まずは看取りの定義を紹介しましょう。全国老人福祉施設協議会では看取りを下記のように定義しています。
近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、 人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること引用:全国老人福祉施設協議会「看取り介護実践フォーラム」(平成25年度)
簡単に看取りを説明すると、寿命が近くなった方を無理に延命するのではなく、穏やかな最期を迎えられるように、その方らしい人生の終わり方ができるようにサポートすることです。
似たような言葉にターミナルケアもありますが、看取りとターミナルケアは意味が異なります。
ターミナルケアは医療の現場で実践されるケアです。「終末期医療」「終末期看護」とも呼ばれています。「どのような治療をすべきか」という医療目線があります。具体的なケアとして痛みを緩和する投薬、点滴、酸素吸入などが挙げられます。
看取りは、老人ホームや自宅などで穏やかな終末期を過ごすためのケアです。食事や排泄などの身体介護が主です。特に終末期は尿量が減ることで排泄コントロールがうまくいかなくなり、ケアが必要となります。
どちらにも共通することは、延命治療をしないという点です。加えて、本人の声に耳を傾けることで、精神的苦痛を緩和させる役割もあります。
看取り介護を始めるタイミングはいつなのでしょうか。疾患や加齢によって心身が衰弱し医学的に回復の見込みがないと医師によって診断されたときです。その段階になると、食事を受け付けなくなり体重減少がみられます。
また終末期から看取りまでの期間は、厳密な定義はありません。公益社団法人全日本病院協会による「終末期医療におけるガイドライン」には、救命救急の場合は数日、癌や難病の末期は1~2カ月と記されています。
救命救急の場では発症から数日以内の短い期間で終末期と判断されることも多いのですが、癌や難病の末期などでは1~2カ月ということもあります。また、重い脳卒中後遺症などでは、数年前からいずれ死が訪れることが予測されることがあるものの、間近な死を予測することができるのは容態が悪化してからとなります。したがって終末期を期間で決めることは必ずしも容易ではなく、また適当ではありません。引用:公益社団法人全日本病院協会 「終末期医療に関するガイドライン ~よりよい終末期を迎えるために~ 」
看取り介護に対応するホームは増えてきましたが、すべてのホームで看取り介護ができるわけではありません。介護保険法の定めでは、下記の条件を満たしている必要があります。
本人と家族にとっては、6つめの同意と説明が重要でしょう。「看取り介護指針」「意思確認書」などの内容を、本人または家族の同意が得られた場合のみ、看取りケアを実施します。
終末期には本人の意思がないこともしばしばです。本心の意思が確認できない場合は、家族が本人の意思を推定してケア方針を決定していきます。
看取り介護を実施すると月額費用に「看取り介護加算」が追加されます。自己負担1割、1単位10円の場合、入居者の負担は以下です。医療提供体制が整った特別養護老人ホーム内での看取りは、看取り介護加算Ⅱとなります。
看取り介護加算Ⅰ | 看取り介護加算Ⅱ | |
---|---|---|
死亡日以前4日以上30日以下 | 144円/日 | 144円/日 |
死亡の前日および前々日 | 680円/日 | 780円/日 |
死亡日 | 1,280/日 | 1,580/日 |
人生の最期を迎える場所は、老人ホームや病院、自宅などさまざまな選択肢があります。ここでは老人ホームで看取り介護をするメリットを紹介しましょう。
看取り介護に同意すると、医師や看護師、看護職員などと協議しながら「看取り介護計画書」を作成します。通常の介護計画書よりも見直しのペースが早く、およそ週1のペースで話し合いをするのです。
本人が最期まで自分らしく過ごせるための計画を、各専門家と一緒になって作成できることはうれしいポイントです。
老人ホームでは、24時間体制で看護師または介護職員が入居者様を見守っています。老人ホームのスタッフが連携しながら入居者を支えるので、ちょっとした異変にも気づきやすいでしょう。
先述したように、24時間体制で介護できる環境です。在宅介護の場合は、24時間体制で介護することは、介護者にとって大きな負担でしょう。
介護の負担を軽減できることで「介護うつ」「介護離職」などのリスクを減らせます。日々の介助をプロに任せられることは、介護者にとって大きなメリットです。
看取り介護に対応していないホームの場合、終末期に入ると退去を迫られることもあります。多くの場合は、病院へ移行しますが、長期入院を断られるケースもあるのです。よって終末期に、受け入れ先を探すために駆け回ることも……。
看取り対応できるホームの場合は、行き場がなくなるといった心配はありません。
看取り介護を相談できる老人ホームを探している方のために、チェックポイントを紹介します。実際に検索する際、また施設に見学に行った際には、以下の項目を確認してみましょう。
終末期は日々体調の変化が変わりやすいため注意が必要です。よって急に具合が悪化した際にどのような対応を取るかを確認しておく必要があります。早朝、日中、夜間ごとに医療従事者の有無や医療連携の内容を確認してみましょう。
看取りの実績が豊富の老人ホームであれば、終末期や緊急時の対応にも慣れているでしょう。多くのホームでは看取り実績をホームページやパンフレットに公開していないので、ホームに直接聞いてみましょう。
また、病状によって終末期の経過は異なります。同じ病状で実績があるかも確認しておくことが安心感を高めるポイントです。
看取り介護は、介護職員のみならず看護師、管理栄養士などと連携を取って入居者を支える必要があります。さらに刻々と容態が変化するため、きちんと連携を取れていることが大切です。
施設を検討する際に「入居者の状態をどのように共有しているのか」と質問してみてください。情報共有のタイミングや頻度を知っておくと安心ですね。
看取り介護になると、老人ホームと家族間の連絡も増えます。「終末期には母の横に寝たい」「好きだった調度品を持ち込みたい」など要望をしっかり汲み取ってもらえるのか、事前に聞いておきましょう。
先述したように看取り介護の場合、施設と家族のコミュニケーションが密になります。
「信頼できるスタッフなのか」が、施設選びの肝です。とはいえども、信頼関係は日々のケアを通じて築いていくものなので、事前に確認することは難しいでしょう。
ただし、施設が掲げる看取り介護の方針を聞いてみることはできます。その想いを聞いたうえで「お願いしてみよう」と思えるホームを選んでください。
老人ホームによってはエンゼルケアを実施しています。エンゼルケアとは、亡くなった後のケアのことです。具体的には、故人の体や髪をお湯で清める湯灌(ゆかん)や着替え、お化粧などがあります。施設によってサービス内容に違いがありますので、行き違いがないように把握しておきましょう。
ここからは看取りを相談できる老人ホームならではの、こだわりポイントを紹介します。気になる老人ホームが見つかれば、介護のほんね入居相談室にお問い合わせください。
神奈川県横浜市中区にある「ヒルデモア三渓園」。ヒルデモアシリーズを展開する東京海上日動ベターライフサービス株式会社は、看取り経験が豊富な法人です。運営の介護付き有料老人ホームでは、1年間でご逝去された方の約8割の方がお部屋で旅立たれた実績※があります。
※2016年4月からの1年間の数字
抜群の医療体制、看取り介護の実施や看護スタッフの方の常駐。 それに、認知症の方の受け入れ体制が整っているなど、サービスが非常に充実しています。
それに、災害時での備蓄対策もしっかりと謳われていて、このあたりの安心感も抜群。
介護職員だけではなく看護師も24時間常駐しているため、体調が急変した際も安心ですね。ヒルデモア三渓園は「かながわベスト介護セレクト20」を受賞したホームで、質の高いケアを提供していると評判です。
東京の中心地「御茶ノ水」駅より徒歩5分に位置する「ネクサスコート本郷」は、ご家族も来訪しやすい立地です。運営する株式会社ネクサスケアは、24時間看護師常勤体制のパイオニアでもあり、ご本人やご家族に寄り添った看取りを提供しています。
屋上には庭園がありテラスカフェのような雰囲気で、スカイツリーが見えました。
ここでスタッフと利用者の方が団欒されていました。とてもリラックスして昔のお話や様々な話をされていました。
それを丁寧にひとつひとつうなずきながら傾聴してくれているスタッフの方をみて、なんだが安心し、一人ひとりに丁寧に接している印象でした。
入居者様の口コミからも丁寧なコミュニケーションが伺えます。医療体制が整っていることはもちろん、日々接するスタッフや環境がリラックスできる雰囲気であることも重要ですね。
東京都練馬区にある「そんぽの家 光が丘」は、介護業界の大手SOMPOケア株式会社が運営しているホームです。介護のスキルだけではなく、人間力あふれるスタッフの育成にも注力しています。
最期は寝たきりが長く続きましたが、一度も床ずれが起きず、これはいかに頻繁に体位を変えてくださっているかということで感謝しています。
夜の急な発熱にも、担当の近くの内科医が駆けつけてくださり、直ぐに救急車で救急病院に簡単に送ってしまうということは一度もありませんでした。
老衰でしたが、施設のほうから、差し支えなければ私どもで最期まで看取らせて欲しい、という申し出があり、その時の有難さは今も忘れません。
管につながれることもなく、無駄な遺漏もせづ、とても人間らしく最期を迎えられたのは、この施設の方々のお陰と思っています。
「とても人間らしく最期を迎えらた」という言葉にあるように、スタッフの手厚いケアを感じます。また寝たきりになると床ずれになりやすく、注意が必要です。頻繁な体位変換のおかげで無傷であったことは、介護の質が高いという証でしょう。
終末期における老人ホーム探しの際は「看取り対応可能」がキーポイントになるでしょう。しかし介護と看護の体制が整っているホームでないと受け入れが難しいのが現状です。「看取りを希望していても、気になるホームが見つからない……」という声も多くあります。
介護のほんねは、無料で入居相談をお手伝いしています。看取り可能な老人ホームをお探しの方はご相談ください。またお近くに看取り相談可のホームがあるか確認することも可能です。下記から希望のエリアをクリックすると「看取り 相談可」の老人ホームが一覧で表示されます。ぜひ試してみてください。
この記事の寄稿者
介護のほんねニュース編集部。
認知症サポーターです。介護に関する今話題のトピックや疑問を、分かりやすくお届けします。