介護にまつわる疾患について

介護が必要になる理由はさまざまです。多くの場合は認知症、脳卒中、衰弱、骨折や転倒、関節疾患などによって介護につながってしまいます。ただしこの他にも身近な症状から発展して要介護状態になることがあります。特に高齢期になると、急な疾患やケガによって介護が必要になる場合があるのです。この記事では介護につながる疾患についてまとめましたので、ぜひご覧ください。

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平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

介護が必要になる主な原因について

介護が必要になる理由にはさまざまなものがあります。なかでも以下の5種類の疾患が全体の約70%を締めていますので、特に注意しましょう。

認知症(17.6%)

認知症とは「脳への悪い影響によって認知機能や記憶機能などに障害が出てしまった状態」を指す言葉です。超高齢社会のなかで非常に多くの方が発症しており、厚生労働省では認知症サポーターを増やすなど「認知症に理解のあるコミュニティづくり」を進めています。

認知症については、以下の記事で詳しく紹介しています。
【専門家が監修】認知症とは|症状・予防法・検査方法などを解説

脳卒中(16.1%)

脳卒中とは「脳の血管に障害が起きることで発症してしまう疾患の総称」です。特に以下の3つが脳卒中の代表とされています。

脳梗塞

脳血管に血栓が詰まってしまう

脳出血

脳血管が破れて出血する

くも膜下出血

動脈瘤(動脈のコブ)が破れて脳のくも膜の間に出血する

脳卒中は種類を問わず、死亡率が高い疾患です。その後遺症として認知症になったり、体を満足に動かせなくなったりした結果、介護が必要になるケースがあります。

衰弱(12.8%)

高齢になることで筋力が衰えたり、体重が減少したりして、衰弱をしてしまうケースがあります。その結果、介護が必要な状態になってしまうのです。近い意味の言葉では「フレイル(虚弱)」といわれます。フレイルは自身で簡単にチェックできます。もしチェック項目に該当してしまった場合は、医療機関で検査を受けてみましょう。

フレイルについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
フレイルとは|原因・チェック方法・予防・対策などを紹介

骨折・転倒(12.5%)

高齢になると、歩行でさえ若いころのようにスムーズにはいかなくなってしまいます。少しの段差や傾斜などが転倒の原因になってしまい、骨折してしまうと、その後の運動機能にまで大きな影響を及ぼしてしまうのです。

よく転倒して大腿骨を骨折してしまう、または股関節を骨折してしまう、というケースがあります。大腿骨を骨折すると、その後の日常生活に大きな影響をもたらし、自力では生活ができなくなってしまうこともあるのです。

骨折の理由としては大きく2つあり「身体的要因」「環境的要因」に分かれます。

身体的要因とは、高齢になるにつれて体の機能や感覚が衰えてしまうことで転倒をすることです。足の機能だけではなく、視力や聴力の低下なども転倒につながります。

環境的要因とは、転倒の原因になるような室内環境があるために転倒が起こってしまうことです。小さな段差があったり、手すりがなく不安定だったりすると転倒は起きてしまいます。対策として住まいのリフォームなどをして、安全な環境を構築することが大切です。

関節疾患(10.8%)

関節疾患とは関節が変形してしまい、骨と骨をつなぐ軟骨が摩擦ですり減ることで発生する病気です。最も症例が多いのが膝関節で、次に股関節が挙がります。特に膝や股関節の関節疾患の場合は日常動作に大きく影響するので、介護の必要性があるのです。

初期は立ち上がるタイミングで痛みを感じます。それから徐々に「階段昇降」や「傾斜の激しい坂を歩くとき」で痛みを感じるようになります。もちろん対策はありますので、痛みを感じた際は早めに病院で診てもらうといいでしょう。

この他にも疾患から介護が必要になることがある

上記で挙げた5つの例はあくまで一部です。もちろんこの他にも、介護の原因につながる疾患はさまざまあります。これらの疾患名をあらかじめ知っておくことで、いざという時に備えられます。「どんな症状なのか」「完治はするのか」「またどれほどの期間が必要なのか」を把握して起きましょう。

パーキンソン病

パーキンソン病は指定難病の1つであり、脳の疾患です。振戦や動作緩慢、筋強剛、姿勢保持障害の4つが主な症状になります。手足がうまく動かせなくなったり、言葉が出てこなくなったりするといった目に見える症状があります。多くの場合、50歳以上で発症しますが、40代で症状が出る「若年性パーキンソン病」もあります。またパーキンソン病は認知症との関係も深いのが特徴です。

パーキンソン病の治療法

パーキンソン病の治療は、基本的に薬物療法です。原因はドーパミン神経細胞が減少してしまうことであり、投薬によってドーパミンを補うことで改善を目指します。

パーキンソン病については、以下の記事で詳しく紹介しています。
パーキンソン病とは|症状や原因、検査方法、治療法など

喘息

喘息は広く知られている疾患です。小児喘息などの場合は吸入器などを使うことで改善していく可能性があります。しかし高齢者の喘息は心臓病や肺炎などの大きな疾患にもつながる可能性がある疾患です。喘息で年間800人以上の方が亡くなっており、その8割が高齢者になります。在宅介護でケアしきれない場合は、介護施設に依頼することも考えましょう。

高齢者の喘息の治療法

高齢者の喘息の多くが、アレルゲンが見つからない「非アトピー型喘息」です。治療法としては投薬治療であり、吸入器を使って直接ノドに薬を届けます。

ALS

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は全身の筋肉が動かなくなり、寝たきり状態になってしまう疾患です。初期は症状が軽いものの、だんだんと進行する疾患になります。最終的には介護が必要な状況になってしまうケースが大半です。

ALSの治療法

ALSの場合は「対症療法」といわれる治療法を駆使します。運動療法や呼吸療法、栄養療法など、場合に応じてALSへの対策を取ることで、病状の改善につながるのです。

ALSについては以下の記事で詳しく解説をしています。ぜひ一度ご覧ください。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは? 治療法や初期症状など

嚥下障害

「嚥下」とはものを飲み込むときの運動を指す言葉です。嚥下障害とはその名の通り、嚥下がうまくできなくなってしまった状態になります。嚥下障害の場合はものを飲み込めず、飲料などが肺に入ってしまうことがあります。そこからウイルスに感染し肺炎になってしまう可能性もあり、命にも関わる症状です。

嚥下障害の治療

嚥下障害の治療では、痰の排出方法を指導したり、口腔機能を高めるための訓練をしたりします。

嚥下障害について詳しく知りたい人は以下の記事をご覧ください。

嚥下障害については以下の記事で詳しく解説をしています。ぜひ一度ご覧ください。
嚥下とは|嚥下障害や治療法、おすすめの食事など
誤嚥とは|症状や家族の対応、避けるべき食べ物などを紹介

ヒートショック

ヒートショックは気温の変化によって血圧が乱高下することを指します。急に血流が良くなり血栓が脳に詰まってしまい、脳梗塞を引き起こす可能性もあるのが特徴です。特に冬場の入浴には注意しなければいけません。寒い脱衣所から突然熱いお風呂に浸かることでヒートショックが起きてしまう可能性もあります。

ヒートショックの予防法

ヒートショックは血圧の乱高下を意識的に防ぐことで予防できます。トイレでいきまないようにしたり、お風呂場に床暖房を設置したりすることで、血圧を一定に保つ、気温差をなくすなどの工夫をしましょう。

ヒートショックについては以下の記事で詳しく解説をしています。ぜひ一度ご覧ください。
ヒートショックとは|対策法や症状、なりやすい人の特徴などを紹介

廃用症候群

怪我や疾患の治療によって安静期間が長引いてしまい、身体機能が低下することを廃用症候群といいます。寝たきりの介護状態が続くと、廃用症候群になってしまう場合があります。

廃用症候群の予防法

廃用症候群の場合は寝たきりのなかでも筋肉の動きを保つことが重要です。家族がマッサージなどをしてしっかりサポートしてあげたり、動かせる範囲内で運動をしましょう。

廃用症候群については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ一度ご覧ください。
廃用症候群とは|症状や予防法、看護計画の立て方などを紹介

ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドロームとは現代病の一種のようなものです。エレベーターや車、飛行機など、動かなくても移動できる機会が増えた結果、私たちの運動機能は低下している可能性があります。その結果、歩く・立つなどの機能が衰えてしまった状態をロコモティブシンドロームというのです。

ロコモティブシンドロームの予防法

運動をしなくても移動ができるなかでも、ロコモティブシンドロームを避けるため、意識的に運動をすることで予防ができます。

ロコモティブシンドロームについては以下の記事で詳しく解説をしています。ぜひ一度ご覧ください。
ロコモティブシンドロームとは|セルフチェックの方法や症状、治療法など

慢性硬膜下血腫

ちょっとした頭の打撲によって血腫ができてしまい、頭痛や物忘れ、認知機能の低下などを引き起こすのが慢性硬膜下血腫です。歩行障害などの症状を発生することもあり、場合によっては介護施設に入りながら治療をする必要もあります。

慢性硬膜下血腫の治療法

慢性硬膜下血腫の治療は手術でします。頭蓋骨を開口して血腫を取り除きます。手術をすると認知機能などが元に戻る可能性があり、慢性硬膜下血腫は「治る認知症」といわれることもあります。

中心性脊髄損傷

一般的に脊髄損傷は骨折によって起こってしまうものです。しかし年を重ねると骨折をしなくても、脊柱管が狭くなることで「頚椎性脊髄症」という疾患にかかってしまうことがあります。そのうえで転倒などをすると、中枢神経が傷つけられ、運動麻痺症状が出ることがあるのです。この状態を「中心性脊髄損傷」といい、介護が必要になります。

中心性脊髄損傷の治療法

中心性脊髄損傷の治療は「急性期」と「急性期以後」の2種類に分かれます。急性期ではまず損傷を最小限に留めることが重要ですので、投薬治療や手術によって、脊髄の圧迫を緩和します。その後はリハビリによって日常生活の自立度を高めていくことが必要です。

気管支炎

気管支炎もまた喘息と同じく、大きな疾患につながってしまう可能性があります。炎症が広がってしまうと肺炎などを引き起こし、気づけば呼吸がしにくくなってしまうのです。病院で診療をしてもらうだけで治る場合もありますが、心配な場合は介護施設を利用するのも選択肢に入ります。

気管支炎の治療法

気管支炎は投薬で治療します。「鎮咳薬」や「去咳薬」などを組み合わせることで症状を和らげます。また急性の気管支炎の場合は発熱している可能性がありますので、まずは水分を取ることが必要です。

床ずれ

床ずれは専門的な呼称でいうと「褥瘡(じょくそう)」といいます。寝たきりの状態になってしまった方は自分で寝返りをうてません。その結果、床ずれが起きてしまうのです。とこずれになってしまった部分からウイルスが入ってしまうと二次的な疾患にもつながります。介護施設を利用することで、職員が床ずれの予防をしてくれます。

床ずれの予防法

寝たきりになってしまった場合に床ずれが起きてしまうことがあります。予防法としては定期的に寝返りをサポートすることが重要です。また床ずれ予防シートなども市販でありますので、利用しましょう。

介護につながりやすい疾患を知っておくことが重要

昨日まで元気だったのに、急性の疾患やケガなどで突然介護生活が始まってしまうこともあります。その際にすぐ対応できるように、あらかじめ介護の必要性を把握しておくことが重要です。

まずは自身の家族にどういった症状が出ているのかを判断し、医師に専門的な判断を下してもらったうえで、介護に臨むようにしましょう。

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この記事のまとめ

  • 介護が必要になる原因は「認知症」「脳卒中」「衰弱」「骨折・転倒」がトップ
  • 疾患によって急に介護が必要になる場合がある
  • 介護につながりやすい疾患やケガを知っておくことで心の準備ができる