IVH(中心静脈栄養)とは|ポートやカテーテル手術の内容・入居可の老人ホームの探し方を紹介
IVH(中心静脈栄養)という言葉自体、知っている人は少ないかもしれません。IVHは病気を療養するうえで体力低下を防いだり、食事を口から摂取できなかったりする場面では必要となります。
今まさにIVHのカテーテル手術の必要性がある、もしくは今後その可能性も視野に入れなくてはいけない人は、今回の記事を通してIVHについて理解していきましょう。この記事では、IVHとはどのようなものか、ポートやカテーテル手術について、IVHに対応した老人ホームの探し方なども併せて解説していきます。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
IVH(中心静脈栄養)とは
IVHとは、中心静脈栄養のことを指します。中心静脈栄養とは、何らかの病気や事故で長期間にわたり食事を口から摂取できない人や消化管がすでに機能していない人、今後の治療や療養のために体力低下を防がなければならない人に対して、体の中心に近い部分の太い血管に直接点滴をして栄養を補給する治療方法です。
高カロリーの栄養輸液を継続的に入れることが可能です。腕などの細い血管から入れる通常の点滴とは異なり、体の中心に近い部分にある太い血管へ直接栄養輸液をするので、細い血管にダメージを与えずに痛みも少なく必要な栄養を摂取できます。
CVポートともいわれる
IVH(中心静脈栄養)は、CVポートともよばれます。CVポートのCVとは中心静脈(Center Vein)の略で、IVHをする際の手術に用いられるポートを合わせて使われています。正確にはCVポート自体は中心静脈カテーテルの一種であり、IVHはそれを用いる治療方法です。
「ポート」は皮下に埋め込むタイプの器具となります。100円玉程度の大きさのポート本体と、輸液をするカテーテルとで構成されています。
胃ろうとの違い
栄養を外部からカテーテルを通じて摂取するという点では、IVHは胃ろうと同じです。胃ろうは胃に穴を開け、直接栄養剤を流し込めるようにする方法です。食事ができなくなっても人工的に栄養を与え続けられるため「延命措置」としてとらえられることもあります。
IVHと同様に、胃ろうにも手術は必要です。しかし、胃ろうは半年に一度はカテーテルの交換をしなければならないこともあり、継続的に費用がかかります。IVHは一度ポートを留置してしまえば回復すればそのままにしておけて、その後いつでも再開できるメリットがあります。
IVH(中心静脈栄養)が必要になる方
IVH(中心静脈栄養)は、どのような状態になると必要なのでしょうか。
経口摂取が難しい方
前述したとおり、食事を口から摂取できなくなってしまった方は、IVHが必要になる可能性があります。原因となりうる病気をいくつか挙げてみましょう。
- 炎症性腸疾患
- 小腸閉塞
- 慢性腎不全
- 消化器がん
- 摂食障害、嚥下障害
- 脳血管障害
- パーキンソン病
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
これらの病気になった場合、IVHが必要になることがあります。IVHは、手術後一定期間食事が摂れなくなった際にも体力低下を防ぐ目的で用いられます。
胃ろうに抵抗がある方
胃ろうに抵抗がある方にはIVHが推奨されています。口から食事を摂取できないとなると、やはり胃ろうが治療方法に挙げられます。しかし、胃ろうは本来、IVHと同様に栄養面のサポートという目的で用いられるはずが、多くの人に延命治療だと認識されてしまっている側面があります。
このような背景を持ち合わせているため、胃ろうに対して良いイメージを持たない人も少なくありません。ただし実際は、IVHと同様に栄養をサポートするための治療方法の一つです。
また本人や家族だけでなく、周囲からもそのように思われたくないという理由から胃ろうに抵抗がある人もいます。その場合には、IVHを選択することとなるでしょう。
IVHのメリット
IVHは、胃ろうに抵抗がある方が選択する治療方法でもあります。それではIVHにはどのようなメリットが存在するのでしょうか。ここからは、IVHのメリットについて解説していきます。
家族への負担が少ない
IVHを検討するということは、少なからず長期間にわたって口以外からの栄養の摂取が必要な状態です。そのため、在宅生活となると家族のサポートや適切な管理が重要です。
IVHを導入してCVポートが体内に留置されている状態であれば、本人や家族が針の抜き差しをすることが可能です。在宅で治療や療養をするうえでは、感染リスクも少なく栄養管理がしやすいため、家族への負担は軽減されるでしょう。
また、半年に一度カテーテル交換が必要な胃ろうと比較すると、継続的な費用を抑えられます。金銭的な面でも、IVHはより家族への負担が少ない治療法といえます。
入院時と同様の栄養管理が可能
IVHの場合、栄養はすべてIVHを通して与えられるため、入院時と同様の栄養管理が在宅でも可能です。また、以前は在宅での管理は難しいとされていましたが、現在では医師や訪問看護、薬局と医療チームを組むことで、在宅でもより安全にIVHでの栄養管理ができるようになりました。
自宅での生活では栄養管理が難しいことも多いため、病院と同じ栄養管理ができるIVHは患者さんの回復やQOLの向上にも役立ちます。介護施設の場合も、医療体制が整っているところであればIVHの対応はできるため、栄養管理としては問題なくできるでしょう。
入浴可能
通常、点滴している状態では入浴できません。しかし、IVHはCVポートを皮下に埋め込んで体内のカテーテルにつないでいることから、本来であれば点滴で入浴できない時期であっても入浴が可能です。入浴できることで、在宅や施設でのQOLの向上につながります。
手足が自由に動かせる
24時間点滴をしている場合、腕に針を刺した状態だとどうしても外れてしまうかもしれないと考え、必要最低限しか動かなくなったり、動けなくなってしまったりします。IVHであれば、CVポートから中心静脈に直接カテーテルを入れている状態なので、腕に針を刺す必要もなく、手足は自由に動かせます。
休止や再開が簡単にできる
IVHは半永久的な治療法ではありません。回復すればIVHを休止してチューブを外し、口から食事を摂取することが可能です。また、CVポートを埋め込んでいるのでカテーテルはそのまま留置することもでき、状態にもよりますがいつでもIVHを再開できます。
休止や再開は医師の指示を仰がなければなりませんが、「必要がなくなればやめられる」というのは大きなポイントです。回復して口からの食事で十分に栄養が確保できれば、最終的にIVHではなく口からの食事のみに切り替えられます。
IVHに対応した老人ホームを探す際に確認すること
IVHを必要とする人でも老人ホームへの入居は可能です。ただし、入居する場合にはIVHに対応できる施設を探さなければなりません。では、IVHに対応する老人ホームを探す際に確認することを解説していきます。
前提としてIVHの受け入れに対応しているか
まず、前提としてIVHの受け入れ自体に対応している老人ホームかどうかを確認してください。IVHは看護師による高カロリー輸液のセットや医師による点滴針の交換、カテーテルの交換が必須となります。老人ホームの場合、往診医が対応するケースが多いでしょう。
IVHとなれば、それだけ看護師や医師による管理、介護スタッフの配慮なども必要となります。そのため、IVH自体の受け入れをしていない老人ホームもあります。老人ホーム選びのポイントは人それぞれですが、まずは前提としてIVHを受け入れていることが重要です。
24時間の看護体制があること
IVHの受け入れをしている老人ホームが見つかったら、次に確認しておきたいのが看護体制についてです。
看護師が24時間常駐している体制であれば、IVHで何か不測の事態が起こった際にもすぐに医療的な対応が可能です。看護体制が整っていることで、IVHがあっても安心して入居できるでしょう。ほかにも、訪問看護ステーションとの連携や勤務している看護師がIVHの対応に慣れているか、老人ホーム自体でのIVH受け入れ実績はあるのかもポイントとなります。
IVHは24時間栄養管理で輸液をしている状態です。IVHに対応しているからといって、看護体制が十分に整っていない環境を選択してしまうと、本人もつらく、家族からしても不安に感じてしまうかもしれません。
そうならないためにも、事前に看護体制がどのようになっているか、できれば24時間看護体制がある老人ホームを選ぶようにしてください。
また、ある程度の医療的な対応が可能な老人ホームでも、看護師の数が足りていない場合もあります。IVHを導入している人は、合併症や感染症、低血糖・高血糖、高脂血症のリスクもあることから、栄養剤の管理から時間、状態の観察など様々な点でより細やかな注意が必要となります。そのため、24時間看護体制であっても、施設側が看護師が不足していると判断した場合には入居できない可能性があることは念頭に置いておきましょう。
訪問看護ステーションとの連携ができているか
IVHは医療的な処置が必要となることから、看護体制が整っている老人ホームが適しています。しかし、24時間看護体制をとっている老人ホームはそれほど多くありません。また、24時間看護体制が整っている老人ホームには入居希望者も多く、すぐに入居できない可能性も十分に考えられます。
24時間看護体制の整っている施設への入居が難しいときには、訪問看護ステーションとの連携がしっかりとできている老人ホームを選択しましょう。
24時間常駐は介護スタッフのみで、看護師は訪問看護ステーションと連携している老人ホームもあります。老人ホームと訪問看護ステーションとの連携ができていれば、連絡体制や何か起こった際の対処なども適切にできているでしょう。
訪問看護ステーションの看護師であってもIVHの対応に慣れているとは限りませんが、様々な医療行為が必要となる場面が多くあるので訪問看護ステーションとの連携や実績なども鑑みて判断するようにしてください。
往診医の経歴
老人ホーム自体が受け入れ対応している、看護体制も24時間整っているとなれば、あとは往診医の経歴をチェックしておきましょう。往診医は老人ホームのある地域で往診をしているクリニックや病院から週に数回来訪し、診察します。
往診医がIVHの必要な患者さんにするのは、点滴針やカテーテルの交換です。少なからず医療的な処置が必要となるため、IVHに精通しているかどうかも確認しておくと安心でしょう。
往診医の経歴によっては、IVH自体初めてという医師もいるかもしれません。老人ホームで受け入れ対応していて、ある程度IVHを受け入れている実績があれば問題ないかもしれませんが、確認しておくことでより家族も安心して任せられるでしょう。
IVHの場合は医療体制を重視して施設を選ぶ
IVHでも、医療チームが整っていれば在宅に移行することは可能です。患者さんのQOL向上にも大きく役立っているといえるでしょう。しかし、医療面でのサポートが整わなければ在宅での介護は難しく、医療スタッフのいる施設での生活が必要になることもあります。
CVポートでの管理は比較的容易にできますが、やはり医療的なケアは必要です。また、IVHは感染症のリスクは低いものの、そのほかの合併症をはじめとするリスクも考えていかなければなりません。
合併症の一部には敗血症や血栓の発生もあることから、老人ホームでは投薬やカテーテルの引き抜きはできても医療機関に再度対応してもらわなければならないこともあります。IVH受け入れ可能な老人ホームであっても、状況に応じて入居ができない可能性もあるのです。
近いエリアで条件に合う老人ホームが見つからない場合は、少し範囲を広げることも重要です。また、医療体制が万全という老人ホームであっても、最終的には入居する本人が居心地のいい環境でなければいけません。選択肢が複数ある場合は、医療体制が整っているだけではなく入居する本人の精神的なケアもしっかりとできる老人ホームを選びましょう。
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この記事のまとめ
- IVHとは中心静脈栄養のこと
- 管をつないでいても比較的動きやすい
- 老人ホーム入居の際にはIVHに対応可の施設を探す
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