京浜急行本線「六郷土手」駅徒歩2分の場所にある「アイビーコート」を取材。アイビーコートは「シニア向け賃貸住宅」であり、サービス付き高齢者向け住宅や介護施設ではありません。実際の暮らしにはどのような違いがあるのでしょうか。今回は、チーフの森田 幸子(もりた ゆきこ)さんに、サービス付き高齢者向け住宅との違いや施設の強みを聞いてみました。
サ高住ではなく、シニア向け賃貸住宅を運営する理由
――アイビーコートは「シニア向け賃貸住宅」ですが、一般的な賃貸住宅とはどう違いますか?
シニア向けということで、ゴミ回収、清掃代行、毎朝の安否確認を実施しています。コンシェルジュも8時半から17時まで365日常駐していますね。コンシェルジュは、タクシーの手配やスマホの使い方など、ご要望に応じてお応えしています。また、ご希望の方には朝昼夕の3食のお食事をお部屋までお届けしています。
設備面でも安心いただけるよう、各居室はバリアフリー仕様です。セコムと連携した24時間対応の緊急通報ボタンを設置しています。一般的な賃貸住宅よりも、安心できるサービスや体制を整えています。
――サービス付き高齢者向け住宅と似ていますね。
そうですね。ただ、アイビーコートは2009年に開設しています。その当時は「サービス付き高齢者向け住宅」という施設形態がまだ創設されていませんでした(※)。
アイビーコートはサービス付き高齢者向け住宅の基準をクリアしていますが、登録はしていません。
※サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が居住できるバリアフリーの住まい。2011年の「高齢者住まい法」の改正により、登録制度が創設されました。
――なぜ登録しなかったのでしょうか。
サービス付き高齢者向け住宅の入居要件は、60歳以上の高齢者、あるいは要介護認定を受けた60歳未満の方です。一方、当方の考えるシニア向け賃貸住宅には、年齢や要介護度の制限はありません。お若くても当方のサービスや設備を希望される方がいらしたら、使っていただきたい、親子でも姉妹でも結構です。様々な方のニーズに応えたかったのです。
賃貸住宅でしたらお部屋の中でお線香を炊いても構いませんし、タバコ、アルコールの持ち込みも自由です。ご自宅での生活と変わらない、これまでどおりに暮らせしていただきたいという想いがあります。
――実際に60歳以下の方がお住まいになったケースはありますか?
はい、ご高齢のお母様と40歳代や50歳代の娘様が入居された例があります。娘様は高齢者でなくても、アイビーコートの暮らしに馴染まれています。何よりお仕事に行かれる時に、とても安心のようです。
過去には、ハンディキャップがある20代の方が暮らしていたこともありました。その方はアイビーコートから、会社にも通われていました。
介護が必要になっても安心できる環境
――たしかに、サービス付き高齢者向け住宅とは違いますね! 自由度が高い分、生活していくなかで介護が必要になったらどうなるのか気になります。
介護サービスを使って生活していただけます。ご本人やご家族の判断で、介護付き有料老人ホームに転居される方もいらっしゃいますが、こちらから退去を迫ることはありません。実際にご家族や介護サービスのサポートで長くお住まいの方がたくさんいらっしゃいます。
当施設の1階には、居宅介護支援事業所・訪問介護事業所・デイサービス・ショートステイがそろった「学研ココファン六郷」を併設しています。さらにクリニック「すずきフレンドシップクリニック」、調剤薬局「アクア薬局」もあり、高齢者の方にとっては心強い環境です。
介護事業所は自由に選べますが、館内移動で「学研ココファン六郷」の介護サービスを利用でき大変便利です。
――夜間の緊急対応の流れも教えてください。
リビングとサニタリー付近の緊急通報ボタンでセコムに連絡がいき、救急隊が来てくれ、救急搬送やご家族への連絡等、必要に応じて対応してくれます。
オーナーは、緊急時の呼び出しがあった際は夜間もできる限り様子を見に行っています。
ご家族が付き添えない場合には、オーナーや私たちスタッフが病院へ付き添うこともあります。
――オーナー自ら、足を運んでくださるんですね! オーナーはどのような方ですか?
とってもダンディなので入居者様から人気があります。情に厚く入居者様想いの方です。オーナーからは「入居者様を自分の親だと思って接してください」とよく言われますね。
――病院への付き添いなどは、オプション費用がかかるんでしょうか?
いえいえ、費用はかかりません。オプションとして料金をいただくことはないですね……。生花のレクもありますが、お花代もいただいておりませんし。
「元気になって戻ってくるからね」
――シニア向け賃貸住宅って入居者様との関係を割り切っているイメージだったので、意外でした。
そうなんです、割り切っているようで割り切れていないんです(笑)。入居者様の頼まれごとは、できる限りご要望に添えるようにしています。
先日、他の施設に移った元入居者様から「トイレの電気が勝手に消えたり、付いたりおかしいんだけど」と電話がかかってきました。センサーライトの説明をして「詳しくはスタッフの方に聞いてくださいね」とお伝えしました。元入居者様からの相談電話もよくあります。
そして転居される方のだいたいは「元気になって戻ってくるからね」とおっしゃってくださいます。実際に戻ってきた方もいらっしゃいます。
――転居後もコンシェルジュサービスを提供しているなんて(笑)。みなさまにとって、アイビーコートは「ご自宅」なんですね。
はい、本当にアットホームな住まいです。シニア向け賃貸住宅だからこそ、ご自宅として認識してもらえるんだと思います。
アイビーコートは「見守りや生活サービスは欲しいけど、まだ施設には入りたくない」という方にはピッタリだと思います。また駅から徒歩2分と利便性もいいので、アクティブにお出かけを楽しみたい方にもおすすめです。
ご家族の来訪時には、入居者様のお部屋に宿泊することもできますし、ゲストルームもご用意しております。シニア向け賃貸住宅ならではの自由度の高さと安心に包まれた環境をご提供していますので、みなさまのご来訪をお待ちしております。
この記事の寄稿者
井上
介護のほんねニュース編集部。
認知症サポーターです。介護に関する今話題のトピックや疑問を、分かりやすくお届けします。