進行性核上性麻痺とは|治療法(リハビリ)や症状について解説

家族が「進行性核上性麻痺」と診断された、もしくは疑いがあると医師に言われた場合、どのように接すればいいのかわからないという方は多いでしょう。麻痺と記載されていることからどこかの部位で麻痺症状が起きていると思われがちですが、麻痺症状以外にもさまざまな弊害があります。

そもそも「進行性核上性麻痺」とはどのような症状で、何が原因でこのような病気に罹患してしまうのでしょうか? そこで今回は、「進行性核上性麻痺」とはどんな病気なのかどんな症状があるのかなどを詳しく解説していきます。「進行性核上性麻痺」について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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進行性核上性麻痺とは|治療法(リハビリ)や症状について解説
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

進行性核上性麻痺とは

進行性核上性麻痺とは、指定難病として有名なパーキンソン病に次いで発症する頻度が高い神経変性疾患です。元々この病気は1960年代初頭にカナダのトロント大学で報告された疾患で「Progressive supranuclear palsy」と命名され、今は頭文字をとってPSPと略されています。

進行性核上性麻痺もパーキンソン病と同じ難病に指定されていて、40~50歳以降に発症することが多く家族に遺伝性がない病気です。核上性麻痺とは眼球運動障害の特徴に対して命名されたもので、カナダで報告された当時は脳幹の眼運動神経の障害によらず、神経を制御する上位システムの異常と考えられていました。

現在では有効な原因療法は開発されておらず、病気の主要症状を軽減するための治療である対症療法に留まっています。

進行性核上性麻痺になる原因

進行性核上性麻痺が発症する原因は、脳内の特定の部位においてタウ蛋白というたんぱく質の性質が変化し蓄積することだと最近の研究で分かってきました。タウ蛋白が脳内に蓄積されることによって蓄積された部位の神経細胞が減少し、神経症状が現れるのです。

細胞の中には微小管という管状の構造物があり、この管は細胞内の物質を輸送するレールとして働いています。微小管に結合するためにあるタウ蛋白は、微小管の安定化や物質の輸送に関わっています。しかしタウ蛋白にリン酸が過剰結合してリン酸化するとタウが凝集しやすくなり神経細胞などに蓄積するのです。

その結果、神経細胞やグリア細胞の働きが変動したり数が減ったりして、さまざまな神経症状を引き起こすのだと考えられています。現在はタウ蛋白がリン酸化する経緯を把握し、凝集を抑える治療薬の開発が進められています。

なぜタウ蛋白が過剰結合するのか、凝集するのかは未だに分かっていません。ただ、複数の体質要因と環境要因が相互に作用して発病する可能性があるのではないかと考えられています。体質要因は疾患感受性遺伝子が組み合わさることで発症しやすくなるのではないかと考えられ、環境要因はアメリカの検討で井戸水を長期にわたって飲用している人が発病しやすいと判明しました。

しかし井戸水のどの成分が原因なのかなど特定されていないため、発症の原因はさらなる研究が必要です。

進行性核上性麻痺の症状とは

進行性核上性麻痺は麻痺と記載されていることから麻痺症状があると思われがちです。しかし実際は、麻痺だけでなく色々な症状が重なって、体の不調を招きます。では、進行性核上性麻痺はどんな症状があるのか見ていきましょう。

核上性眼球運動障害

パーキンソン病や認知症にはない症状が、核上性眼球運動障害です。核上性眼球運動障害とは、眼球を自発的に自由に動かせなくなる症状を言います。自発的に眼球だけ下に向けたり横に向けたりができなくなりますが、他動的に頭を動かせば眼球も動きます。

初発的な症状は、垂直方向の中でも下を向くのが制限されて徐々に下を向けなくなることです。進行すると全方向が制限されてしまい、眼球を自由に動かせなくなってしまいます。

仮性球麻痺

仮性球麻痺とは、発声ができにくくなったり喋れても同語反復をしたりなどといった症状が起こることです。構語障害ともいわれていて、喋ることが上手くできなくなってしまうことが大きくあります。他には嚥下障害もあり、食事をしたときに物を飲み込みにくくなっていたり口が上手く動かなかったりなどの症状が見られます。

体幹と項部のジストニア

進行性核上性麻痺はパーキンソン病と異なる部分もありますが、同じような部分もあります。それは、体幹の筋肉が硬くなることです。パーキンソン病は筋肉が硬くなって縮んでしまうなどの症状がありますが、それは進行性核上性麻痺も一緒です。進行性核上性麻痺も筋肉が硬くなって収縮し、歩こうとしてもきちんと動けない状態になります。

また首が後ろに反ってくることも、進行性核上性麻痺の大きな特徴です。これは首周りを支えている筋肉が収縮してしまい、首を支えることができなくなってしまって起こる現象です。

認知機能障害

認知機能障害は認知症と同じような症状で、うつになったり攻撃性が高くなったりと感情が不安定になります。他にも、

  • 物忘れが激しくなる
  • 思考がゆっくりになる
  • 感動する映画を観ても感動しない
  • 記憶障害(軽微なもの)

などの症状が現れます。物事を抽象化したりグループ化して考えることが苦手になったりと段取りが上手くできなくなるのです。

起立、歩行障害

起立・歩行障害は、立つことが困難になったり歩くことが難しくなったりすることです。体のバランスが取れにくくなって、立つこともままならなかったり歩いているときに何もないところでつまずいたりするなど、立つときも歩くときも障害によって困難になります。

特に進行性核上性麻痺には歩行障害に特徴があり、第一歩を出すときの足が出にくく、広い場所では普通に歩けるのに、狭い所やターンをするときは足がすくんで動けなくなります。進行性核上性麻痺を疑うきっかけは、体のバランスが取れにくそうに感じたり第一歩の足が出にくかったりした場合には疑った方が良いでしょう。

進行性核上性麻痺の症状の経過

進行性核上性麻痺は、初期の段階から全ての症状が現れる訳ではありません。初期症状は、歩くときのバランスが取れにくくなることです。歩くときにバランスが取れにくくなると、何もない所で転倒したり姿勢反射障害が起こったりと、さまざまな歩行障害が起こります。

歩行障害が起こる原因は、危険認知度が低下していることも挙げられるでしょう。その他にも初期症状として、

  • 動作が遅くなる
  • 思考がゆっくりになる
  • 霧が出ているような視力になる
  • 言葉が出にくくなる
  • 物忘れが激しくなる
  • 無感情になる
  • 鬱のような症状が出てくる

といった症状が挙げられます。この初期症状が出た際には放置せずに医者に行って診断してもらった方が良いでしょう。初期症状を放置しておくと、徐々に症状がひどくなっていきます。初期症状が現れている状態を1期とすると、症状の悪化具合は3期まであります。2期といわれる中期症状は、

  • 眼球が垂直方向に動かせなくなる
  • 目を閉じた後瞼が痙攣して開きにくくなる
  • ターンや狭い所を歩くときに足がすくむ(歩行障害)
  • 頚部ジストニアが起きる
  • 表情が硬くなって笑わなくなる
  • 構音障害や嚥下障害が起こる
  • 認知障害が起こる

などといった症状が起こります。中期になると目が開けにくくなったり眼球が動かせなくなったりと、目の症状が集中してきます。

また、体幹と項部ジストニアも、この時期に起こってくるので注意が必要です。他にも表情が硬くなって笑顔にできなくなったり物を飲み込めなくなったりする嚥下障害もこの時期に起こってきます。

後期症状といわれる3期では、2期よりもさらに制限されていきます。3期に起こる症状は、

  • 眼球運動が全くできなくなる
  • 体幹や項部が固縮・硬直する
  • 立てなくなったり寝返りができなくなったりする
  • 物忘れだけでなく頭で思考ができなくなる
  • 動けなくなる
  • 発言できなくなる

といった症状が起こります。後期症状になると全身が固まってしまい動かせなくなるほか、発言もできなくなってしまうのです。全身が硬直して寝たきりの生活になってしまう前に、医師に診断してもらって治療をしましょう。

進行性核上性麻痺の治療

進行性核上性麻痺は、症状が悪化していくと全身が動かなくなり寝たきりなどの生活を強いられます。では、進行性核上性麻痺を治療する方法はあるのでしょうか。主な治療法は、投薬治療とリハビリです。ここではどんな薬があるのか、リハビリとはどのようなことをするのかをご紹介します。

投薬治療

残念ながら現在は進行性核上性麻痺の原因が分かっていないため、特効薬が見つかっていません。しかし症状に対する薬があり、パーキンソン病の際に使う薬や鬱になったときに使う薬を使って症状を緩和させます。使える薬は以下の通りです。

  • ドパミン作用薬(パーキンソン病治療薬)
  • 三環系抗うつ薬(抑うつに効果がある)
  • セロトニン代謝に作用する薬剤
  • ノルアドレナリン作動薬
  • コリン作動薬
  • 塩酸アマンタジン

パーキンソン病治療薬としても使われるドパミン作用薬は、ドパミンを直接投与して体幹や項部の固縮・硬直を防ぐための薬です。筋肉が収縮してしまうパーキンソン病には、ドパミン作用薬が使われています。三環系抗うつ薬は、抑うつに効果がある薬で、鬱症状になりやすい進行性核上性麻痺の方に効果があります。

他にもセロトニン代謝に作用する薬で抗うつ薬の成分を打ち消したり、ノルアドレナリン作動薬で交感神経を活発にしたりと、さまざまな薬を用いて進行性核上性麻痺の症状を緩和させていくのです。しかし、三環系抗うつ薬とノルアドレナリン作用薬は血圧の異常上昇を引き起こすことがあるので、併用には注意が必要です。

また、進行性核上性麻痺を患っている方の中には、抗ヒスタミン薬など他の薬を服用している方もいるでしょう。今回ご紹介した薬の中には、併用禁止のものもあるので薬剤師や医師に服用している薬があることを申告することが重要です。

リハビリ

進行性核上性麻痺は進行していくにつれて認知障害を発症し、危険察知能力が下がった状態になっています。その状態でリハビリを行うことは危険なので、理学療法士や介護者がいるもとで、環境を整えてからしましょう。リハビリをすることで、寝たきり生活を少しでも防げます。

病気は進行していきますが、関節が固まる拘縮や動けないことによる身体的不調の廃用症候群は予防できます。パーキンソン病のように、ベッドの上での生活になったら拘縮予防をしていくと良いでしょう。

進行性核上性麻痺の家族に対する接し方

進行性核上性麻痺は、パーキンソン病やアルツハイマー病と同じく神経変性疾患です。難病に指定されているパーキンソン病に次いで発症する頻度が高い病気ですが、いつ発症するか誰にも分かりません。40~50代の中年期が多いですが、タウ蛋白とどんな関係があるのか未だに分かっていないのです。

もし家族が進行性核上性麻痺に罹患した場合は、介護中に気を付けなければいけないことがいくつかあります。進行性核上性麻痺に罹患している家族は、認知障害になっているため危険認知度が低く、危ない場所でも立って歩行してしまったりつかまると危ないものに平気でつかまったりします。

また反射障害により転びやすくなっているため、危険防止のためにこまめに声かけをし、歩く時は可能な限り介護者が付き添いましょう。他にも家具の角に頭をぶつけないために保護クッションを付けたり、階段や壁には手すりを付けて安全に歩けるようにすると安心です。

体幹や項部の筋肉が硬直する前は必ず廊下を徘徊するので、家の中の通路は整理してキレイにしておくことも心がけましょう。さらに、目に見える所に気を引くものを置かないようにしておくと、転倒することも少なくなります。外に出て散歩をするときは、転倒しても安心できるように必ず保護帽子を付けてください。

進行性核上性麻痺は、なぜタウ蛋白がリン酸と過剰結合するのかなどの原因が分からないため特効薬がありませんが、投薬やリハビリの治療によって症状が緩和できます。投薬治療をする場合は、今飲んでいる薬がないか、似たような薬を投与していないかを医師や薬剤師から確認してもらうと安心できるでしょう。

また、リハビリをするときは、必ず理学療法士や介護者がいるもとで行うと安心できます。難病に指定されている病気ですが、投薬によって症状が緩和されるので家族が進行性核上性麻痺かもしれないと思ったら医師からの診断を受けましょう。

この記事のまとめ

  • 進行性核上性麻痺はパーキンソン病に次いで発症する頻度が高い神経変性疾患
  • 進行性核上性麻痺にはさまざまな障害が現れる
  • この病気には特効薬がないが、症状を緩和する薬を投与できる