世田谷区深沢の落ち着いた住宅街に佇む「ウェルケアガーデン深沢」。一見、高級マンションのような豪華な建物が目を惹く介護付き有料老人ホームです。【前編】では、ウェルケアガーデン深沢が実践している自立支援介護の4つの軸についてお話を伺いました。今回は、1日のスケジュールや毎日開催しているアクティビティについて、支配人の関口毅(せきぐちつよし)さんに語っていただきます。ご入居者の「元気」の秘訣に迫るインタビュー【後編】です。
楽しみを生み出すアクティビティ
――理念である「昨日より今日を元気に 今日より明日を元気に」を実現するために、自立支援介護だけでなくアクティビティも大切にされているそうですね。
はい。身体的な元気には自立支援介護が大切ですが、精神的にも元気で過ごしていただくためには、楽しむことが必要です。その一環として、アクティビティを充実させています。アクティビティに参加していただければ心身の刺激にもなるので、自立支援介護にも効果的ですしね。
――アクティビティはどれくらいの頻度で開催していますか?
毎日開催していますよ。無料のアクティビティもありますし、材料費などがかかる有料のものもご用意しています。
――具体的にどのようなアクティビティがありますか?
毎日実施しているものとしては、ラジオ体操があります。定期的に開催しているのは書道、水彩画、手工芸、映画を楽しむ会などですね。
他にも外部から焼き芋の販売車を呼んで、アツアツの焼き芋を楽しむこともあります。ホームにいるとなかなか食べることもありませんから、ご入居者には喜んでいただけますよ。
あとは1週間に1回、近隣を散歩しています。名づけて「深さんぽ」です。
――自立支援介護の軸として伺った「運動」や「水分」とつながっているものがありそうですね。
そうなんです。「楽しみながら体を動かす」「おいしいものを食べながら水分を取る」といった具合に、楽しむことと自立支援介護を組み合わせています。
――ご入居者にはどんなアクティビティが人気ですか?
映画を楽しむ会はとても好評ですね。これも、映画を楽しみながら水分摂取するという点で自立支援介護とつながっています。
今後の目標としては、男性のご入居者が楽しめる場をもっと増やすことですね。現状では女性のご入居者が多く、アクティビティも女性の方が喜ばれるような内容が多いんです。
――そうなんですね。何か計画していることがあるんでしょうか?
はい。企画段階ですが、家庭菜園も考えています。実はちょうど「魅力会議」を開催しているんですよ。
――「魅力会議」とは何ですか?
ホームをより魅力的なものにするために、何をするべきかを話し合う会議です。本社社員も交えて月に1回開催しています。
ウェルケアガーデン深沢では、男女共通で楽しめるアクティビティとして家庭菜園を始めて、何かを育てる喜びを感じていただきたいと思っています。一人ひとりに専用のお花や野菜を用意して、ゆくゆくは品評会もしたいと考えているんです。
「隣の人のお花はきれいだな」などと、多少の競争意識が生まれれば「もう少し水をあげてみよう」「肥料を変えたほうがいいかな」と、より積極的に考えながらお世話をしていただけると思うので(笑)。
――なるほど! それはおもしろいですね。
ありがとうございます。お花や野菜ができたら、地域の方と関わるきっかけにもなるはずです。今後は地域交流にも力を入れていきたいですね。
――これまでも地域交流はしていたんですか?
はい。すぐ隣に特別養護老人ホームがあり、さらにその隣には保育園があります。ですので、遊びに来ていただいたり伺ったりしていました。向かい側に大きなマンションもあるので、住民の方をお招きしてお祭りもしていましたよ(※)。
※現在はコロナウイルス感染症の影響のため、実施していません。
――他にも特徴的な取り組みがあれば教えてください。
そうですね、毎月1回「茶話会」を開催しています。支配人の私や副支配人、各セクションの責任者などとご入居者が直接お話しする会です。
――「茶話会」ではどんなお話をするんですか?
「こんな設備があったらいいな」とか「あの日のお食事はいまいちだった」とか、さまざまなご意見や正直なご感想を伺っています。正直に言うと、厳しいご意見をいただくことも少なくありません(笑)。
でも、不満をため込むことなくすぐにお聞かせいただけるので、改善や対応も早いと思います。そのおかげか大きな苦情などもほとんどないんですよ。
――そうなんですか。これまでにはどのような対応をしたんですか?
「職員が足りないんじゃない?」というご意見をいただいたことがあります。実際は介護保険の基準を上回る人員を配置していますが、お食事の介助などでばたついているように見えたようです。そこで人員配置の仕方を見直したり、それでも不十分なところには人員を増やしたりしました。
他には、洋食の朝食に合わせてジュースをお出ししていたんですが「甘いものじゃなくて牛乳が飲みたい」と言うご意見もありました。お話を伺ってみると、洋食か和食かに関わらず牛乳が召し上がりたいということでしたので、朝食には必ず牛乳をご用意するようにしました。
――本当に幅広い内容のご意見があるんですね。
そうですね。たとえ些細なことでも、ためこんでしまうと大きな不満になってしまいます。月に1回でもしっかりお話ができると、私たちもご入居者のことがよく分かるので、貴重な機会だと思っていますよ。
ご入居者の1日のスケジュール
――1日のスケジュールはどのようになっていますか?
7時半から朝食です。朝食後は口腔ケアを実施しています。毎日実施しているラジオ体操の後は、予定に合わせて入浴や往診です。午前中にリハビリが入る場合もありますよ。
12時に昼食を取って、午後には無料のアクティビティをご用意しています。外出イベントなどの有料アクティビティは、他の時間帯に開催することもあります。歩行練習や散歩などをおこなうこともありますね。
当ホームでは入浴が週に3回と比較的多いので、午後に入浴していただくケースもあります。他にも月に1回は訪問理美容が来ますので、楽しみにされている方も多いですね。
また、ホーム内でのリハビリだけでなく、外部の訪問リハビリや訪問マッサージを受けていらっしゃる方もいます。
18時に夕食を召し上がったら20時くらいには自室に戻られて、21時頃に就寝です。
――介護付き有料老人ホームで訪問リハビリなどの外部サービスを利用されるのは珍しいですね。
そうかもしれませんね。「元気になりたい」という方が多いので、プラスアルファのサービスとして希望されるケースが多いんです。だいたい3割程度のご入居者が利用されていますよ。
――入居されている方は女性が多いとのことですが、どれくらいの割合ですか?
そうですね、女性の方が75%くらいいらっしゃいます。
――平均年齢と平均要介護度も教えてください。
はい。平均年齢は約88歳、平均要介護度は2です。
ハード面の魅力も職員の努力があってこそ
――ここまでホームでの取り組みやご入居者の生活についてお話を伺ってきましたが、ウェルケアガーデン深沢はホームの建物もとても魅力的だと思います。
ありがとうございます。ハード面にもこだわっており、実はさまざまな受賞歴もあるんですよ(※)。
※2019年 グッドデザイン賞、2019年 第45回東京建築賞 一般二類部門 優秀賞、2018年 MIPIM ASIA Awards 2018 GOLD・SPECIAL JURYアワードなど、その他にも複数の受賞歴があります。
――介護施設で建築の賞を受けているところはなかなかありませんよね。どのような部分にこだわっているのですか?
まず1つ目は、自然にマッチしていることです。深沢という土地は、世田谷区の中でも比較的緑が多いエリアになります。その緑と調和させるために、広々とした中庭があるんです。
2つ目は圧迫感がないことですね。介護施設というと閉塞的なイメージがつきがちですが、反対に開放的な空間づくりをしています。
――なるほど。見学される方にぜひ見ていただきたいというおすすめの場所があれば教えてください。
エントランスホールは特におすすめですね。吹き抜けになっていて開放感がありますし、中庭が一望できます。グランドピアノがあり、高級感も感じられる造りです。
建物とは少し話が変わりますが、当ホームの看板には「介護施設」や「老人ホーム」といった文字も使っていません。外から見たときに、いい意味で「老人ホームらしさ」を感じさせないようにしているんですよ。ときには通りかかった方に「ここはマンションですか?」と尋ねられるほどです(笑)。
――間違えてしまうのも分かります(笑)。良質な建物であることは、ご入居者にとってどのようなメリットがあると思いますか?
やはり豪華なものに囲まれると、自然と気分が上を向くと思います。あとご家族やお友達を、誇りをもってホームに呼べることも利点の1つですね。
ご入居者が建物や設備面にマイナスの印象を持っていたら「『こんなところで暮らしていて大丈夫かしら』と心配されるのではないか」と、人を呼ぶことをためらってしまいます。反対にきれいな施設であれば、気が引けることもなく遊びに来てもらえるはずです。
どれだけアクティビティなどが充実していても、やはりご家族やご友人の面会に勝るものはありません。だからこそ「遊びに来てほしい」と思える施設であることは、メリットだと思いますね。
――気持ちへの影響が大きいんですね。
そう感じています。きれいな施設を保つために、職員は清掃や衛生面にも気を配っているんですよ。
職員のロッカーには「あなたたち一人ひとりは清掃員でもある」という掲示をして、意識を高めています。例えばゴミが落ちていたら拾うという当たり前のことを当たり前にできるよう、徹底しています。
支配人の私自身も、毎日2回は施設内を巡回して「汚れていないか」「修繕が必要な箇所はないか」と確認するのが日課になっています。
――職員の皆さんの心がけがあってこそなんですね。
はい。ハード面がいくら整っていても、そこで働く人の意識が欠落していては意味がありません。ですから、私たちが本当に見ていただきたいのはソフト面なんです。
――ちなみに、実際に見学された方からはどんなお声がありますか?
娘様や息子様などに「親ではなく自分が入居したいくらい」と言っていただけることがあります。他には「きちんと挨拶してくれて気分がいい」「職員の感じがいい」など、やはり職員の接遇に対してありがたいお言葉をいただくことが多いですね。
施設をお探し中の方へのメッセージ
――関口支配人にとって、介護施設とはどのような場でしょうか?
私は、ホームはただの生活の場ではないと思っています。「アクティビティを楽しむ」「食を楽しむ」など、ただ暮らすだけではない楽しみが必要です。
また職員には、ご入居者に対して「○○さんがいてくれると楽しい、嬉しい」という気持ちを伝えることの大切さを言い聞かせています。いわば存在価値を実感していただくということですね。
それこそ、水彩画のアクティビティはご入居者が先生をしてくれているんですよ。これも1つの存在価値の表現です。
「自分には価値がある」と思えて、楽しみがあればこそ「頑張ろう」という気持ちも湧いてきます。私たちホームの職員は、ご入居者の皆様が元気になるためのお手伝いをさせていただいているんです。
――なるほど。ウェルケアガーデン深沢は、どのような方におすすめですか?
ずばり「元気になりたい方」ですね。実際に入居されている方も「元気になるために施設に入りたい」「ここに来たら元気になれると聞いた」という方が多いです。
なかには「元気になったら家に帰りたい。そのために頑張っている」という方もいらっしゃるほどですよ(笑)。
――そうなんですね。最後に、施設を探されている方に何かアドバイスをお願いします。
そうですね、まず大切なのは「どういうふうに過ごしたいか」をきちんと考えることではないでしょうか。「元気になりたい」も1つの答えですし「余生を穏やかにゆっくり過ごしたい」という方もいらっしゃるでしょう。
ご本人が考えられなければ、ご家族の意思でも結構です。今後どうしていきたいのかを考えることで、ホーム探しで重視すること、ホームに求めることも変わってくると思います。
見学のときは、ご入居者が実際にどんな生活をしているかを見ることが大切です。可能であればご入居者に声をかけたり、表情を見たりしてください。穏やかで楽しそうか、落ち着きがないのか……ホームの実態はやはりご入居者一人ひとりに映し出されます。
そしてご入居者に対して職員がどんな声をかけているかなど、対応もチェックしてください。ご入居者と職員の様子を見ることで、そのホームの空気が分かると思いますよ。
老人ホーム・介護施設の概要
施設名:ウェルケアガーデン深沢
事業者名:株式会社サンケイビルウェルケア
住所:東京都世田谷区深沢1丁目32番18号
ウェルケアガーデン深沢の詳細ページ
この記事の寄稿者
宮本
介護のほんねニュース編集部。
話題のニュースから介護関連キーワードまで、気になるトピックについて解説します。認知症サポーターです。