【前編】「ご入居者の笑顔」を1番に考える――ウェルケアガーデン馬事公苑の元気の秘訣

2020.11.17
ウェルケアガーデン馬事公苑の村山支配人 ウェルケアガーデン馬事公苑の村山支配人

世田谷区上用賀にある介護付き有料老人ホーム「ウェルケアガーデン馬事公苑」を取材しました。1964年に開催された東京オリンピックの馬術競技場でもある馬事公苑に面し、周辺は豊かな緑に恵まれた環境です。パワーリハビリテーションの最上位機器6種類を揃えるなど、リハビリには特に力を入れています。支配人の村山大悟(むらやまだいご)さんがリハビリの先に見据えるのは「ご入居者の笑顔」。そのために「歩くこと」をとても重視しているのだそうです。「歩くこと」のための具体的な取り組みについてお話を伺いました。

リハビリルーム リハビリルーム

リハビリは「歩くこと」と「パワーリハ」の2本柱

――今回は「ウェルケアガーデン馬事公苑」の特徴についてお伺いします。実際に入居された方からよく言われるポイントはありますか?

そうですね、リハビリが決め手になる方が多いと感じています。ウェルケアガーデン馬事公苑は自立支援介護に力を入れており、リハビリにも積極的に取り組んでいるのが特徴です。

当ホームのリハビリルームは「一般社団法人 日本自立介護支援・パワーリハ学会」の「認証施設A」として認められているんですよ。

――詳しく教えてください。

はい。「認証施設A」と認められるためには「専用のリハビリ機器を揃えていること」「上級指導員がいること」など、いくつかの条件があります。

また、更新していくには単に機器や人員を揃えるだけでなく、リハビリ実績を継続的に学会で発表する必要があります。発表の頻度も2年に1度以上と決まっていますので「機器はあっても実際には使われていない」ということにならないよう、日常的にリハビリに取り組まなければなりません。

私たちはそれらの条件を満たしたホームとして、パワーリハ学会から認証を受けています。「認証施設A」の介護施設は、全国的にも少ないんですよ(※)。

一般社団法人 日本自立支援介護・パワーリハ学会のホームページによると「認証施設A」は全国で9施設(2020年11月16日現在)。

――モノや人といった環境だけでなく、実績も備えているのは頼もしいですね。

ありがとうございます。でも私たちがリハビリでいちばん大切にしているのは、実は「歩くこと」なんです。

――「歩くこと」ですか。それはなぜでしょうか?

パワーリハは週に数回、数十分程度です。それ以外の時間で生活動作そのものを練習しなければ、なかなか自立した生活にはつながりません。そして、全ての生活動作の土台は歩行の自立であると考えています。

「パワーリハ」というと、大きな負荷をかけた筋力トレーニングをイメージされることがありますが、実際の負荷は2.5kgからと、非常に軽いものを用います。負担の軽い適度な負荷を手がかりとし、体が忘れている動作を思い出させるためのトレーニングなのです。

一方で「歩くこと」は日常のなかで取り組めます。体を健やかに保つには、一時的ではなく繰り返し動かすことが大切です。ですから、ウェルケアガーデン馬事公苑では繰り返し「歩くこと」を大切にしています。

――なるほど。具体的にはどのようなことに取り組んでいますか?

リハビリルームでの機能訓練は週に2回なのですが、介護スタッフによる歩行訓練は毎日実施しています。計画的に介入する時間をスケジューリングし、スタッフが付き添いながら廊下を歩いていますね。

ご見学に来られた方には「いつもこんなに歩く練習をしているんですか?」と驚かれるほどです(笑)。

――頻繁に歩行訓練をされているんですね。しかし初めにお話があったように、パワーリハにも力を入れていると。相反するようにも思いますが、どのようにお考えですか?

日常的な歩行訓練とパワーリハは、実はつながっているんです。

例えば立ち上がる動作を思い浮かべてみてください。前傾になってから膝を伸ばすことで立ち上がれますよね。立ち上がりがうまくできない方は「前傾になる」「膝を伸ばす」といった動作に参加する筋肉が少なくなっています。つまりサボっている筋肉が多い状態です。

そのため、必要な動作に特化したマシントレーニングをしながら個々の動作を楽にして、日常的かつ全身的な運動である歩行訓練を組み合わせることで、より効果を上げています。

機器を使ったパワーリハは、体に筋肉の動きを思い出させるためのもの。それに加えて、実際に動きながら歩行訓練を積み重ねている、ということなんです。

――異なるアプローチを併用することが効果的なんですね。

はい。最近では多くの施設で「生活リハビリ」という言葉を聞くようになりました。私たちの歩行訓練も生活リハビリの一環ですが、毎日しっかり徹底して実施できていることは誇りですね。

パワーリハの様子 パワーリハの様子

――パワーリハと歩行訓練をうまく組み合わせるためには、スタッフ同士の協力も必要ではないですか?

スタッフ間の連携は大きなカギになりますね。実は「認証施設A」の条件の1つである「上級指導員」は、当ホームでは副支配人が担っています。柔道整復師の資格を持っていて、2013年のホーム開設以来ずっとリハビリを引っ張ってくれている存在です。

副支配人は「ケアディレクター」としても活躍しています。機能訓練指導員や介護・看護スタッフ、ケアマネジャーなどと情報を共有して、スタッフ同士を連携させる役割をしているんです。

――「ケアディレクター」として具体的にはどういうことをしているのでしょうか?

機能訓練指導員や介護・看護スタッフなどが得た情報は、副支配人のもとに集約されるんです。加えて、1週間に1回以上は核となるスタッフを集めた話し合いを設けています。

リハビリに精通している副支配人が中心となって、スタッフからの情報をもとにパワーリハや歩行訓練の方針を決定します。情報をしっかりと共有するからこそ、スタッフ全員が同じ目標を持ってご入居者に対応できるんですね。

「プールで泳ぎたい」 地道な努力で95歳の願いを実現

――「実績の学会発表もしている」というお話が先ほどありました。何か改善事例を教えていただけますか?

それでは、95歳の女性のエピソードをご紹介します。この方は以前、水泳の先生をされていました。

2019年の2月に転倒して骨折し、立てなくなってしまったんです。それ以来、ベッドで過ごされる時間が増え、すっかり元気をなくしてしまったご様子でした。「どうしたらもう一度笑顔になってもらえるだろう」と、スタッフも思い悩んでいました。

ある日、ご本人が介護スタッフと何気なくお話をしているなかで「砧公園のプールを見に行きたい」とおっしゃられました。砧公園はホームからも歩いていける距離にあります。水泳を教えていたころに通われていたそうで、ふと懐かしくなったようなんですね。

そこで「砧公園のプールに行くことを目標に、歩けるように頑張りましょう!」ということになったんです。

――ご本人が前向きになれる目標が見つかったんですね。

はい。最初はベッドから起き上がる練習から始めました。徐々に歩く練習も重ねて、ずいぶんとスムーズに歩けるようになったんですよ。

そうやって訓練を続けているうちに、その方に新たな希望が芽生えました。「プールに入ってみたい」とおっしゃったんです。

骨折して寝たきりの状態から杖を使って歩けるように 骨折して寝たきりの状態から杖を使って歩けるように

――もともとは歩くこともできなかった方なんですよね? プールに入りたいとは驚きです!

そうですよね。ご本人も「もう数十年はプールに入っていない」とおっしゃっていました。それでもできることが増えて、前向きに新しい目標を持てたというのは素晴らしいことです。私たちは何とかその願いを叶えられるように、さらにリハビリに取り組むことにしました。

実はその方の息子様も水泳関係のお仕事をされていて、水着を買ってくるなどさまざまな協力をしてくださいました。ご本人やスタッフだけでなく、ご家族にまでご協力いただけて本当によかったと思っています。

10月に入って、いよいよプールに向かいました。息子様も一緒にプールに入って付き添っていただきながら「自分で泳ぐ」という目標を見事に実現されたんです! 息子様もとても喜ばれていましたね。何よりも、ご本人の満足そうな笑顔が見られて、私たちスタッフも心から嬉しかったです。

リハビリを重ね、プールで泳ぐ目標を達成! リハビリを重ね、プールで泳ぐ目標を達成!

――実際の映像を見せていただきましたが、本当に幸せそうな笑顔ですね。

そうでしょう。この笑顔を見るために私たちは頑張っているんだと、本当に思います。今回の事例でも、私たちスタッフが最初から「できない」と諦めてしまったら、挑戦することもなくそこで終わっていました。ご入居者の笑顔も見られなかったはずです。

私たち株式会社サンケイビルウェルケアは「昨日より今日を元気に、今日より明日を元気に」という理念を掲げています。これを実現するためには、スタッフが諦めてはいけません。全ての望みが叶えられないとしても、少しでも前向きに捉えて努力することが必要です。

ご入居者にとって「できること」を少しでも積み重ねていくことが大切ですし、私たちスタッフにとっても成功事例を1つずつ積み重ねることに意味があります。

笑顔は自信の現れ

――「笑顔のために頑張っている」という言葉が印象的です。なぜご入居者の笑顔を大切にしているのでしょうか?

高齢になると多くの方が「できないこと」が増えてきます。すると自信もなくなってしまって、笑顔が減ってしまうんです。おそらく若い人以上に「自分のあり方」や「生きがい」について、たくさん考えるのではないかと思います。

だから、ご高齢の方にこそ自信を取り戻してほしい。生きがいを持ち続けてほしいのです。その自信の現れが「笑顔」だと考えています。

――なるほど。自分らしく自信を持って過ごしていただきたいという思いなんですね。

はい。私たちスタッフにとっても、ご入居者の笑顔が見られるとやはり単純に嬉しいですしね。「頑張ろう!」という気持ちになりますよ。

エントランス エントランス

社会参加が笑顔のカギになる

――ご入居者の笑顔を引き出すために、他にも大切にしていることがあれば教えてください。

そうですね。「社会に参加すること」でしょうか。

老人ホームに入ると、一般的には施設の中だけで生活が完結しがちです。でも自宅での生活を考えると、例えば仕事や買い物など何かと外に出て社会と関わりますよね。

外出しなくなると女性はお化粧をする機会が減ったり、身だしなみを後回しにしてしまったりしがちです。男性だと、仕事を定年した途端に引きこもりがちになるといった話もよく聞かれます。

何かしらの形で外出して社会とつながることが、一種の元気の源だと思うんです。

――社会とのつながりを作るために、ホームでも何か取り組んでいるのでしょうか?

はい。現在はコロナウイルス感染症の影響で中止しているものがほとんどなのですが、通常時はご入居者が主体となった地域向けのデイサービスなどを実施しています。

ホームとしてはきっかけと場所を提供しているに過ぎず、運営はご入居者自身がされているんですよ。

――詳しく教えてください。

実はこれも「ご入居者に自信を取り戻してほしい」という取り組みの1つです。ある自立のご入居者に「何か積極的に取り組んでいただけることがないか」と考え、デイサービスの運営を提案しました。まだ本当にお元気な方ですので、主体性を持って地域と関わっていただければと考えていたんです。

その方はとても前向きに取り組んでくださって、今では地域にお住まいの要支援の方が7名ほど集まるデイサービスになりました。週に1回、リハビリルームでトレーニングをした後は、皆さんで昼食を召し上がられています。

主催されているご本人の表情もとても明るくなりましたし、デイサービス以外の施設運営にも積極的に協力してくださるようになりました。

――きっかけ1つで大きく変わるんですね。

そうなんですよ。今はなかなか地域の方と交流ができないのですが、代わりにホーム内で卓球クラブを発足されました。

毎週日曜日に8名ほどで集まって、卓球を楽しんでいらっしゃいますね。先日は2時間近く熱中されていましたよ(笑)。

地域の方との交流も社会参加の1つ 地域の方との交流も社会参加の1つ


【後編に続く】11月18日(水)公開予定
インタビュー後編では、ウェルケアガーデン馬事公苑の1日の生活をピックアップ。馬事公苑すぐそばという立地の魅力についてもお話を伺います。


老人ホーム・介護施設の概要
施設名:ウェルケアガーデン馬事公苑
事業者名:株式会社サンケイビルウェルケア
住所:東京都世田谷区世田谷区上用賀2-2-15
ウェルケアガーデン馬事公苑の詳細ページ

と思ったら、友だちに共有しよう。
介護のほんねニュースをフォローする 

関連施設

0.0
0件
入居費用-
月額費用-
入居条件
住所-

関連リンク

Facebookコメント

寄稿者

編集者画像

宮本由季

介護のほんねニュース編集部。
話題のニュースから介護関連キーワードまで、気になるトピックについて解説します。認知症サポーターです。

今週の閲覧数ランキング