モットーは「昨日より今日を元気に 今日より明日を元気に」
――ウェルケアガーデン深沢が大切にしていることを教えてください。
はい、私たちの運営会社・株式会社サンケイビルウェルケアの理念は「昨日より今日を元気に 今日より明日を元気に」です。この理念の通り、ご入居者に元気な毎日を過ごしていただくことを大切にしています。
――なるほど。元気に過ごしていただくために、どんなことに取り組んでいますか?
まずは、自立支援介護です。ご自分らしい毎日を送るために、日々の体調を整えて活動的に過ごせるよう、支援しています。
また、アクティビティにも力を入れています。生活のなかに楽しみを見つけていただくことで、より前向きな気持ちを持っていただけます。すると、自立支援介護の取り組みにもより積極的になっていただけます。
ですので自立支援介護とアクティビティの2つには、特に注力して取り組んでいます。
リハビリはご本人の意欲が必要不可欠
――自立支援介護ということは、リハビリが充実しているんでしょうか? リハビリの人員体制はどうなっていますか?
現在、2名の機能訓練指導員が勤務しています。どちらも柔道整復師の資格を持っていますよ(※)。
※2020年10月現在
――リハビリの頻度はどれくらいですか?
週に2回、40~45分程度の個別リハビリを実施しています。
――1回あたりの時間が長いですね。
そうかもしれませんね。でも途中で休憩も挟みます。もちろんずっと運動しているわけではありませんよ(笑)。
――そうなんですね。リハビリをするうえで、自立支援介護のために心がけていることは何ですか?
基本の考え方として、高齢者のリハビリは決して新たに筋肉を付けるものではありません。いわば「筋肉を思い出す」作業です。
例えば歩けなくなってしまった方は、歩くために筋肉をつけるのではなく、どうやって歩いていたかを思い出さなければいけません。そのためにはトレーニングばかりではなく、日常的な姿勢の見直しなども必要です。
また、リハビリで一番大切なのはご本人の意欲だと考えています。
――意欲を引き出すために、何か工夫されていることはありますか?
はい。ご入居者には必ず目標を持っていただくようにしています。
漠然と「自立支援介護をします」「リハビリをしましょう」と言われても、前向きに取り組める人は少ないでしょう。でも「自分で歩いてトイレに行きたい」「またコンビニでお買い物できるようになりたい」などそれぞれの目標があれば、自ら努力する気持ちが出てきます。
この考え方があるので、リハビリの最中も会話が多いんですよ。「どういうふうになりたいですか?」「どんな生活をしたいですか?」と問いかけて、意欲を持っていただけるようにしています。
自立支援介護の軸は「水分」「運動」「食事」「排泄」
――ご本人が意欲的にリハビリに取り組むことで、積極的な自立支援介護ができるんですね。
はい。ただし自立支援介護は決してリハビリだけではありません。というより、リハビリだけでは自立支援介護はできないと考えています。
――そうすると、自立支援介護には何が必要なのでしょうか?
私たちの自立支援介護には、4つの軸があります。それが「水分」「運動」「食事」「排泄」です。リハビリは「運動」にあたるので大切な要素の1つではありますが、それが全てではないんですよ。
――運動だけでなく4つの軸がなぜ大切なのか、理由を教えてください。
まず、高齢者は水分が不足しているケースが多いです。水分が足りないと頭がぼーっとしたり体内の循環も悪くなったりしてしまいます。便秘にもなりやすくなるんです。
水分を十分に取ることで脳が覚醒し、腸内の環境も整い、自然な排泄リズムができます。体の調子が整えばお腹が空いてごはんも食べたくなる。すると、しっかりと栄養を取れるようになります。
また、運動をすることで体の機能が保てるだけでなく、さらに食事にも意欲が湧いて水分も取りたくなります。適度な運動は腸の調子を整え、排泄リズムも向上するんです。
このように、高齢者にとって大切な要素の好循環を生むために「水分」「運動」「食事」「排泄」の4つの軸が欠かせません。
――なるほど、全ての要素が影響し合っているんですね。
そうなんです。特に水分摂取はご高齢の方以外でも実感しやすいポイントだと思いますよ。例えば少し眠たいなというときに水分を取ったら、頭がすっきりします。便秘解消に水分が大切ということも、よくいわれますよね。
自分がどれくらいの水分を取っているのか、ぜひ意識して過ごしてみてください。重要性が分かると思います。
――私も早速やってみたいと思います。ちなみにウェルケアガーデン深沢のご入居者は、毎日どれくらいの水分を摂取しているのですか?
1日の摂取目標は1,800mlです。
――随分と多いですね! 普通に生活しているとなかなか飲めない量だと思いますが、どのような工夫をされているんですか?
確かに多いですよね。「飲んでください」と言うだけでは難しい量だと思います(笑)。でも水分をしっかり取っていただいているおかげで、当ホームでは尿路感染症など高齢者特有の病気の発症率も低いんですよ。
1,800mlを達成するためには「水分を取る機会を増やす」「飲み物の種類を増やす」という2つの工夫をしています。
――それぞれ詳しく教えてください。
はい。まず「水分を取る機会を増やす」という取り組みについてです。これは私たちの普段の生活を考えてみると分かりやすいかもしれません。
例えば「映画を見る」「誰かとおしゃべりする」というとき、手元には飲み物がありませんか?
――確かに、言われてみるとそうですね。
決して飲み物を飲むことが目的ではないのに、意識しなくても水分摂取ができているはずです。ですから当ホームでも映画鑑賞会やお茶会などのイベントを開催し、無理なく水分を取れるようにしています。お茶を飲むためにおいしいお菓子を特別に用意する「銘菓の会」も好評ですよ。
――飲み物を飲むことが目的のイベントがあるんですね。もう1つの「水分の種類を増やす」についてはどうでしょうか?
これもシンプルな考え方です。水だけを飲み続けるのと、お茶やコーヒーなど種類を変えながら飲むのとでは、後者の方がより多くの水分を取れます。
朝食は和食か洋食かを選べるので、食事に合わせて飲み物もコーヒーや牛乳、ジュースなどと変えているんです。イベントによってもさまざまな種類の飲み物を用意していますよ。
――そうなんですね。一人ひとりの水分摂取量はどのように管理しているのですか?
スマートフォンでデータを管理しています。介護スタッフが持っているスマートフォンは一人ひとりの情報を入力でき、リアルタイムで共有が可能です。
例えば、お部屋でご自身で水分を取られたときにはおおよその量を教えていただきますし、スタッフがお部屋にお持ちするときもその情報を記録します。
そのため逐一状況を確認しながら、水分が足りていない方はお茶会に積極的にお誘いするなどお声掛けするようにしています。
薬には安易に頼らず、根本解決を目指す
――水分摂取によって病気の発症率も低いというお話がありました。他にも何か、病気の対策として気を付けていることはありますか?
そうですね。病気の対策ではないかもしれませんが「薬を安易に使わない」ということは心がけています。
――具体的にはどういうことでしょうか?
高齢になると、便秘や不眠症を抱える人が増えます。介護施設では、その対応として下剤や睡眠薬を日常的に使用することも珍しくありません。
しかし下剤や睡眠剤では即時的な対応はできても、根本の原因が解決しません。原因を解決しない限り、薬に頼りっぱなしの状況ができてしまいます。
また睡眠剤を使用していると、夜間ふと目が覚めたときの転倒リスクも高まるんです。事故の危険性という意味でも、薬にはできるだけ頼らないようにしています。
――そうなんですね。代わりにどのような対処をしていますか?
便秘の方は、基本的にはやはり水分摂取です。ビフィズス菌入りの飲料や炭酸水などをお出しします。腸内環境をしっかり整えることで、便秘しにくい体質に改善することが大切です。
不眠症の場合は、夜しっかり眠れるような生活リズムを作ることが必要です。そのために水分をとって日中の覚醒レベルを上げたり、運動やアクティビティで体を動かしたりしていただきます。
――生活を改善することで対応しているんですね。
はい。その場だけの対処ではなく、症状の根本的な解決のためには重要なことだと思っています。
要介護5から改善! 家族と食事を楽しむまでに
――自立支援介護などの取り組みを通して、要介護度やADLが改善した例はありますか?
もちろんです。毎年複数名の方が改善していますよ。2019年に要介護認定の更新をされた方では、14名中9名の要介護度が改善しました。割合にすると64%ですね。
――半数以上の方の要介護度が下がったんですね! ADLの改善状況も教えてください。
例えば入居時に寝たきりだった方が5名いらっしゃいましたが、現在では皆様寝たきりではなくなっています。
お食事の面では、4名の方が入居時には常食以外の介護食を召し上がっていました。しかし現在ではすべての方が常食を召し上がれるようになっていますよ。
――さまざまな改善例があるのですね。具体的なエピソードも教えていただけますか?
そうですね。それでは、90歳で要介護5の認定を受けていた女性のご入居者のエピソードをご紹介します。
この方は認知症や脊柱菅狭窄症を発症されたことから、住宅型有料老人ホームで生活されていました。ところが体を動かさない生活が続いたためか、誤嚥性肺炎や尿路感染症などを繰り返し、寝たきりとなってしまったんです。その後、胃ろうを造設したりバルーンカテーテルを使用したりと状況は悪化し、手足も拘縮が強くてなかなか動かせない状態でした。
当ホームには、ご家族の「もう一度元気になってほしい」という思いで入居されました。入居後にまず取り組んだのは、水分摂取量の増加です。水分を取ることで口腔内が清潔になり、誤嚥性肺炎の予防になります。また、尿量が増えるので尿路感染症も防ぐ効果があるんです。
他にも手足の拘縮を緩和するために、ソファーや歩行器などの道具にも工夫しながら、1日2回の歩行訓練に取り組みました。少しずつでも体を動かすことで関節も柔らかくなって、無理なくしっかりと座れるようになったんですよ。
また胃ろうを造設されていましたが、口から食べる練習も徐々に進めてました。3カ月ほど経過すると、娘様と同じトンカツ御膳を召し上がれるまでに回復したんです!
――3カ月でお食事ができるまでに回復されたんですね。
そうなんです。ご本人はもちろん、娘様も大変喜んでいらっしゃいましたね。今ではご自身で好きな飲み物を飲まれたり、娘様と一緒に近くのカフェに出かけられたりしています。
単純に「要介護度が軽くなった」「ADLが改善した」というだけではなく、ご家族との大切な時間も取り戻せたんです。やはり根本的な原因としっかり向き合って対応するからこそ、このような結果が得られるのだと思いますよ。
インタビュー後編では、ウェルケアガーデン深沢が自立支援介護とともに力を入れているというアクティビティについてお話を伺います。数々の受賞歴がある建物の魅力にも迫りますので、ぜひご覧ください。
老人ホーム・介護施設の概要
施設名:ウェルケアガーデン深沢
事業者名:株式会社サンケイビルウェルケア
住所:東京都世田谷区深沢1丁目32番18号
ウェルケアガーデン深沢の詳細ページ
この記事の寄稿者
宮本
介護のほんねニュース編集部。
話題のニュースから介護関連キーワードまで、気になるトピックについて解説します。認知症サポーターです。