寄稿

認知症初期集中支援チームとは|支援内容と実際の効果、発足の背景を解説

認知症対策の1つとして発足した「認知症初期集中支援チーム」。この記事では認知症初期集中支援チームがどのようなチームなのかを、図表を用いて解説します。

認知症初期集中支援チームとは|支援内容と実際の効果、発足の背景を解説 | 介護のほんねニュース

介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士、認知症介護実践リーダー、米国アクティビティディレクター、他。介護職として働く傍ら、レクや認知症、コミュニケーションに関する研修講師も務める。2014年米国アクティビティディレクター資格取得。レクリエーションを通じ、多くの高齢者に「人と触れ合う喜び」を伝え、「介護技術としてのレクリエーション援助」を広める一方、介護情報誌やメディアにおいて執筆等を手掛けている。『認知症の人もいっしょにできる高齢者レクリエーション 』(講談社)など著書多数。

日本国内の認知症患者数は2018年の時点で500万人を超えました。65歳以上高齢者の約7人に1人が認知症といわれています。さらに将来的な患者数を推計すると2025年には約700万人近くまで増える見込みです。

認知症の対策としては治療薬の開発、介護従事者への認知症教育の推進、介護施設の拡充などがあります。そのなかの1つに「認知症患者と介護をする家族の支援」もあるのです。

住み慣れた地域で今までどおりに暮らせるように、認知症患者とその家族を支援する専門家チームが存在します。そのチームとは、認知症初期集中支援チームです。今回は認知症初期集中支援チームの詳細や支援の対象者、その効果についてご紹介します。

認知症初期集中支援チームとは

認知症初期集中支援チームは、家族の訴えなどから認知症と疑われる人を早期の段階で支援する専門家チームです。2019年9月末には全市町村に配置されました。

認知症になっても、本人の意思を尊重し、可能な限り住み慣れた地域で安全に生活していくことが理想の社会です。それを実現するためには、認知症の早期発見と対応が重要になります。

認知症が疑われる段階で認知症初期集中支援チームのサポートを受けることにより、受診や判断の遅れ、不十分なケアによる症状の進行を最小限に食い止めることに努めています。

認知症初期集中支援チームの目的、定義

厚生労働省の要綱では、以下のように定義されています。

認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けられるために、認知症の人やその家族に早期に関わる「認知症初期集中支援チーム」を配置し、早期診断・早期対応に向けた支援体制を構築することを目的とする。
参考:厚生労働省「認知症施策の最近の動向と認知症初期集中支援チームについて

認知症初期集中支援の対象者の条件

認知症初期集中支援の対象者は決まっています。対象となる条件を紹介します。

まず、認知症初期集中支援チームの支援対象者は40歳以上の在宅生活者であり、認知症が疑われている(または認知症である)方です。加えて、医療・介護サービスを受けていない方を中心に支援しています。なお、適切な医療・介護サービスに結びついていない方もご利用いただけます。

認知症初期集中支援チームの活動

具体的な活動は、認知症の疑いがある方の家族から相談を受けた後に、医療職と介護職のペアで自宅へ訪問し、観察・評価を実施します。訪問時間はおよそ2時間以内です。そのデータをもとに認知症の確認や今後の対応を家族と共に考えてきます。

認知症患者とその家族をおおむね6カ月間集中的にサポートし最終的には、必要に応じて適切な医療・介護サービスに繋げるよう活動しているのが特徴です。なお、支援終了後にも経過をモニタリングします。

認知症初期集中支援チームの主な活動

(1)普及啓発推進事業
(2)認知症初期集中支援の実施

    • 訪問支援対象者の把握
    • 情報収集
    • アセスメント
    • 初回訪問時の支援
    • チーム員会議の開催
    • 初期集中支援の実施
    • チームでの訪問活動等における関係機関等との連携
    • 初期集中支援の終了とその後のモニタリング
    • 初期集中支援に関する記録
(3) 認知症初期集中支援チーム検討委員会の設置 参考:厚生労働省「認知症施策の最近の動向と認知症初期集中支援チームについて

認知症初期集中支援チームが設置されている場所

配置される主な場所は地域包括支援センターが大半を占めます。他には医療機関認知症疾患医療センター行政も含まれます。

出典:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「認知症初期集中支援チーム設置後の効果に関する研究事業(令和2年3月)

認知症初期集中支援チームの支援の効果

実際に認知症初期集中支援チームのサポートを受けることで、状況は改善されるのでしょうか。認知症初期集中支援チームでは、認知症の症状を評価する「DASC」「DBD13」と介護者の負担を評価する「Zarit8」というツールを使って評価しています。

国立研究開発法人国立長寿医療研究センターは、介入時と終了時の評価の推移を発表しています。評価ツールごとの結果を見ていきましょう。

DASCの評価

DASCは認知機能と行動・心理症状を評価するアセスメントツールです。点数が高いほど認知機能が低下しています。平均点は0.9点アップし、介⼊時より終了時のスコアが全体的に増加している傾向です。改善しているとはいえません。

DBD13の評価

DBD13は認知症にともなう行動障害を評価するためのツールです。点数が高いほど認知機能が低下している状況となります。

平均点は-1.5点であり、介入時と終了時を比べると「〜10点」「11〜20点」の低得点層が⼤きく増加しました。改善しているといえるでしょう。

Zarit8の評価

Zarit8は、家族の介護負担を判定するツールです。スコアが低いほど、介護の負担が軽い結果となります。

以下のグラフを見ると「~10点以下」の割合が25%から53.8%に増加し、大きく改善していることが分かります。平均点も-2.2点と下がりました。

認知症初期集中支援チームは、介護者にとっても重要なチームです。また適切な介護・医療サービスとつながることで、在宅介護の負担が軽減されたといえます。

認知症初期集中支援チームが発足した背景

認知症初期集中支援チーム発足の背景は、2015年1月に新しく提示された認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)にあります。新オレンジプランの施策は7つの柱に基づいて進められています。

このうち「2.認知症の容体に応じた適時・適切な治療・介護などの提供」と「4.認知症の人の介護者への支援」という柱があります。この2つに沿った施策が認知症初期集中支援チームの重要な役割です。

認知症の方にとって「新しい取り組み」は難しいものです。さらに、患者本人は症状に対して否定的な態度を示すこともあります。そのため、周りが異常を感じていてもなかなか受診につながらず、その結果、身体症状・心理症状が悪化した段階で初受診となる恐れがあります。

今までの医療システムでは、患者側が受診しないと医療側によるアプローチが難しい状態でした。しかし認知症の進行を防ぐためには早期発見と対応が基本となるのです。従来の医療システムで生じる危機の発生を防ぐために、専門職を集結した認知症初期集中支援チームが配置されることになりました。

認知症初期集中支援チームのメンバーとは

認知症初期集中支援は、医療・介護に関するさまざまな専門職で構成されています。そのため、それぞれの専門職や専門分野を生かし、認知症患者と家族を支援していきます。

チーム員の人員配置には要件が定められています。その要件とは、以下のとおりです。

  • 医療や介護の専門職に準ずる
  • 認知症医療や介護の専門知識と経験がある市町村が認めている
  • 3年以上認知症ケアや在宅ケアの実務と相談事業に携わった経験がある
  • 国が定める認知症初期集中支援チーム員研修を受講している

では、どのような専門職でチームが構成されるのか、メンバーと主な仕事内容を紹介します。

専門医

認知症専門の医師は、チーム員である専門職に助言や指導をします。チーム員医師の要件は、日本老年精神医学会または日本認知症学会が認定する専門医、もしくは認知症疾患の鑑別診断などの専門医療を主要業務に5年以上臨床経験があり、なおかつ認知症サポート医であることです。

基本的には上記の条件を満たしている必要がありますが、医師の確保が難しい可能性があるので、要件が緩和されています。「日本老年精神医学会または日本認知症学会が認定する専門医」もしくは「認知症疾患の鑑別診断などの専門医療を主要業務に5年以上臨床経験がある医師」の場合、今後5年間に認知症サポート医の研修を受講する予定の人はチーム医師になることが可能です。

また、5年以上認知症疾患の診断や治療に従事した経験がある認知症サポート医も認められています。ただし、認知症疾患医療センターなどの専門医と連携している場合に限られます。

保健師

地域住民の健康指導や健康管理を担う専門職です。認知症への取り組みにも積極的で、地域包括支援センターなどでは認知症予防を目的に健康教室を開くことも多いです。また、介護は必要な人が適切な支援を受けられるように、協力機関などと連携して支援につなげていく立場にあります。

認知症初期集中支援チームの活動では、認知症患者の人や家族が暮らす自宅へ複数のチーム員と訪問します。話を聞いたうえで、受診や予防教室の勧奨、サービス紹介などの支援に対応していきます。

看護師

医療機関で医師のサポートや患者のケアを担当する専門職です。認知症初期集中支援チームの活動では認知症患者や家族のもとへ訪問することがあります。さまざまな側面から現状を評価し、他のチーム員と共に支援体制の検討や生活環境の改善を提案します。

作業療法士

作業療法士は、日常生活を送るために欠かせない身体機能や動作の回復・維持のためのリハビリを指導する専門職です。

認知症初期集中支援チームの訪問では、他の専門職と一緒に対象者を訪問します。訪問時に認知機能や精神・心理状態、生活状況、家族の病気の理解度などから現状を評価します。

作業療法士は生活に関わる動作のリハビリを担う仕事ですので、医学的知識と生活行為への専門知識を持ちます。その観点から現状を評価できるので、支援体制を検討するうえで大きな役割を果たしています。

社会福祉士

福祉や医療に関する相談援助の専門職です。他の専門職と同じく、他の専門職とペアで認知症患者と家族の元に訪問し、相談に対応します。これまでの相談援助の経験を活かした現状評価や支援体制の提案し、それぞれの状況に応じた支援しています。

介護福祉士

介護に関する相談援助の専門職です。認知症初期集中支援チームでの活動は、他の専門職と同じく認知症患者と家族の元への訪問と対応です。現状評価や支援体制の検討では、介護の視点から必要な支援を提案します。

認知症初期の患者と家族に寄り添う認知症初期集中支援チーム

少子高齢化の影響もあり、日本国内の認知症患者の数は今後もどんどん増えていくと予想されます。早期発見で適切な対応を取れば進行を遅らせる可能性が高まり、患者本人や介護者の負担軽減につながります。

認知症初期集中支援チームは先述してきたとおり、認知症の早期発見・早期治療に貢献するチームです。認知症の専門家が、認知症患者と家族の相談に乗り、適切な支援を提案してくれます。家族に認知症の疑いがあり、対応に悩んでいれば、地域包括支援センターまで一度相談してみてください。

なお認知症の初期症状については、以下の記事を参考にしてください。

介護のほんね編集部

この記事の寄稿者

介護のほんね編集部

年間1万件以上の老人ホーム探しをサポートしている介護のほんね編集部です。介護に関する情報を、認知症サポーターの資格を持つスタッフが正しく・分かりやすくお届けします。

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