東京都板橋区にある「シェモア西台」 は、医療法人社団翠会が運営している介護付き有料老人ホームです。医療法人ならではの強みを生かし、認知症ケアに力をいれていると言います。今回は、相談員の本田 夏香(ほんだ なつか)さんに具体的な取り組みを伺いました。
認知症専門病院が月に1回往診
――周辺エリアには介護施設が多いですね。
そうなんですよ、近隣には12施設くらいあります。ここ最近、新しい施設も増えてきていますね。
――そのなかでも他の施設に負けない「シェモア西台」の強みを教えてください。
はい、シェモア西台の強みは認知症ケアです。
シェモア西台が所属する「翠会ヘルスケアグループ」は、医療法人や社会福祉法人を運営しています。同グループの「和光病院」「成増厚生病院」と連携して、サービスを提供しています。特に和光病院は、認知症専門病院です。院長が自ら月に1回往診してくださいます。
――医療法人のバックアップは、心強いですね。実際に認知症の入居者様の割合はどれくらいですか?
軽度の方も含めると、入居者様の9割が認知症の方です。重度の方は4割いらっしゃいます。
うちは医療と介護の連携が密なので、重度の認知症を患っている方の受け入れも積極的です。他の施設で受け入れを拒否された方や、退去を迫られた方も、うちではのびのびとお過ごしいただいております。
入居者様の内面を大切にしたコミュニケーション
――他の施設で拒否された方は、どのような行動があったのでしょうか?
徘徊したり声を上げてしまったりする方が多いですね。そういった方もケアできるように介護体制も手厚くしていて、2名の入居者様に対して1名の職員を配置しています。
――一般的な基準は「3名の入居者様に対して1名の職員」なので多いですね。介護スタッフのみなさんが、認知症ケアで大切にしていることを教えてください。
一人ひとりに合わせたコミュニケーションをとることです。例えばお名前も「田中さん」ではなく「まちこさん」など、希望に応じて、本人にとってなじみ深い呼び方でお呼びします。
帰宅願望がある方には、その方に合わせた声かけを考慮しています。「帰りたい」という背景には、「家のことが心配」「ご飯を作らなくちゃ」などの隠れた不安があることが多いです。その場合には「さっき娘さんから、帰宅が遅いから今日はここにいてほしいと伝言がありましたよ」と言ったりすることも。結局は5分で忘れてしまうのですが、そのときの不安は、ふわっと軽くなります。不安を打ち消すような会話が大切ですね。
また、スタッフによって言うことがバラバラだと入居者様が混乱するので、内容も統一するようにしています。
――スタッフ同士、どうやって入居者様の情報を共有しているのでしょうか?
パソコンに記録したり、申し送り書に詳細を書いたり、直接伝えたり、いろんな手段で共有しています。とにかくスタッフ同士で入居者様のことをたくさん話しています。日々の声かけだけではなく、入居者様の好きなものや趣味、生い立ちなど、スタッフみんなが把握できている状況です。
その結果、一人ひとりに寄り添ったケアができています。これも定員44名の小規模なホームだからできることなのかもしれません。
ご家族との会話から「元気のヒント」を得る
――入居者様の趣味や嗜好をよく知るために、工夫していることを教えてください。
そうですね、入居者様との会話の中で知ることはもちろんですが、ご家族にも協力していただいてます。
以前、食欲不振の入居者様がいらっしゃって、ご家族にご相談したところ「予算は気にしないので、大好物のうなぎを毎日食べさせてほしい」とご要望がありました。そこでスーパーに毎日うなぎを買いに行って、夕飯に提供していたことがあります。すると、入居者様の食欲が以前のように戻ったんです。当時は車いすを使用することもありましたが、現在は歩行できています。
――ご家族とのコミュニケーションも大切にされているんですね。頻度はどのぐらいですか?
そうですね、多い方は週に2回、最低でも月に1回は写真付きのメールを送っています。ご家族には良いことだけではなく、「転倒してしまった」などのネガティブな話題も隠さず提供しています。
コミュニケーションが多いこともあって、良好な関係が築けていますね。
――ご家族とのうれしいエピソードがあれば教えてください。
以前ご入居されていた方の旦那様がシェモア西台のことを気に入ってくださり、今ではボランティアとしてお手伝いしてくださっています。他にも、逝去された入居者様の娘様がドラマの脚本家で、今でも新作のドラマができたら「みんなで観てください」とDVDを届けてくれます。
こうやって、シェモア西台を気にかけていただけていることは大変うれしいことですね。
――逝去されたあともご家族と繋がりがあるのはすごいですね。
「我が家」と思えるような安心を
――入居者様やご家族との接し方といったソフト面のこだわりを伺いましたが、ハード面で工夫している点があれば教えてください。
はい。他の施設と比べて珍しい点として、居室のエアコンはリモコンではなくパネル式になっております。温度は各自で調整できますが、暖房や冷房の切り替えは施設側でしているので居室ではできません。リモコンの紛失や季節に合わない空調設定などが防げます。
また2階は重度の方、3階は軽度や自立の方など、フロアを分けています。やはり認知症の進行具合によって、会話のレベルが異なります。入居者様同士の合う合わないも配慮して分けました。2階のリビングには24時間スタッフを配置しているので、重度の方にとっても安心です。
あと館内は、吹き抜けのリビングや屋上テラス、中庭があり、明るい空間となっています。グランドピアノもあり、自由に弾いていただけますよ。
――最後に入居を検討している方にメッセージをお願いします。
「シェモア」とは、フランス語で「我が家」を意味しています。おうちにいるようにご自身らしく安心してお過ごしていただける住まいになるよう、サポートしております。
また看取りケアの実績も豊富です。新型コロナウイルス感染拡大の影響で看取りの時期でも面会制限をしている施設が多いと思うのですが、当施設では面会制限を緩和しご家族との穏やかな時間を過ごしていただいております。お看取りを希望された方に関しては、ご本人とご家族が望む人生最後の時を一緒に考え、そのプロセスをサポートさせていただきます。
看取りや老人ホームの入居をご検討中の方は、ぜひ見学にお越しくださいませ。スタッフ一同お待ちしております。
この記事の寄稿者
井上
介護のほんねニュース編集部。
認知症サポーターです。介護に関する今話題のトピックや疑問を、分かりやすくお届けします。