寄稿

老老介護とは|現状の問題点や対策・解決策についてご紹介

この記事では、誰もが当事者となる可能性がある「老老介護」や「認認介護」について解説します。介護する側も、される側も、両者が共倒れにならないように、どのような日常生活を送ればいいのでしょうか。専門家の監修のもと、現状の問題点や対策などを紹介します。

老老介護とは|現状の問題点や対策・解決策についてご紹介 | 介護のほんねニュース
松本健史

この記事の監修

松本健史

合同会社松本リハビリ研究所 所長

理学療法士。佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了。専門は生活期リハビリテーション。病院・デイサービス勤務後2014年合同会社松本リハビリ研究所設立。全国の老人ホーム、デイサービス、介護施設でリハビリ介護のアドバイザー、生活リハビリセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など活動中『転倒予防のすべてがわかる本 』(講談社)など著書多数。
YouTubeチャンネル「がんばらないリハビリ介護」/オンラインサロン「松リハLAB

この記事では、誰もが当事者となる可能性がある「老老介護」「認認介護」について解説します。介護する側も、される側も、両者が共倒れにならないように、どのような日常生活を送ればいいのでしょうか。専門家の監修のもと、現状の問題点や対策などを紹介します。

老老介護とは

高齢化と核家族化が進む日本の社会問題として「老老介護」があります。老老介護とは、65歳以上の高齢者を、同じく65歳以上の高齢者が介護している状態のことです。平均寿命が長い日本において、老老介護は珍しいケースではなく誰にでも起こり得るといえるでしょう。

要介護者の同居人は59.7%が65歳以上

厚生労働省が要介護者の同居人である主な介護者の年齢を調査したところ、全体の59.7%が65歳以上の高齢者であることが分かりました。

さらに要介護者も介護者も75歳以上という世帯は33.1%です。なお75歳以上の老老介護状態は「超老老介護」と呼ばれています。

参照:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況

介護者は「同居している配偶者」が最も多い

次に要介護者と介護者などの続柄をみてみましょう。要介護者の主な介護者は、同居している人が 58.7 %と大半を占めます。同居人との関係を見ると「配偶者」が23.8と最も多く、次に「子」が20.7%「子の配偶者」が7.5%と続きました。

これらのデータを踏まえて「高齢の妻が高齢の夫を介護する」「高齢の子どもが高齢の親を介護する」などのケースが増えていることが分かります。

さらに人口の高齢化が進むと「高齢の親が高齢の子どもを介護する」という「逆・老老介護」の事例も増えてくるといえるでしょう。

参照:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況

認認介護も問題になりつつある

老老介護だけではなく「認認介護」も増加しています。認認介護とは認知症高齢者が認知症高齢者を介護する状態を指します。

65歳以上の認知症を患っている人は600万人以上。認知症と気づいていない人の数も合わせれば、800万人以上いるといわれています。加えて、介護が必要になった主な原因の第1位は認知症です。

※「現在の要介護度」とは、2019年6月の要介護度をいう
参照:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況

在宅介護をサポートする介護者も認知症を患っていることは、珍しい事態ではありません。ただし服薬や食事、お金の管理が難しいため、日常生活にも支障を出ます。

また認認介護の場合は「自分は認知症である」ということに気がついていない介護者が多く、認認介護と認識していないケースも多いでしょう。

少しでも認知症の疑いがある場合は、かかりつけの医師に相談してください。早期発見・早期治療が大切です。「認知症」については、こちらの記事に詳しく解説していますので、参考にしてください。

老老介護になってしまう理由

今後も増え続ける老老介護ですが、その要因を紹介します。

平均寿命と健康寿命

厚生労働省が公表した「平成30年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性81.25歳女性は87.32歳で過去最高を更新しました。世界ランキングでも男性は3位、女性は2位となります。

また老老介護の問題を考える際に併せて知っておきたいのが「健康寿命」です。健康寿命とは自立した生活を送れる期間のことです。

下記の表を見てください。「平均寿命-健康寿命=日常生活に制限のある期間」と考えた場合に、日常生活に制限のある期間が約8年~13年であることが分かります。

日常生活に制限のある期間

  • 男性=9.11年
  • 女性=12.53年

平均寿命が伸びることで、介護の期間が増えてしまうのも老老介護の要因です。また、健康寿命を伸ばすことが重要になってくるでしょう。

参照:厚生労働省「平成30年簡易生命表」/
厚生労働省「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会

核家族化の増加

都市化が進む時代背景とともに、核家族化が一般的になっています。親と子どもが離れて暮らすことが多く、どうしても高齢者夫婦で老老介護する流れになりやすいでしょう。

内閣府が調査した65歳以上の世帯数及び割合構成によると、夫婦のみの世帯が771万世帯あり、32.5%を占めます。次に627万世帯の高齢者が一人暮らしです。

このように高齢者のみで暮らす世帯は、今後も増加する傾向にあり、老老介護の要因といえるでしょう。

老老介護による事件も発生している

在宅介護を1人で抱え込んでしまうと精神的にも肉体的にも限界を感じてしまうこともあります。老老介護であれば、なおさらその状況に陥るのではないでしょうか。

最悪なケースでは、在宅介護を続けていくことに限界を感じ、事件に発展することもあるのが現状です。厚生労働省の統計によると介護疲れを動機とした殺人が年間20~30件起きているといいます。老老介護を背景とした事件の一部を紹介しましょう。

【2020年7月・東京都八王子市】夫(82歳)と妻(83歳)の老老介護

82歳の夫が、83歳の妻の首を絞めて殺害しました。妻は歩くことも難しい要介護状態で、夫も心臓に持病を抱えており、まさに老老介護の状態です。

夫は殺人容疑で逮捕された際に「妻が『死にたい、死にたい』と言ったので、首を絞めた」と供述しています。

【2016年2月・埼玉県比企郡】夫(83歳)と妻(77歳)の老老介護

夫婦で無理心中を図るため83歳の夫が77歳の妻を殺害しました。逮捕された夫は留置所でほとんど食事をとらず、結果同月に衰弱死にいたりました。このように無理心中を図るケースもしばしば報告されているのです。

町社会福祉協議会の証言によると「夫にホームヘルパーの利用を勧めたが、夫は『自分が面倒をみる』と断った」と言います。1人だけでがんばりすぎた老老介護の末路なのかもしれません。

【2015年7月・大阪府枚方市】息子(71歳)と母(92歳)の老老介護

2015年7月に71歳の息子が92歳の母親に小刀を突き刺し殺害しました。裁判を通して、1人で7年間母の介護を支えてきた老老介護の実態が明らかになったのです。

認知症を患っていた母は、被害妄想や怒りっぽくなる周辺症状もエスカレートし「殺せ!」と叫ぶ母を殺害したといいます。また、介護関係者の証言によると、息子は母親を大切にしていたことが分かりました。「施設に入れるのはかわいそう」と思い在宅介護に踏み切りましたが、精神的な限界を迎えた末に介護殺人に及んでしまったのです。

老老介護の問題点

上記の事例で紹介したように「一人で抱え込んでしまう」「ワンオペ介護」の状況が続いてしまうと、共倒れになってしまいます。現状を打破するためにも、老老介護の問題点を紹介しましょう。

高齢介護者の負担が大きすぎる

要介護者の移動やお風呂、着替えなどの介助は、相当な体力が必要です。老老介護の場合は、介護者も高齢者であるため、体力面でも限界を感じやすいでしょう。

加えて、認知症などを患っていた場合は、精神面でも疲弊します。人によって症状はさまざまですが「物盗られ妄想」「徘徊」などの症状がある場合は、家にいても気を休めることが難しい状況といえます。

社会との接点が希薄になる

「介護うつ」という言葉があるように、介護者の負担が大きいと、介護者自身も人との交流や外出する気力などが失われます。

そして介護者がこもりがちになると、社会との接点が希薄になってしまいリフレッシュできない状況が続くでしょう。介護者の社会的孤立は老老介護にとっては危険信号です。

他人に頼ることへの抵抗感

事件の事例でもありましたが、家族以外の第三者に介入してもらうことに抵抗がある人も多くいます。

また離れて暮らす子どもに頼ることは「子どもの介護離職につながるかもしれない」と思い、老老介護を選択する人も多いでしょう。

一人で抱え込んでしまう環境をおのずと作ってしまうことが、介護者の負担をより大きくしています。

金銭的な理由で施設に入れない

老老介護の問題を考えたときに「施設に入居すればいい」という声があるかもしれません。しかし、金銭的に施設介護を選択できないという事情もあるでしょう。

要介護度や施設によって異なりますが、施設介護の場合は、在宅介護よりも月額の出費が大きくなることは確かです。

在宅介護と施設介護の費用にどのぐらいの差があるのか、知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

老老介護の対策・解決策

老老介護の対策・解決策を紹介します。老老介護は誰にも起こる状況ですが、すべてのケースが悲惨になるわけではなりません。この先が不安な人は下記の対策・解決策に取り組んでみてください。

まずは地域包括支援センターに相談

地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを地域でサポートするために設けられている機関です。「総合相談支援業務」があり、困りごとの相談を受け付けています。

社会福祉士・保健師・ケアマネジャーといった専門職が配置されているのが特徴です。専門的なアドバイスをもらえるので、活用することをおすすめします。

他人に頼ることへの抵抗感が強い人も、親戚や知人ではない専門家なので、医師に健康状態を相談する感覚で、ぜひ相談してみください。

「地域包括支援センター」については、こちらの記事を参考にしてください。

介護保険サービスを利用する

要介護認定を受けている場合は「介護保険サービス」を利用できます。介護保険サービスを上手に活用することは、介護者の自分の時間を確保できることにもつながるのです。

要介護者が日中介護事業者で過ごす「通所サービス」や短期間宿泊できる「短期入所サービス」がおすすめです。

介護保険サービスの種類は多様なので、まずはケアマネージャーに相談してみましょう。

「通所サービス」「短期入所サービス」については、こちらの記事を参考にしてください。

レスパイト(休息)を目的に利用する

また厚生労働省が短期入所療養介護の利用目的を調べたところ、64%の人がレスパイト(休息)を目的に利用していることが分かりました。介護者が休息をとることに引け目を感じる必要はありません。政府も介護者の休息を推進しています。

出典:平成28年度老人保健健康増進等事業「介護老人保健施設における在宅療養支援のあり方に関する調査研究事業

施設介護を検討する

在宅介護に行き詰まった場合は、施設介護を検討してみてください。介護施設の種類はさまざまあります。そのため自分の条件にあった施設探しが難しいかもしれません。その場合は「介護のほんね」のような入居相談サービスを利用するのも一案です。

また、金銭的な問題で施設介護は難しいと思うのは早いでしょう。「特別養護老人ホーム」「グループホーム」「ケアハウス」など、比較的安価で暮らせる施設もあります。

それでも入居費用の用意が難しい場合は「リバースモーゲージ」「世帯分離」など、介護費用を捻出する方法もあります。

リバースモーゲージとは、自宅の土地を担保として、老後資金を融資してもらえると金融商品です。世帯分離とは、同居している家族と住民票を分けて、世帯収入を減らし自己負担額を軽減する方法です。

限界を感じる前に、あらゆる選択肢を視野に入れてみてください。老老介護では、共倒れにならない策を取るのが最善です。

この先、老老介護・認認介護がスタンダードに

老老介護は今後スタンダードになっていくでしょう。問題点や解決策を早めに把握することは、老老介護を続けていくうえで重要といえます。

また普段の介護生活について、話を聞いてくれる存在は介護生活にとって重要です。SOSをいえる人を見つけてください。

それは、家族や知人でなくても大丈夫です。ケアマネージャーや行政、認知症などの専門家でも問題ありません。人と話すことで気持ちがスッキリするかもしれませんし、何かヒントを得られるかもしれません。

または「両親が老老介護または認認介護」の状態ならば、定期的に帰省したり電話したりなどして、介護者の話や状況をたくさん聴いてあげてください。

老老介護における限界に達しないためにも、家族や地域のサポートを上手に活用しましょう。

井上

この記事の寄稿者

井上

介護のほんねニュース編集部。
認知症サポーターです。介護に関する今話題のトピックや疑問を、分かりやすくお届けします。

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