介護ロボットとは|種類・金額・導入メリット・補助金などを紹介
高齢社会を迎えた日本において介護ロボットの導入は不可欠となりました。介護ロボットは介護者と介助される人の両方を手助けするシステムとして、国も実用化や開発支援に取り組んでいます。
日々の介護業務をスムーズにしてくれるため、自宅で介護をしている人や事業者の中には導入を考えている人もいるでしょう。そこで今回は介護ロボットの種類や導入メリットについてご紹介します。
大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。
介護ロボットとは
介護ロボットとは、介護が必要な人と介護する人の双方の支援ができる機械システムです。情報を感知(センサー系)、判断(知能・制御系)し、動作する(駆動系)という3つの要素技術を有します。
ロボット技術の導入により、利用者の自立支援や介護の負担軽減が期待されるため、介護施設で実用化が進んでいます。介護ロボットに必要な3要素については、以下のようになっています。
センサー系
情報を感知する技術です。外部との通信に応用して利用者の安全を守ったり、生活内でのコミュニケーションを図ったりする役目をします。
知能・制御系
動きの判断などをする技術です。転倒につながるような動作を検知し、ケガを予防します。使用者の身体情報にもとづき、排尿や排便のタイミングを知らせることも可能です。
駆動系
動きに関する技術です。介護者を持ち上げる時のアシストや歩行支援など、駆動によるサポートは多岐にわたります。介護支援にはなくてはならない機能です。
介護ロボットが重点開発されている6つの分野
介護機器にロボット技術を応用した介護ロボットの開発には、国も力を注いでいます。特に開発支援をおこなっている重点分野は、次の6分野です。
参考:厚生労働省「ロボット技術の介護利用における重点分野(概要)」移乗支援
移乗支援はベッドから車いすに移動したり、車いすからトイレに移動したりする際の介助です。移乗介助は介護者への負担が大きく、特に腰に痛みを抱えやすくなっています。
移乗介助で重点開発されている機器は、装着と非装着の2つに分類されます。装着型はロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う機器です。一方、非装着型はロボット技術を用いて、抱え上げ動作のパワーアシストを行う機器です。これらの機器を使用することで介護職の腰痛を防止し、介護をスムーズにします。
移乗支援ロボットの例
- 介助者のパワーアシストをする装着型機器
- 寝たきりの方を持ち上げるロボット
移動支援
移動支援とは、移動が困難な人の歩行や立ち座りといった動きを介護職がサポートすることです。一人での移動が難しい人の場合、日常生活で苦労するだけでなく、外出を控えがちになります。
移動支援の介護ロボットは、屋外、屋内、装着の3つに分類され、それぞれの機器で高齢者を支援します。荷物を安全に運搬したり、移動や立ち座りを手助けしたりといった役目です。外出中の転倒防止や歩行をサポートする装着型の支援機器もあります。
移動支援ロボットの例
- 移動中の荷物などを運搬してくれる歩行支援機器
- トイレとの往復やトイレ内での姿勢保持をしてくれる機器
- 転倒予防のための装着型機器
排泄支援
排泄や排尿の支援も介護の中で大変な業務です。介護ロボットは排泄支援用の機器も開発されており、排泄物処理やトイレ誘導、動作支援に役立ちます。
設置位置調節可能なトイレや的確なタイミングでトイレへ誘導する機器、排泄に必要な一連の動作をサポートする機器などです。
排泄支援ロボットの例
- 排泄物の処理に関するロボット
- 排泄のタイミングを予測し、トイレに誘導する機器
- トイレ内での衣類の着脱を支援するロボット
見守り・コミュニケーション
自宅や施設での高齢者の安全を守るために、見守りやコミュニケーション分野でも介護ロボットは重要な存在です。介護施設では夜間に利用者が出歩いたり、ふらっとどこかへ行ってしまったりしないようにロボット技術を導入しています。
在宅介護でも買い物に行っている間など、高齢者が一人のときに転倒することもあるので、転倒検知センサー付きの介護ロボットなどが用いられています。
見守り・コミュニケーションロボットの例
- 施設内での入居者の動きを把握するセンサー
- 在宅での転倒感知型センサー
- 会話などを通して高齢者とのコミュニケーションを取るロボット
入浴支援
入浴支援は、自力で入浴が困難な人に対してするサポートです。しかし、対象者の体を持ち上げたり、抱えたりする動きは介護者に負担をかけます。そのため、ロボット技術により浴槽に出入りする一連の動作をサポートできる機器が開発されています。
入浴支援ロボットの例
- 浴槽に出入りする際の動作を支援するロボット
介護業務支援
介護業務を円滑に支援するための分野です。
介護施設では、常に利用者の安全に目を配る必要があります。しかし、スタッフの人員が不足していたり個々の利用者が自由に活動していたりすると、現実的に各利用者のそばについて見守ることが困難な場合もあるでしょう。
また、日々の介助で得られた情報をまとめることも、介護業務のうえでは必要です。介助だけでなく事務的な作業もしなければならず、多忙を極めることもあります。
介護業務にロボット技術を応用すれば、高齢者の情報収集や蓄積が簡単になります。見守りや移動支援、排泄の時間などをリアルタイムで計測、データ管理し、介護業務の効率化に役立てることが期待されます。
介護業務支援ロボットの例
- 見守り、介助といった介護業務に関する情報を収集し、適切なサポートにつなげるロボット
介護ロボットの種類と金額
6分野を重点分野として開発されている介護ロボットには、どのような種類があるのでしょうか。介護ロボットはセンサー系、知能・制御系、駆動系の3要素を有する機械システムです。これらの技術は独立したものではなく、相互に絡み合って機器に反映されています。
そのため厳密には「センサー系」「知能・制御系」「駆動系」と区別することは難しくなっています。ここでは、代表的な機能面から大まかに分類して、具体的な介護ロボットの例と金額の目安を紹介します。
センサー系
ペイシェントウォッチャープラス
株式会社アルコ・イーエックスが販売している、見守りシステムの介護ロボットです。金額の目安は24万8,000円です。
ペイシェントウォッチャープラスは、24時間赤外線カメラで利用者のベッド周りを見守るため、部屋に行かなくても状況を把握できます。気になったときにテレビやパソコン画面で確認できるので、介護業務の負担も軽減できるでしょう。
また、プライバシーに配慮して画質を落としているほか、モザイクやぼかしをかけた3パターンのプライバシー設定が可能です。「常に見られている」という利用者のストレスを軽減できます。映像の録画やナースコールとの接続にも対応しています。
出典:株式会社アルコ・イーエックス「ペイシェントウォッチャープラス」エイアイビューライフ
自立支援型介護見守りロボットのエイアイビューライフは、エイアイビューライフ株式会社が販売している機器です。目安となる金額は43万円です。看護・介護現場での見える化を実現した機器で、画像認識によってプライバシーに配慮した見守りができます。
広角IRセンサーを搭載しているため、居室の全エリアを対象に危険状態の動作や危険の兆候を察知できます。生体センサーと組み合わせれば、万が一体に異常があった際にアラートで知らせてくれます。個室でも多床室でも使用でき、夜間や人員不足のチェックにも対応した機器です。
出典:エイアイビューライフ株式会社「エイアイビューライフ」見守りライフ
見守りライフは、ベッドに離床予知センサーを取り付けるだけで導入できるトーテックアメニティ株式会社の製品です。金額の目安は17万8,000円です。
利用者のベッドの動きを検知して、転倒や転落事故を防ぎます。離床センサーはベッドの脚の下に敷いてあるので、利用者がつまずく心配もありません。体重や脈拍・呼吸などの利用者データも記録できるため、ケアプランへの活用もできるでしょう。
出典:トーテックアメニティ株式会社「見守りライフ」知能・制御系
水洗ポータブルトイレ キューレット
アロン化成株式会社で取り扱っている介護ロボットです。目安となる金額はトイレユニットと真空ユニット合わせて52万5,000円で、金額は仕様によって変動します。
吸い込み式の水洗ポータブルトイレは、ニオイを抑えて排泄物処理の負担を軽減させます。室内仕様であれば工事不要で設置できる点も魅力です。自宅内でのトイレ不足や部屋からトイレが遠い人にもおすすめです。
出典:アロン化成株式会社「水洗ポータブルトイレ キューレット」服薬支援ロボ
薬の飲み忘れや飲みすぎ、飲み間違いを予防する、ケアボット株式会社の製品です。販売価格は13万2,000円です。服薬支援ロボは設置した時間に音声案内と画面表示で、薬の時間を知らせてくれます。
どのメニューも2タッチで操作画面を表示するので、機械が苦手な人も簡単に操作できます。ゆっくりとした大きな女性の声は高齢者にも聞き取りやすく、難聴の人向けに大音量設定も可能です。
出典:ケアボット株式会社「服薬支援ロボ」シャワーオール
脱衣所など居室への設置も可能な微粒子シャワーの入浴装置です。価格の目安は浴室用で126万円です。コンパクト設計のシャワーオールは、足元の水位センサーが排水不良を検知して自動で給水を止めるロボット機能が付いています。
常に新しいお湯を使用するため感染症リスクも予防できます。溺れる心配もなく、静水圧がかからない構造で心臓や体への負担も少なくなっています。
またぎの高さが15cmと一般的な浴槽よりも低い設計なので、転倒のリスクも低減されています。座位姿勢で安全・安心に入浴が楽しめる介護ロボットです。
出典:エア・ウォーター株式会社「特殊浴槽 「美浴(びあみ)」シリーズ」駆動系
リトルターン 電動アシスト付
アロン化成株式会社が販売している、電動アシスト付き歩行支援機器です。販売価格は24万2,000円です。電源ボタンが大きく分かりやすいうえ、電池残量の画面表示もされています。アシストの強さも3段階で切り替えられるので、利用者の身体能力に応じて適切な状態で使えます。
上り坂では勾配角度をセンサーが感知して、自動で上り坂モードに切り替わり、楽に坂を登れるでしょう。下り坂では自動減速が働き、自動ブレーキでゆっくりと安全に歩けます。
危険な場所や急加速は音声案内もされるので、安心して歩行できます。狭い空間でも小回りの利く、コンパクト設計で日常生活をサポートする機器です。
出典:アロン化成株式会社「リトルターン 電動アシスト付」移乗サポートロボット Hug T1
移乗動作をラクにする、株式会社FUJIの製品です。ベッドから車いすへの移動やトイレ時の移乗動作、脱衣場での立位保持をサポートします。価格の目安は98万円です。
立ち上がりの動作をスムーズに支援する機器を使えば、残った脚力を最大限まで活用できます。簡単リモコン操作の安心・安全のもとで、自然な立ち上がりを実感できるでしょう。体重100kgの人も含めて、幅広い体格の人が利用できます。
出典:株式会社FUJI「移乗サポートロボット Hug T1」自治体によっては介護ロボットの導入補助金が出る
介護ロボットの値段は高額であるため、金額を見て購入をためらってしまう人もいるでしょう。
しかし、自治体によっては介護事業者を対象に介護ロボット導入にかかる補助金が出ることもあります。以下は、介護ロボット導入に補助金を出している自治体の例です。
岩手県
岩手県では、介護従事者が継続して就労できるように、介護ロボット導入支援事業費補助金として介護ロボット導入にかかる費用を一部補助しています。
申請主体は、県内で介護サービス事業所を運営する人です。補助額は1機器につき30万円です。ただし、60万円未満の機器については、導入経費の2分の1です。
参考:岩手県「介護ロボット導入支援事業費補助金」神奈川県
神奈川県では、ロボット導入支援補助金を実施しています。補助額は購入と貸与によって異なり、ロボット1台購入の場合は、購入価格(本体価格+対象付属品等の価格)に3分の1を乗じた額です。
ロボット製造元等から直接貸与を受ける場合は、ロボット1台ごとに、当該年度における本体および対象付属品等の貸与料金総額に3分の1を乗じた額です。年度内の補助限度額は、1申請者あたり、同一年度内で100万円が上限となっています。
参考:神奈川県「介護ロボット導入補助金の交付」横浜市
横浜市では介護ロボット等導入支援事業費補助金として、40歳以上の中高齢者、または外国人を雇用した法人に対して介護ロボットの導入支援を実施しています。補助額は90万円です(上限100万円の10分の9を補助)。補助対象機器は、見守り支援や排泄支援、介護業務支援にかかる機器などです。
参考:横浜市「介護人材関連情報」介護ロボットは厚生労働省が普及を推進している
介護ロボットは、介護をする側とされる側の両方を救うサポート機械です。介護ロボットは、情報を感知(センサー系)、判断し(知能・制御系)し、動作する(駆動系)という3つの要素技術を有する点が特徴です。6つの分野で重点開発されており、介護業務を円滑に進めるために各施設で導入され始めています。
介護施設の人材不足や介護疲れは日本全体の問題です。厚生労働省は経済産業省とも協力して、介護ロボットの開発・導入支援にあたっています。少子高齢化によって、今後益々高齢者は増加していくと予想されるため、介護者と利用者の両面を支援できるサービスは不可欠です。
厚生労働省は介護職の人材不足解消を図る目的も兼ねて、介護ロボットの開発や実用化を積極的に支援しています。介護機器は利用者の自立を支援し、介護者の負担を軽減するもので、今後もニーズは高まるばかりです。
介護ロボットの活用により介護の質と生産性の向上が期待されます。介護ロボットの開発や実用化については厚生労働省が推進しているため、補助金や助成金の制度も充実しており、施設導入のハードルは低くなっています。要介護者の自立を支援し、介護職の負担を軽くする機器の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事のまとめ
- 介護ロボットは介護支援者と支援される人の両方をサポートする機械システム
- 介護ロボットはセンサー系、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する
- 厚生労働省が補助金や助成金も交付し、普及に努めている
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