誤嚥とは、症状や家族の対応、避けるべき食べ物などを紹介

誤嚥は介護施設のなかでも多い部類の事故にあたります。誤嚥で起こる危険は命を奪うリスクがあるため、介護職員は十分注意しなければなりません。

今回は誤嚥がいったいどのようなものなのかご紹介し、起こる原因や対処法も解説していきます。高齢者にとって安心・安全な生活を送るためには欠かせない問題なので、しっかりと理解できるよう最後までお読みください。

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誤嚥とは、症状や家族の対応、避けるべき食べ物などを紹介
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

誤嚥とは

誤嚥とは高齢者に多く見られる事故で食べ物を含んだ口腔内や咽頭、食道などで問題が起き、本来、胃へ送り込まれるはずの食物が気管に入ってしまうことを指します。

気管に食べ物が入ると、健康な状態の人であればむせることで気管への侵入を防ぐことができます。しかし高齢者になるとこの反応のパワーが足りず、さらにはタイミングを合わせることができずに、食べ物がそのまま気管の奥へと入っていってしまうのです。

誤嚥になってしまう原因

誤嚥は主に嚥下と呼ばれる口に含んだ食物を食道や胃へ送り込む機能が低下することが原因につながってきます。この機能低下は嚥下障害とも言われていて、嚥下障害を引き起こす原因は様々な症状や病気があります。

機能的原因

嚥下障害は機能的原因によって引き起こされます。機能的原因とは器官の構造そのものには問題がないものの、器官を動かす筋肉や神経に問題があって、正常に働かないのです。

これは脳の病気が原因に直結していることが多く、脳腫瘍や脳血管障害、パーキンソン病などといった病気で喉の動きに問題を生じさせ、誤嚥につながってしまっています。

また、筋萎縮性側索硬化症や多発性硬化症といった筋肉や神経の病気も誤嚥発症の原因です。喉の動きを鈍くさせて、喉に食べ物が引っかかるような違和感を作り、場合によっては窒息に至る場合も考えられるため、器官が正常であっても油断はできません。

そして、こうした神経筋疾患は向精神薬や鎮痛剤といった薬剤の影響でも器官の動きが低下する危険性もあります。

器質的原因

一方器質的原因は器官そのものに食べ物を正常に通過するのを妨げることで、器官の構造上に問題があります。

口内炎や喉頭がんによる腫瘍または炎症がうまく嚥下できない要因を作っており、唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)という先天的な奇形であることも器質的原因に挙がってきます。

器質的原因は他にも舌炎、口内炎、歯槽膿漏といった多くの人が抱えがちな症状によっても引き起こるものです。

「今はまだ大丈夫」だと思っていても、複数の原因が絡んでくると誤嚥をしやすくなってしまうので、口腔内のチェックは日頃から怠らないようにしなくてはなりません。

加齢による原因

人は加齢とともに下がる咀嚼機能や嚥下機能などの低下によっても誤嚥を招きます。これらの機能の低下は筋力の衰えが大きく関係しており、低下した筋力では食べ物を飲み込む際に気道を閉じられなくなります。こうして飲み込んだ食べ物は気管に入りやすくなってしまうのです。

また、誤嚥の原因はうつ病が引き起こす食欲不振も関係してきます。高齢者のうつ病は認知症と間違われやすく周囲の人もなかなか気づくことができません。そうなるとうつ病は進行していくばかりで誤嚥となって重大なことが起きてしまったと気付くのです。

食欲がない場合はうつ病を疑い早い段階で適切な対応を取れるよう心掛けましょう。

誤嚥の症状とは

誤嚥の原因が分かったとしてもせき込んで苦しんでいるような症状が見られなければ誤嚥を起こしているかどうかが判断つきません。

気が付いた頃にはもう手遅れだった、ということにしないためにも、誤嚥が疑われる症状をしっかりと理解しておきましょう。

食事に時間がかかる

高齢者になると加齢による筋力の衰えからどうしても食べるスピードが遅くなってしまいます。しかしながら他の高齢者と比べてかなりスピードが遅い場合は誤嚥を引き起こしている可能性が考えられるでしょう。

誤嚥するのを気にかけて食事をしている人は時間をかけて咀嚼をします。そして咀嚼後うまく飲み込めなかったり、飲み込んでも口腔内に食べ物が残ったりするため、食事の時間が長くなってしまうのです。最後まで食べ切ることができないほどになると、誤嚥によって窒素してしまう危険もあります。

噛まずに食べられるものを好むようになる

誤嚥が起きていると噛まずに食べられるものを好むようになる傾向にあります。食べたい物も我慢する必要も出てくるため、食事を辛い時間に感じさせてしまい、食欲低下につながる人も多くいます。

また、食べられるものも制限され、栄養バランスも偏りがちとなっているので栄養不足による健康問題も注意しなければならないでしょう。体重が減ってきていたら要注意です。

食後の声がかれている

誤嚥を引き起こしている方は声質の変化も特徴として挙がってきます。口腔内に食べ物が残留し、それに痰がからんでがらがら声になってしまうのです。

その人の声の違いをよく理解しておき、食後の声には特に気にかけて聞いてあげるようにしましょう。いち早く発見することで食事の改善や誤嚥による危険を回避できます。

誤嚥性肺炎を引き起こす可能性も

誤嚥は高齢者の死亡原因にもつながる可能性があります。誤嚥性肺炎という病気にまで発展すると危険で、日本においての肺炎は、がんや心疾患に次いで3番目に多い死因となっています。そして肺炎の中でもとりわけ多くの死者を出しているのがこの誤嚥性肺炎です。

誤嚥性肺炎は気管に入った唾液や食べ物の中に細菌が含まれていると危険度が高まります。細菌が肺へと到達して中で炎症を起こし、高熱が出て激しい咳を伴うのです、

これらの症状を見かけたら誤嚥性肺炎かもしれないという危機管理を持ちましょう。手当てが遅れると病状が悪化していってしまい最悪の場合に死に至ってしまいます。

誤嚥で病院にかかった場合の検査

早期発見と早めの予防が大事になってくる誤嚥ですが、病院にかかるとどんな検査が必要になるのか知らない人が多いでしょう。続いては、誤嚥の検査についてご紹介していきます。実施する検査によっては別の症状を発生させる危険も伴うため、高齢者のためにも検査の内容をよく理解しておきましょう。

嚥下造影

嚥下造影検査は飲み込む状態やその過程に問題がないかを調べるための検査です。検査は放射線科のX線造影室で実施されます。口から喉、そして食道までを撮影していくのですが、撮影時は病院側が提供するヨード造影剤が含まれる食べ物や飲み物を飲食して通過する様子をレントゲンで確認していきます。

ヨード造影剤とはCTや胃の検査、MRI検査にも使用されている安全なものです。レントゲンで様子を見た結果、誤嚥を引き起こしているかどうかの確認だけではなく、どういった食事を提供するべきなのか、そして確実に飲み込むことができる体位を知ることも可能です。高齢者に適した食事となるようとろみをつけるべきか、ゼリー状にした方が良いかなども検討できます。

ただ、検査を行うにあたって気を付けたいのが誤嚥性肺炎を引き起こす可能性がある点です。これは極めて稀なことであり、今ではほとんど見受けられることはありませんが少なからず発症してしまうリスクがあると覚えておきましょう。

また、造影剤を使うが故に造影剤アレルギーによって嘔吐や蕁麻疹、発熱、喘息発作といった副作用が出る場合もあります。さらには造影剤の刺激からか下痢や腹痛も起きたり、放射線被曝による皮膚障害、白血病など血液の病気が起こる可能性もあったりし、どれも安全に使用できるほど進歩していますが、危険性はゼロではないといったリスクを覚えておいてください。

嚥下内視鏡検査

嚥下造影によって健康被害を受けてしまうようでは安心して検査ができないと感じるはずです。そこでもう一つの誤嚥の検査をご紹介しましょう。それは嚥下内視鏡検査です。嚥下内視鏡検査は鼻から細い胃カメラのような器具を入れて口や喉を見ていく検査です。嚥下造影と比べると造影剤によるアレルギーの恐れ放射線を浴びないことから安全性は非常に高くなっています。

ただし、こちらのデメリットとしては咽頭反射の強い方にとっては検査中に吐き気を催して検査が継続できない可能性があります。そして、嚥下運動の最中を観察ができないデメリットもあります。また、内視鏡挿入によって鼻出血の可能性がある、そして嚥下造影同様にごくわずかではありますが誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあるので、こうした注意点もしっかりと理解しておきましょう。

誤嚥の治療方法

誤嚥を引き起こしている高齢者だと知ったら治療が必要です。具体的な治療に大まかに分けてリハビリと治療の2つに分かれており、それぞれ様々な方法で治療していけます。

リハビリ

リハビリには食べ物を使わずに行える間接訓練、実際に食べ物を使用するリハビリの直接訓練があります。

関節訓練ではリラックスさせて食べる際の体のこわばりをほぐしてあげたり、手や器具を使って口唇、舌、頬を動かすトレーニングで口回りの筋力を向上させたりと、動きをスムーズにして誤嚥防止を図る訓練ができます。また、バルーン法と呼ばれる方法もあり、こちらはバルーンカテーテルを使用して喉や食道を広げる訓練も実施されます。

一方、直接訓練では誤嚥の具合によって食品の柔らかさやサイズを調整する方法とろみのある食品やゼリーなどと交互に食べる交互嚥下そして1口分の食べ物を何回かに分けて嚥下する複数回嚥下などを行って誤嚥の予防を実施します。

手術

重度の嚥下障害に陥っていてはリハビリでは機能の回復や改善を見込めなくなります。この状態となったら手術を提案する必要があるでしょう。手術は嚥下機能改善手術と誤嚥防止術の2つの手術があります。

嚥下機能改善手術では、喉頭挙上を強化したり食道入口部を弛緩させたりでき、口からの食事を可能にしてくれます。ただし手術だけでは嚥下機能が完全に元通りになるというわけではなく、術後のリハビリも必要になってきます。

誤嚥防止術は、嚥下機能改善手術行ったとしても嚥下機能の回復や改善が見られない場合に行う手術です。食道と気道を分離する手術で誤嚥の防止が可能です。しかしながらこの手術では発声機能を失ってしまうという大きなリスクが潜んでいます。手術をする際は医師とよく相談し、本人そして家族の理解も必要になるでしょう。

誤嚥に対する家族の対応

誤嚥は最悪の場合に死に至る恐れがあるため、誤嚥で食事がスムーズにいっていないと分かったら家族に連絡を行いましょう。家族もその事実を知っておくことで自宅へ戻ってきた際に行う在宅介護でも、安心した生活につながっていきます。

そして、誤嚥しやすい食べ物を介護職員がよく理解しておき、それを家族にも伝えることが大事です。誤嚥の問題を抱える高齢者のためにも職員と家族が一丸となって向き合うようにしましょう。

誤嚥しやすい食べ物

誤嚥しやすい食べ物にはさまざま食べ物があります。

項目 食物例
口や喉にくっつきやすい食べ物 餅、焼きのり、わかめ、生野菜
歯で噛み切りにくい食べ物 きのこ、こんにゃく、いか、たこ
水分が少なくパサパサした食べ物 いも、パン、ゆで卵
口の中でバラバラになる食べ物 豆、ひじき、ひき肉、ナッツ

といったように、これらのものを使用した食事を提供する際は注意を払いましょう。誤嚥しやすい食べ物を食べやすく、そして飲み込みやすくする工夫としては、柔らかくなるまで火を通し細かく包丁を入れて一口大にしましょう。

それでも食べづらそうにしていた場合はとろみをつけたりあんかけで提供したりと水分を多くする工夫を取り入れてみてください。パンであれば牛乳やスープと一緒に食べさせてあげると安全に配慮した食事になります。

家庭でも実践しやすい食べさせ方になるのでご家族にも紹介してあげましょう。

誤嚥を起こさないように食事中はしっかりと観察

介護において誤嚥事故はなかなかなくせない問題です。日頃から気を付けていたとしても、また多くの水分を含んだ食べ物でも誤嚥を起こすことがあるので、食事の様子はしっかりと観察しておきましょう。

ただ、よく観察する他に、きちんとした対処や検査でのリスク、治療方法なども理解しておかないと、別の問題にも直結してきます。高齢者の健康な日々を支えていくためにも、誤嚥について様々な知識を持っておくのが介護に携わる者としての大事な役目です。

特に誤嚥の予防には食事をしてる時の姿勢も大切です。正しい姿勢での食事を心がけましょう。

この記事のまとめ

  • 食事中の様子がおかしいと思ったら誤嚥かもしれない
  • 誤嚥の検査で別の問題も起こりうる
  • 誤嚥が分かった時にすべき対処法