西武新宿線「下井草」駅、または「井荻」駅から徒歩約5分に位置する「ツクイ・サンシャイン杉並」。35年以上の介護実績を持つ株式会社ツクイが運営する、ハイグレードな介護付き有料老人ホームです。【前編】では「お客様やご家族と関わることの大切さ」や「24時間看護師常駐のメリット」について伺いました。【後編】では機能訓練やお食事、看取りについて施設長の吉村大輝(よしむらひろき)さんに語っていただきます。
――ツクイ・サンシャイン杉並のリハビリ体制はどうなっていますか?
はい、合計8名の専門職と補助員の介護福祉士が1名います。専門職の内訳は理学療法士(PT)が4名、作業療法士(OT)が2名、言語聴覚士(ST)が2名です(2020年9月現在)。
――言語聴覚士が2名も常駐しているのは珍しいですね。
そうですね。理学療法士や作業療法士はいても、言語聴覚士はいないという施設も多々あります。
そのためお客様も嚥下訓練を希望されている方が多いですよ。嚥下体操以外にも、訓練の一環としてSTが食事の介助をおこない、嚥下の機能を評価しています。
――リハビリの頻度はどれくらいですか?
基本は週に2日、20分程度です。ただし、入居後1カ月は週に5日間リハビリができる体制を整えています。リハビリ専門職が8名いるからこその取り組みだと思います。
――リハビリをするうえで大切にしていることは何ですか?
専門職によるリハビリももちろんですが、いちばん大切なのは「生活リハビリ」だと考えています。「ベッドから立ち上がる」「ベッド上での生活の方も自力で上半身を動かす」など、できる範囲の動作を自分の力ですることが大切です。
本来なら自分でできるはずのことをスタッフが手伝ってしまっては、機能も衰えてしまいます。だから、自分でできることは自分でしていただく。これが生活リハビリです。
――なるほど。でも専門職だけでは生活リハビリまでできませんよね?
もちろんです。ですから私たちは、全ての職員が連携して機能訓練に取り組むことを大切にしています。
毎日の朝礼・夕礼での申し送りを中心に介護スタッフ、看護師、生活相談員、ケアマネジャー、栄養士など全セクションのスタッフで情報共有しています。そのなかで課題が見つかったら話し合いをしているので、全てのセクションが同じ意識でお客様に向き合えるんです。
――そうなんですね。生活リハビリや専門職のリハビリを通して改善した例はありますか?
一度落ちてしまった機能を改善させることはやはり難しくて、何よりもご本人の意欲が大切なんです。意欲を持って熱心に取り組まれている方は結果も出やすいですよ。
例えば入居時は車イスだったのに、1~2カ月後には歩行器で歩けるようになった方がいらっしゃいます。
他にも、通常の車イスには座れないほどの体型の方が、生活を改善して2~3カ月ほどで通常の車イスで生活できるようになった例もあります。
この方は当初、食べることへの執着が強く寝たまま食べて嘔吐してしまうような状態でした。栄養士や介護スタッフと連携しながら「これに気をつけましょう」「ここまで頑張ったらお昼にはプリン食べていいですよ」などとサポートを続けているうちに、体重もみるみる落ちたんです。入居してきたときはバランスが取れずに立てなかったのですが、最近では平行棒をつたって歩けるようになっていますよ。
スタッフ同士の連携とご本人の意欲があってこそ、リハビリの効果が得られるんです。
――ツクイ・サンシャイン杉並のお食事について教えてください。
当施設では朝食は和食か洋食、月曜日から金曜日の昼食と夕食は4種類のメニューからお選びいただけます。
――セレクトメニューが4種類もあるんですね。
はい。「自分で食べたいものを選ぶ」というのも大切なご本人の意思です。一人ひとりの意思を尊重できるように、セレクトメニューを採用しています。
あとはシンプルに、お食事は毎日の楽しみですから、決まりきったメニューよりも好きなものを食べられたほうが嬉しいと思いますしね。
――お客様からはどのような反応がありますか?
そうですね、入居されるとそれが当たり前になっているというのが正直なところです(笑)。でも当然のように自分の意思を表せるということは、とても良いことだと思いますよ。
――実際のメニューにはどのようなものがありますか?
例えば「刺身」「スパゲティ」「カレーライス」「コロッケ」「エビフライ」「煮魚」……他にもさまざまなものがあります。
刺身は生ものなので提供を控えるという施設もありますが、安全・衛生面にさえしっかり気をつければご提供できます。お客様にもとても人気のメニューです。
ときには施設の駐車場にバーベキューコンロを出して「カツオの藁焼き」を焼いてお出しすることもあります。煙や香りが食欲をそそるんですよ。
――食べるのが楽しみになりそうですね。メニューを考えるうえで何か大切にしていることはありますか?
「これが食べたい」と意欲を持っていただけるように心がけています。組み合わせもそうですし、盛り付けやお皿など見た目にも気を配っているんですよ。
それまで食べてきた歴史もありますから、味付けには個人の好みもありますよね。調整できるものはできるだけ対応するようにしています。塩ではなく出汁をきかせるなど、栄養面への配慮も欠かせません。
それと、昼食はライブキッチンを実施して調理のにおいや音を感じていただけるようにしています。目の前で刺身をさばいたり天ぷらを揚げたりしていると「私これ食べたいわ」とか「おいしかったよ」というコミュニケーションも生まれます。これは、お客様にとっても厨房のスタッフにとっても嬉しいですね。
――これまでのお話で、ご本人やご家族の意思をとても大切にしていることが分かりました。
ありがとうございます。ツクイ・サンシャイン杉並では看取りにも対応しており、そのうえでもご本人やご家族の考え、お気持ちは何よりも尊重すべきだと考えています。
――なるほど。でも看取りとなると、ご本人とご家族の思いが違うこともありそうです。そんなときはどうするんですか?
そうですね、もちろん違う考えをお持ちのケースもあります。その場合は、ただただよく話し合うしかありません。それぞれの気持ちをしっかり伝えて、ちゃんと理解して納得してもらうしかないんです。
私たち施設の人間は、お客様とご家族の間に立つ調整役です。施設としての看取りのスタイルは問題ではありません。あくまでもご本人がどう全うされたいのか、ご家族がどう送ってあげたいのかが大切なんです。
――これまでにも意思を尊重した看取りの事例があれば教えてください。
はい。2つほどご紹介しますね。
誤嚥性肺炎で入院された方が、最期は施設でゆっくり過ごしたいとご自分の意思で退院されて戻っていらっしゃいました。「好きなものが食べたい」とおっしゃっていたので、夕食にラーメン、食後にはアイスもご用意して「おいしい」と喜んでいらっしゃいました。お亡くなりになったのはその翌日です。退院からわずか3日ほどでした。
また別の方は「透析はしたくない」という強い意思をお持ちでした。透析をしなければ顔もむくんでパンパンになってしまう。それでも、透析はしたくないとおっしゃっていました。
その方は園芸がお好きだったので、施設でできることとして小さな畑を始めたんです。土いじりをしたり実った野菜を味わったりと充実した時間を過ごして、最期を迎えられました。ご逝去された後も、畑にはその方のお名前をつけて、今も大切に野菜を育てていますよ。
――それぞれの思いを全うされたんですね。意思を尊重するということは、スタッフにとっても覚悟のいることではないですか?
そうですね。スタッフには「自分が何かしたことでお客様が亡くなってしまうかもしれない」という恐怖もあるでしょうね。
それこそ、誤嚥性肺炎を患っている方にラーメンを食べさせてもいいのかは難しい判断です。でもご本人がしたいと思っていることを叶えられずに最期を迎えたら、後悔が残ってしまうと思います。
だからこそ看取りについてはスタッフ間でも日常的に話題に出しますし、お客様の意思を尊重することの大切さを話し合っています。やっぱりご本人が悔いなく生涯を遂げられることに勝るものはありません。
――「ご本人とご家族に寄り添う」という考えがよく分かりました。
※上記の内容はご本人の意思を尊重し、ご家族もその意思に納得され、施設との同意をもって実施しております。
――ツクイ・サンシャイン杉並はどのような方におすすめですか?
どなたでも大歓迎ですよ(笑)。というのもこれまでお話ししたとおり、当施設では自由な生活を送っていただけます。ですから、一人ひとりに合った暮らしを楽しんでいただけると思います。
――施設をお探し中の方にメッセージをお願いします。
施設を探すうえでは、エリアや金額も欠かせない条件だと思います。特に金額面はあまりに予算ギリギリよりも、ある程度の余裕を持って探していただいたほうが安心です。
条件をもとに3~4件程度の候補にしぼったら、直接足を運ぶことも必要です。あまりに多くの施設を見てしまうと、混乱して考え直しになる方もいらっしゃいますので、気を付けてくださいね。
そして、施設にはもちろん「できること」と「できないこと」があります。期待していることやお願いしたいことがその施設でできるのか、きちんと話してすり合わせしていただきたいです。入居してから「違った」となってしまわないように、入居前にしっかり確かめてくださいね。
この記事の寄稿者
介護のほんねニュース編集部。
話題のニュースから介護関連キーワードまで、気になるトピックについて解説します。認知症サポーターです。