【専門医師監修】認知症の種類について|中核症状・周辺症状・原因・治療方法も一緒にご紹介
認知症の種類は70種類以上あるといわれています。それぞれの種類によって症状と治療法が異なりますので、認知症の人への対応を考える際は、まずは認知症の種類を知る必要があります。
この記事では、認知症予防学会の代表理事である浦上先生による監修のもと、主要10種類の認知症の特徴・症状・治療方法などを紹介していきます。もし周囲に認知症が心配な人がいる場合は参考にしてください。
日本老年精神医学会・理事、日本脳血管・認知症学会・理事、NPO法人高齢者安全運転支援研究会・理事。認知症早期発見のためのタッチパネル式コンピューター「物忘れ相談プログラム」等の機器開発やアロマによる認知症予防効果の研究等も行う。テレビ番組にも多数出演。
その症状、認知症かも知れません
最も有名な認知症は「アルツハイマー型認知症」でしょう。アルツハイマー型認知症のイメージが強いため、認知症の症状といえば「物忘れを始めとした記憶力の低下」を思い浮かべるのではないでしょうか。
認知症の種類によって、さまざまな症状が現れます。「転倒しやすい」「意欲の低下」「性格が変わった」なども認知症の症状の1つです。下記に認知症別の代表的な症状をまとめました。「もしかして認知症かも?」と心配な方は、思い当たる症状がないかチェックしてみてください。
認知症別の症状一覧
認知症の種類 | 代表的な症状 |
---|---|
アルツハイマー型認知症 | 物忘れ・日時や場所が分からない・怒りっぽい・物盗られ妄想 |
レビー小体型認知症 | 動作が遅くなる・幻視・物忘れ・自律神経のバランスが崩れる |
血管性認知症 | 服を着るなど日常動作が困難・思考や行動がゆっくりになる |
前頭側頭型認知症(ピック病) | 自分勝手な発言や行動・迷惑行為・決まった行動を繰り返す |
進行性核上性麻痺 | 転倒しやすい・目を上下に動かしにくい・飲み込みにくい |
大脳皮質基底核症候群 | 動作が遅くなる・片腕が動かしにくい・言葉が出にくい |
嗜銀顆粒性認知症 | 物忘れ・外出したまま帰宅できなくなる・頑固・被害妄想 |
神経原線維変化型老年期認知症 | 新しいことを覚えられない・人や物の名前を忘れてしまう |
アルコール性認知症 | 意欲の低下・うつ・手の震え・ふらつき |
正常圧水頭症 | がに股歩き・歩幅が狭い・注意力の低下・尿失禁 |
種類別の発症割合はどのくらいか
現在、65歳以上の認知症患者は600万人以上といわれています。では認知症の種類別の発症割合を見てましょう。
厚生労働省の調べによると、認知症患者の67.6%が「アルツハイマー型認知症」です。次に「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」と続きます。日本では3つの認知症をまとめて「三大認知症」と呼び、65歳以上の認知症患者の92%を占めています。
三大認知症を分かりやすく解説(原因・症状・治療・ケア)
認知症でも種類が違えば、脳内で起こっている変化は異なります。よって症状・治療・ケア方法も違ってくるのです。ここからは、前述でも紹介した三大認知症「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」について、詳しく紹介していきましょう。
症状については、脳神経細胞の障害により引き起こされる「中核症状」と、中核症状によって行動や心理状況が変化する「周辺症状(BPSD)」の2つに分けて解説していきます。
「アルツハイマー型認知症」とは
アルツハイマー型認知症の特徴
アルツハイマー型認知症は、記憶や思考能力が徐々に失われていく病気である「アルツハイマー病」が原因で引き起こされる認知症です。認知症患者の半数以上がアルツハイマー型認知症であり、男女比は女性の方が多いといわれます。
アルツハイマー型認知症の特徴
主な原因 | 原因不明の脳の変性で、神経細胞が死滅し、脳が萎縮していく |
---|---|
障害の部位 | 海馬・後部帯状回・頭頂葉 |
主な症状 | 物忘れ・日時や場所が分からない・怒りっぽい・物盗られ妄想 |
進行度合 | 個人差はあるが、数年かけて徐々に進行 |
治療方法 | 根治はできない。薬物治療・リハビリを実施し、進行を遅らせる |
原因と仕組み
アルツハイマー型認知症は「アミロイドβ」と呼ばれるタンパク質が脳内へ蓄積することが原因で起こります。しかし、アミロイドβが溜まる理由は、まだ解明されていません。
アミロイドβが蓄積することにより、脳内に「老人斑」というシミや、神経細胞に「神経原線維変化」という糸くず状の物体が増加し、神経細胞が死滅するほか記憶をつかさどる「海馬」を中心に脳内が萎縮していきます。
症状と進行
中核症状
アルツハイマー型認知症の最も主要な症状は記憶障害です。進行の過程は人それぞれですが、物忘れから始まることが多いでしょう。そこから、場所や時間が分からなくなる見当識障害や実行機能障害、視空間認識障害が現れていきます。
最近の記憶を保持することは困難ですが、昔の記憶を思い出すことは比較的できる傾向にあります。
周辺症状
物盗られ妄想やアパシー(無気力・無関心)、徘徊、抑うつなどが主な症状です。悪化するとともに妄想や幻覚、異常行動の頻度が増えるといわれています。
治療方法と薬
現在、アルツハイマー型認知症を完治できる治療はありません。進行を遅らせることを目的に薬物治療を進めていきます。
「コリンエステラーゼ阻害薬」「NMDA受容体拮抗薬」といった認知機能障害の進行を軽減する薬を服用するのが一般的です。精神状態が不安定な場合は、イライラするのを抑える漢方「抑肝散(よくかんさん)」や睡眠薬、精神安定剤を使用します。
薬物治療のほかには、運動やレクリエーションなどの「リハビリテーション療法」を実施するのも効果的でしょう。
代表的な主な薬
分類 | 薬剤名 | 一般名 |
---|---|---|
抗認知症薬 | コリンエステラーゼ阻害薬 |
|
NMDA受容体拮抗薬 |
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|
抗精神病薬 | 定型抗精神病薬 |
|
非定型抗精神病薬 |
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ケア・看護のポイント
アルツハイマー型認知症になると、同じ言動を何度も繰り返したりするでしょう。一緒に暮らしているご家族は、不安やストレスがつのるかもしれません。しかし怒鳴ったり、嫌そうな顔をしたり、無理に思い出させようとしたりする行為はNGです。プライドが傷つき、辛い思いだけが残ってしまいます。
ご本人にとって悲しい経験が、抑うつ・妄想・暴力などの周辺症状を引き起こすきっかけとなります。認知症患者とのコミュニケーションは、きちんと目を見て、にこやかな対応を心がけることが大切です。
アルツハイマー型認知症は疎外感を抱くと物盗られ妄想が現れることもあります。「それは困りましたね。一緒に探しましょう」など共感しながら、一緒に探してみましょう。また、物が把握やすいシンプルな部屋に模様替えをするのもおすすめです。
アルツハイマー型認知症については、以下の記事で詳しく紹介しています。
「脳血管性認知症」とは
脳血管性認知症の特徴
脳血管性認知症は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など脳血管障害が引き起こす認知症です。生活習慣病が、脳血管性認知症のリスクを高めるともいわれていますので、健康的な生活習慣の積み重ねが大切になります。
また、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症を同時に発症しているケースも増えてきています。併発した認知症を「混合型認知症」と呼びます。
脳血管性認知症の特徴
主な原因 | 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などにより、血液循環が悪くなり発症する。 |
---|---|
障害の部位 | 前頭葉 |
主な症状 | 手足の麻痺・簡単な日常動作ができない・思うように話せない |
進行度合 | ゆったりと進行するが、脳血管障害を起こした後は急激に進行する。 |
治療方法 | 根治はできないが、薬物治療・リハビリを実施し進行を遅らせる。生活習慣の見直しが大切。 |
原因と仕組み
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で発症します。脳血管障害が起こった部位の神経細胞が壊れ、脳の働きが低下します。
不健康な生活習慣や事故、ケガが主な原因です。喫煙・糖尿病・高血圧症・脂質異常症など、生活習慣が良好でない人は気をつけましょう。
症状と進行
中核症状
脳血管性認知症は初期段階で運動障害や歩行障害が目立ちます。しかしアルツハイマー病で現れるような記憶力の低下はあまり目立ちません。ダメージを受けた部位によって言語障害が現れるなど、症状が異なります。
「昨日できたことが今日できない」という日もあれば、逆もしかりです。日によって症状にバラツキがあります。できること、できないことの差が大きいことも特徴の1つです。
周辺症状
ご自分の症状を把握していることが多く、意欲が低下する傾向にあります。また「感情の起伏が激しい」「些細なきっかけで泣く」などの興奮状態になることも。結果、精神的に不安を抱えてしまうため「うつ状態」になる事例も多いでしょう。
治療方法と薬
脳血管性認知症は、根本的な治療は確立していません。アルツハイマー病などの薬物治療で使っている薬は脳血管性認知症にはほとんど効かないといわれています。
大切なのは、脳血管障害を再び引き起こさないこと。そのため、高血圧薬や脳血流改善薬を使用し、血圧や血糖を正常な状態にコントロールするなど、生活習慣病の治療が必要です。
脳梗塞の再発予防として血液をサラサラにする「ニセルゴリン」などの薬剤を服用することも多いでしょう。
ケア・看護のポイント
脳血管障害の再発防止のためにも、ご家族は規則正しい生活習慣を支えることが大切です。麻痺や失語などの症状がある場合は、理学療法士・言語聴覚士の指導によるリハビリテーションを受けてみましょう。近所のデイサービスなどを活用するのもおすすめです。
また運動麻痺・知覚麻痺があるため、転倒しないように周囲に気を配る必要があります。「生活の動線に手すりを設置」「福祉道具を活用する」など、暮らしやすい環境を整えてはいかがでしょうか。
血管性認知症については、以下の記事で詳しく紹介しています。
「レビー小体型認知症」とは
レビー小体型認知症の特徴
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症です。精神科医である小阪憲司氏が1976年に発見し、1996年に国際診断基準になり世界中に認められました。レビー小体型認知症の男女比は、女性より男性のほうが約2倍多い傾向です。
レビー小体型認知症の特徴
主な原因 | 神経細胞にレビー小体というたんぱく質の塊ができ、脳細胞を死滅させる。 |
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障害の部位 | 後部帯状回・後頭葉・頭頂葉・全身の末梢神経 |
主な症状 | 動作が遅くなる(パーキンソン症状)・幻視・物忘れ・自律神経のバランスが崩れる。 |
進行度合 | 個人差はあるが、数年かけて徐々に進行。症状が一定せずに、日によって波がある。 |
治療方法 | 根治はできない。薬物治療・リハビリを実施し、進行を遅らせる。 |
原因と仕組み
レビー小体型認知症は、大脳皮質にたんぱく質「レビー小体」が現れることが原因です。レビー小体は、パーキンソン病患者の脳内にもある物質で、パーキンソン病とも関係があるといわれています。
症状と進行
中核症状
物忘れなどの記憶障害から始まるアルツハイマー型認知症とは違い「手足が震える」「動きが遅くなる」などパーキンソン症状が目立つのが特徴です。初期に認知機能障害はあまり現れませんが、中期の症状として記憶障害・見当識障害・実行機能障害などがあります。
周辺症状
「部屋に子どもが立っている」といった具体的な幻視が出現するのもレビー小体型認知症の特徴です。また、自律神経のバランスが崩れることもしばしば。立ちくらみ・頻尿・便秘・だるさなど自律神経障害にも気をつけましょう。
さらに進行すると口からのお食事が困難になるため、状況によっては胃ろうを検討することになるでしょう。
治療方法と薬
レビー小体型認知症は、根治できる治療はありません。それぞれの症状を和らげることを目的に、パーキンソン病とアルツハイマー病の治療を並行して進めていきます。
レビー小体型認知症患者は抗精神病薬に過敏であるといわれていますので、抗精神病薬を服薬する場合は、医師と相談しながら量などを決めていきましょう。
また、パーキンソン症状は、身体が思うように動かせない症状でもあるためリハビリテーションを積極的に実施することをおすすめします。
代表的な主な薬
分類 | 薬剤名 | 一般名 |
---|---|---|
抗認知症薬 | コリンエステラーゼ阻害薬 |
|
NMDA受容体拮抗薬 |
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|
抗精神病薬 | 定型抗精神病薬 |
|
非定型抗精神病薬 |
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抗パーキンソン病薬 | レボドパ製剤 |
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ゾニサミド |
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ケア・看護のポイント
パーキンソニズムは筋肉や関節が硬くなり体のバランスが取りづらいため、転倒への注意が必要です。バリアフリーを取り入れたり、低床ベットに変えたりと、転倒しにくい生活スペースを作りましょう。
幻視が見えたと報告を受けたときは「そんなことが、あるわけない」と否定してはいけません。今後、幻視に悩まされても相談しにくくなり、ますます症状が悪化するでしょう。例えば、不審な人物がいる場合は、懐中電灯で照らすなどして、一緒に存在がいないことを確認します。ご本人とご家族の信頼関係を保つことがポイントです。また、テレビの赤いランプや壁のシミなど、錯覚しやすい物は、見えないように改善してみましょう。
レビー小体型認知症については、以下の記事で詳しく紹介しています。
他にはどんな認知症がある?
三大認知症以外には、どんな認知症があるのでしょうか? 三大認知症に比べると発症割合が少ない認知症ですが「アルツハイマー型・レビー小体型・脳血管性とは少し症状が違うかも……」と思った人もいるかもしせまん。それ以外の7種類の認知症について解説しますので、気になる人はご覧ください。
「前頭側頭型認知症(ピック病)」とは
前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉の萎縮により発生する認知症です。萎縮する原因は、いまだに分かっていません。また前頭側頭型認知症には、ピック型・前頭葉変性型・運動ニューロン疾患型がありますが、大多数の人はピック型を発症します。他の認知症に比べ、40~60歳代の若いうちから発症するのも特徴でしょう。
症状と進行
前頭側頭型認知症は、物忘れなど認知機能の低下による症状はほとんど発生しません。しかし性格変化・異常行動が目立ちます。そのため認知症とは気付かず、病気の発見が遅れることもあるのです。
異常行動としては浪費や過食、異食が挙げられます。窃盗、ゴミ屋敷になる、他人の家に勝手に上がるなど、周囲に迷惑をかける行為もありますので、ご家族の負担も大きくなるでしょう。ご家族で抱え込まず、認知症や福祉のプロに頼ることが大切です。
治療方法
現在、完治できる治療法はありません。基本的には性格変化や異常行動などの症状が出現するので、精神面に対する治療がメインです。「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」という薬剤が効果があるといわれています。
とはいえ、薬物治療の効果は人それぞれです。周囲の人が日々のコミュニケーションや環境に気を配ることは、薬物治療以上に重要な要素かもしれません。
「進行性核上性麻痺(PSP)」とは
進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy : PSP)は、脳の一部の神経が減少または変性することで脳の働きが低下します。パーキンソン病と同じ神経変性疾患の1つです。
症状と進行
主な症状として「転倒しやすい」「しゃべりにくい」「飲み込みにくい」などの症状が現れます。パーキンソン病と似た症状が現れるため、区別が難しいといわれています。
特に進行性核上性麻痺は眼球運動が困難なため、目を上下に動かしにくいのが特徴です。もしご本人から「階段を降りるのが怖い」という訴えがあれば、進行性核上性麻痺を疑ってみましょう。
症状の進行スピードは人によって異なります。進行が進めば嚥下障害が現れますので、口からのお食事が難しくなることも視野に入れておきましょう。
治療方法
根本的な治療法はありません。初期にはパーキンソン症状を緩和させる「レボドパ」「アゴニスト」「抗コリン薬」などの薬を服薬します。ただし、徐々に効果が薄れてくることも報告されています。
非薬物療法であるリハビリテーションに取り組むことも効果的です。作業療法などで日常動作の訓練をして、転倒予防に努めましょう。嚥下障害がある場合は、発声練習や嚥下訓練にも取り組んでみてください。
進行性核上性麻痺については、以下の記事で詳しく紹介しています。
「大脳皮質基底核症候群」とは
大脳皮質基底核症候群は、進行性核上性麻痺と同様にパーキンソン病と同じ神経変性疾患です。思うように手足が動かない「大脳皮質症状」と、筋肉が硬くなる「パーキンソン症状」を合併する疾患になります。
症状と進行
身体の左右のどちらかが思うように動かなくなるのが特徴です。初期に片方の腕が思うように動かせなくなり、次第に同じ側の足、反対側の腕、足と悪化していきます。また、片手が他人の手のように勝手に動いてしまう症状も特徴的です
認知機能障害もしばしば出現し、主に失語・失行・人格変化・遂行機能障害などが挙げられます。
治療方法
根本的な治療はありません。発症初期はパーキンソン病の薬が効く人もいますがその効果は長続きしないといわれています。手足がピクピクと震える場合は、抗てんかん薬である「クロナゼパム」が有効でしょう。
また薬物療法と並行して、体を動かすことが大切です。閉じこもっていると体力が落ち、さらに状況を悪化させるでしょう。リハビリテーションに積極的に取り組んでみましょう。
「嗜銀顆粒性認知症(ADG)」とは
嗜銀顆粒性認知症(Argyrophilic Grain Dementia : AGD)は、脳内の嗜銀顆粒状の構造物を特徴とする変性疾患です。脳の神経細胞を顕微鏡で見なければ診断できないため、実際には他の認知症と診断されているケースも多いかもしれません。まだ、特有の治療法がない認知症です。
症状と進行
嗜銀顆粒性認知症は、記憶障害や見当識障害などアルツハイマー病と似た症状が出現します。アルツハイマー病よりも「怒りっぽい」「被害妄想」「暴力行為」などの症状が濃く現れるのも特徴です。比較的、高齢で発症し進行も緩やかだといえます。
治療方法
現時点では、嗜銀顆粒性認知症に特化した治療法はありません。アルツハイマー型認知症と同じ治療を実施します。アルツハイマー型認知症同様に、根治できる治療方法は見つかっていません。
「神経原線維変化型老年期認知症」とは
「老人斑」と「神経原線維変化」の両方が蓄積するアルツハイマー型認知症は異なり、神経原線維変化型老年期認知症は「神経原線維変化」だけが蓄積するのが特徴です。症状が似ているため、アルツハイマー病と診断されているケースも少なくないでしょう。
症状と進行
90歳以上の後期高齢者に多い認知症です。主な症状は「新しいことを覚えられない」「人や物の名前を忘れてしまう」などの記憶障害であり、その他の認知障害は相対的に軽度です。症状はゆっくりと進行していきます。
治療方法
嗜銀顆粒性認知症と同じく、現時点では神経原線維変化型老年期認知症に特化した治療はありません。なのでアルツハイマー型認知症と同じ治療を実施します。アルツハイマー型認知症同様に、根治できる治療方法は見つかっていません。
「アルコール性認知症」とは
アルコール性認知症は、多量のアルコール摂取が原因で発症する認知症です。
度を超えた飲酒は、脳梗塞などの「脳血管障害」をはじめ、ビタミンB1が欠乏するため「栄養障害」を発症します。結果、脳に多大なダメージを与えてしまうのです。
アルコール依存症患者の有病率が高く、年齢は関係なく若い人でも発症します。飲酒量が多い人は気をつけましょう。
症状と進行
初期症状は意欲の低下やうつ状態などの心理的症状です。後に手の震え・ふらつきといった身体的症状がみられます。
栄養障害による症状として記憶障害・見当識障害・作話(さくわ)などがあります。作話は、事実ではないことをあたかも事実であるように話してしまう精神症状です。騙そうとする意図はありませんので、否定せずにゆっくりと話を聴いてみましょう。
治療方法
アルコール性認知症は、アルコールの多量摂取が原因のため断酒によって改善することもあります。薬物治療だけではなく、ご家族の協力のうえで禁酒を実践することが重要でしょう。
またアルツハイマー型やレビー小体型の認知症と合併するケースも多く、治療も困難になってしまいます。
「正常圧水頭症(iNPH)」とは
正常圧水頭症(idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus : iNPH)は「水頭症」と呼ばれる病気が原因の認知症です。水頭症は、脳内にある「脳室」に脳脊髄液が多く溜まることで発症します。
また、正常圧水頭症は手術で治る可能性がある病気です。そのため早期発見が重要になります。次の症状に当てはまる場合は、医療機関で診断を受けてください。
症状と進行
初期症状として「がに股歩き」「歩幅が狭くなる」などの歩行障害がみられます。一般的な認知症の症状もありますが、記憶障害よりも注意力や意欲の低下が目立つのも特徴です。さらに状況が悪化すると尿失禁をしてしまうことも。尿失禁はご本人にとっても自尊心が傷つく出来事です。ご家族は、怒らず優しい対応を心がけましょう。
治療方法
脳室から脳脊髄液を排出する手術「脳室シャント術」を実施し、脳脊髄液を正常値の量に戻します。
脳神経外科にとっては一般的な手術であるため、有名な病院でなくても十分な治療が可能でしょう。しかし手術をすれば、必ず改善するとは限りません。
また高齢者の場合、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症を合併している場合は、手術による改善は期待できないことも覚えておきましょう。
正常圧水頭症については、以下の記事で詳しく紹介しています。
気になる症状があったらまずは診断を
ここで紹介した認知症は70種類ある認知症のほんの一部です。認知症にはさまざまな種類があり、その認知症によって症状や治療方法が異なります。
よって「認知症」と1つの言葉でまとめてしまうのではなく、それぞれの認知症にどんな特徴や症状があるのかを知ることが大切です。また、認知症の疑いがある場合は、ご本人がいつもとどう違うのかをしっかりご家族が観察することも重要になります。
少しでも認知症の疑いがある場合は、ぜひ医療機関へご相談ください。早期発見・早期治療が認知症の進行や症状を緩和させるため、ご本人がご自分らしい時間を多く過ごます。併せて、ご家族の負担が軽くなることでしょう。
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最後に「認知症の種類」に関する記事を一覧で掲載します。あらためて気になる記事をご覧ください。
アルツハイマー型認知症について
レビー小体型認知症について
血管性認知症について
若年性認知症について
嗜銀顆粒性認知症について
スマホ認知症について
正常圧水頭症について
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この記事のまとめ
- 認知症は70種類以上もある
- 種類のそれぞれで薬や治療法が違う
- 少しでも気になる人はテストを
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