介護保険負担限度額認定証とは|利用者負担段階・認定証の見本・手続きの流れをご紹介

要介護認定を受けた家族を介護施設に入居させたいと思っていても、経済的に難しいというケースも多いです。施設によって相場は異なるものの、介護サービス費や食費、居住費、その他消耗品費などを合わせると安くても数万円、十数万円以上かかってくる場合もあります。

なるべく入居にかかる自己負担額を抑えたい場合、「介護保険負担限度額認定証」の申請がおすすめです。今回は、介護保険負担限度額認定証によってどれくらい自己負担額が抑えられるのか、どうすれば発行してもらえるのかをご紹介していきます。また、費用を抑えるのに役立つそのほかの制度もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

介護保険負担限度額認定証とは|利用者負担段階・認定証の見本・手続きの流れをご紹介
辻本由香

この記事の監修

辻本由香

つじもとFP事務所 代表

CFP®認定者、CDA、相続手続きカウンセラー。大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。乳がんを発症した経験から、備えの大切さを伝える活動を始める。2015年2月に金融商品を販売しないFP事務所を開業。子どものいない方やがん患者さんの相談、介護資金などの終活にまつわる相談、医療従事者へのセミナーなどをおこなっている。

介護保険負担限度額認定証とは

介護保険負担限度額認定制度とは、設定された要件を満たした場合、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設、介護医療院を含む介護保険施設を利用する際の居住費・食費の負担を軽減できる制度です。介護保険負担限度額認定証は、条件を満たして申請が通った人に発行される証明書になります。

介護保険は要介護度に応じて受けられるサービスや支給限度額が異なります。もし介護保険負担限度額認定証を受けられれば、施設サービスにかかる費用の負担が軽減され、介護者が支払いに悩むことも少なくなるでしょう。

介護保険負担限度認定証の見本

介護保険負担限度認定証の見本は以下になります。

介護保険負担限度額認定証 見本

名前や生年月日、性別といった基本情報のほか、食費の負担限度額、居住費・滞在費の負担限度額といった項目があります。

実際に介護保険施設を利用する場合の食費や居住費は、介護保険負担限度認定証に記載の金額に基づいて判断されます。

認定されることで介護保険施設・ショートステイの自己負担額が軽減される

施設ごとにかかる費用は異なりますが、月額費用の内訳としては施設での介護サービス費と居住費、そして食費がかかります。ここにサービス加算や医療費、日用品などに使う日常生活費なども加わります。

介護保険負担限度額認定証が発行された場合、入居者やその介護者の負担が重くなりすぎないように、居住費と食費が軽減されるため、全体的な自己負担額も少なくなります。しかも、介護保険施設に該当すれば長期入居ではなくショートステイの利用であっても負担が軽減されるので、メリットの大きい制度といえます。

なお、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)、有料老人ホーム、グループホームを利用した際の食費・居住費については、軽減の対象外です。

ただし、認定証をもらうためには条件を満たしている必要があります。具体的にどのような条件があるのか、ご紹介していきましょう。

介護保険負担限度額認定証の利用条件

介護保険負担限度額認定証を受けるための条件は、主に2つあります。1つは「所得の条件」、もう1つは「預貯金の条件」です。

簡単に説明すると、所得が低く持っている預貯金等が少なければ介護保険負担限度額認定制度を受けられます。具体的には以下の4つの条件に当てはまることで認定を受けられ、控除の対象になります。

所得区分 認定条件
第1段階
  • 本人および世帯全員が住民税非課税で、老齢福祉年金の受給者、または生活保護受給者
  • 本人の預貯金などの合計が1,000万円以下の方(配偶者がいる場合は夫婦合わせて2,000万円以下)
第2段階
  • 本人および世帯全員が住民税非課税
  • 「本人の課税対象年金収入額+合計所得金額+非課税年金収入額」が80万円以下
  • 本人の預貯金などの合計が650万円以下の方(配偶者がいる場合は夫婦合わせて1,650万円以下)
第3段階(1)
  • 本人および世帯全員が住民税非課税
  • 「本人の課税対象年金収入額+合計所得金額+非課税年金収入額」が80万円以上120万円以下
  • 本人の預貯金などの合計が550万円以下の方(配偶者がいる場合は夫婦合わせて1,550万円以下)
第3段階(2)
  • 本人および世帯全員が住民税非課税
  • 「本人の課税対象年金収入額+合計所得金額+非課税年金収入額」が120万円以上
  • 本人の預貯金などの合計が500万円以下の方(配偶者がいる場合は夫婦合わせて1,500万円以下)
参考:厚生労働省「介護保険施設における負担限度額が変わります

預貯金等の条件

ここで述べている預貯金等は現金以外にも換金性が高く価格の評価がしやすいものを対象としています。具体的には以下のリストが当てはまります。

  • 預貯金(普通・定期)
  • 有価証券(株式、国債、地方債、社債など)
  • 金・銀(積立購入を含む)など、購入先の口座残高によって時価評価額が用意に把握できる貴金属
  • 投資信託
  • 現金
参考:厚生労働省「介護保険施設における負担限度額が変わります

なお、ローンなどの負債がある場合、預貯金から差し引いた状態で要件を満たすか判断されます。負債の差し引きによっては、預貯金が多くても介護保険負担限度額認定証を発行できる可能性もあるでしょう。

介護保険負担限度額認定証の負担限度額とは

介護保険負担限度額認定証を発行してもらうには、前述した所得と預貯金等の条件を満たす必要があります。ただし、認定を受けた場合の限度額は一律ではありません。所得に応じてどれくらい軽減されるかが変わってくるのです。ここからは所得に応じて変化する「利用者負担段階」についてご紹介します。

前述したとおり負担限度額は、第1段階から第3段階(2)までの4つに区分されます。

第1段階から第3段階(2)までの内容をまとめた表を参考に、どの段階でどれくらいの自己負担額が軽減されるのか、確認してみましょう。

所得区分 食費の負担限度額 居住費(滞在費)の負担限度額
施設入居 ショートステイ
第1段階 300円 300円 ユニット型個室 820円
ユニット型個室的多床室 490円
従来型個室(特養等) 320円
従来型個室(老健・療養等) 490円
多床室 0円
第2段階 390円 600円 ユニット型個室 820円
ユニット型個室的多床室 490円
従来型個室(特養等) 420円
従来型個室(老健・療養等) 490円
多床室 370円
第3段階(1) 650円 1.000円 ユニット型個室 1,310円
ユニット型個室的多床室 1,310円
従来型個室(特養等) 820円
従来型個室(老健・療養等) 1,310円
多床室 370円
第3段階(2) 1,360円 1,300円 ユニット型個室 1,310円
ユニット型個室的多床室 1,310円
従来型個室(特養等) 820円
従来型個室(老健・療養等) 1,310円
多床室 370円
参考:厚生労働省「介護保険施設における負担限度額が変わります

世帯分離によって介護保険負担限度額認定証の自己負担額は変わる

介護保険負担限度額認定証は、世帯分離の有無によっても負担額が変わります。世帯分離とは、住民票で登録されている世帯を2つ以上に分ける行為を指します。

例えば、世帯主が父親で世帯員に母親と自分、自分の配偶者、自分の子どもがいたとします。この状態は、住民票では1世帯となります。ところが父親が世帯主で世帯員が母親の世帯と、自分が世帯主で自分の配偶者と自分の子どもが世帯員の世帯に分けると、2つの別の世帯になります。これが世帯分離です。

2世帯に分ける場合はそれぞれ世帯主が独立した家計を持っていないといけません。地域によっては断られるケースもありますが、この条件さえクリアしていれば比較的簡単に世帯分離が可能です。

世帯分離をすると介護負担限度額認定証の自己負担額が変わるというメリットがあります。これは「高額介護サービス費制度」で自己負担額の上限が決まっており、限度額を超えた場合、申請すれば払い戻しが受けられるためです。

世帯によっては自己負担の上限額が下がり、払い戻しがしやすくなります。

高額介護サービス費の負担限度額
区分 月の負担上限
生活保護を受給している人 世帯:15,000円
世帯全員が市区町村民税非課税かつ、前年の公的年金等の収入額とその他の合計所得金額の合計が年間80万円以下の人 個人:1万5,000円
世帯:2万4,600円
世帯全員が市区町村民税非課税で、上記2つの区分に該当しない人 世帯:2万4,600円
世帯内で市区町村税を課税している人がいて、課税所得が380万円(年収約770万円)未満の人 世帯:4万4,400円
課税所得が380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1,160万円)未満の人 世帯:9万3,000円
課税所得が690万円(年収約1,160万円)以上の人 世帯:14万100円
参考:厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます

世帯分離にもデメリットはある

ここまで世帯分離のメリットを紹介しましたが、デメリットにも触れておきます。

例えば国民健康保険に加入している世帯が世帯分離した場合、各世帯主がそれぞれ国民健康保険料を支払うことになるので、負担額はかえって増える場合もあるのです。

また、複数の介護サービス利用者がいる場合、同一世帯であれば利用料を合算して払い戻しを申請できますが、世帯が別の場合は合算ができず、サービスの利用の仕方によっては、損をすることがあります。

世帯分離は、社会的保護を受けなくては生活が立ち行かなくなる方を守るための手段です。ぜひ、メリットとデメリットを知ったうえで、世帯分離をするか、しないかを検討してください。

世帯分離については下記の記事でも紹介しています。

介護保険負担限度額認定証の手続きを紹介

介護保険負担限度額認定証を発行してもらうには、各市町村の窓口で手続きをする必要があります。発行・更新・再発行にはそれぞれどのような手続きが必要となるのでしょうか。

発行の手続き

発行してもらうには、必要書類を住んでいる市区町村の窓口へ提出します。申請書は市区町村のホームページからダウンロードできますし、市区町村の窓口や近くの地域包括支援センターから受け取ることも可能です。

申請書を提出する際には、預貯金等の確認ができる書類も一緒に添付しなくてはいけません。普通預金・定期預金を確認するには通帳のコピーもしくはネットバンクの場合は口座残高ページのコピーが必要です。株式や地方債などの有価証券は、証券会社・銀行などの口座残高やWebページのコピーを用意しましょう。

金・銀などの貴金属は購入先の口座残高やWebページのコピー、投資信託も同じく口座残高やWebページのコピーが必要です。ただし、タンス預金など現金に関しては証明する書類がないため、自己申告になります。書類はすべて直近2カ月以内のものを添付するようにしましょう。借入金・住宅ローンなど負債がある場合は、借用証書等も必要です。

更新の手続き

介護保険負担限度額認定証の期限は発行日から1年後です。更新月が近づくと認定を受けている人の元に書類が送付されるので、それを基に更新手続きをしましょう。

もし1年間で所得や預貯金等の増減があった場合、負担段階も変わってしまいます。必ず変更部分を更新するようにしてください。

再発行の手続き

認定証が紛失してしまったり、破損や汚損が見られたりした場合、再発行の手続きをすることも可能です。再発行の手続きをするには、各市区町村のホームページでもダウンロードできる「介護保険負担限度額認定証等再交付申請書」を記入し、提出しましょう。

再交付申請書には被保険者の情報を記入する項目もあります。介護保険被保険者証に記載されている被保険者番号やマイナンバーカードを用意しておくと、スムーズに記入できます。

その他、自己負担額を抑えて施設に入居する方法

介護保険負担限度額認定証の他にも、自己負担額を抑えながら介護施設へ入居する方法があります。どのような方法があるのか、簡単にご紹介していきましょう。

高額介護合算療養制度

高額介護合算療養制度とは、1年間の医療保険・介護保険の自己負担額を合わせ、その金額が基準額を超えていた場合、超えた分の金額が戻ってくる制度です。基準額は要介護者本人の年齢と収入(年金か現役並の所得者か)で細分化されています。

なお、高額介護サービス費制度と似ていますが、1カ月の合計か1年間の合計という違いがあります。

高額介護合算療養費制度
区分 70歳以上 70歳未満
年収約 1,160万円~ 212万円 212万円
年収約770~約1,160万円 141万円 141万円
年収約370~約770万円 67万円 67万円
~年収約370万円
(課税所得145万円未満)
※収入の合計額が520万円未満(1人世 帯の場合は383万円未満)の場合も含む。
※ただし書所得の合計額が210万円 以下の場合も含む。
56万円 60万円
市町村民税世帯非課税 31万円 34万円
市町村民税世帯非課税
(年金収入80万円以下等)
19万円
参考:厚生労働省保健局「高額療養費制度の見直しについて(概要)

高額介護合算療養費制度については、以下の記事で詳しく紹介しています。

医療費控除

所得税には医療費控除が設けられており、介護サービスや食費などの自己負担額の一部が適用されます。例えば老健や療養型医療施設に入居した場合、控除対象となるため自己負担額の還付が受けられるでしょう。また、特養でもすべて戻ってくるわけではないものの、支払った分の1/2が控除対象になります。

また、場合によっては訪問介護やデイサービスなども控除対象になり得るので、医療費控除の対象となるかどうか改めて確認してみてください。

介護休業給付金

施設の入居費用を抑える制度とは少し異なりますが、利用すると便利なものとして「介護休業給付金」があります。これは、通算93日まで仕事を休業しても給付金を受け取れる制度です。介護のために仕事を休む必要があるという人は、有効活用していきましょう。

介護休業給付金については、こちらの記事を参考にしてください。

介護保険負担限度額認定証を使って施設に入居する

家族が要介護状態となり、介護施設へ入居するとなると相当に費用負担が生じます。介護施設への入居を検討しているのであれば、介護保険負担限度額認定証やその他の保障制度も上手に活用し、経済的負担を少しでも軽減させましょう。

せっかく公的な保障制度が用意されているにも関わらず、どうやって手続きをすれば良いのか分からない人も多いでしょう。今回ご紹介した手続き方法を参考にするのも良いですし、担当のケアマネジャーに利用できそうな保障制度がないか相談するのもおすすめです。

この記事のまとめ

  • 介護保険負担限度額認定証は要件を満たせば施設の居住費と食費の自己負担額を軽減してもらえる制度
  • 世帯分離すると親世帯の所得が下がるため、自己負担額の上限が下がり払い戻しを受けやすくなる
  • 発行手続きには申請書と預貯金等の確認書類が必要

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