東京都江戸川区にある介護付き有料老人ホーム「ラ・ナシカこまつがわ」。1フロア約10名、全32室の小規模でアットホームな施設です。入居者様の平均年齢は80代半ば、平均要介護度は2.7となります。今回は、小規模かつ開設14年目という長年の運営ノウハウを持つ施設だからこそ提供できるサービスについてインタビュー。施設長の塚本 寛和(つかもと ひろかず)さん、運営元の株式会社シダー主任・髙橋 邦弘さん(たかはし くにひろ)さんにお話を伺いました。
小規模だからきめ細やかなケアができる
ーーラ・ナシカこまつがわの特徴を教えてください。
当施設は大きく3つの特徴があります。「小規模な施設であること」「ご家族参加型の企画が充実していること」、そして「ホーム専属の認知症専門医がいること」です。
ーーまずは「小規模施設」について伺いたいです。現在、ホームには何名の方が入居されているのですか?
ラ・ナシカこまつがわには現在28名の方が入居されています。少人数の施設ですので、アットホームな雰囲気が魅力です。
ーー小規模施設であるメリットは何でしょうか?
人数が少ない分、入居者様一人ひとりの小さな変化を見逃さないことです。例えば「普段問題なく歩いているはずの入居者様が足を引きずっている」といったような「毎日見守っていないとわからない変化」をキャッチできます。
またラ・ナシカこまつがわでは、全ての入居者様のケアプランや生活習慣、性格などを全職員が把握しています。そのため、入居者様一人ひとりの個性にあったケアを常に提供できるんです。介護付き有料老人ホームのなかには、入居者様の数が100名を超えるような施設もあると思います。当ホームは人数が少ないからこそ、入居者様全員について把握できます。
家族が気軽にホームに来られる「イベント」企画が豊富
ーー2つ目の特徴の「ご家族参加型の企画」は、具体的にどんなことをされているんですか?
現在は新型コロナの影響で難しくなったのですが、以前はご家族を招いてのイベントを毎月おこなっていました。ホームのベランダから江戸川の花火大会を見たり、近くの小松川公園にお花見に行ったり。大変好評で、ゲストの数が入居者様の数を上回ることもありました。
ーー大盛況ですね! 入居者様もかなり喜ばれるでしょうね。
はい。特にイベントが豊富だとお孫さんが来る機会が増えますので、入居者様はとても喜ばれていました。やっぱりお孫さんに会えると、入居者様の笑顔が段違いなんですよね(笑)。その表情を見ると、私たち職員も「イベントを企画して本当に良かったな」と思えます。
ーー定期的にイベントを企画するのは大変ではなかったですか?
当ホームは2022年で開設14年目を迎えますので、イベントを開催するときの段取りがある程度できあがっているんです。職員も慣れている者が多く、他の施設と比べると日常業務に大きな負担がかかることは少ないかもしれません。
ーー現在はコロナ禍ですが、ご家族がホームの様子を知れるように工夫されていることはありますか?
ホーム内でのイベントの写真や、入居者様との懇談会の議事録をお送りしています。また、オンライン設備が整ったことで海外に住むご家族が入居者様とオンライン面会できるようになり喜んでいただいています。
認知症専門医が身近にいるから、症状や服薬についてすぐ相談できる
ーー続いて3つ目の特徴を教えてください。
ホーム専属の認知症専門医がいることです。2週に1度往診に来ているほか、入居者様に対する薬の処方、また症状への助言をおこなっています。体調についてすぐ相談できる専門家が身近にいることで、入居者様に安心していただけるようにしています。また、私たちホームの職員も助言をもらえる体制です。
ーー認知症専門医とうまく連携して、入居者様のケアにつながった事例はありますか?
以前、入居後に徘徊などの問題行動が出てしまった方がいらっしゃいました。ご入居前は全く症状が出ていなかったため、ご家族も戸惑っていたほどでした。そこで当ホームから認知症専門医に相談したところ、「入居者様が以前送っていた生活リズムに戻す」「お部屋になじみのある雑貨を置く」などの助言が得られました。
ーーその後、入居者様の様子はいかがですか?
ご入居当初のような症状は改善されました。ご自宅に住まれていた頃の環境に近づき、ホームでの生活に安心感を持っていただけたのが良かったと思います。また、入居者様の居室からご家族に電話できるような設備も用意しました。「すぐ家族に連絡できる」という意識があることで、少しでも不安を払拭できたのではないかと思います。
参加率9割! 機能改善の事例も多い「こまつがわ」のリハビリ
ーーラ・ナシカこまつがわはリハビリも大きな強みなんですよね。
はい。当ホームではリハビリを通してお元気な体を維持していただき、生きがいにつなげることを大切にしています。体操の内容は、運営元の株式会社シダーがリハビリ病院事業で培ってきたノウハウを生かした独自のプログラムです。現在、当ホームでは9割の方がリハビリに参加しています。
ーー9割も参加されているんですね! どうやって参加率を上げているのですか?
まず当然ですが、嫌がっている方に無理やりご参加いただくことはありません。そのうえで、相性のいい職員からお声掛けしたり、体操しなくてもその場にいらっしゃるだけでOKですよ、とお伝えしてハードルを下げています。他の入居者様の声やお姿から刺激を受けることも大切なリハビリになるからです。
ーー実際に機能改善につながった事例はありますか?
麻痺によってお体全体がほぼ動かなかった入居者様が、手を動かせるようになりました。以前は長い間リハビリへの参加を断られていて、居室にいらっしゃることが多い方でした。当時の入居者様のお気持ちを考えると、お体が動かせないなかでリハビリに誘われることは複雑だったのではないかと思います。
ーーその入居者様がリハビリに参加したきっかけは何ですか?
他の方がいる機能訓練室ではなく「お部屋でできるリハビリをやってみませんか」と提案しました。居室であればご自身のペースで取り組めますし、他の方の目もありません。するとほんの少しずつですが、その方が手を動かせるようになっていったんです。全く動かないと思っていた部分が動くようになると、ご本人も「もっと動かしたい」と積極的にリハビリをしてくださるようになりました。
今では機能訓練室でのリハビリに参加してくださり、自主的にリハビリ用具まで購入されています。
1日のスケジュール
ーーラ・ナシカこまつがわ様の1日のスケジュールを教えてください。
当ホームでは入居者様に自由にお過ごしいただいています。こちらでは一例をご紹介しますね。
7時30分から各階にある食堂で朝食の時間です。9時30分からは、40分ほどリハビリトレーニングをおこなっています。12時から昼食となり、その後13時30分からはご入浴、またはリハビリトレーニングの時間です。
15時にはティータイムを設けています。入居者様にも好評なんですよ。
ーーティータイムではどんな事をされるんですか?
各階の食堂にお茶やコーヒー、おやつをご用意します。入居者様に自由に召し上がっていただきながら、おしゃべりなどを楽しんでいただきます。
15時30分からはレクリエーションとして、自由参加でいろいろな活動をしております。フラワーアレンジメントやジェンガ、音楽会などさまざまです。実は当ホームのレクリエーションは、2021年の社内コンテスト「動画コンテスト・レクリエーション部門」で全施設中1位をいただいたんですよ。
ーー全施設のなかで1位はすごいですね! どのようなコンテストなんですか?
運営元の株式会社シダーが全施設を対象におこなっているコンテストです。さまざまな分野のコンテストがあるなかで、レクリエーションの部門で受賞しました。
ーーどんな部分が評価されたと思いますか?
当ホームにはレクリエーション道具を手作りしてくれる職員がいるんです。入居者様と一緒に道具づくりをすることもあり、それ自体もまた一つのレクになっている。そういう独創性のあるレクリエーションを提供できている部分が、評価されたと思います。
ーーオリジナリティーのあるレクリエーションが楽しめるんですね。夕方以降はどのように過ごされるのでしょうか?
17時30分から夕食の時間となり、19時に就寝準備をされる方が多いです。21時に施設は消灯となりますが、それぞれのお部屋ではご自由にお過ごしいただけます。また23時、翌2時、4時には職員がホームを巡回して安否確認をいたします。
ーー最後に、ラ・ナシカこまつがわへ入居を検討している方にメッセージをお願いします。
当ホームでは主に要介護の認定を受けた方をお受け入れしていますが、自立の方もご相談可能です。ホームでは入居者様同士、また職員も仲良く生活しています。集団生活に不安を感じているという方もぜひ一度ホームにご来館いただき、温かい雰囲気を直接感じていただきたいです。
この記事の寄稿者
石橋
介護のほんね編集部です。老人ホームや介護にまつわることを丁寧にお伝えしていきます。