介護保険施設とは|4種類ある施設の特徴や費用、サービスの違いを紹介
介護施設のなかでも特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設の4種類は「介護保険施設」に区分されます。今回は介護保険施設の概要、施設ごとの費用やサービス内容についてご紹介。老人ホーム・介護施設を探す際のヒントにしてください。
大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。
介護保険施設とは
介護施設には、国や公共団体、社会福祉法人が運営する公的施設と民間企業などが運営する施設があります。介護保険施設は公的施設に該当します。
介護保険施設の特徴として、費用は比較的安価なことが挙げられます。初期費用は発生しません。また介護にかかる費用には介護保険が適用されるほか、居住費や食費を足しても民間施設より割安です。
特に特別養護老人ホームは人気があり、入所申請から実際の入所まで数カ月から数年の時間がかかることも珍しくありません。入所検討の際は、早めの申し込みをおすすめします。
介護保険施設には4種類ある
介護保険施設に該当する施設は、以下の4種類です。
- 特別養護老人ホーム(※)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
※「特別養護老人ホーム」は老人福祉法上の呼称です。介護保険上の正式名称は「介護老人福祉施設」となります。この記事では一般的に広まっている「特別養護老人ホーム」で解説します。
それぞれの施設は介護の目的が異なるため、入所条件や入所期間、サービス内容が異なります。入所を希望される際は、よく確認しておきましょう。
4種類の介護保険施設の費用・サービス
4種類の介護保険施設ごとの特徴や入所条件、主なサービス、費用を解説します。
特別養護老人ホーム(特養)
主に地方自治体や社会福祉法人が運営する公的施設で、特養と呼ばれています。
特別養護老人ホームは、常時介護が必要となる方の生活の場であり、手厚い介護サービスが提供されています。そのため介護職員が24時間常駐し、昼夜問わず対応してもらえることが可能です。長期入所もでき、看取りを実施している施設もたくさんあります。
入所条件
特別養護老人ホームへの入所条件は次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
要介護度 | 原則、要介護3~5
特例条件に当てはまれば要介護1・2も対象 |
年齢 | 原則、65歳以上
介護保険制度が定める16種類の特定疾病と認定された40~64歳まで |
特別養護老人ホームの入所条件は要介護3以上です。ただし夜間に医療行為が必要な方は、受け入れられない可能性があります。詳細な体制は施設ごとに異なるので、事前に確認しておきましょう。
原則は要介護3以上ですが、特例で要介護1・2の方も認められる場合もあります。具体的には以下の項目に当てはまれば要介護1・2以下でも入所できます。
特例的に特別養護老人ホームに入所できる条件
- 認知症や知的障害、精神障害などの症状で日常生活に支障が出ている方
- 家族からの虐待などで心身の安全確保が求められる方
- 家族から支援が受けられない状態で地域の介護・生活支援の供給が不足している方
また、年齢が65歳以下の方も末期がんや関節リウマチなどの特定疾病にかかり、介護が必要な状態であれば入所を認められています。
提供サービス
食事の介助 | 〇 |
着替えの介助 | 〇 |
掃除・洗濯 | 〇 |
排泄の介助 | 〇 |
掃除・洗濯 | 〇 |
見守り・生活相談 | 〇 |
買い物の代行 | 〇 |
レクリエーション | 〇 |
機能訓練(リハビリテーション) | △ |
医療処理(胃ろう、経管栄養、たん吸引、点滴など) | △ |
看取り介護 | 〇※不可の施設も一部ある |
服薬の管理 | 〇 |
在宅復帰 | 〇 |
月額費用
特別養護老人ホームの月額費用は、5万~15万円が目安です。月額費用のおおまかな内訳は「介護保険サービス費」と「生活費」です。
介護保険サービス費は、介護度に応じて定額の料金を支払います。介護度が重いほど支払金額が高くなります。
生活費の内訳は居住費(居室の賃料)と食費、理美容代やおやつ代など個々にかかる日常生活費です。
居住費は居室タイプごとに費用が異なります。多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に高くなっていきます。食費は施設によって異なりますが、30日あたり4万円前後が目安です。
低所得者の場合、居住費と食費は負担限度額認定制度により軽減できます。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、在宅復帰を前提に入所できる介護保険施設です。そのため、機能維持・改善を目的としたリハビリを提供しています。
介護職員以外に医師や看護師、リハビリの専門スタッフも配置されているのが特徴です。入所期間は原則3カ月ですが、必要に応じて入所継続となります。平均入所期間はおよそ1年です。
入所条件
介護老人保健施設は終身利用ができないので、在宅復帰や他の施設に移ることが前提となります。退院後、現状では在宅での生活が難しく、もう少しリハビリが必要なときや特養の待機中に利用する方が多いです。ただし、入所条件は基準があるので確認していきましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
要介護度 | 要介護1~5 |
年齢 | 原則、65歳以上
介護保険制度が定める16種類の特定疾病と認定された40~64歳まで |
介護老人保健施設は、要介護1から入所可能です。原則65歳以上、特定疾病の認定を受け介護が必要と判断された40~64歳までという年齢条件は、特養などと同じです。施設によって細かな条件は異なりますが伝染病などの感染症リスクがないこと、病気で長期入院が必要にならないことも条件となります。
入所時には審査があり、面談や主治医意見書、診断書などを元に本人の健康状態、介護度を総合的に判断し、審査を通過すると入所可能となります。
提供サービス
食事の介助 | 〇 |
着替えの介助 | 〇 |
掃除・洗濯 | 〇 |
排泄の介助 | 〇 |
掃除・洗濯 | 〇 |
見守り・生活相談 | 〇 |
買い物の代行 | △ |
レクリエーション | △ |
機能訓練(リハビリテーション) | ◎ |
医療処理(胃ろう、経管栄養、たん吸引、点滴など) | △ |
看取り介護 | △ |
服薬の管理 | ◎ |
在宅復帰 | ◎ |
月額費用
介護老人保健施設の月額費用は、6万~17万円が目安です。主な内訳は、介護サービス費と居住費・食費・日常生活費を含む生活費になります。
介護サービス費は介護度に応じて月額費用は異なりますが、おおむね2万~3万円台です。ただし手厚いサービスを受けると介護サービス加算が発生し、費用がかさみます。
居住費は居室タイプによって異なります。多床室のように複数人で利用する居室の料金は安く、従来型個室やユニット個室となると高くなり、また個室や2部屋では特別室料が発生することもあります。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は療養病床とも呼ばれており、主に医療法人が運営する施設です。介護保険施設のなかでも医療体制が充実しており、重度の要介護度の受け入れに対応しています。
ただし、介護療養型医療施設は長期入所者が増えており、その影響で医療費や介護費が圧迫されるという問題があり、2023年度末に廃止されます。
今後は入所できなくなりますが、受け皿として介護医療院を創設しました。現在、新規の入所者が受付けておらず、移行期間となっています。
介護医療院
介護療養型医療施設の廃止に伴い誕生した施設が介護医療院です。この施設の特徴は、日常的な医療ケアと生活の拠点としての両機能を持っていることです。介護医療院にはⅠ型・Ⅱ型・医療外付け型の3タイプがあり、それぞれ入所条件に違いがあります。
リハビリに特化し、期限付きで入所できる老健との違いは高度な医療サポートが必要な方であること、看取りも視野に入れた長期療養が目的であるという点です。
入所条件
介護医療院は3つのタイプがあり、要介護度や病状によって入所の対象も変わってきます。基本的な入所条件とタイプごとの対象者は以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
要介護度 | 要介護1~5 |
年齢 | 原則65歳以上 |
Ⅰ型の対象者 | 重篤な身体疾患や身体合併症のある認知症など、医療と介護の依存度が高く長期療養を目的としている方 |
Ⅱ型の対象者 | 比較的に容体が安定していて、長期療養が目的の方 |
医療外付け型の対象者 | 比較的に容体が安定していて、自立度の高い方 |
提供サービス
食事の介助 | 〇 |
着替えの介助 | 〇 |
掃除・洗濯 | 〇 |
排泄の介助 | 〇 |
掃除・洗濯 | 〇 |
見守り・生活相談 | 〇 |
買い物の代行 | △ |
レクリエーション | △ |
機能訓練(リハビリテーション) | ◎ |
医療処理(胃ろう、経管栄養、たん吸引、点滴など) | ◎ |
看取り介護 | ◎ |
服薬の管理 | ◎ |
在宅復帰 | ◎ |
月額費用
介護医療院の月額費用は、8万~20万円が目安です。介護と医療の両方で手厚いサービスが受けられるので、他の介護保険施設よりも高めとなっています。
月額費用の内訳は、介護サービス費と居住費・食費・日常生活費を含む生活費です。介護サービス費は、医療体制が手厚くなるほど負担額が増えるようになっています。
また施設のタイプや要介護度、収入に応じての自己負担額によっても実際に支払う費用は変わってきます。
介護保険施設の入所を検討の際はケアマネジャーに相談
4種類の介護保険施設はそれぞれ目的やサービス内容が違います。まず、施設に入所するためには入居条件を満たしていることが必要です。どういう目的で入居したいのかを明確にし、入所条件やサービス内容をよく確認して選びましょう。
場合によっては、他の施設のほうがマッチする可能性もあるので、必要に応じて別の施設への入居も検討してみてください。
介護保険施設の入居を検討する方は、ケアマネジャーや地域包括センターへ相談しましょう。希望条件に合った施設を選定してくれます。
なお、介護のほんねでは月額15万円以下で入居できる有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームを紹介できます。施設選定から見学設定まで無料でサポートさせていただきます。
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この記事のまとめ
- 介護保険施設は介護保険サービスが使える公的施設のこと
- 該当する施設は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・介護医療院の4種類
- 初期費用は発生せず月額費用は割安だが、サービス内容や利用目的は施設ごとに異なる
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