療養型病院(医療療養病床)とは|費用や入院期間、介護療養病床との違いも解説

「療養型病院」は病床(ベッド)が療養専用である病院のことです。医療療養病床とも呼ばれています。この記事では専門家の監修に基づいて、療養型病院の費用や入院期間の目安を解説します。この記事を読めば「特別養護老人ホーム」や「一般病床」「介護療養型医療施設(介護療養病床)」との違いも分かります。

療養型病院(医療療養病床)とは|費用や入院期間、介護療養病床との違いも解説
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

療養型病院(医療療養病床)とは

「療養型病院」は医療療養病床の通称です。療養型病院とは、慢性期(病状が安定している時期)の患者を対象に、医療ケアやリハビリのサービスを提供する病床のことをいいます。

長期間の療養を目的とした医療機関

「療養型病院」は、長期間の療養をすることを目的とした医療機関です。手術や一時的な治療ではないため、一般的に数カ月単位の入院となります。

利用対象者は慢性期の患者

「療養型病院」の利用対象者は、病状が安定した慢性期の患者です。2006年から導入された医療区分にもとづき、療養型病院では医療区分2・3の人を優先的に受け入れています。医療区分については後ほど紹介しますが、医療区分1の人は入院が難しくなりました。

なお「療養型病院」では、医療的な対応が十分にできるよう、患者4人に対して看護師・看護補助者が1人以上配置されています。

療養型病院は医療保険が適用

「療養型病院」は医療機関のため、医療保険が適用されます。

入院期間の目安は3~6カ月

入院期間は病院によって異なります。あらかじめ3カ月、6カ月などと期間を設定している病院もありますので、検討時に確認しておきましょう。

看取りに対応している

「療養型病院」は、看取りやターミナルケアに24時間対応できるのが特徴です。当直体制が整っているため、夜間や休日にも対応可能です。

似た施設に「介護療養病床」がある

療養を目的とした施設には「療養型病院」だけではなく「介護療養病床」もあります。ただし、介護療養病床は2023年に廃止されることが決まっており、代わりに「介護医療院」が2018年に新設されました。

療養型病院と介護療養病床の違い、また新しくできた介護医療院については後ほど解説しましょう。

まずは、そもそも「療養病床とは何か」について説明していきます。

療養病床とは

病床分類

病床とは、病院などに設けられているベッドのことです。病床は「精神病床」「感染症病床」「結核病床」「療養病床」「一般病床」の5つに分類されます。

病床分類
分類 役割
精神病床 精神科の患者が入院するための病床
感染症病床 感染症に関する法律において指定された感染症患者が入院するための病床
結核病床 結核患者が入院するための病床
療養病床 長期にわたり療養を必要とする患者が入院するための病床
一般病床 上記以外の患者が入院するための病床。一般病床には、緩和ケア病棟、集中治療室(ICU)、ホスピス病棟などの病床も含まれる

精神障害・感染症・結核病といった特定の疾患がある患者はそれぞれ「精神病床」「感染症病床」「結核病床」へ、それ以外の疾患の場合は「療養病床」または「一般病床」へ入院するのが基本です。なかでも療養病床は、病気やケガのために体を休める必要がある患者を対象にしています。

一般病床と療養病床の違い

一般病床と療養病床の違い

一般病床と療養病床の違いを簡単にいうと、一般病床は「今必要な治療を提供する病院」で、療養病床は「療養生活を支援する病院」です。具体的には治療のステージや設備、職員体制が異なります。

治療のステージ

療養型病床と一般病床の根本的な違いは、治療のステージです。治療のステージには「急性期」と「慢性期」があります。

急性期は病気になりはじめた時期です。病状の変化も日によって激しく、患者の状況を常に把握しておく必要があります。「急性期」の患者を対象とするのが一般病床です。

一方で、慢性期は病状が比較的安定しています。しかし在宅で暮らすことは困難で日常的な医療ケアが必要な状態です。療養病床は「慢性期」の患者が対象となります。

入院期間

一般病床は入院期間も短く、約2週間ほどが目安となります。療養病床は3~6ヶ月が目安です。ただし病状や医療機関によって、実際の期間は異なります。

設備・機器

一般病床は病気の発見・診断・治療を実施するため、多くの機器や設備を導入しています。検査室・手術室も充実した環境です。

療養病床は、療養に必要な設備・機器しか導入していません。手術室が存在しない病院もあります。長期利用する人が多いため、病室や談話室は一般病床よりもゆとりある広さになっていることが特徴です。

職員体制

職員体制は医療法に基づいて決まっています。患者の状況がいつ変わってもおかしくない一般病床は療養病床に比べると手厚い人員体制です。

人員配置の比較
職員 一般病床 療養病床
医師 患者16人に対して1人以上 患者48人に対して1人以上
歯科医師 患者16人に対して1人以上 患者16人に対して1人以上
薬剤師 患者70人に対して1人以上 患者150人に対して1人以上
看護師及び准看護師 患者3人に対して1人以上 患者4人に対して1人以上
看護補助者 規定なし 患者4人に対して1人以上
栄養士 病床数100以上の病院に1人
診療放射線技師・事務員など 適当数
理学療法士・作業療法士 適当数
出典:厚生労働省「医療法に基づく人員配置標準について

療養型病院(医療療養病床)と「介護療養病床」「特別養護老人ホーム」の違い

療養型病院と介護療養病床の違い

介護療養病床(介護療養型医療施設)とは

「介護療養病床」は、医療が必要な要介護者のための長期療養施設です。別名「介護療養型医療施設」とも呼ばれています。

介護療養病床と療養型病院(医療療養病床)との違い

「介護療養病床」「療養型病院」は、どちらも療養病床の一つであると前述しました。療養を目的とし、医師や看護職員の管理のもとで医療ケアや身体介護が受けられます。では具体的に何が違うのでしょうか。

1つ目の違いは対象者の種類です。介護療養病院の対象者は要介護者ですが、療養型病院は要介護者かどうかにかかわらず、慢性期の疾患がある患者が対象です。

2つ目の違いは提供するサービスの内容です。「介護療養病床」は「療養型病院」よりも介護サービスが充実しています。そのため医療保険ではなく、介護保険が適用されます。利用条件は要介護1以上の医療処置が必要な人です。一般的に「療養型病院」よりも医療依存度が低い人を受け入れてきました。入院期間は約1年ぐらいが目安となります。

一方、療養型病院は医療行為をメインに提供する施設です。適用されるのは医療保険で、介護療養病床よりも多くの医療行為が必要な人が入院しています。

ただし「介護療養病床」は廃止されることが2017年に決まりました。厚生労働省は、2024年3月までに全ての介護療養病床を新施設に移行するよう定めています。現在は移行のための経過措置期間です。

特別養護老人ホームとは

「療養型病院」と似た機能を持つ施設にもう1つ「特別養護老人ホーム」があります。「特別養護老人ホーム」とは、要介護者のための生活施設です。「65歳以上で要介護3以上」などの条件があり、介護度が比較的重い人が入所できる介護施設です。どちらも高齢者が入所する施設という点では同じですが、入所する人の特徴が異なります。

特別養護老人ホームと療養型病院(医療療養病床)の違い

「療養型病院」は長期療養の必要な人が入院する施設であるのに対し、「特別養護老人ホーム」は要介護認定を受けた人が生活を送る施設という位置づけです。

また「療養型病院」は医療機関のため、医療保険が適用されます。一方、生活施設である「特別養護老人ホーム」に適用されるのは介護保険です。

生活環境にも大きな違いがあります。「療養型病院」の1床あたりの基準面積は6.4㎡です。病床の種類にも個室と多床室があり、場合によっては他の患者と同室になる場合があります。「特別養護老人ホーム」は生活施設のため、原則個室です。多床室の場合もありますが、個室の場合は1室あたり10.65㎡と、療養型病院よりも広い設置基準が設けられています。

特別養護老人ホームと療養型病院(医療療養病床)の違い
施設形態 療養型病院 特別養護老人ホーム
適用される保険 医療保険 介護保険
生活環境
  • 病院や診療所にある病床
  • 基準面積は6.4㎡以上
  • 原則個室
  • 多床室の場合もある
  • 基準面積は10.65㎡以上
特徴
  • 長期療養を目的とし、入院する場所
  • 特に医療の必要性が高い
  • 要介護者の人が生活する場所
  • 特に介護の必要性が高い
対象者 長期療養の必要な患者 要介護者
「特別養護老人ホーム」については、以下の記事でより詳しく紹介しています。

介護療養病床を廃止するわけ

先述したように「介護療養病床」は廃止され、療養病床は「療養型病院」に一本化されます。「介護療養病床(介護療養型医療施設)」の廃止が決定した経緯を紹介します。

理由1:医療費や社会保障費を圧迫していた

1つめの理由は、想定以上に長期の利用者が多く、医療費や社会保障費を圧迫していたからです。厚生労働省が2018年におこなった調査によると「介護療養病床」の平均在院日数は297.6日にも及んでいたことが明らかになりました。

介護療養病床は介護保険の対象であり、利用期間が延びれば介護保険の財源を圧迫します。そのため、介護保険の財源を確保するという点でも「介護療養病床」の運営は問題視されていたのです。

平均在院日数(平成30年4月)
病床 平均在院日数
療養型病院(医療療養病床) 141.8日
介護療養病床(介護療養型医療施設) 297.6日
一般病床 16.4日
出典:厚生労働省「病院報告(平成30年4月分概数)

理由2:「療養型病院」と「介護療養病床」の利用者に大きな違いが見られなかった

2つめの理由は、「療養型病院」と「介護療養病床」の利用者の状況に大きな違いが見られなかったことです。厚生労働省の調査によると、各療養病床の利用者を比較すると「医療の必要性の高い人と低い人が同等の比率で混在している」という実態が分かりました。

本来なら「療養型病院は医療療養が必要な人の受け入れ先」であり、「介護療養病床は介護療養が必要な人の受け入れ先」と区分されている必要があります。このような状況に陥ったのも医療と介護の必要性が明確に区分されていなかったことが原因です。

療養病床の再編

課題の解決に向け利用者の棲み分けをするため、療養病床を再編することになりました。主な施策は、医療の必要性が高い人は「療養型病院」へ、介護の必要性が高い人は他の施設へ促すというものです。

このような経緯で「介護療養病床」を廃止することになりました。あわせて「療養型病院」も一部減らす計画が進んでいます。

療養病床の再編
  • 介護療養病床:約5万9,000床を完全廃止(2024年3月までが期限)
  • 療養型病院:約21万6,000床のうち、約7万2,000床を廃止

介護療養病床の代わりとなる「介護医療院」を新設

「介護療養病床」の廃止にともない、転換先として「介護医療院」が2018年に新設されました。単なる療養病床からの転換先ではなく「住まいと生活を医療が支える新たなモデル」として作られた施設です。医療を提供する施設であるのと同時に、生活施設としての役割を持っています。

介護医療院とは

「介護医療院」は、医療ケアが必要な要介護者の人が長期利用できる介護施設です。身体介助や生活サポートに加えて、日常的な医療処置や看取りなどのサービスが受けられます。

「介護療養病床」との違いは、生活の場として配慮されている点です。多床室でもパーテーションなどで仕切りが設けられ、プライバシーが保たれています。

また「療養型病院」との違いは、利用者の医療区分です。「療養型病院」は医療区分2・3を対象としています。一方「介護医療院」では医療区分1を対象としています。

療養型病院と介護医療院の比較
施設形態 療養型病院 介護医療院
保険 医療保険を利用 介護保険を利用
サービス
  • 長期療養を目的としたサービス
  • 長期療養を目的としたサービス
対象者
  • 医療の必要性が高い人
  • 医療区分2・3が中心
  • 長期の医療・介護が必要な人
  • 医療区分1が中心
医療機能
  • 人工呼吸器や中心静脈栄養などの医療
  • 24時間の看取り・ターミナルケア
  • 当直体制(夜間・休日の対応)
  • 喀痰吸引や経管栄養を中心とした継続的な医学管理
  • 24時間の看取り・ターミナルケア
  • 当直体制(夜間・休日の対応)もしくはオンコール体制

「介護医療院」についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

医療区分とは

前述してきたとおり、療養病床の対象者の基準として「医療区分」があります。

医療区分とは患者の医療の必要性を評価するための指標です。3つの区分があり、医療区分3が最も重い疾患・状態です。医療区分2・3に該当しない場合は、医療区分1とします。

医療区分3
疾患・状態 医療処置
  • スモン
  • 医師及び看護師により、常時監視・管理を実施している状態
    ※状態により医療区分2に分類
  • 中心静脈栄養
  • 24時間持続点滴
  • 人工呼吸器使用
  • ドレーン法、胸腹腔洗浄、発熱を伴う場合の気管切開、気管内挿管
  • 感染隔離室における管理
  • 酸素療法を実施している状態
  • 肺炎などの急性増悪により点滴治療を実施している状態
医療区分2
疾患・状態 医療処置
  • 筋ジストロフィー
  • 多発性硬化症
  • 筋委縮性側索硬化症
  • パーキンソン病関連疾患・その他の指定難病
  • せき髄損傷(頚髄損傷)
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍
  • 肺炎
  • 尿路感染症
  • リハビリテーションが必要な疾患が発生してから30日以内
  • 発熱を伴う脱水・頻回の嘔吐
  • 体内出血
  • 褥瘡(床ずれ)
  • 末梢循環障害による下肢末端開放創
  • せん妄の兆候
  • うつ症状に対する治療を実施している状態
  • 暴行が毎日見られる状態
  • 酸素療法を実施している状態
  • 透析
  • 発熱または嘔吐を伴う場合の経腸栄養
  • 頻回の喀痰吸引(1日8回以上)
  • 気管切開、気管内挿管のケア
  • 頻回の血糖チェック
  • 創傷(皮膚潰瘍、手術創、創傷処置)
医療区分1
  • 医療区分2、3に該当しない人

療養型病院(医療療養病床)の入院費用

療養型病院の入院費用は、症状およびADL区分、年齢、地域によって異なります。月額の目安は10万~20万円です。

費用の一部は医療保険で負担しています。自己負担割合は収入に応じて変動しますが一般的な自己負担割合は1割です。入院医療費・食費・住居費が保険適用となります。

おむつ代などは自己負担

ただし、おむつ代・病衣代・タオル代などは自己負担です。おむつ代などは病院によって価格に差があります。個室を希望する場合は個室料が発生するケースがあるため事前にご確認ください。

療養型病院入院時の費用(1カ月)
医療保険 項目 目安
保険適用 入院医療費 4万4,000円
食費 4万1,400円
住居費 9,600円
保険適用外 病衣 1万5,000円
タオル代 1万5,000円
おむつ代 3万円

入院・転院するまでの流れ

急性期の病状から落ち着いて慢性期になった際、療養型病院(医療療養病床)を検討するケースが多いでしょう。入院・転院までの流れを紹介します。

STEP1:主治医へ相談

療養型病院への入院がご本人の状況に適しているか主治医へ相談します。主治医の了承が得られたら、入院する病院を検討します。病院選びは、現在入院中の人は退院後の暮らしも支援する「地域医療連携室」に相談するのもいいでしょう。在宅で探す場合はケアマネジャーや地域包括センターの相談窓口に相談してみてください。

STEP2:必要書類の提出

希望の病院が決まれば書類を提出します。病院によって提出書類は異なりますが主治医が作成する「情報提供書」は必須です。複数科目を受診している場合は、各医師に情報提供書の作成をお願いします。

療養型病院は介護保険施設ではないので介護保険証の提出は不要です。その代わり、健康保険証または医療受給者証を提出します。

STEP3:医師とご家族による面談、書類審査

次は医師とご家族の面談です。入院判定は面談と書類に基づいて審査します。ご家族が不在の場合は、成年後見人が面談をおこないます。

STEP4:医師による入院決定

受け入れ可否の連絡があります。受け入れ可能な場合は、利用開始のおおまかな時期を聞きます。空きの病床がない場合は待機が必要です。

STEP5:入院

療養型病院での生活が始まります。

多様な選択肢がある施設選び

現在、超高齢社会の過渡期であり「介護療養病床が廃止」「介護医療院の新設」など介護業界も刻々と変化しています。施設形態ごとの特徴も多様なため、ご自分にあった施設を見つけることは以前より大変になってきています。

この記事では療養型病院について解説しました。慢性期の状態の入院先として挙がる施設です。他にも「介護医療院」「24時間看護師常駐の介護付き有料老人ホーム」「在宅医療」などの選択肢が考えられます。

複数の選択肢から選ぶ際のポイントとして「入居条件」「費用」「長期で利用できるか」などを把握しておくことが大切です。他の施設と比較しながら自分にあった施設を見つけてみましょう。

この記事のまとめ

  • 療養型病院とは、病状が安定した人が療養するための病院
  • 一部は廃止が決定しており、病床数は減少傾向にある
  • 月額費用の目安は10~20万円程度で、医療保険を利用できる

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