注目すべきは“保険外サービス”? これからの介護サービスの可能性とは

2020.11.16
保険外サービス

2020年11月9日~13日、株式会社高齢者住宅新聞社が主催する「住まい×介護×医療サミット」がオンラインで開催されました。13日には元・日本経済新聞社編集委員で福祉ジャーナリストの浅川澄一氏が登壇。「制度ビジネスから脱却した介護事業者の経営戦略 ~保険外サービス、ICTの活用を踏まえて~」と題して、介護保険制度の改革や保険外サービスの今後の可能性についてお話しされました。

度重なる制度改革によって、介護サービスはより複雑さを増しています。介護を受ける方はもちろん、要介護者を抱える家族にとっても重要な介護サービスは、これからどうなっていくのでしょうか? セミナーの内容を抜粋してお伝えします。

なお、介護保険制度の基本を知っておきたい方は以下の記事をご覧ください。
【2020年版】専門家が介護保険制度のしくみと改正点を解説!

財源も人手も足りない! 介護保険制度の課題

介護保険制度は、介護が必要な方やその家族の金銭的な負担を軽減するため、2000年にスタートしました。40歳以上が支払う介護保険料と公費を財源として、要介護認定を受けた方の介護サービス費用を支えています。介護保険制度の設立当初は、欧米諸国からも「非常に充実した制度である」と称賛されていたのです。

しかし少子高齢化が進み、日本の人口は減少。一方で、介護が必要な高齢者は増加しています。介護保険料を支払う人口は減っているにも関わらず、必要な介護サービス費用は増えているのです。

人口が減るということは、実際に介護を担う人手も少なくなるということを意味します。人手が足りなければ、いくら制度が充実しても機能しなくなってしまうでしょう。

今、介護保険制度は「財源不足」と「人手不足」という大きな課題に直面しているのです。

サービスの縮減、担い手の拡大を図る政府

これらの課題に対して、国ももちろん対策を講じています。2018年の介護保険制度改革では「要支援」と認定された方を介護保険サービスの対象外としました。代替として、自治体が実施する新しい総合事業を割り当てたのです。これによって、介護保険の対象となるサービスは縮減されました。

また、外国人労働者の起用地域のボランティアによるサポートなど、新たな担い手の開拓も進めています。しかし、日本にはもともとボランティアの習慣が根付いていないことなどから、いまだに十分な人手は確保できていません。

今後の介護保険制度改革でも、サービス縮減や担い手を拡大しようとする動きがあります。ところが、介護サービスを必要としている方にとっては生活に関わる問題ですので「サービスを縮小されては困る!」といった声も多く、反対運動も起こっているのが実情です。

介護保険制度が変わろうとしているなかで、介護サービスにはどのような展開が待っているのでしょうか?

“プラスアルファ”のニーズを満たす保険外サービスに注目

浅川氏は「介護保険サービスだけでなく保険外サービスを組み合わせることで、より多くのニーズを満たせる可能性がある」と言います。保険外サービスとは、その名の通り介護保険が適用されないサービスです。費用は当然100%自己負担で、場合によっては高額になることもあります。

その反面、介護保険の制度に縛られていないため、比較的自由なサービスが提供可能です。例えば介護保険の訪問介護では、本人以外の家族の部屋の掃除やおせち料理づくりなど、必要不可欠ではない家事はできません。またケアプランによってサービス内容や時間が決まっているので、同時進行的に追加のサービスをすることもできないのです。そこで追加的に保険外のサービスを利用すれば、より柔軟に利用者の要望に応えられるというわけです。

保険外で滞在型の訪問看護を提供している「全国訪問ボランティアナースの会 キャンナス」は、2020年8月時点で全国に136箇所と拠点を拡大しています。まだまだ成功事例は限られているものの、保険外サービスは着実に広がりを見せていると浅川氏は言います。

住まいと介護保険サービスの組み合わせで、新たな可能性も

一方で、介護保険サービスの利用の仕方にも新たな可能性があります。「サービス付き高齢者向け住宅+小規模多機能型居宅介護」「住宅型有料老人ホーム+デイサービス」など、介護保険外の住まいと介護サービスを組み合わせる方法です。

今でも「サービス付き高齢者向け住宅に住みながら、日中はデイサービスに出かける」という方は多々いらっしゃるでしょう。しかし多くの場合は、異なる事業者の別々のサービスを利用する形になります。

浅川氏が提言するのは、住まいと介護サービスを「同じ建物内、もしくはすぐそばに作ること」です。従来のように別々のサービスとして提供するのではなく、物理的にも一体となって対応することで、より多様なニーズをカバーできます。

さらに、高齢者や障害者といった区分の異なる方々が同じ空間で生活をするなど「共生型」の社会への転換がポイントだと言います。例えば「同じ建物内に高齢者向けの居室と障害者向けの居室を用意する。リビングダイニングでは互いに交流しながら一緒に過ごす」というケースです。複合的なサービスを提供することで、人手不足などの問題への新たなアプローチになるのではないか、と浅川氏は考えています。

なお、介護保険サービスについては以下の記事も参考になります。
介護保険サービスとは|種類ごとにサービス内容を一覧で紹介

目標は、全ての人が当たり前に生活できる社会

浅川氏がしきりにおっしゃっていたのは「生活は切り離せるものではない。全てが一続きで、時間やサービス内容で縦割りできるものではないはずだ」ということです。そのうえでは「介護保険内」「保険外」という区分そのものが見直しを迫られているのかもしれません。

2021年度には、次なる介護保険制度の改革が待っています。改革を受けて、各事業者にもさまざまな変化が訪れるでしょう。介護サービスがどのように変わっていくのか、全ての人が生活しやすい社会に近づくことができるのか。今後の発展に期待が高まります。

介護保険制度の歴史についてもっと知りたい!という方は以下の記事も参考になさってください。
介護保険制度の歴史について2000~2021年までの流れを教えてください!

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寄稿者

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宮本由季

介護のほんねニュース編集部。
話題のニュースから介護関連キーワードまで、気になるトピックについて解説します。認知症サポーターです。

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