JR武蔵野線「西浦和」駅のほど近くにある介護付き有料老人ホーム「浦和さくら翔裕館」。「入居者様とご家族に感動を与えるサービスを提供しています」と施設長を務める豊田勝彦(とよだかつひこ)さんは言います。実際にどのような感動があり、どのようなケアを実践しているのか取材しました。
日々のレクリエーションが健康の源
──浦和さくら翔裕館はどのような施設ですか?
居室数・40床ほどのアットホームな施設です。日中はにぎやかでデイサービスのような雰囲気ですね。
毎日レクリエーションを開催しているので、入居者様同士の交流も盛んなのです。
午前中に毎日、午後も週に2~3回開催しています。体操や脳トレ、カラオケ、習字などさまざまなレクリエーションを企画していますよ。
──レクリエーションに力を入れている理由を教えてください。
やはり高齢者の皆様には、心身ともに現状維持していただくことが大事です。
引きこもると急激に体力や気力が落ちます。レクリエーションって参加すると筋力も付きますし、その場にいるだけで視覚・聴覚も刺激されるので認知力も鍛えられるんですよ。
できるだけ長くご自分のお力で「立つ・歩く・座る」ができるようにという気持ちも込めてレクリエーションを実施していますね。
──どのくらいの方が参加していますか?
40人ほどいる入居者様のうち30人ほどです。現在はコロナウイルスの感染予防対策もあり、フロアを分けて少人数でレクリエーションを実施しています。
──最近、好評だったレクリエーションを教えてください。
コロナウイルスが流行してからは、外出レクが積極的にできなくなってしまったので、最近は「食事レク」に力を入れています。
そのなかでも「吉野家の日」や「餃子の日」が好評でした。
──「吉野家の日」とは、牛丼の出前を取ったのでしょうか?
出前ではありません。牛丼は施設内の厨房で作り、吉野家の味を再現しました。吉野家にどんぶりと制服を借りて、「吉野家」と描いた暖簾も作って、皆様が集まる食堂を吉野家にしたのです(笑)。
──想像以上に本格的でした(笑)。「餃子の日」についても教えてください。
「餃子の日」は、ホットプレートで目の前で焼きながら、できたての餃子を食べました。
施設で暮らしていると、意外とできたての餃子を食べる機会ってないんですよ。
──入居者様の反応はいかがでしたか?
皆様「アツアツでおいしい」と喜ばれていましたね。どちらも初めて試みた企画でしたが、好評でした。単に牛丼や餃子をお食事として出すのではなく、ちょっとした面白みを加えてた企画で、食べる喜びを感じていただきたいです。
モットーは「感動介護」
──力を入れているレクリエーションについて伺ったところで、あらためて浦和さくら翔裕館が目指すことを教えてください。
はい。私たち浦和さくら翔裕館を運営するサンガグループには「感動介護」という理念があります。
──「感動介護」とは、どういう介護でしょうか?
簡単に説明すると、入居者様やご家族に感動してもらえるような介護を提供することです。または、心から笑顔になれるような時間をつくることですかね。
──スタッフにもその理念は行き届いていますか?
はい、当グループのモットーでもあり、教育や研修もしているので一人ひとりが意識しています。
現場の定例会でも「いつも笑わない入居者様がトランプのレクで笑っていた」など、入居者様の感動を共有していますよ。
──豊田さんが「感動介護」をするにあたって大事にしていることがあれば教えてください。
家族目線の介護でしょうか。お仕事だと思って接するのではなく、家族の一人と思って接しています。自分の親がここ浦和さくらに入居していると思って行動していますよ。
もう1つは入居者様の時間軸で考えること。高齢者の皆様というのは、私たちに比べて残りの時間が短い分、その一瞬一瞬がとても貴重なんです。
そういう視点を持つと「後でいいじゃん」といい加減に対応するのではなく「いま、その人のお話を聴こう」という姿勢になりましたね。
──感動介護についてエピソードを教えてください。
そうですね、ここ最近はコロナウイルスの影響もあって、面会謝絶の施設も多く、ご家族の最期に立ち会えなかったというお話もよく聞きます。
当施設でも、その時期に看取り介護になった入居者様がいらっしゃいました。「最期は一緒に過ごしたい」というご家族の強い希望もあって、感染対策に最大限に配慮し、空いている一室をご家族と入居者様のためにご用意しました。
家族水入らずで最期まで付き添えたことに、ご家族にも喜んでいただけましたね。
介護する側も感動させられる日々
──まさに家族目線の介護ですね。
そうですね、なるべく働いている側の都合だけで判断しないようにしています。
もう1つエピソードがあります。2019年に台風19号で「浦和さくら翔裕館」が浸水したんですよ。お食事を配膳するのにもひと苦労で、私たちスタッフだけではどうにもならない状況でした。
ご家族や休みの職員、皆様が助けてくださり、どうにか持ち直すことができました。本当にあの時に助けてくださった皆様には感謝しております。
あっ、これは私たち施設側が感動したというエピソードでしたね……(笑)。
──入居者様やご家族に感動させられる“逆”感動介護もあるんですね。ほかにも豊田様が感動したエピソードがあれば教えてください。
はい、有り難いことに日々感動させられています。
ピアノが上手な入居者様がいらっしゃるのですが、いま音楽レクを担当してくれています。その際に、ほかの入居者様用の歌詞カードも作ってくれたんですよ。これも感動しましたね。
──入居者様がレクを担当するのも素敵ですね。
ええ、その方の趣味や特技はどんどん生かしたいですね。入居者様には、入居する際にやりたいことや特技などを伺っているんです。なるべくダメとはいわず、その方のやりたいことを優先できるようにサポートしています。
──他にも入居者様のご要望に応えた事例はありますか?
入居前はご自宅で庭いじりが趣味だった入居者様がいらっしゃいました。ご家族のご要望もあり施設内で家庭菜園ができるようにプランターを用意しましたね。
インカムを着けて声掛けを共有
──入居者様の平均年齢や要介護度などを教えてください。
平均要介護度は2.8です。男女比は7.3で、平均年齢は84歳です。
認知症の方は6~7割いらっしゃいますが、身体的にはお元気でしっかりとされている方が多いですね。
──何が決め手で入居される方が多いですか?
施設見学に訪れたときに、レクリエーションの様子を見て、その明るい雰囲気が決め手になる方が多いです。玄関入ってすぐ目の前にガラス張りのデイルームがあるので、はじめての方でも、入居者様の表情やスタッフの接し方が掴めやすいと思います。
施設がある浦和周辺は介護施設が多い地域です。周辺の老人ホームと比べて、料金が比較的リーズナブルな点も決め手になっていますね。
──リーズナブルな価格帯でも、よいサービスを提供するために工夫していることはありますか?
そうですね。やはりスタッフの質を向上させることです。施設長としても注力しています。
その一環として、この7月にインカムを導入しました。介護スタッフ、看護師、清掃員などがインカムを着けて仕事をしています。
スタッフが入居者様に接している対応がインカムを通して聞こえてくるので「その声掛けは、こう変えていこう」など、スタッフ間でもケア方法を共有しやすくなりました。
──質の向上という点で効果を感じられているんですね。
はい、まだ導入して数カ月ですが、相手の立場や状況を考えた言葉遣いや声掛けになってきましたね。
日々のルーティンを大切に
──1日のスケジュールを教えてください。
はい。ざっくり説明しますと、8時に朝食、10時にレクを開始して10時半に水分補給。12時に昼食、15時からおやつの時間です。それ以降はレクをしたり、自由時間だったりと日によって違います。夕食は17時から、就寝はだいたい20時です。
──水分補給がスケジュールに組み込まれているんですね。
高齢者の方はのどの乾きを感じにくくなるうえに、トイレに行くことを面倒に思ってしまうので、あまり水分を進んで摂らないんですよ。でもお体のことを考えたら、水分補給は大切です。血流も活性化するし飲んだほうがいいですね。
なので朝食、朝のレクリエーション後、昼食、おやつの時間、夕食と水分補給を促していますね。
──レクリエーションに参加していない方も水分補給できていますか?
もちろん、お部屋にいる方にも水分補給するようにお声掛けしています。ルーティンに組みこむことで、皆様、こまめに水分をとることが習慣になってきました。
──日々の習慣は大切ですね。
はい、レクリエーションの参加もそうですが、やはりこちらが毎日声を掛けることで入居者様の習慣になるんです。そういう日々の積み重ねや信頼関係があってこそ、感動介護が提供できるのではないかと考えています。
──ありがとうございます、感動介護は1日にしてならずですね。最後に入居を検討している方にメッセージをお願いします。
浦和さくら翔裕館はご自宅のようにちょっとした融通が利く施設でもあります。例えば「週末だけは自宅に帰りたい」「毎日散歩したい」なども、ご家族様のご了承をいただいたうえで施設としてご協力しております。
さいたま市でホームを探している方は、ぜひ見学へお越しください。スタッフ一同ご家族のようにお迎えいたします。
老人ホーム・介護施設の概要
施設名:浦和さくら翔裕館
事業者名:株式会社関東サンガ
住所:埼玉県さいたま市桜区桜田2-9-10
浦和さくら翔裕館の詳細ページ
この記事の寄稿者
井上
介護のほんねニュース編集部。
認知症サポーターです。介護に関する今話題のトピックや疑問を、分かりやすくお届けします。