嗜銀顆粒性認知症とは|診断・MRI検査・症状・治療法について紹介

認知症というと、アルツハイマー型やレビー小体型が有名です。しかし、実はそれ以外にもまだまだたくさんの種類があることをご存じでしょうか?その認知症の1つが「嗜銀顆粒性認知症」です。

嗜銀顆粒性認知症は、アルツハイマー型と症状が非常に似ています。そのため、識別が難しい傾向にありますが、アルツハイマー型とは異なる特徴があります。

そこで今回は、認知症の一種である嗜銀顆粒性認知症の特徴や原因、症状、治療法など解説していきます。嗜銀顆粒性認知症について知りたい方や、身内に認知症の症状がみられて不安を感じる人はぜひ参考にしてみてください。

更新日:
写真
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

嗜銀顆粒性認知症とは

嗜銀顆粒性認知症とは、アルツハイマー型やレビー小体型と同じく神経変性疾患の1つです。認知症療養ガイドラインなどでは、AGD(Argyrophilic Grain Dementia)を表記されています。高齢者の発症頻度は約5~9%と推定されており、それほど珍しい疾患ではありません。

304例の認知症者の連続剖検のおける免疫組織化学とガリアス染色を使った検討では、4.9%の例にAGDが認められました。認知症者の平均年齢は81歳で、すべての例で69歳を超えていました。そのため、69歳以上の高齢者に比較的よく見られる疾患とされています。

また、他の変性疾患と合併しやすいことも明らかになっています。特に大脳皮質基底核変性症との合併が多く、その確率は41%です。また、進行性核上麻痺も19%の確率で合併すると報告されています。

嗜銀顆粒とは

病名の嗜銀顆粒は、4リピートタウと呼ばれるたんぱく質の異常蓄積のことです。1987年にドイツの神経病理学者であったブラーク夫妻により発見されました。銀染色により紡錘型・コンマ状で描写されていたので、嗜銀顆粒と命名されました。

認知症を呈さなくてもAGDと認められる場合がある

発見当初、認知症の剖検脳で報告されていました。しかし、認知症の有無に関係なくブラーク夫婦が連続剖検をしたところ、148例がAGDと認められ、そのうち認知症の症状がみられたのはわずか32例でした。認知症を呈さない例もあるため、一般的にはAGDと表現されています。

嗜銀顆粒性認知症にかかる原因

嗜銀顆粒性認知症にかかる原因

嗜銀顆粒性認知症にかかってしまう原因は、4リピートタウが神経細胞の樹状突起に蓄積することが原因だと考えられています。主に海馬や偏桃体などの内側側頭葉に蓄積されやすいです。特に迂回回と呼ばれる偏桃体から側頭葉移行部にかけて蓄積される頻度が高く、側頭葉内側面の前方部の萎縮が目立ちます。

高齢者の連続剖検例による嗜銀顆粒の展開様式の検討では、蓄積の展開には一定方向があると明らかになっています。その傾向は3つのステージに分類され、提唱されています。

ステージ1:迂回回ステージ

嗜銀顆粒の蓄積が迂回回周辺と偏桃体移行部のみに限られたステージです。

ステージ2:側頭葉ステージ

側頭葉内側面を前後方に展開されるステージです。このステージでは、リン酸化タウ陽性ななどの顆粒も目立ってきます。

ステージ3:前頭葉ステージ

前脳基底部から前帯状回、中隔核、側坐核、視床下部にかけて病変が拡大するステージです。

嗜銀顆粒性認知症の診断方法

嗜銀顆粒性認知症を確定させる診断ができる方法は、現時点で病理診断だけです。しかし、病理診断は生前にはできないため、実際は他の方法で診断しています。

病理診断

病理診断とは、臨床医と病理診断医が連携して実施する診断方法です。臨床医が細胞や組織を採取し、それから作られた標本を病理診断医が顕微鏡を使って観察し、そこから病状を診断します。病状以外に生前の治療や本当の死因なども把握できます。

嗜銀顆粒性認知症は知見から臨床診断が可能です。しかし、高齢者に発症ケースが多く、他の疾患と合併している可能性があるので、他の認知症と混同されるなど臨床診断の難易度を上げているのだと考えられています。

画像診断

画像診断とは、X線や超音波、核磁気共鳴などを使って疾患の形態上の変化を画像化する診断方法です。嗜銀顆粒性認知症は、CTやMRIで発覚する場合もあります。

嗜銀顆粒性認知症は、側頭葉内側面前方部に萎縮がみられます。そのため、画像診断では脳内が左右非対称で萎縮する特徴もみられるので、1つの診断基準となっています。

機能画像検査(SPECT検査)

機能画像検査とは、微量の放射線を含む薬剤を投与し、その薬剤が蓄積される部分から放射線を検知して、画像化させる診断方法です。RI検査という名で親しまれています。

CTやMRIでは解剖学的、もしくは形態的な画像で表示されます。しかし、RIは人体機能の生理学的な機能情報を画像化させることが可能です。機能画像検査でも脳内の萎縮に左右差が見られており、そこから嗜銀顆粒性認知症かどうかを判断しています。

また、検査で使われる医薬品に含む放射線は人体に悪影響を及ぼす量は含まれていません。副作用もほとんどなく、古くから用いられている診断方法なので安全性も確率されています。ただ、近年はCTやMRIでの診断が多く、RI検査は少なくなってきています。

各診断方法は昔と比べて精度は上がっていますが、臨床的に確定診断をする方法はまだまだ研究が進められている現状です。嗜銀顆粒性認知症は理由がはっきりしている認知症よりも正確な判断が難しく、死後、症状が明らかになるケースが多いです。そのため、医療や介護分野では綿密な検査や嗜銀顆粒性認知症の知識を持つ認知症の専門医の育成が課題となっています。

嗜銀顆粒性認知症の症状

嗜銀顆粒性認知症の主な症状は、他の認知症と同じく記憶障害です。しかし、それ以外にも特徴的な症状が見られます。

記憶障害

記憶障害とは、自分の記憶が抜け落ちたように思い出せなくなってしまう症状のことです。認知症以外に、自己や病気で脳機能にダメージを負った時や、過度な疲労やストレスも症状を引き起こす原因となります。

記憶障害を起こすと人の名前や顔を忘れたり、直近の行動を思い出せなくなったりします。また、外出時に帰り道が分からなくなり、そのまま行方不明になってしまうケースも多いです。過去の体験や出来事がすっぽり抜け落ちた状態に近いため、忘れているという自覚は本人にはありません。

障害を起こす原因は、海馬の機能障害にあるとされています。海馬は覚えた情報を整理する部分で、長期間記憶を保存する大脳皮質に情報を送る役割を持つ部位です。嗜銀顆粒は海馬にも蓄積されやすいので、その影響で機能障害が出て記憶障害につながっていると考えられます。

人格の変化

記憶障害と併せて人格の変化も代表的な症状に挙げられます。前より怒りっぽい性格や頑固な性格になっている傾向があります。また、被害妄想もしやすいです。怒りっぽくなったり、被害妄想が増えたりすると、次第に暴力や暴言が増えて攻撃的な人格に変わっていくケースもよく見られます。

人格の変化は他の認知症にもあり、前頭側頭型認知症の代表的な症状です。前頭側頭型認知症も側頭葉にたんぱく物質が蓄積されることが原因の認知症で、嗜銀顆粒性認知症と非常に似ています。しかし、比較的に若い年齢層で発症する認知症という特徴があります。

一方、嗜銀顆粒性認知症は60~80歳以上の高齢者の発症ケースが多いので、発症時期が疾患を見分ける基準の1つとなっています。また、アルツハイマー型認知症と比べても発症時期は遅いとされています。

嗜銀顆粒性認知症の治療法

まだ嗜銀顆粒性認知症に有効な治療法は確立されていません。そのため、アルツハイマー型と同じ治療を取り入れる場合が多いです。

治療といっても、認知症を治すものではありません。あくまでも病状の進行を遅らせ、日常生活で支障をきたす病状の改善・軽減を目指す治療になります。その治療は、認知症者の介護する人の負担軽減にもつながるのです。

認知症の進行を抑える方法には薬物療法と非薬物療法の2種類があります。

薬物療法

嗜銀顆粒性認知症を始めとした認知症では、薬物治療が中心となります。認知機能の進行を抑える働きや脳の機能低下を遅らせる働きのある薬を使います。薬物療法では、原因疾患への治療と認知症のさまざまな症状に対する治療の2つに分けられます。

原因疾患

脳細胞が担っていた役割が失われ、それによって起きる症状を中核症状と呼びます。具体的には、記憶障害や言語障害、理解・判断力の低下などの症状のことです。

中核症状に対しては、抗認知症薬を使用します。日本で使われる薬は4種類あり、それぞれの薬はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(アリセプト・レミニール・バスチグミン)とNMDA受容体拮抗薬(メマリー)に分けられます。

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、神経物質の減少を抑制して情報伝達をサポートする働きがある薬です。一方、NMDA受容体拮抗薬は、脳神経細胞にカルシウムイオンが過剰に流入するのを抑制し、情報伝達の働きを整えます。それぞれ異なる効果を発揮するため、原因疾患の治療では両方の薬を併用することも多いです。

ただし、嗜銀顆粒性認知症はアルツハイマー型やレビー小体型と比べてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬の効果が薄いとされています。そのため、実際はアルツハイマー型もしくは他の合併も想定して治療が進められます。

認知症のさまざまな症状に対する治療

認知症の人は、人格の変化や不安・抑うつ、徘徊、弄便、もの盗られ妄想など行動・心理症状(BPSD)の症状も目立ちます。それらの症状も薬物療法により改善や予防を行います。

例えば、不安や幻覚、妄想、徘徊の症状が見られる人は抗精神病薬や双極性障害治療薬を使います。興奮により怒りっぽい人にも抗精神病薬や抑肝酸などの漢方製剤が出されることが多いです。

また、うつ状態の人や不安障害のある人は、睡眠障害を起こしやすいです。睡眠障害が見られる場合は睡眠薬が処方されます。

いずれも副作用のリスクがあります。そのため、医師や薬剤師と相談しながら、正しく服用することが大切です。

非薬物療法

非薬物療法は、薬物を使わずアプローチしていく治療法です。脳の活性化を促し、記憶の残存機能の維持や生活能力を高める役割があります。

治療方法にはいろいろな種類があります。代表的なのは、理学療法や作業療法などを用いたリハビリテーションです。運動や体操、手足を動かす作業などを通じて脳の活性化を図ります。

他にも、以下の治療法が取り入れられています。

  • 簡単な計算、音読、文字の書き取りによる認知リハビリ
  • 見当識に刺激を与えて認知機能の低下を抑制するリアリティ・オリエンテーション
  • 過去の思い出を語る回想法
  • 脳に刺激を与えて自立性を促す音楽・芸術・園芸
  • 動物と触れ合い感情を安定させるアニマルセラピー など

非薬物療法は強要すると逆にストレスを与え、認知症の症状を悪化させる危険性があります。そのため、本人の症状や気持ちを踏まえた上で、無理なく本人が楽しく取り組める両方を選ぶことが大事です。

嗜銀顆粒性認知症の可能性がある場合はすぐに受診を

嗜銀顆粒性認知症は、記憶障害や人格の変化といった症状が特徴的な認知症です。しかし、他の認知症にもよく見られる症状であり、さらに高齢期に発症しやすいので他の疾患との合併している可能性も高く、症状や臨床診断では判断が難しいと言われています。

しかし、60~80歳以上を超えてから認知症の症状が見られた場合は、嗜銀顆粒性認知症の可能性を疑って、早い段階で医師に相談して治療をおすすめします。認知症は治せませんが、早期の治療で症状の緩和や進行を遅らせられるので、介護予防につながります。

この記事のまとめ

  • 嗜銀顆粒性認知症は高齢期に発症が多い認知症
  • 内側側頭葉に嗜銀顆粒(タウたんぱく質)が蓄積されることが原因
  • 記憶障害や人格の変化が目立ち、治療法はアルツハイマー型と基本的に一緒