ターミナルケアとは|介護や看護方法・保険料の計算・メリットとデメリットなど
家族の余命がわずかになって、介護施設や主治医からターミナルケアを提案された人のなかには「ターミナルケアがどんなものなのか」「メリット・デメリットを知りたい」という人も多いでしょう。
今回は、ターミナルケアの概要や利点、さらに看護や介護の方法などを解説していきます。ターミナルケアについてもっとよく知りたいという人は、ぜひこの記事を参考にしてください。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
ターミナルケアとは
ターミナルケアとは、病気や寿命で余命がわずかになった人に対して医療的・看護的・介護的なケアをすることです。精神的・身体的な苦痛やストレスなどを緩和して、生活の質(QOL=クオリティ・オブ・ライフ)を保つことを目的としています。
どんな状態からターミナルケアに入るのかという定義は、主治医の考え方によって異なりますが、一般的には病気の治癒が見込めない、または寝たきりで食事がとれないなどの状態が目安です。ターミナルケアは体の痛みを取り除く「身体的ケア」、患者の不安や恐怖を緩和する「精神的ケア」、家族の負担を取り除く「社会的ケア」の3つに分けられます。それぞれ解説していきましょう。
身体的ケア
がんや心臓病などの生活習慣病をはじめ、病気の終末期は強い痛みを伴うことが多いです。この痛みで患者が眠れなかったり体が動かせなくなったりするほか、精神的にも苦痛に思うことが多いでしょう。痛みを和らげるために投薬などをして、痛みを取り除きます。
食事や水分が取れなくなったときは、食べやすいように料理を細かくすりつぶして食べやすくしたり、チューブを通して食べ物を胃に送る「経管栄養」や「胃ろう」などで栄養補給をしたりすることもあります。寝たきりで食事がうまくとれなくなった場合も同じ対処をとるでしょう。
自力で動けなくなって寝たきりになった場合には、褥瘡(じょくそう)という床ずれの予防やケアも必要です。そのほか、状態に応じて、酸素吸入や点滴をされます。身体面でのケアは、基本的に医療従事者でないとできず、家族は身体面でのケアに参入できません。
精神的ケア
死を目前にしている人は、死ぬことへの不安や恐怖、残される家族の心配などで精神面が不安定になっています。このような感情に寄り添って、安心して今を過ごせるようなケアも必要です。特に家族を支える大黒柱のような立場の人や職場での重要なポジションにいた人達は、周りに対して責任を感じることが多くあります。
患者の精神的な負担に寄り添って孤独感を持たないように話をするなど、家族や関係者が配慮する必要があります。具体的には、患者さんの話を聞いたり住環境を整えたりするといった方法です。このケア方法は家族や介護に携わっている人もできて、医療従事者も参入できます。ボランティアの人が援助してくれることもあるようです。
社会的ケア
ターミナルケアを受ける前に心配なこととして、費用の問題があります。この負担を減らすために、療養中の心理的・社会的援助をしてくれる「医療ソーシャルワーカー」などに関わってもらうことで、費用の問題が少なくなります。社会面でのケアには、遺産相続や遺品整理のサポートも含まれます。
ターミナルケアのメリットとデメリット
ターミナルケアのメリットとデメリットは、受ける場所によって違いがあります。どこでケアを受けるか決める前に、その違いを知っておくべきでしょう。ここでは、ターミナルケアのメリットとデメリットをご紹介します。
ターミナルケアのメリット
自宅か医療施設、介護施設のどれでケアを受けるか選べること
ターミナルケアは「慣れ親しんだ自宅」や「容体が急変しても安心な医療機関」「サポート体制が整っている介護施設」などケアを受ける場所が選べます。今までの介護・医療サービスは、訪問介護や訪問医療など受けられる場所が限られていました。
しかしターミナルケアは医療施設でも自宅でもどこでも受けられます。プロのサポートが受けられる介護施設にしても良いですし、費用のことを考えて自宅でケアを受けてもいいのです。
介護施設や医療施設の場合、24時間体制でケアを受けられる
自宅でも24時間でケアを受けられますが、家族の負担が大きくなってしまうという点があります。介護施設や医療施設でのターミナルケアは、担当者が交互に変わるため家族の負担を考慮せずにケアを受けられます。
医療施設の場合、急変しても安心できる
余命わずかな患者は、いつ容態が変化するか分かりません。そのため、自宅でターミナルケアをした場合に容体に気付かず、そのまま命を落とすこともあり得ます。しかし病院やホスピスなどでターミナルケアを受けた場合、容体が急変しても医者や看護師がそばにいるので安心です。
身体的なケアがきちんとできる医療施設だからこそ、容体が急変しても柔軟に対応ができます。
介護施設は家族の負担が少ない
有料老人ホームなどの介護施設でターミナルケアを受ける場合、ケアマネジャーや介護職、提携先の医師や看護師が24時間体制でケアをします。全て介護施設に任せられるため、家族の負担は少ないです。
ターミナルケアのデメリット
医療施設や介護施設の場合、費用が高くなる
ターミナルケアを医療施設や介護施設で受けた場合、ケアの内容や治療内容、期間などによっては費用が大きくなってしまう可能性があります。払っていける費用が十分にある家庭であれば問題ありませんが、中には費用が払えないというケースもあります。
自宅でケアを受けるよりも費用が高くなってしまう点は、大きなデメリットです。また自宅でケアを受けたとしても費用が安くなるわけではなく、場合によっては体調不良を起こして主治医の往診費用が掛かってしまうこともあるので注意してください。
自宅でのケアは家族の体力・精神的な面で負担が掛かる
自宅でのケアは、家族と一緒に過ごせる時間が増えるというメリットがありますが、家族が主体となって介護をすることになります。家族みんなができるだけ患者中心の生活を送ることになり、介護や医療的なケアも家族がしなくてはいけません。
また24時間体制でケアをしなければならず、いつ容体が急変するか分からない点もあり体力的にも精神的にも負担が掛かります。
医療施設でのケアは家族が駆けつけられない
医療施設だけでなく介護もそうですが、ケアを受けている患者の緊急時に家族が駆け付けられない可能性があります。自宅では、家族と暮らしながらなのでみんなが看取ってくれますが、医療施設や介護施設では家族が駆け付けられず、医療従事者や介護職員に看取られることも多いです。
介護施設でのケアはそのまま看取られる
介護施設でターミナルケアが実施される場合、ほぼ看取り介護になります。つまり、介護施設の職員が、患者の最期を看取ることになるのです。この場合、医療施設でのケアと同様に家族が駆け付けられずに最期を看取れなかったということになる可能性があります。
ターミナルケア以外の選択肢も
ターミナルケア以外にも、緩和ケアや看取りケアなど様々なケア方法があります。ここでは、それぞれのケア方法について見ていきましょう。
緩和ケア
緩和ケアは、末期がんや不治の病を患っている人に対し、投薬で痛みを取り除くケア方法です。余命が短い人とは限らずに、積極的な治療と並行して実施される場合もあります。ターミナルケアと緩和ケアとの違いは、精神面でのケアと社会的なケアがあるかどうかです。
緩和ケアは、ターミナルケアでいう身体面でのケアです。ターミナルケアは治療よりも残された生活を穏やかに過ごしてもらえるためのものに対して、緩和ケアはそれに加えて治療も並行して進めていきます。つまり、緩和ケアは延命治療にもあたります。
看取りケア
看取りケアは、患者の最期を看取るケア方法です。看取りケアはターミナルケアとほぼ一緒で、患者の苦しみや痛み、ストレスなどをできるだけ緩和しながら最後まで尊厳を保てるように身の回りのお世話や声掛けなどをしていきます。看取りケアとターミナルケアの違いは、医療に対応しているかどうかです。
ターミナルケアは点滴や酸素吸入などの医療的なケアを中心としますが、看取りケアは患者の身の回りのケアが中心になります。そのため医療的なことは一切せず、食事や排せつの介助、床ずれのケアなどが対象です。
ホスピスケア
末期がんや心臓病などで余命がわずかになった人が過ごす施設がホスピスです。そのホスピスで実施されるケアなので、ホスピスケアと言われています。ホスピスケアは、患者の痛みやストレスを取り除きながら最期を穏やかに過ごす手伝いをします。
どちらも患者の苦しみを和らげて残りの人生を人らしく過ごすケアという点に関しては共通しています。しかしケアの中で重視するポイント(ターミナルケアであれば痛みを軽減するがホスピスは取り除くなど)により選択するケアが変わるのです。
2018年改定、ターミナルケア加算とは
ターミナルケア加算とは、死亡日または死亡日前14日以内に、2日以上ターミナルケアを利用者に対して実施した場合に算定するものです。利用者の尊厳を維持して、その人らしく最期を迎えられるようにケアを実施します。ターミナルケア加算の目的は、回復見込みのない利用者に対し、本人や家族、主治医や介護職員などの関係者が一丸となって、最期の日までその人らしい日々を送らせて、看取りまでできるよう支援することです。
訪問介護や訪問診療でしか加算を算定されないと思われがちですが、介護老人保健施設での看取りをすることが多く、介護保険が適用される介護老人保健施設でも加算を算定します。
ターミナルケアマネジメント加算とは
ターミナルケアマネジメント加算は、ターミナル期と言われる終末期に利用者が必要な医療や居宅サービスを円滑に利用するための調整などをした場合に評価する加算です。特定事業所加算の算定要件にターミナルケアマネジメント加算を一定回数以上算定すると含まれていて、終末期の取り組みが評価されることになっています。
ターミナルマネジメント加算は、利用者1人につき1回で1カ所の事業所に限り400単位を算定するものです。在宅から最後に医療機関に搬送された場合も、24時間以内に死亡が確認されると加算を算定できます。
算定要件は、末期がん患者などの悪性腫瘍を持った患者で、在宅で死亡したこととターミナルケアマネジメントを受けることについて、利用者や家族から同意を得ることなどが挙げられます。
ターミナルケアにおいての看護・介護の方法
ターミナルケアで看護や介護をする場所は、主に3つあります。最後は、ターミナルケアで看護・介護ができる場所をご紹介しましょう。
自宅
自宅でのターミナルケアは、慣れ親しんだ自宅で過ごすことができることと家族と最期まで一緒に過ごす時間が増えるため、本人に喜ばれやすい場所です。しかし自宅でのケアには弱点があり、家族が主体になって要介護者の介護をしなければなりません。
また、要介護者もしくは患者の状態によっては介護に加えて、医療的なケアも家族がする必要があり、肉体的・精神的にも負担が大きくなってしまいます。さらに患者が体調不良になったり容体が急変したりした時などには、主治医の往診回数が増えます。往診回数が増えれば、費用も大きなものになるので注意しましょう。
医療機関
病院やホスピスなどでターミナルケアを受けることもできます。病院でのターミナルケアは、体調不良になったり容体が急変したりしても、医師や看護師がすぐそばにいるので安心です。また患者は病院でずっと暮らすので、家族に肉体的・精神的に負担が掛かりにくくなります。
ただ、ケアを受ける場所は病院なので、治療内容やケアを受ける機関によって費用が大きくなる可能性があります。さらに緊急時に家族が駆け付けられず、家族で看取れなかったという場合もあります。
介護施設
有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの介護施設でターミナルケアを受ける場合、看取り介護と同じような定義になります。看取り介護は先ほども紹介したように、終末期に医療的なケアをせず、身の回りの世話のみをすることです。
介護施設に在籍しているケアマネジャーや介護職などが、24時間体制でケアをします。病院と提携している場合、もし容体が急変したとしても痛みを軽減させながら終末期を過ごせます。家族の肉体的・精神的な負担が少なく済みますが、費用の問題や看取りの時にすぐに駆け付けられない可能性があるので注意してください。
人生最期の時間のQOLを高めるための選択肢
ターミナルケアについて詳しく解説してきました。ターミナルケアは、看取りケアや緩和ケアとは異なり、医療的なケアと介護的なケアをしながらも、終末期に穏やかに死を迎えられるものです。
ターミナルケアには自宅か施設かを選べるメリットもありますが、費用が大きくなってしまう可能性があるというデメリットも兼ね備えています。費用に合わせて選ぶのも一つの手でしょう。今回の記事を参考に家族で相談して、患者にあったやり方を選んでください。
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この記事のまとめ
- ターミナルケアとは余命わずかな患者に対し医療的・介護的なケアをすること
- ターミナルケアは様々なメリット・デメリットがある
- 自宅・施設とケアを受ける場所を選べる
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