- 要介護認定の申請
- 認定調査
- 主治医の意見書の作成
- 一次調査
- 二次調査
要介護認定の認定調査とは
ステップ2の「認定調査」について詳しく解説していきます。申請書の提出後に認定調査が始まります。初めにケアマネジャーなどの資格を持つ認定調査員1名が、申請者の自宅を訪問し、本人やそのご家族にヒアリングをします。
ヒアリング内容は調査票の内容に基づいて決まっています。調査票は以下の2つのカテゴリーに分かれています。
カテゴリー | 主な質問項目 |
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概要調査 |
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基本調査 |
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各項目に対して、ヒアリングを通して「能力」「介助の方法」「問題行動などの有無」を重視しながら認定調査員が評価をします。
認定調査員の質問項目
次に、認定調査票の概要調査票に記載されている質問項目をご紹介します。実際に質問される内容ですので、あらかじめ内容を把握しておくことで認定調査までに準備ができます。
1-1 麻痺等の有無について、あてはまる番号すべてに◯印をつけてください。 |
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1-2 関節の動く範囲の制限の有無について、あてはまる番号すべてに◯印をつけてください。 |
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1-3 寝返りについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-4 起き上がりについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-5 座位保持について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-6 両足での立位保持について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-7 歩行について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-8 立ち上がりについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-9 片足での立位保持について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-10 洗身について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-11 つめ切りについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-12 視力について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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1-13 聴力について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-1 移乗について、 あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-2 移動について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-3 えん下について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-4 食事摂取について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-5 排尿について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-6 排便について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-7 口腔清掃について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-8 洗顔について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-9 整髪について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-10 上衣の着脱について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-11 ズボン等の着脱について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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2-12 外出の頻度について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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3-1 意思の伝達について、 あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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3-2 毎日の日課を理解することについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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3-3 生年月日や年齢を言うことについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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3-4 短期記憶(面接調査の直前に何をしていたか思い出す)について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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3-5 自分の名前を言うことについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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3-6 今の季節を理解することについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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3-7 場所の理解(自分がいる場所を答える)について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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3-8 徘徊について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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3-9 外出すると戻れないことについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-1 物を盗られたなどと被害的になることについて、 あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-2 作話をすることについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-3 泣いたり、笑ったりして感情が不安定になることについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-4 昼夜の逆転があることについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-5 しつこく同じ話をすることについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-6 大声をだすことについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-7 介護に抵抗することについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-8 「家に帰る」等と言い落ち着きがないことについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-9 一人で外に出たがり目が離せないことについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-10 いろいろなものを集めたり、無断でもってくることについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-11 物を壊したり、衣類を破いたりすることについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-12 ひどい物忘れについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-13 意味もなく独り言や独り笑いをすることついて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-14 ひどい物忘れについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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4-15 ひどい物忘れについて、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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5-1 薬の内服について、 あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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5-2 金銭の管理について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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5-3 日常の意思決定について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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5-4 集団への不適応について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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5-5 買い物について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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5-6 簡単な調理について、あてはまる番号に一つだけ◯印をつけてください。 |
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認定調査の前にしておくべき心構え
人によっては認定調査のヒアリングの際に、強がって見せたり、認知症のために事実をうまく伝えられなかったりする場合があります。ここでは家族が知っておきたい、認定調査前の心がまえを紹介しましょう。
介護の状況をメモしておく
普段感じている困りごとをきちんと把握してもらうためにも、介護の状況について詳しくメモを取るようにしましょう。「誰が、いつ、どのような」介護をどれぐらいの頻度で行い「どのようなトラブルがあったのか」を箇条書きにして残すだけでもOKです。
「調査員にとっさに質問をされて頭が真っ白になってしまった」「伝えたいことを伝え忘れてしまった」という経験をした方も多くいます。家族として実際に介護で苦労している点や大変なことを記載したメモがあると質疑応答の際にもスムーズに受け答えができます。
特に、認知症は時と場合によって表出する症状が変わります。日頃から本人の行動を時系列で細かくメモしておくと、認定調査時には分からなかった実態を理解してもらいやすくなります。そして、より適性な(実態に近い)審査結果を得るには、一か月のうちに何回ぐらい、一週間のうちに何回ぐらい、一日のうちに何回ぐらいなどの頻度を伝えることがポイントです。
本人だけでなく家族が立ち会ってアシストする
認定調査のときは、本人だけでは正確に答えられない可能性があるので、できる限り家族も立ち会いましょう。
特に認知症が進行している場合は、物事を順序立てて話すことはもちろん、事実をきちんと伝えることが難しい可能性があります。そのため、本人への聞き取り調査の際はご家族の方が一緒に同席をし、必要なタイミングでフォローや訂正をしていくよう心がけましょう。
ただし、一緒に同席した時には、あくまで本人が中心となって話をしてもらってください。家族の意見は調査後に本人のいないところで調査員に伝えることもできますので、「本人の前では伝えにくいことがあるのですが」と状況に応じて対応してもらえるよう事前に伝えておくといいでしょう。
強がらずに事実を素直に答えることを徹底する
高齢者によっては、介護が必要なのにも関わらず強がって「大丈夫」「問題ない」と答える方も多くいます。
すると介護が必要なのに、認定が下りないといった事態に陥ってしまうことがあります。プライドや体裁は抜きにして、困り事や心配事は遠慮なく実情をありのまま伝えることが重要です。そのため家族がそばでアシストしましょう。
あらかじめかかりつけ医とコミュニケーションをとっておく
要介護認定を受ける際、主治医の意見書が重要な判断材料となります。普段から主治医に生活の中での困り事、介護の様子などを伝えておくと意見書が濃いものになります。特に利用したいサービスがある場合は具体的に伝えておくといいでしょう。
結果に納得いかない場合は再調査を依頼できる
判定内容に納得ができない場合は、以下の2パターンで再調査を依頼できます。
- 再審請求(不服申し立て)
- 区分変更申請
介護保険審査会に対して再審請求を求め、再調査の依頼ができます。ただしこの場合、申請した内容を取り消すために数カ月かかります。
素早い対応を望む場合は「区分変更の申請」を検討してみましょう。こちらは次のお更新を待たずして再度認定調査をするものです。申請には再度主治医の意見書が必要になります。結果は1~2カ月ほどでわかります。再調査よりも短期間に手続きを終えられるのでこちらの方法がより現実的です。
家族が事前に準備をして本人をアシストする
介護保険サービスを利用するにあたって「要介護認定」は必須です。ただし本人だけが調査を受けると、意にそぐわない結果になる可能性もあります。介護をしている家族が事前に準備をして、当日は立ち会うことをおすすめします。
この記事の寄稿者
介護のほんね編集部
年間1万件以上の老人ホーム探しをサポートしている介護のほんね編集部です。介護に関する情報を、認知症サポーターの資格を持つスタッフが正しく・分かりやすくお届けします。