認知症高齢者の日常生活自立度とは、判定の基準や覚え方を紹介

本人または家族が認知症と診断された場合、要介護認定を受けて介護保険を利用することも検討される人も多いでしょう。特に高齢者が認知症と診断されると他の病気・けがなどの影響から十分な介護サービスを受けたいと考える人は多いはずです。

要介護認定には様々な判定基準・評価項目が用いられますが、その中の1つに「認知症高齢者の日常生活自立度」というものがあります。今回は認知症高齢者の日常生活自立度とは一体どのような評価方法なのか判定の基準から覚え方までご紹介します。これから要介護認定の認定調査を受けるかもしれない、または受けたいと考えている人はぜひ今回の記事をご参考ください。

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平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて12年で約2,000名の人材育成に関わり、その後、人材定着に悩む介護事業所の人材育成や運営支援を実施。2020年4月からは一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して介護甲子園を主催している。

日常生活自立度とは?

そもそも「日常生活自立度」とはどういったものなのでしょうか。日常生活自立度とは、厚生労働省が定める判定基準で、介護の必要性を調べるためのものです。意思疎通がどれくらいできるか、見られる症状・行動は何かを主軸とし、日常生活における自立度を7つの段階に分けて評価されます。

誰が何のために調査をするか

認知症高齢者の日常生活自立度を調査する目的は、保健師や看護師、介護職といった専門職の人たちが客観的に、そして短時間で判定するためです。「この人はどんなことができるのか」が日常生活自立度を判定することですぐに分かり、適切な対応を取りやすくなります。ただし、認知症は徐々に症状が進行する病気なので、定期的に調査を実施する必要があるでしょう。

要介護度との関係は

認知症高齢者の日常生活自立度は要介護度の認定調査で用いられるものです。要介護認定を受けたい場合、必ず認定調査が実施されます。認定調査では市区町村の職員やケアマネジャーが訪問認定調査を実施し、かかりつけ医の意見書やコンピュータ判定なども基にしながら介護認定審査会で保健・医療・福祉の専門家たちが判断していきます。

その他にも医療現場だと看護計画書やリハビリ計画書、介護現場だとケアプランや通所介護計画書、個別機能訓練計画書などに記載され、その人の現在の状況を表す大切な評価として用いられています。

要介護認定の認定調査について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
要介護認定の認定調査とは、聞き取り内容や所要時間、用紙の記入例など

「日常生活自立度」 7つの段階

認知症高齢者の日常生活自立度はランクⅠからランクMまで、7つの段階に分けられています。かかりつけ医の意見書などにはランクだけ示されている場合も多いため、それぞれのランクがどれほどのレベルなのか把握しておきましょう。

ランクⅠ|何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立している状態

ランクⅠは、何らかの認知症の症状は出ているものの、日常生活においてほとんど自立している状態です。例えば認知症の中でも初期症状(軽い物忘れなど)しか出ていない状態だったり、家族が見守っている環境であれば特に困ることはほとんどない状態だったりすると、ランクⅠに区分されます。

判断される時は、在宅生活を基本として一人暮らしをしても問題ないかがポイントになります。医療機関と密に相談・指導などを実施していけば、症状の改善や進行の阻止にもつながるでしょう。

ランクⅡa|日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭外で見られるが、誰かが注意していれば自立できる状態

ランクⅡは日常生活で支障をきたす症状・行動、意思疎通の困難さが見られても、誰かが注意していれば自立した生活も送れるレベルになります。一人暮らしだと難しい場合もありますが、デイサービスや訪問介護など、在宅生活におけるサポートを受けることで症状の改善・進行の阻止も可能です。

Ⅱaは、家庭外で症状が見られる場合に判定されます。例えばよく通る道でも迷ってしまったり、買い物や事務作業、金銭管理などでできていたことにミスが目立ってきたりすると、ランクⅡaに区分される可能性が高いです。

ランクⅡb|日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭内で見られても、誰かが注意していれば自立できる状態

ランクⅡbは、行動や意思疎通の難しさが家庭内でも見られるようになると判定される場合があります。例えば自分で服薬管理ができなかったり、電話や訪問者への対応が難しかったりするなど、一人での留守番が難しいと判断されれば、ランクⅡbに区分されるかもしれません。

ランクⅢa|日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが日中を中心に見られ、介護を必要とする状態

ランクⅢaとⅢbの共通点は、日常生活に支障をきたすような症状・行動、意思疎通が難しくなり、介護を必要とするレベルだということです。ランクⅡよりも症状が進行して頻度が上がるとランクⅢに区分されます。

Ⅲaでは特に日中で見られる状態だと区分されます。着替えや食事、排泄などが一人だとうまくできない、時間がかかってしまうといったことから、ものを拾って口に入れたり、徘徊や失禁、大声・奇声を上げたり、不潔行為、性的異常行為などが見られる場合はⅢaに区分される可能性が高いです。

ランクⅢb|日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが夜間を中心に見られ、介護を必要とする状態

Ⅲbでは日常生活に支障をきたすような症状・行動、意思疎通の困難さが夜間で見られる状態だと区分されます。見られる症状の程度はⅢaと変わりません。しかし、夜間と日中では受けられる介護サービスにも違いが生じ、介護者の負担も夜間のほうが増えると考えられるため、ⅢaとⅢbに区分されると考えられます。

ランクⅣ|日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする状態

ランクⅣは、日常生活に支障をきたすような症状・行動、意思疎通の困難さがかなりの頻度で見られ、常に目が離せない状態にあると区分されます。症状や行動などはランクⅢa・Ⅲbと変わりません。

ランクⅣになると居宅介護サービスを受けながら在宅介護を継続するか、介護施設に入居するかを選択しなくてはいけないほどのレベルです。介護施設への入居を選択する場合、どの介護施設を選んだほうが本人にとって、家族にとって良いのかも考慮しつつ、それぞれの施設の特徴も把握しておきましょう。

在宅介護と施設入居の比較に関しては以下の記事をご覧ください。
在宅介護と施設介護を徹底比較! 負担・費用・快適さ・安心度など

ランクM|著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする状態

ランクMは、ランクⅣに区分されていた人がせん妄や妄想、興奮といった精神症状から、自傷・他害などの問題行動をして、専門医療機関での治療が必要となった場合に区分されるものです。最初からランクMに区分されることはほとんどないでしょう。特に問題行動では本人や家族、周りの人にも危害が及ぶ可能性が高いため、迅速に専門医療機関へ相談する必要があります。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の4段階

認知症高齢者の日常生活自立度と共に活用されているのが、「障害高齢者の日常生活自立度」です。寝たきり度とも呼ばれており、こちらにも判定基準や区分分けがなされています。

ランクJ|生活自立

ランクJは病気の後遺症などによる障害はあるものの、日常生活を送る中で大きな問題もなく、ほぼ自立している状態だと区分されます。ランクJに区分されるのは基本的に一人でも問題なく外出できる人です。

ランクA|準寝たきり

ランクAは屋食事やトイレ、着替えなどは自分でできるものの、近所へ外出する時には介護者からのサポートが必要な状態だと区分されます。日中もほとんどベッドから出ている状態です。

ランクB|寝たきり

ランクBは1日のほとんどをベッドの上で過ごし、食事・トイレ・着替えのどれかで介護者のサポートを必要とする時に区分されます。座位は保てるので車いすに乗って生活することは可能です。

ランクC|寝たきり

ランクCは1日中ベッドで過ごしている状態で、食事・トイレ・着替えのすべてで介護者のサポートが必要です。ランクCの中でも障害の程度は異なり、自力で寝返りが打てる人もいれば、まったく打てない人もいます。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とは、判定の基準や要介護認定との関係

認知症高齢者の日常生活自立度の問題

認知症高齢者の日常生活自立度において、いくつか問題点も指摘されています。それは、認定にばらつきが出てしまう可能性があるという点です。認知症高齢者の日常生活自立度は要介護認定の判定にも使用される重要な調査ですが、調査員によって判定にばらつきが出る可能性があります。

例えばA調査員はⅡbと判定し、B調査員はⅢaと判定したとします。要介護認定では判定基準にも用いられているため、A調査員とB調査員それぞれの結果では、最終的な要介護認定も変わってくる恐れがあるでしょう。特に、認知症高齢者の日常生活自立度というのは個人差が非常に大きく、ランク分けが難しい場合もあります。

調査前に準備すること

調査が実施される前にあらかじめ準備をしておくことで、正しく調査員に現状を伝えられ、問題点であった判定のばらつきが出る可能性を最小限に抑えられます。どのような準備をすれば良いのかというと、まずは調査の質問項目を確認しておき、話すことをまとめておきましょう。

調査内容はよく見られる症状から日常生活で当てはまるもの、意思疎通やコミュニケーション、認知機能の調査、服薬管理や金銭管理などに介助が必要かどうかなどを問われます。そのため、調査が実施される前にどのような症状があり、日常生活の中で気になるものはすべて書き出しておくと伝え忘れることもないでしょう。

また、初めての調査となると緊張してありのままを話せなかったという場合もあるかもしれないので、心の準備をしておくことも大切です。伝え忘れがあると正常な判定が出せない可能性が高いです。できるだけ前もって準備をしておくようにしましょう。

認知症高齢者の日常生活自立度の覚え方

認知症高齢者の日常生活自立度は全部で7つのカテゴリに分けられますが、細かく区分されているということもあり、覚えるのは少し難しいです。そもそも認知症高齢者の日常生活自立度というのはその人の状況を客観的、かつ大まかに把握するために用いられるものなので、そのレベルを見てどの程度の自立度なのかがわからないといけません。

簡単に覚えるためには、フローチャートを作ると覚えやすくなります。

ランクⅠ 自立

ランクⅡ 要見守り(Ⅱa:家庭外 Ⅱb:家庭内)

ランクⅢ 要介助(Ⅲa:日中 Ⅲb:夜間中心)

ランクⅣ 全般的な要介護

ランクM 専門医療の介入が必要

ランクⅡとⅢは症状が同じでも発症する場所や時間帯でaとbに分かれています。

自分でも試せる認知症テスト

認知症高齢者の日常生活自立度では調査員が訪問し、聞き取り調査などを実施していきますが、その前に簡単にでも認知症かどうか判断したいという人もいるでしょう。

そこで、自分でも試せる認知症テストをいくつかご紹介していきます。ぜひ認知症高齢者の日常生活自立度調査を受ける前にチャレンジしてみてください。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)

長谷川式認知症スケールは、5~10分の短いテストで認知症の疑いがあるかどうかを判断できるものです。合計9問の質問に答えていき、全問正解で30点、20点以下だと認知症の疑いがあると判定されます。質問内容には、「今日は何年何月何日何曜日か」というものから、「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」というものもあります。

ミニメンタルステート検査(MMSE)

ミニメンタルステート検査は11個の質問で構成され、文章や図形を書く質問も用意されているテストです。30点満点中23点以下だと認知症の疑いがあります。質問内容は長谷川式認知症スケールと似たようなものから、時計を見せて「これは何ですか?」と質問したり、五角形が重なっている図を見せて「同じ形を紙に書いてください」と指示したりします。

時計描画試験(CDT)

時計描画試験ではアナログ時計の絵を描いてもらうテストです。まずはA4の紙に合う丸と時計の文字盤を描いてもらい、続いて11時10分を指す針を描いてもらいます。この試験では適切に描けているかどうかで、空間認識力や構成能力が評価されます。

この他にもアルツハイマー評価スケールやウェックスラー成人知能検査など、さまざまなテストがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

認知症のテスト方法について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
認知症のテストや検査を自宅でする方法はありますか?

「認知症高齢者の日常生活自立度」は要介護認定にも関係がある

今回は認知症高齢者の日常生活自立度についてご紹介してきました。こちらの評価は要介護認定にも活用されており、判定の基準の1つとして用いられています。

調査員が自宅を訪問して聞き取り調査を実施します。この時、緊張でうまく伝えられなかったり、伝えることを忘れたりする恐れもあります。そうなると要介護認定にも影響が及んでしまう可能性があるため、調査が実施される前に必ず話したいことをメモし、心の準備をしておくようにしましょう。

この記事のまとめ

  • 認知症高齢者の日常生活自立度は要介護認定の判定基準にも用いられる
  • 見られる症状や場所、時間帯に応じて7つの段階に区分される
  • 認知症高齢者の日常生活自立度調査を受ける前に、あらかじめ話したいことを準備しておく