訪問マッサージとは、医療・介護保険適用額や訪問リハビリテーションとの違いなど

要介護者が利用できるサービスに訪問マッサージがあります。国家資格を持つ人が自宅や高齢者施設などに訪れてマッサージを提供するサービスです。

マッサージというと疲れを癒す施術を思われがちですが、疲労回復以外にもメリットがあります。この記事では、訪問マッサージの詳細や要介護の人が利用するメリットをご紹介します。さらに、訪問リハビリテーションとの違い、使える保険、料金についても解説するので、訪問マッサージについて知りたい方は参考にしてみてください。

訪問マッサージとは、医療・介護保険適用額や訪問リハビリテーションとの違いなど
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

訪問マッサージとは

訪問マッサージとは、筋麻痺や関節拘縮などの症状の改善・緩和を目的としたマッサージを在宅で受けられるサービスです。あん摩とマッサージを組み合わせた施術を提供しており、施術師は自宅以外に高齢者施設などにも派遣されています。

医療上に必要とされているマッサージなので、歩行に支障があって病院や治療院などに行けない要介護者も自宅で症状の改善に期待できるマッサージを受けられます。要介護者以外に、自宅療養中の人や障害を持つ人も利用可能です。

また、派遣される施術師は国家資格である「あん摩マッサージ指圧師」を取得している人に限られています。資格保有者しか施術ができない理由は「あん摩と指圧は対象者に体重などをかけ、体の深部にも刺激を与える施術なので、やり方を間違えると症状を悪化させる恐れがあるから」です。無資格の施術師ではなく、専門的な知識と技術を持つ施術師によるマッサージなので安心して受けられます。

そもそもマッサージが要介護の人にもたらすメリット

高齢者にとって、マッサージには主に次の3つのメリットがあります。

疲労回復

高齢者が疲れやすくなる原因は筋力や身体機能の低下が原因です。「疲れやすいから」と、ますます動かなくなると筋肉が固くなってしまいます。マッサージは筋肉や軟組織の動きをよくする効果があり、「筋肉を柔らかくする」「リンパの流れを改善して老廃物を溜めにくくする」などによって疲労回復効果を促してくれます。

疼痛の緩和

疼痛は、神経の圧迫や関節の痛み、筋肉・神経・内蔵の機能が衰えなど、さまざまな原因で起きます。訪問マッサージで施術を受けると全身の血液循環が改善したり、筋肉の萎縮を緩和させたりできるので、疼痛をやわらげてくれるのです。

特に寝たきりの要介護者は血管壁やリンパ管が圧迫されやすく、体液の循環が不十分になりがちです。それによってむくみやすくなり、最悪の場合は組織が部分的に壊死してしまうこともあります。

また、脳血管障害の後遺症による麻痺や脳性麻痺を患っている人は、肩や背部周辺に疼痛が起きやすいです。マッサージは、むくみや組織の部分的壊死、麻痺による疼痛などの緩和・予防にもなります。

痛みが長期化することで、精神的な不安も大きくなります。訪問マッサージは「不安な気持ちを解消できる点」もメリットです。

関節機能の改善

高齢者は膝関節症や変形性股関節症などを患いやすいです。これらの原因は関節まわりの筋肉・関節を構成する「腱・靭帯・関節包」などの動きが衰え、関節の可動域が制限されてしまうためです。

マッサージには萎縮した筋肉を柔らかくし、関節の可動域を拡大する効果があります。それにより、関節痛の痛みの軽減や関節機能の維持につなげることも可能です。筋肉と関節をマッサージで動かし続けると、筋力がついて自ら筋肉を動かせるようになる可能性があります。

関節機能に障害が出ると、運動が難しくなってしまいます。運動量が減ると筋力の衰え以外にも床ずれ(褥瘡)や肺炎などの廃用症候群にもなりやすいです。訪問マッサージで関節機能を改善、維持することは、廃用症候群の予防にもつながります。

訪問リハビリテーションとの違い

体の機能の改善や維持を目的としたサービスの中には、訪問リハビリテーションがあります。こちらも訪問マッサージと同じく自宅や高齢者施設に理学療法士などのリハビリスタッフが派遣され、それぞれの身体症状に合わせてリハビリ指導をしてもらえるサービスです。

在宅介護を受ける人がよく利用されるサービスですが、施術内容にマッサージも含まれるため、訪問マッサージと混同する人も多くみられます。実際は以下の表のように目的、対象者、適用される保険の種類などに違いがあります。

訪問マッサージ 訪問リハビリテーション
目的 疲労回復や疼痛の緩和、関節・動作機能の改善など 自立した日常生活が送れるように身体機能の維持・回復
対象者 歩行が困難、寝たきりで病院・治療院に行けない人 要支援者と要介護者
提供者 あん摩マッサージ指圧師 理学療法士など
保険 医療保険 介護保険と医療保険
必要な書類 医師の同意書・診断書 医師の指示書、もしくは診療情報提供書

目的

訪問マッサージと訪問リハビリテーションには、施術の目的に違いがあります。その違いは以下のとおりです。

訪問マッサージの目的

訪問マッサージの施術内容は、あん摩マッサージ指圧師によるマッサージやあん摩です。筋力の維持や向上、関節可動域の維持・拡大による関節機能の改善、慢性的なコリや疼痛の緩和、むくみやしびれを和らげるための血液・リンパ液の循環を改善する目的で施術が提供されています。

具体的には、筋麻痺、運動機能障害、筋萎縮などの症状、それらの原因となる病名に該当する病状・疾患などに対応できるサービスです。

訪問リハビリテーションの目的

訪問リハビリテーションの施術内容は、運動機能の維持や回復訓練です。施術の中にはマッサージも含まれますが、メインは在宅でスムーズな日常生活を送るためのリハビリとなっています。

リハビリとなるので、派遣される提供者は理学療法士などリハビリの専門家です。訪問マッサージではあん摩マッサージ指圧師だけに限られますが、訪問リハビリテーションは利用目的に合わせて適した提供者が派遣されます。

対象者

どちらも要介護者がよく利用するサービスですが、対象者に細かい違いがあります。

訪問マッサージの対象者

訪問マッサージが利用できる人は、歩行に支障がある人や寝たきりなど日常生活の動作に大きな支障があり、自力で医療機関に通えない人です。そのため、利用者は要介護認定を受けた高齢者だけではなく、在宅療養や障害者も自力で医療機関に通院できない場合は利用できます。

訪問リハビリテーションの対象者

訪問リハビリテーションが利用できる人は、基本的に要支援1~2または要介護1~5に当てはまり、医師からリハビリだと認められた人です。要介護認定を受けているのであれば、どのような病気・怪我はきっかけでも利用可能です。ちなみに、要支援者が利用できるサービスは、正確には介護予防訪問(通所)リハビリテーションとなります。

要支援や要介護というと高齢者が一般的です。しかし、ガン・関節リウマチなど厚生労働省が定める16種の特定疾患に該当する40~64歳も要介護認定を受けられるので、必要と判断されれば訪問リハビリテーションを利用できます。

また、要介護認定を受けていない人も訪問リハビリテーションを利用できる場合があります。それは、厚生労働省が定める20種の疾患に該当する人です。20種と疾患とは、16種の特定疾患に加えて、ライソゾーム病・副腎白質ジストロフィー・脊髄性筋萎縮症・球脊髄性筋萎縮症・慢性炎症性脱髄性多発神経炎が含まれます。

保険

訪問サービスは介護保険、もしくは医療保険を使って利用料金の自己負担を軽減できます。訪問マッサージの場合は、医療保険が適用されます。しかし、訪問リハビリテーションの場合は、医療保険と介護保険のどちらかが適用されます。

では、介護保険と医療保険の違いとは何か、また訪問リハビリテーションではどの条件でそれぞれが適用されるのかご紹介します。

介護保険

介護保険は40歳になると国民全員が加入する社会保険制度です。介護保険制度による介護サービスを受ける場合、利用料の負担割合が3~1割までに軽減されます。ただし、介護保険サービスは1ヶ月ごとに支給基準額があるので、限度を超過した部分は全額自己負担となるため要注意です。

介護保険を訪問リハビリテーションに適用させるためには、要支援や要介護認定を受けることが条件です。第1号被保険者である65歳以上は介護が必要と判断されれば認定を得られますが、40~64歳の人は16種の特定疾患にかかっている人が認定対象となります。

医療保険

医療保険は病気やケガをした際に、治療費の一部を負担してくれる制度です。主に会社が加入する健康保険組合や協会けんぽ、共済組合の健康保険や船員保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度が当てはまります。日本では、国民全員がいずれかの公的医療保険に入ることを義務付けられています。

医療保険の自己負担割合は年齢や所得によって異なります。6歳未満の子どもと70~75歳までは3割ですが、70歳未満は2割、75歳以上は1割です。ただし、70歳以上でも現役並みの高所得者は3割の自己負担となります。

訪問マッサージは要介護認定を受けていない人でも、目的に当てはまれば誰でも利用できます。そのため、介護保険ではなく医療保険の適用となるのです。

一方、訪問リハビリテーションで医療保険が適用される条件とは、要介護認定を受けておらず、厚生労働省が定める20種の疾患にかかっている人です。そもそも介護保険と医療保険は併用ができないため、要介護認定を受けている人は介護保険が優先されます。

必要な書類

訪問マッサージも訪問リハビリテーションも、医療上で必要性を判断された時に利用できるサービスです。そのため、医師が作成する書類が必要となります。しかし、その書類にもやや違いがあります。

訪問マッサージに必要な書類

医療保険を使って訪問マッサージを受ける場合は、医師の同意書・診断書が必要です。医師の同意書や診断書は、マッサージが症状の改善に有効であることを同意する処方箋の代わりとなります。

もともと、あん摩マッサージ指圧師の資格には開業の権利が含まれているので、医師の指示がなくてもマッサージは可能です。しかし、保険の適用条件には傷病名が必要であり、医師にしか診断権利がないため同意書および診断書が必須となるのです。

ただし、自費で利用する場合は、施術師と患者の個人契約となります。全額自己負担となってしまいますが、医師の同意書・診断書なしで利用可能です。

訪問リハビリテーションで必要な書類

訪問リハビリテーションでは、医師の指示書か診療情報提供書が必要になります。リハビリを提供する理学療法士は医師の指示で医療業務をこなしています。そのため、医師の指示なしでサービスは提供できません。

医療保険適用時の訪問マッサージの料金は

訪問マッサージを利用するにあたり、気になってくる部分は料金です。医療保険が適用されれば、利用者さまの負担は大きく軽減されます。訪問マッサージの料金は厚生労働省により定められており、以下の料金体系となります。

項目 料金
マッサージ 1局所につき340円
温罨法の併施 1回につき80円加算
変形徒手矯正術 1肢につき780円
往療料 2,300円

(往療距離が片道4km以上の場合は2,700円)

施術報告書交付料 300円

例えば、マッサージを5局所と温罨法(おんあんぽう:体を部分的に冷やしたり、温めたりして症状の改善を促す治療法)を受けた場合の料金例は次のとおりです。

項目 料金
マッサージ 5局所:1,700円
温罨法 80円
往療料 4km以内:2,300円
合計 4,080円

上記は自費での料金となるので、医療保険が適用される場合は3~1割分に軽減され、残りの7~9割は市が負担してくれます。2割の自己負担であれば816円、1割の自己負担であれば408円と算出されます。大幅に利用料金を軽減できるので、医師から同意書・診断書をもらって医療保険適用での利用がおすすめです。

寝たきりや歩行困難な場合は訪問マッサージを利用

寝たきりや歩行困難な人で消炎鎮痛を目的のマッサージを受けたい時は、訪問マッサージの利用がおすすめです。あん摩マッサージ指圧師による施術は、硬化した筋肉を和らげ、他にも関節の可動域を拡大や血行促進など可能であり、痛みやしびれなど症状の改善が図れます。

定期的な訪問により筋力の向上に期待でき、自ら体を動かせるまでに改善される場合があります。同時に痛みや体を動かせないというストレスが和らぐので、精神的な安定ももたらされ点もメリットです。

また、訪問リハビリテーションとの併用も可能です。機能訓練も希望する場合はかかりつけ医と相談しながら、訪問マッサージとリハビリテーションの併用も検討してみてください。

この記事のまとめ

  • 寝たきりや歩行困難な人が症状の改善を目的に利用できるマッサージ
  • 疲労回復や疼痛の緩和、関節機能の改善に期待できる
  • 医療保険の適用で自己負担額を大幅に抑えられる

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