小規模多機能型居宅介護とは|人員基準・料金の目安など

今回は、小規模多機能型居宅介護で受けられる介護サービスをご紹介します。あわせて、高齢者が本当に望む生活ができる理由も解説していきます。小規模多機能型居宅介護が選ばれるポイントを知ることができるので、気になる方はぜひ最後までご覧ください。

小規模多機能型居宅介護とは|人員基準・料金の目安など
平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

小規模多機能型居宅介護とは地域密着型のサービス

小規模多機能型居宅介護とは、2006年4月に介護保険制度改正で誕生した介護保険サービスの一つです。高齢者が長年住み慣れた地域での生活を続けられるように各自治体が管轄する「地域密着型サービス」に分類されます。

名前の通り小規模であることが特長です。1事業所あたりの利用人数は30名程度で、その市区町村に住む要支援1・2、要介護1~5の高齢者が利用できます。

小規模多機能型居宅介護が誕生した背景について

小規模多機能型居宅介護が誕生する以前は、住み慣れた地域で介護を受けられる体制は万全ではありませんでした。要介護4・5ほどの重度の方は近場の施設では受け入れてもらえず、自宅から離れた施設に入所するしかなかったのです。

このような状況を改善しようと誕生したのが、小規模多機能型居宅介護の前身となる「宅老所」です。「宅老所」は地域密着型の小規模多機能施設です。それ以外に訪問サービス・宿泊サービスを提供する「小規模多機能型サービス」を展開。サービスが豊富で、高齢者が落ち着いて過ごせることから多くの家族に支持されました。

この形が厚生労働省から高い評価を受け、その後正式に小規模多機能型居宅介護として制度化されていった背景があります。

小規模多機能型居宅介護には「通い」「宿泊」「訪問」がある

さまざまな介護サービスを提供する小規模多機能型居宅介護には、大きく分けて3つのサービスが用意されています。

【通い】デイサービスなど通所介護系のサービス

通いとは通所介護のことで、一般的にはデイサービスと呼ばれている介護サービスです。施設の利用時間に合わせて通うことができ、介護職員はあらかじめ決まっているプログラムに合わせてサービスを提供します。

入浴、食事、散歩のみなど利用者が必要なサービスだけを受けられる仕組みになっており、基本的には1日の過ごし方が決まっています。ただし、緊急時には臨機応変に内容を変更してサービスを提供できます。

【宿泊】事前に予約したうえで利用できるショートステイ

小規模多機能型居宅介護の宿泊はショートステイのサービスに分類されます。「普段介護を担当している家族が不在にする」「リフレッシュしたい」といったときに、事前に利用したい日を予約することで宿泊を利用できます。

なかには、通常のショートステイ(短期入所生活介護)で対応できないような、急な宿泊を受け入れてもらえるケースもあります。

【訪問】ホームヘルパーによる自宅での支援サービス

訪問とは訪問介護のホームヘルプのサービスです。高齢者の自宅にて、生活の支援や介助をしていきます。利用する際は高齢者に必要な支援の度合いに合わせてサービス枠を決めます。

身体介護30分、生活支援1時間といったように設定するのですが、既定のサービス枠内であれば支援内容を変更することもできます。また、訪問回数も週何回と決めることもでき、心配な服薬介助数分のみの支援もできるようになっています。

小規模多機能型居宅介護のメリットとは

続いては小規模多機能型居宅介護のメリットについて見ていきましょう。

契約や移動が楽にできる

小規模多機能型居宅介護の最大の強みは「通い」「宿泊」「訪問」の3つのサービスが集まっていることです。

通常であれば「通い」は通所介護事業所、「宿泊」であれば短期入所生活介護事業所、「訪問」は訪問介護事業所といったように、各サービスには専門の事業所があります。もちろん、それぞれの事業所で契約が必要です。また通所や宿泊はそれぞれの事業所でおこなわれるため、移動する必要があります。

小規模多機能型居宅介護はこれら3つのサービスをあわせ持っているため、小規模多機能型居宅介護事業所に手続きを取ってさえいれば、すべてのサービスを利用できます。さまざまなサービスを高齢者に合わせて選択して利用でき、家族の要望にも対応できる柔軟さがメリットとなっています。

最期まで自宅で暮らせる

小規模多機能型居宅介護は地域密着型サービスであるため、住み慣れた地域で暮らし続けられます。施設に入所せず最期まで住み慣れた自宅で暮らすことも可能で、高齢者の願いを叶えられます。

自宅に一人でいては心配という家族の想いにも寄り添い、複数のサービスを併用しながら高齢者自身が快適に過ごせるよう支えていきます。

少人数なので居心地がいい

小規模多機能型居宅介護は落ち着いた場所での介護を望む方に適した施設です。1施設30名程度といった少人数制で、他の利用者とはほどよく関わりながら、多くの人との交流を避けたい人におすすめできます。

少人数制であるため介護職員も顔なじみの人が多く、小規模多機能型居宅介護では高齢者1人ひとりとの密接な交流を通じて楽しいシニアライフを創造できるようになっています。

小規模多機能型居宅介護のデメリットとは

反対に小規模多機能型居宅介護を使うことのデメリットについて紹介します。

事業所専属のケアマネジャーに変更が必要

小規模多機能型居宅介護を利用した際は、事業所専属のケアマネジャーに変更をしなくてはいけません。在宅での介護が長い方であれば、担当ケアマネジャーと親密になっている方も多いと思います。しかし小規模多機能型居宅介護に所属するケアマネジャーに変更が必要になりますので、いちから関係を築きなおすことになります。

「通い」「宿泊」「訪問」のサービスを部分的に変更できない

3種類のサービスのうち、例えば「宿泊サービスには不満ないが、通いのサービスはいまいちだった」と感じたとします。その際に、通いのサービスのみを他の通所介護事業所に依頼することができません。3種類すべてを同じ小規模多機能型居宅介護の事業所で契約する必要があります。

それまで使えていた介護サービスを併用できなくなる

小規模多機能型居宅介護では、部分的にサービスを変更できないだけでなく、内容が重なる他の介護サービスを利用できなくなります。小規模多機能型居宅介護と併用できない介護保険サービスは以下のとおりです。

小規模多機能型居宅介護と併用できない介護保険サービス
  • 居宅介護支援
  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • デイケア
  • デイサービス
  • ショートステイ

反対に、次の介護保険サービスは併用できます。

小規模多機能型居宅介護と併用できる介護保険サービス
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 福祉用具貸与
  • 住宅改修(介護リフォーム)

定員に達している場合は利用できない

小規模多機能型居宅介護の3種類のサービスは利用回数に上限がないです。しかし利用定員に達している場合は使えません。例えば「宿泊サービスは人員に余裕があって使えたが、通所サービスは定員に達していて利用できなかった」という場合があります。

他の介護サービスとの違いを理解したうえでの利用を

小規模多機能型居宅介護のサービス内容は、それぞれ個別のサービスとしても存在しています。「どれか一つを利用したいときは、個別の事業所にお願いすればいい」と思う方も多いでしょう。

まずは小規模多機能型居宅介護とそのほかの介護サービスとの違いを理解することが大切です。ここからはその違いについて、一つひとつご紹介していきましょう。

訪問介護との違いは「時間の縛りがあるか否か」

まずは訪問介護と小規模多機能型居宅介護の違いについて説明していきます。この2つのどちらも、30分や1時間といったように決められた時間内で利用者が希望するサービスを提供する仕組みです。ただし訪問介護は時間の縛りが厳しく、利用時間を延長することができません。

小規模多機能型居宅介護であると「毎日数分だけ安否確認をしてもらいたい」という要望や「買い物だけお願いしたい」といった要望にも応えられ、時間の縛りがないので支援の延長も十分に可能です。寝たきりの方でも安心して利用できるのが特徴で、1日に何度も訪問してもらうこともできます。

デイサービスとの違いは「時間の融通が効くか」

デイサービスとの違いも、訪問介護の場合と同様に、1人ひとりに合わせた短時間利用や延長が可能な点です。通常デイサービスでは朝の送迎から入浴、食事、レクリエーションといったように決められた1日のスケジュールに沿って介護サービスを受けることになります。

デイサービスを利用している人のなかには1日の利用時間が長いといった意見もあり、最近では半日のみの利用という選択肢も増えていますが、その点の融通が利きやすいというのが、小規模多機能型居宅介護が選ばれるポイントです。入浴や食事だけの利用も可能で、個々の1日の自由な時間で過ごせる持ち味があります。

ショートステイとの違いは「柔軟に利用できるか」

最後はショートステイと小規模多機能型居宅介護の違いを説明します。ショートステイは必ず事前予約が必要なうえ、急な変更などには対応しづらいのが実情です。

一方の小規模多機能型居宅介護は、急な泊まりにも対応できるなど比較的柔軟に利用できます。さらに、通いなれた施設に宿泊できるので、見ず知らずの新しい施設に行くという負担はありません。

それができる理由は「通い」のサービスからそのまま「宿泊」サービスを選択できるからです。顔見知りが多く馴染み深い場所で過ごせるからこそ本人も満足して過ごせますし家族も安心して介護を任せられるでしょう。

小規模多機能型居宅介護の人員基準

小規模多機能型居宅介護の人員基準を紹介します。なお、ここでは本体事業所の基準のみを掲載します。本体型事業所に連携して運営されるサテライト型事業所の場合は人員基準が異なりますので、ご注意ください。

小規模多機能型居宅介護の人員基準
役職 基準(本体事業所)
代表者 認知症対応型サービス事業開設者研修を修了した者
管理者 認知症対応型サービス事業管理者研修を修了した常勤・専従の者
日中通いサービス介護従業者 常勤換算方法で3:1以上(利用者3人につき1人以上)
日中訪問サービス介護従業者 常勤換算方法で1人以上(他のサテライト型事業所の利用者に対しサービスを提供することができる)
夜勤介護従業者 時間帯を通じて1人以上(宿泊利用者がいない場合、置かないことができる)
宿直介護従業者 時間帯を通じて1人以上
看護職員 小規模多機能型居宅介護従業者のうち1人以上
介護支援専門員(ケアマネジャー) 介護支援専門員であって、小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了した者1人以上
参考:厚生労働省「小規模多機能型居宅介護及び看護小規模多機能型居宅介護(参考資料)

代表者

代表者は、必ず認知症対応型サービス事業開設者研修を修了している人物が担っています。

ケアマネジャー

小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了したケアマネジャーを1人以上配置することが決められています。

サービス事業者(日中・夜間)

小規模多機能型居宅介護のサービス事業者は日中と夜間とで違いがあります。

日中

日中は、通いサービスであれば通いサービスの利用者3人に対して1人以上の職員と、訪問サービスに対応できる職員1人以上の協力が必要です。通いサービスに必要なスタッフだけでなく、どんな時でも訪問に動ける1人以上の介護スタッフが備えています。この点がポイントとなり、通いや訪問サービスを非常に充実したものへとすることができます。

夜間

一方、夜間では宿泊・訪問サービス共に、宿直を含む夜勤の職員2人以上の配置を条件にしています。宿泊する予約者がいない場合は置かなくてもよい決まりにはなっていますが、宿直スタッフがいるだけでも十分に安心感は得られるはずです。

看護職員

看護職員は万一の時に備えて必ず1人以上の配置をしなければなりません

複数のサービスがあるからこそ、急な要望があっても対応できる十分な人員が配置されています。さらに専門的な知識も身に着けているのです。任せられる安心感と、非常時にも即時対応できる専門性が小規模多機能型居宅の魅力の一つといえます。

小規模多機能型居宅介護の料金

最後に 小規模多機能型居宅介護の料金についてお伝えしていきましょう。小規模多機能型居宅介護の基本料金は月額制で、料金が分かりやすいのがポイントです。月額料金は要介護度によって異なっているので下の表をご覧ください。

要介護度 月額料金
要支援1 3,438円
要支援2 6,948円
要介護1 1万423円
要介護2 1万5,318円
要介護3 2万2,283円
要介護4 2万4,593円
要介護5 2万7,117円
※「自己負担額1割」「1単位=10円」で計算
参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造(R3.1.18)

上記の料金表は自己負担1割、1単位10円で計算した場合の料金です。この料金はあくまでも目安であり、地域によって違いがあるので注意してください。

宿泊サービスを利用すれば上記の金額に加えて1日当たり1,000~3,000円ほどの宿泊費用も必要になってきます。そして食事やおむつ代、日用品代、さらには認知症加算で500円もしくは800円程加算されるため、利用を検討する際はここまで注目しておきましょう。そのほか、人員体制などによって加算料金が発生する場合もあります。

それでは料金シミュレーションを通じて1ヶ月あたりどのくらいの利用料金になるのか計算してみましょう。

※ここでの料金はあくまでも一例です。

要介護4の目安は4万3,596円

今回は要介護4の方が1カ月に通いを10回、訪問を6回、宿泊を4回利用し、自己負担割合1割の場合の料金シミュレーションを出していきます。

月額料金は要介護4で2万4,593円。食費は通いで10回、そして宿泊で12回(1日3食で12回分)、1食500円だとすると、500円×22回で1万1,000円。さらに宿泊費の8,000円(1回2,000円×4回)で計算してみると、合計は4万3,596円となりました。

要介護5の目安は5万5,117円

では今度は要介護5の認知症の方で1カ月に通いを20回、宿泊を5回利用した場合はどうなるでしょうか。

月額料金は要介護5の2万7,117円に認知症加算の500円をプラスして2万7,617円、食費は1食分500円で計算すると、通い20回分と宿泊5日間の15食合わせて計35回分、500円×35回で1万7,500円です。そして宿泊費1万円(1回2,000円×5回)を合わせて計算すると合計は5万5,117円という結果になります。

加えて別途おむつ代や日用品代もかかるので、詳しい料金は事業所と相談して利用を決めていきましょう。特に加算ポイントが多い事業所であると初期加算や看護職員配置加算、サービス提供体制強化加算などで料金が1,000~2,000円ほど高くなるので注意してください。

小規模多機能型居宅介護は介護費用の節約にも効果あり

小規模多機能型居宅介護は自宅での介護支援を望んでいる高齢者や、理由があって自宅のみならず通いや宿泊を通じて介護を求める高齢者に適した施設です。「通い」「宿泊」「訪問」の3つのサービスを、家族の都合や利用者の希望に合わせて変更しながらサービスを利用することができるのが大きな特徴となっています。臨機応変に対応してもらえることで、高齢者が望んでいる生活スタイルを維持しながら充実した介護サービスが受けられると多くの評判を集めています。

介護に携わる職員の人数や専門性が決められていることが安心を生むことにつながっており、さらには介護度で分かりやすい月額料金をベースにその都度利用したサービスによって料金が加算されていくので、手軽な介護サービスで料金をできるだけ安くすることも可能です。充実した介護環境に配慮しながら、様々な嬉しいポイントで利用者のみならず家族も満足できるはずでしょう。

この記事のまとめ

  • 小規模多機能型居宅介護は3つの事業所サービスが一つになった施設
  • 介護スタッフは人員基準によって選定されているので安心
  • 料金は月額料金をベースに、利用したサービスによって大きく変わってくる

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